第184話 『闘王』VS『地帝』
前回のあらすじ
遂に八輝帝との試合が始まり、ラティとコレットは『水帝』のレミスと対峙する。
レミスの水を自在に操る強力な魔法に突破口を見つけられずにいたが、水を炎で蒸発させるというラティの強引な戦術で逆転し、レミスは負傷して降参を告げる。
クレイルside
俺は『地帝』のラーガンさんと対峙している。
「さっきの一撃は中々いパワーだったぞ。なら今度は俺の番だ! 八輝帝の1人、『地帝』のラーガンの力を見せてやろう!」
ラーガンさんは手に持ったハンマーを振りかざし、地面に強く打ち付けた。
「ガイアピラー!!」
すると、打ち付けた場所から巨大な岩の柱が現れた。
「何をするつもりだ……?」
今度はそのハンマーを柱に向けて振り始めた。
「ロックバレット!!」
ラーガンさんのハンマーが柱に打ち付けられた瞬間、ハンマーが光り始め、無数の岩の弾丸が俺に向かって飛んできた。
「まずは小手先か……でもな、そんな攻撃、今の俺には止まって見えるぜ!」
フォースを発動させた状態での俺の身体能力は、素の時点で加速魔法の第1段階を使ったのと同等のスピードが出る。
故に、俺は最小限の動きで難なく避ける事が出来た。
「噂に聞いていた以上のスピードだな。前回の武闘大会では、そのスピードで当時の『雷帝』と『賢者』を苦しめたと聞いているんでな。だが、これならどうだ! ガイアスパイク!!」
再びハンマーで地面を打ち、俺の周囲に巨大な岩の棘が発生して取り囲まれてしまった。
しかも、その高さも異常な程高く、エアステップでも脱出にちょっと時間が掛かるくらいだった。
「今度はこれだ! ガイアヴァイス!!」
向こうでまた地面をハンマーで叩く衝撃がして、その瞬間この岩の棘が盛り上がって、棘付きの巨大な岩の壁に変化して、俺を押し潰そうと迫って来た。
「1度魔法で造った物を、一瞬で別の物に造り替えた。ラティやユーマでもこんな器用な真似は簡単には出来ないのに……まさかあいつの固有魔法は!?」
ラーガンさんの魔法のからくりに気付いた俺は、フェンリルフォースの炎の爪を壁に向けた。
「邪魔だ! インフェルノクラッシュ!!」
だが一点に攻撃を当てる事で壁に大穴を貫通させて、俺は脱出する事が出来た。
「ほう。並の魔物では脱出する事が出来ず、何も出来ないまま押し潰される俺のガイアヴァイスを攻略するとは……やはりお前はミスティ達が言っていた様なやわな男じゃないか」
「俺をあんな奴らの頭だけで測れる様な男だと思うな! それに、俺が単に何も考えずに戦っていると思っているなら、それは大間違いだぜ。もうあんたの戦い方は把握済みだぜ」
俺がそういうと、ラーガンさんは面白そうな笑みを浮かべた。
「へえ~。じゃあ、聞かせて貰おうか? 俺の戦い方の秘密を」
「あんたの固有魔法、それは多分錬金魔法、或いはそれの互換系の魔法だ。そしてそのハンマーは、土属性の魔法を増幅させるタイプのマジックアイテムだ。あんたは自分の固有魔法と土魔法を組み合わせて大地を操作して攻撃してたんだ。それがあんたが『地帝』と呼ばれている理由だろ?」
俺が指摘すると、ラーガンさんは正解だという様に頷いていた。
「まさにその通りだ。お前は結構洞察力に優れている様だな。リーシャの情報とミスティ達の判断だけで決め付けたのは、間違いだったかな。確かに、俺の固有魔法は錬金魔法だ。そしてこいつは俺が造った大地への干渉を強化するマジックアイテム、地神の大槌だ。俺はこう見えて、八輝帝の鍛冶師もやっていてな、ファルムス達の装備やマジックアイテムも、全部俺のお手製なのさ」
やっぱりそうだったか。
ドワーフなら鍛冶仕事に精通しているだろうから、あの人が何らかの武器を作っていたんだろうと、初めて会った時からユーマも目星をつけていたからな。
しかも、錬金魔法を戦闘に使っていたとはな、見破った俺が言うのもなんだけどかなり斬新なアイディアだな。
錬金魔法は基本的に装備やマジックアイテムを造ったり、ポーションなどの薬を造ったりするだけの魔法だ。
だけどその錬成対象を地面にする事で直接武器を造って攻撃するなんて、そんなのユーマくらいしか思いつかないと思ってた。
やっぱり、八輝帝は俺達の想像を超えた戦い方をして来るぜ。
