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第183話 『賢者』&『聖弓』VS『水帝』

前回のあらすじ

準決勝の時を迎え、対峙する銀月の翼と八輝帝Aチーム。

開始と同時にユーマとクレイルは先制攻撃を仕掛けるが、ファルムスとラーガンに防がれる。

イグザム達によって怒りがまだ続いていたユーマ達は、フォースを発動させ、一切の容赦をする事なく戦いを挑む。

 ラティside


 ユーマくん達がフォースを使っている頃、あたしとコレットさんはレミスさんと対峙していた。


「私のお相手は、あなた達ですか。ですが誰が相手だろうと、私は私の戦いを貫くまでです」


「それはこちらも同じです。確かにレミスさんがミスティ達と違うという事は分かっています」


「だけど、こちらとしても容赦はしないので、全力でかかって来なさい」


 あたし達の戦闘も始り、最初に動いたのはレミスさんだった。


「コレットさんの周りには、多くの武器が漂っている。あれがコレットさんの魔法による物なら、私も出し惜しみなく行きます!」


 その瞬間、レミスさんは手に持っていたトライデントを地面に突き刺した。


 すると、あたし達の周囲に巨大な水柱が何本も現れた。


「どうやら、あのトライデントによる物の様ね。でもそれにしては、魔力の濃度が濃い。もしかして固有魔法も使ってるのかもね」


「正解ですよ、コレットさん。私の固有魔法は操作魔法。水や岩などを動かす効果で、探知魔法や錬金魔法の様にありふれた固有魔法ですが、私はそれを水にする事で海人族ならではの水を自在に操れるようになるのです。そしてこのトライデントはマジックアイテムで、水神の矛と言います。これは、刺した相手や物体の中にある水分を自在に操る能力があります。私は主に地面に刺してその地下に流れる水脈を操ったり、魔物の身体に刺してその中の血や水分を操って破裂させたりして戦うのです」


 レミスさんの戦い方は、まさに水を熟知した者ならではのやり方だった。

 そういえばユーマくんが以前に教えてくれた人間の半分以上は水分で出来ているというの思い出し、レミスさんはその事を自力で知ってその戦い方を身に着けたのだと気付いた。


「成程ね。かなりえげつない方法だけど、確かにあなたの戦い方は、水の戦いに精通した海人族ならではであり、『水帝』の名に相応しいわね。だったら、私達も遠慮なく全力で行くわよ! 行くわよ、ラティ!」


「はい!」


 あたし達も反撃するべく、まずはあたしがウラノスに魔力を流し、巨大な重力の魔力を放った。


「させません! 水神の槍撃!!」


 レミスさんが発生させた水柱の先端が槍のように鋭くなり、あたし達に襲い掛かって来た。


「グラビティホール!!」


 その水柱を重力空間で包み込み、水ごと地面に押し潰した。


「次は私よ!」


 すかさず重力を解除して、それに合わせてコレットさんが制御魔法で操作したアルテミスやユーマくんやあたしのマジックアイテムを全てレミスさんに向けた。

 そしてコレットさんの手にはユグドラシルが構えられている。


「喰らいなさい! 全てのマジックアイテムの一斉攻撃よ!」


 ユグドラシルやアルテミスから無数の魔力の矢、エンシェントロッドと元素の杖からそれぞれ魔法が放たれ、白百合、黒薔薇、ジルドラスが突っ込み、その無数の攻撃が向かっていった。


「これは受けたらさすがの私もマズそうですね……では、タイダルウェーブ!!」


 レミスさんが対抗して放った大津波が全ての攻撃を弾き返し、そのままあたし達に向かってきた。


「ラティ、あの津波を凍らせて! 私もそれに合わせるから!」


「はい! ニブルヘイム!!」


 コレットさんの指示で氷の最上級魔法を放ち、大津波を一瞬で凍らせた。


「ナイスよ! 今度は私が! ライトニングスコール!!」


 ユグドラシルとアルテミスから放たれた無数の雷の矢が雨の様に降り注ぎ、津波の氷を砕きながらその向こうにいるレミスさんに向かっていった。


「水は電気を通すのよ! この雷の矢なら、水魔法で迎撃しても、より威力を高めてあなたに向かうだけよ!」


 上手い!

 同時にあたしは、初めてミスティと会った時、彼女が言っていた事を思い出した。

 八輝帝は1人1人が各属性の魔法に特化していて、それで各『帝』が付いた冒険者になっているという事を。


 レミスさんは『水帝』、つまり水属性に特化していて、あの雷の矢を防ぐには水以外の属性で迎え撃つ必要があるけど、水属性に特化したレミスさんではそれは無理に近い。


 この攻撃が決まれば、一気にあたし達の勝ちだわ!


