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第185話 『雷帝』VS『光帝』・前編

前回のあらすじ

クレイルは『地帝』のラーガンと対峙し、ラーガンの錬金魔法を駆使した武器精製からの攻撃を目の当たりにする。

しかし、多くのSランクの魔物を相手に成長したクレイルは全てを打ち砕き、そしてユーマを守る為に一切の容赦をせず、ラーガンに圧勝する。

 ユーマside


 フォース形態になった僕は雷の翼を広げて飛び上がり、左右の神器を手にファルムスさんへと斬りかかった。


 しかしファルムスさんは手に持った槍を構えて、アメノハバキリだけでなくミネルヴァの攻撃までをも防いで僕を驚愕させた。

 最初に攻撃を防いだ時にも思ったが、神器の攻撃を受けて傷1つ付かないのはおかしいからだ。

 普通のマジックアイテムではミネルヴァの攻撃を防ぐ事が出来ないというのは、僕がバロンさんと戦った時に実証されている。


 ドワーフのラーガンさんなら八輝帝の装備の開発に関わっているだろうけど、それでも神器の攻撃に耐えられるには限度がある。


 それらの事を踏まえて考えられる可能性はただ1つ。

 しかも僕はつい最近、そんな可能性を持った武器と戦闘を経験していたのだから。


 僕はファルムスさんから距離を空けて地面に着地した。


「ミネルヴァとアメノハバキリの攻撃を防げる武器と言えばただ1つ……ファルムスさん、その槍は、もしかして神器ですね」


 そう。

 神器と互角に打ち合える武器は同じ神器同士でしかなく、特に僕は先日オベリスク王国でグレイドニル国王の神器、神槌トールと戦った事がある。

 その経験から、ファルムスさんの槍が神器である事に気付いた。


「成程。神器の事を知っているという事は、君のその2本の剣も神器なのか。この神槍アポロンと打ち合って無事な武器は限られてくるからな。確かに私の槍は神器の1つだ。名を神槍アポロンという」


 やっぱりあの槍の正体は神器だった。


 これで僕はラティ達を除くと2人目の神器持ちに出会った事になる。


「私達八輝帝の装備は全て、鍛冶師も兼任しているラーガンによって造られた物だが、このアポロンはまだ八輝帝を結成する前から私が所持していた物で、他の装備はラーガンが造った物を使っているが、このアポロンだけはずっと愛槍として共に歩んできた。私の従魔も含めて、私の大切なパートナーの様な物だ」


 ファルムスさんの言葉から、かなりあの神器の槍を愛用している様だ。

 つい最近やっと所有者としてミネルヴァに認められたり、イリアステル様から転生特典としてアメノハバキリを与えられた僕とは偉い違いだな。


 神器を所持している時間や使ってきた経験では、ファルムスさんに圧倒的にアドバンテージがあるだろうけど、僕だって伊達にSランクにまで上がって来た訳じゃない。

 神器の扱いに差があるというなら、僕はフォースを始めとしたこれまでの旅で培ってきた経験の全てをぶつけてやる。


 そう決意した僕はアメノハバキリに魔力を流し、これまでの試合では使わなかった能力を解放した。


「サンダーホークの能力解放!!」


 アメノハバキリに蓄えられたサンダーホークの力を解放させて、雷の魔力による干渉力を強化して、巨大な雷の刃を纏わせて大剣状にした。

 サンダーホークの能力はベヒモス戦で何度か使ったけど、あのダンジョンでサンダーホークと戦った時に、かなりの数を斬った事でまだまだストックは残っていた。


 これで右手のミネルヴァを合わせて、一時的に大剣の二刀流になった。

 ミネルヴァはその能力の1つである重力制御で重さを変えられるけど、結局は大きな武器という点から大降りになると一定の隙が出来てしまうが、ドラグーンフォースによって腕自体も雷を纏った巨大な腕になっている為、武器と腕のサイズの差をカバー出来ている。


「剣の形状が変わったという事は、それがその片方の神器の能力か。では、私も全力で戦う為に、この神槍アポロンの能力を解放するとしよう!」


 その宣言と共に、ファルムスさんは右手に持っていたアポロンを空へと掲げた。

 すると、アポロンが根元から徐々に点灯する様に光りだし、やがて穂先まで届き全体が神々しい輝きに包まれた。


「これが神槍アポロンの特殊能力だ。この槍は光を吸収して力を蓄える。特に太陽の光は最も蓄える速度が速くてな、この状態になったアポロンは私の光魔法を始めとしたあらゆる攻撃を光速の速さで放つ事が出来る。それが私が『光帝』と呼ばれる様になった所以だ」