「ではそろそろ勝負に戻るとしようか。この魔法を受けてみるんだな。グランドバリスタ!!」
ラーガンさんは再度ハンマーを地面に打ち、今度は俺の目の前に巨大なバリスタが出現した。
本来武闘大会ではフィールドに上がっていた時点で持っていた武器だけで戦い、新たな武器を収納魔法とかで取り出して戦うのは失格行為になる。
だけどあのバリスタはあくまで魔法で造り出され物、つまり魔法の効果だ。
大会規定にも引っかからないから、かなり厄介な戦い方にもなるぞ。
そうこうしている内に、岩のバリスタから巨大な矢が発射された。
だが俺は動じる事もなく、純粋にフォースの炎を纏った腕を構えて迎え撃った。
結果放たれた巨大な矢は、俺の拳による一撃で粉々になった。
「んなっ!? 竜の身体をも貫く俺のグランドバリスタを拳1発で砕いただと!?」
流石のラーガンさんもこれは予想外だったのか、かなり動揺していた。
「生憎だけど、俺達はつい最近までダルモウス山脈のダンジョンで沢山の魔物と戦っていてな、最下層部ではSランクの魔物の大群ともやり合っていたんだ。あんたの今の一撃にはベヒモス程の脅威さを感じない。だから俺は動じずに、拳1発で粉砕出来ると確信していたんだ」
「お前達があのダンジョンを攻略したというのは、俺達も噂で耳にしていたが、そこまで力を付けていたとはな。そんなお前達に、長期戦は不利だ……なら、俺の最強の魔法で一気にカタを付けてやる! 行くぞ! ガイアフルバースト!!」
ラーガンさんのハンマーがこれまで以上の勢いで地面に打ち付けられ、俺の目の前に無数のバリスタや岩の鎖で繋がった棘付きの岩、岩で出来た斧に銛や岩の棘、そんな無数の武器が出現して、俺に斉射された。
「これが俺の最強魔法だ! この攻撃を喰らえば、例えSランクの魔物であろうと致命傷を負う! さあ、『闘王』! 観念するんだな!」
確かにこれだけの攻撃を全て喰らえば、竜王クラスでも無事じゃ済まねえかもな。
でもな……
「あんた忘れてるぜ。俺の固有魔法の効果をな。リーシャから聞いている筈だぜ? 俺の固有魔法がスピードに関連した魔法だって事をな!」
俺はフォース形態のまま加速魔法を発動させ、一気に第2段階まで加速させた。
その結果、俺の視界に映った岩の武器は止まったも同然になり、俺は走り出した。
最初に岩の銛を回し蹴りで砕き、続いて岩の棘は炎の爪の下にあるメルクリウスによる打撃で粉砕し、バリスタの矢を連打で全て砕き、斧や棘付きの岩を一撃で砕いたりして、結果あっという間にラーガンさんの目の前まで移動した。
そこで俺は加速状態を解除し、ラーガンさんの視界には一瞬で岩の武器が全て壊されて、目の前に俺が現れた様に映っただろうな。
「何!? あれだけの武器を一瞬で全て破壊しただと!? これがお前の力なのか!?」
「悪いけど、俺達の勝利を待っている人達がいるんだ。そして俺も親友を守る為にも、あんたを全力でぶっ倒すぜ!!」
俺が腕を構えて、ラーガンさんも防ごうとハンマーを構えたが、さっき防がれた一撃と違って今度は魔力を込めた神器の一撃だ。
それは無駄な行いなんだよ。
俺が炎の爪を振り下ろし、そのハンマーの頭を粉々に砕いた。
そしてガラ空きにその腹を捉え、左腕を繰り出した。
「こいつで止めだ! メテオバースト・ブレイク!!」
俺の繰り出した渾身の一撃をまともに喰らい、ラーガンさんは大きく吹き飛ばされて、倒れたまま動かなくなった。
俺はすぐに駆け寄って状態を確認したが、どうやら完全に意識を失った様だ。
心臓は鼓動しているし、息もあったからな。
やっぱ『地帝』と名乗っているだけあって、その頑丈さもかなりの物だった様だな。
後はこの人が作った防具の防御力にも助けられている要素もあったんだろうけど。
とにかく、これで俺は相手チームの1人を倒した。
残りはユーマ達が勝つだろうけど、場合によっては俺も何時でも加勢出来る様にしておかないとな。
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次回予告
ユーマとファルムスはリーダー対決を繰り広げる。
しかし、ファルムスの武器はユーマにとって予想外の代物であった。
そしてファルムスの実力に苦戦し、ユーマは自分を奮い立たせる。
次回、『雷帝』VS『光帝』・前編