「成程。確かに普通の相手ならいい手ですが、これでも私は水属性に特化した『水帝』。対雷属性の策も備えています! アクアウォール!!」


 レミスさんがトライデントを振るい、水の壁を張ったその時、雷の矢が全て水の壁に防がれてしまった。


「馬鹿な!? 雷の魔力で出来た矢が、水の壁に阻まれた!?」


 これはあたしも予想外だった。

 どうして水が電撃を防ぐ事が出来たのか、わからなかった。


「確かに水は電気をよく通すので、水属性と雷属性は最悪の相性でもあります。しかし、その水の中に含まれている不純物を無くし、純粋な水、すなわち純水にすれば、電気を通す事は出来なくなります。私は自分で放つ水の性質を自在にコントロールできるのですよ。つまり、雷属性の攻撃を防ぐ手段も持っているという訳です」


 水の性質を自在に操れるなんて、それじゃあどうすればいいのか。


「ラティ、電撃が駄目なら、まだ別の手があるわ」


「別の手って、水を自在に操るレミスさんにどうすれば……」


「確かに彼女の力は厄介だけど、それでも万能という訳じゃないわ」


 万能じゃない……。

 水に対する手段で電撃意外だと……。

 その時、あたしの頭にある可能性が浮き出て来た。


「成程……確かにやってみる価値はありそうですね」


「でしょう。私が注意を惹くわ。あなたが彼女を倒すのよ。ユーマを守る為にもね」


「はい!」


 あたしはウラノスを右手で持ち、左手にエンシェントロッドを受け取って杖の二刀流にした。


「援護は頼みます!」


 そのままレミスさんに向かって駆けだした。


「スターライトシューティング!!」


 後ろではコレットさんがアルテミスを持って構え、それから閃光の矢が放たれ、あたしを超えてレミスさんに向かっていった。


「そうはさせません! 水神の海流!!」


 レミスさんが地中から突き出した水柱が、鞭の様な動きでコレットさんの矢を防いだ。

 しかし高威力の魔法同士が相殺された事で、その水柱も消滅した。


「お陰であたしが近づく事が出来たわ! インフェルノブレード!!」


 両手に持ったウラノスとエンシェントロッドの先端に炎の魔力を集め、炎の刃を纏った杖に強化した。


「電撃が駄目なら今度は炎ですか。ですが、それは最悪の一手ですよ。炎が水で消えるというのは、子供でも知っている事ですよ、ラティさん! アクアウォール!!」


 予想通り、レミスさんは水の壁を張って防御に出た。


「それを待ってました! インフェルノクラッシュ!!」


 左右の炎の刃に巨大な炎の魔力を集約させ、水壁にぶつけた。

 すると、水壁は激しい蒸気を発して徐々に小さくなっていった。


「これは!? 私の水が蒸発している!?」


「確かに水は炎を消します。でも激しく燃える炎は、時には水を蒸発させて逆に消してしまうんです!」


 やがて水壁が消え去った所で、あたしはウラノスをレミスさんのお腹に突き付けた。


「これで終わりです! グラビティスフィア!!」


 ゼロ距離で放った重力球の直撃を受け、レミスさんは壁まで吹き飛ばされた。


 壁に叩きつけられたレミスさんは、重傷を負いながらも立ち上がろうとした。


「あの攻撃を受けても立ち上がるなんて、流石は八輝帝と言った所ね。でも、悪いけどあなたは既に詰んでいるのよ」


 既にコレットさんがユグドラシルを構え、レミスさんの周囲をアルテミスやユーマくんのマジックアイテムが包囲している。

 つまり、レミスさんが迂闊な真似をしようとすれば、即一斉攻撃が襲い、どっちにしてもレミスさんはお終いね。


「…………これは、どう見ても私の負けですね。この傷ではもう魔法も使えそうにないですし、分かりました。私の降参です」


 レミスさんはトライデントを地面に捨て、両手を上げて降参を告げた。


 あたしとコレットさんは、八輝帝の1人に勝つ事が出来た。


「潔い決断ね。やっぱり、あなたはあんな奴らとは違うわね。いっその事、ファルムス達と一緒にあいつらと絶縁して、新しいパーティーとしてスタートすればいいのに」


 コレットさんはそんな事を言ったけど、レミスさんは静かな表情で首を横に振った。


「それは流石に出来ません。確かにイグザム達はあんなですけど、それでもこれまでの苦楽を共に過ごしてきた大切な仲間です。あなた達が家族の絆で結ばれている様に、私達にも絆があります。ライオルドはもういなくても、私達は彼らを完全に見捨てる事は出来ません」


「そう。あなたがそう決めているのなら、私はもう何も言わないわ。頑張りなさい」


 コレットさんはそう告げて踵を返した。

 既にユーマくんとクレイルくんの勝ちを信じて、静観を通すようね。


 あたしもレミスさんにお辞儀をしてコレットさんの後を追い、フィールドの端から2人の戦いを見守る事にした。

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次回予告

クレイルは『地帝』のラーガンと対峙。

ラーガンの大地に干渉した魔法が次々とクレイルに襲い掛かる。

しかし、クレイルは全く動じずに挑んでいく。


次回、『闘王』VS『地帝』

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