 そうか。

 神槍アポロンの能力は、前世で言うとソーラーバッテリーに近い物なのか。

 しかもファルムスさんは『光帝』で、光属性に特化しているから彼とは最も相性の良い神器でもあるのか。


「では始めるとしよう! ソーラーレーザー!!」


 僕に目掛けて突き出されたアポロンから、極太の光線が放たれた。


 神器から繰り出される攻撃をまともに受ければ無事じゃすまないのは、グレイドニル国王との模擬戦で分かっている。

 竜神のアリアの鱗で造られたこの魔竜のローブなら多少の軽減は期待出来るかもしれないけど、忘れちゃいけないのは全ての神器がこの世界の神、イリアステル様によって創造された武具だという事だ。

 神の力が宿った攻撃に、竜神の防御力がどこまで通用するかは分からないから、あの攻撃は受けない方が得策だ。


「ジェノサイドクロス!!」


 それに対抗するべく、僕は両手の神器に雷の魔力を流してミネルヴァにも雷の刃を纏わせた。

 そしてそれを交差させて振り抜き、雷の十字の斬撃を放って光線にぶつけて相殺させた。


「甘いぞ! スターライトインパルス!!」


 すかさずファルムスさんが素早く突っ込んできて、光を纏ったアポロンで突きを繰り出してきた。


 僕も素早くドラグーンフォースの翼を広げて躱し、ファルムスさんの後ろを取った。


「貰いました!」


 一気に勝負をつけるべく、ミネルヴァで斬りつけようとしたが――


「そう簡単には負けるつもりはないぞ!」


 ファルムスさんの持っていたアポロンの輝きを強めた閃光に目が眩み、攻撃が外れてしまった。

 しかももろに閃光を見てしまった事で、目がまだよく見えない。


「休んでいる暇はないぞ! シャイニングストライク!!」


 前方からファルムスさんの攻撃を繰り出す声と音が聞こえ、瞬間的に探知魔法でファルムスさんの魔力を捉え、横に飛ぶ事で回避出来た。


 僕はそのまま何とか距離を空けて目が回復するのを待った。


「どうした? その程度では、私を倒す事は出来ないぞ。こう見えても、私はあのイグザム達も含めた八輝帝を束ねるリーダーだ。その辺の冒険者とは格が違うのも当たり前だぞ」


 そうだった。

 ファルムスさんはまともな人だったから失念していたけど、この人はあのイグザム、ミスティ、ガルーザス、リーシャの4人を纏める八輝帝のリーダーだ。

 それは必然的にあの4人が認めた最強の冒険者だという事だ。


 その実力は神器であるアポロンを完璧に使いこなしている事で証明されている。

 普通に戦っていたんじゃ、いくらやっても破られるのは当たり前だった。


「それに、君は私達に勝って、八輝帝に入らない様になりたいんだろう? 言っておくが、私はともかくイグザムは一切の容赦がない。私を相手に音を上げている様では、到底あいつを倒す事は出来ないぞ」


 その言葉を聞き、僕はラティ達やゼノンさん達と交わした約束を思い出し、自分を奮い立たせた。


 そうだよ。

 僕は八輝帝に入らず、銀月の翼の皆と、そして僕達とアライアンスを結んだあの人達と共にいる為に、こんな所では負けられない。


 それに第2試合では、ゼノンさん達がイグザム達と対峙する。

 あの人達が勝つ事を信じているが、僕がここで負けてしまっては賭けに負けてしまう事を意味してしまう。


 だからこそ、僕はこんな所で負ける訳には行かない。

 お互いに準決勝で勝ち、決勝で最高の試合をしようと、僕は皆と約束したんだ。


 その為に、僕は絶対に負ける訳には行かない。


 そう自分に活を入れた僕は、目に魔力を流して身体強化の応用で気つけを行い、眩んでいた眼を強引に回復させた。


 視界を回復させた僕は改めて神器に魔力を込め、更にフォース形態の身体にも魔力を流した。


「行きますよ、ファルムスさん! ここからが、僕『雷帝』のユーマの全力です!」


 僕は左右の神器を地面に突き刺し、雷の魔力を地面に流した。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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次回予告

ユーマは自分の持てる力を持ってファルムスに挑むが、ファルムスは常に一手も二手も先を読んでいた。

しかし、ユーマはそこに突破口を考え、ファルムスの戦法を逆手に取る手を思いつく。


次回、『雷帝』VS『光帝』・後編

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― 新着の感想 ―
[一言] 皇帝野郎Aチームの面々、改めてお人好しであっちの帝共には押し切られてる感じだ。リーダー含めて。
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