第182話 全力で挑むからこそ
※オクタグラムエンペラーのパーティー名を八輝帝と改名しました。
それに伴い、173話からの文章を、一部変えています。
前回のあらすじ
準決勝まで勝ち進んだユーマ達は、八輝帝のイグザム達からのちょっかいを受ける。
その度重なる仲間への侮辱に、ユーマの怒りが爆発し、ユーマは直接啖呵を切る。
しかし、自分達の為に怒ったという事を理解していたラティ達に救われ、改めて結束を深める。
準決勝の第1試合は、銀月の翼VS八輝帝Aチームの対決だった。
Aチームは、『光帝』のファルムスさん、『水帝』のレミスさん、『地帝』のラーガンさんの3人で構成されたチームで、イグザム達と違って僕を八輝帝に加入させる事に消極的な人達の集まったチームでもある。
本当はこの武闘大会に参加して僕を加入させる事は彼らも本意ではなかったが、冒険者として参加する以上本気で試合に臨んでいた。
そして今、そのファルムスさん達と僕達はコロシアムのフィールドで立ちあっている。
僕達の現在の装備は、クレイルとコレットはいつも通りメルクリウス、ユグドラシル、アルテミスの神器のみだが、僕とラティはミネルヴァ、アメノハバキリ、ウラノスに加えて、僕は白百合と黒薔薇にジルドラス、エンシェントロッド、ラティもエンシェントロッドと元素の杖を携えた完全装備状態となっている。
対してファルムスさん達は、ファルムスさんが煌びやかな槍を持っている。
レミスさんは槍は槍でも矛先が三つ又になったトライデントと呼ばれる槍だ。
ラーガンさんはドワーフらしく巨大なハンマーだったが、その形状はグレイドニル国王の神器、トールの様な戦槌の様な形ではなく、鍛冶用のハンマーを巨大にした様な形だった。
そしてファルムスさんの左腕に、チームリーダーの証である赤い布が巻かれていた。
「昨日、イグザム達がまた君達に無礼を働いた様だな。重ね重ね、申し訳ない」
昨日の件が既に伝わっている様で、ファルムスさんはすぐに謝罪してきた。
「気にしていないと言えば、嘘になります。彼らは僕を……僕達を怒らせました。だからこそ、僕達はこの準決勝で一切の容赦をしない事に決めました」
「第2試合では、必ずイリスさん達がミスティ達を倒します」
「俺達は約束したんだ。絶対に決勝で戦おうと」
「その為に、私達は本気であなた達を倒すわ」
僕達は一斉に神器を抜いて戦闘態勢になった。
「いいだろう。では、私達も八輝帝の者として、そして冒険者として相手になろう」
ファルムスさん達も構え始め、僕達は何時でも行ける準備が整った。
「それではこれより、銀月の翼対八輝帝Aチームの準決勝第1試合を始めます! それでは……始め!!」
試合開始の合図が出され、遂に準決勝が始まった。
「それじゃ打合せ通り! コレット、僕のマジックアイテムを預ける!」
「あたしのも使って!」
僕とラティは白百合、黒薔薇、ジルドラス、2本のエンシェントロッド、元素の杖を上空に放り投げた。
「任せて!」
コレットがロストマジック、制御魔法を発動させて、自分の周囲にアルテミスを始め、僕達の魔剣や魔槍、杖を漂わせた。
最初に僕達は神器以外のマジックアイテム――正確には僕とラティの武器をコレットに使わせる方法を選んだ。
彼女の制御魔法なら、このマジックアイテムをどんな位置からでも遠隔操作で操って、オールレンジで攻撃する事が出来る。
そして僕は神器以外の装備を外した事でその分重みが無くなって、より身軽に動ける様にもなるから、まさに一石二鳥にも三鳥になる。
そして僕とクレイルは同時に駆け出し、僕はファルムスさんに、クレイルはラーガンさんに突撃した。
「クレイル、相手はSランクの中でも指折りの実力者だ! この人達なら……」
「あれが使えるな! コレット、ラティ、レミスさんはお前達に任せた!」
「了解よ! 油断はしないでね!」
「頑張ってね、ユーマくん!」
2人に見送られ、僕とクレイルはそれぞれファルムスさんとラーガンさんを相手に先制攻撃した。
だがやはり思った以上の実力を持っていたので、2人の槍とハンマーにアメノハバキリとメルクリウスの一撃が受け止められた。
神器であるこの2つの攻撃を受け止められるマジックアイテムは、かなりその数が絞られてくる。
そんなクラスの代物を持っているという点では、確かにこの人達はEXランクを目指しているだけの事はありそうだ。
当初の作戦で行く事に決めた僕とクレイルは、一旦2人から距離を空けた。
「いい一撃だな。確かにこうして直接戦ってみると、イグザム達があれ程に君に固執するのが分かる気がする。それに加えてあの伝説の存在である竜神と適合するだけの魔力、確かに君は何処かで道が違っていれば、私達と一緒にいたのかもしれないな」
「それはまた、笑えない冗談ですね。どんな未来でも、僕があんな傲慢連中と一緒にいるなんて、それは絶対に有り得ませんよ。こう見えて、僕は結構人を見る目には自信があるんですから。仲間を平気で切り捨てる様なパーティーなんて、僕が選ぶ筈もありません!」
「成程……それは確かにそうだな……」
ファルムスさんも苦笑いしながら同意した。
「どっち道、ユーマは俺達の所にはいないという事か。だがそれなら尚の事、俺達を倒して、イグザム達に分からせるしかなさそうだな」
「はなっからそのつもりさ。そもそも、俺達がこれまでの試合で、全ての手の内を晒したとでも思ってんのか?」
「僕達にはとっておきの魔法がある。リーシャすらもまだ未入手の、最強の身体強化が!」
僕とクレイルは全身に魔力を集中させ、あの魔法を発動させた。
「ドラグーンフォース・ライトニング!!」
「フェンリルフォース・フレイム!!」
その瞬間、凄まじい魔力が僕達を包み込み、僕とクレイルは雷と炎を纏ったフォース形態になった。
「何だ!? その姿は!?」
「そんな魔法が使えるなんて、リーシャの情報の中にも無かったぞ!?」
案の定、2人は僕達の突然の強化形態に驚いている。
まあ、周りからすれば、突然竜と狼を模した姿になったのだから、驚くなという方が無茶かもね。
「『闘王』のその腕……これまでの試合でも何度かその腕を使っていたな。単に腕を強化する魔法なのだと思ったが、どうやらそれがその魔法の正体だった様だな!」
「まあな。この魔法は、俺達がダルモウス山脈のダンジョンを攻略していた時に、皆で編み出した、究極の複合強化さ。でもその力が強すぎてな、基本的に高ランクの魔物戦でしか使えねえ、俺とユーマの奥の手となったのさ」
「でも、あなた達はEXランクに最も近いSランクと言われている人達です。それなら、多少の力加減を誤っても命までは取らないと踏んで、この魔法を使いました。それに最初に言いましたよね? 『一切の容赦をしない』と」
そう言いながらアメノハバキリを左手に持ち替え、右手にミネルヴァを抜いて神器の二刀流になった。
「それじゃあ、行きますよ! あなた達が目を付けた、『雷帝』の本当の力を!!」
僕は雷の翼を広げて上空に飛び、ファルムスさんに向かって急降下して攻撃を仕掛けた。
勝負です、ファルムスさん。
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次回予告
ラティとコレットは、『水帝』のレミスと対峙する。
レミスの繰り出す強力な水の魔法に、ラティ達は対抗策を見つけ出せずにいる。
しかし、ラティはある手段を思いつき、レミスに勝負を挑む。
次回、『賢者』&『聖弓』VS『水帝』