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第180話 静寂の空間

前回のあらすじ

武闘大会が開幕され、ユーマ達は初戦の相手の巨人族のチームとの試合に臨む。

しかし、去年以上に力をつけた銀月の翼の敵ではなく、あっという間に勝負がつき幸先のいいスタートを切る。

赤黒の魔竜とマッハストームの面々も無事に勝利し、あの八輝帝も勝ち進む。

 武闘大会の試合は順調に行われ、最終試合のゼノンさん達の試合も、彼らの勝利に終わった。

 バロンさんとゼノンさんの強さに加えて、トロスさんの奇襲、イリスさんとダグリスさんの魔法の前に、相手は全く手も足も出せずに勝負がついた。


「模擬戦の時にも思ったけど、あの人達も更に強くなっているね」


「そうね。ゼノンさんとイリスさんとはアルビラ王国で会ったけど、バロンさん達は初対面だったから実力がよく分からなかったけど、以前この武闘大会で優勝した事のあるパーティーなだけあって、良い腕をしていたわね。それにあの5人、かなり連携が取れていたしね」


「そういえば、ゼノンさんとイリスさんはアルビラ王国で俺達と別れた際に、バロンさん達に会う為にエリアル王国へ行ったんだったな」


「そうか。それから再会した後、ずっと一緒にいたから、あれ程にチームプレイが上手かったのね!」


「この分なら、ゼノンさん達は確実に勝ち進めるだろうね。後は僕達が頑張るだけだ」


 3人も頷き、この後に行われる2回戦に備えた。


――――――――――――――――――――


 バロンさん達が勝った事で1回戦の全試合が終了し、少し休憩を挟んですぐに2回戦が開始した。


 第4試合を勝利した僕達は2回戦の第2試合となり、僕達はフィールドへとやって来た。

 既に相手チームも出てきており、すぐに相手のチーム構成を確認した。


「相手は3人。魔族の男は、目が3つだから三つ目族ね。それにエルフの女性に、あれは獣人の中でも特に珍しい鳥獣系の鷹人族(たかじんぞく)ね」


 コレットの視線の先にいる獣人の男は、背中に鷹の翼を生やした、これまでの獣人とは異なる姿をしていた。


「確か鳥人族っていう、獣人族の中でもとても希少な種族だったよね」


 というか、鳥類も獣人として括られるという事に意外を感じた。

 まあでも実際に鳥獣と「獣」が付いているから、あながち間違いという訳じゃないのかも。

 鳥も獣の1つだという事なのだから。


「ええ。背中の翼に魔力を込める事で、空を飛ぶ事が出来るの。ユーマのライトニングウィングの様な飛行の魔法と違って、魔物でもなく自力で飛べる種族だから、冒険者や騎士ではかなり重宝される種族よ」


 確かに空を飛べるというのはそれだけでかなり空間を支配する権利を得られるからね。

 それに関しては、その飛翔魔法が使える僕がよく分かっている。


 その他にも空を飛べる関連のマジックアイテムは存在するけど、それらはダンジョンでも滅多に手に入らず、商会にあってもかなりの値がする。


 だからこそ、あの鷹人族の人の様な自力で飛行出来る人材は、どんな所でも重宝されるという事だ。


「となると、あの鳥人は確実に空から仕掛けて来るぞ。俺やユーマなら空中戦が出来るけど、どっちがやる?」


「あのエルフは両手に短剣を持っているから、接近戦に持ち込んでくるのは明確だ。ラティとコレットは武器の相性から接近戦に持ち込まれた場合を考えて、クレイルが相手をした方が良さそうだ。だから鳥人の相手は僕がする」


「分かった。なら、コレット達はあの三つ目族の方だな」


「任せて」


「了解よ」


 作戦会議を終えて、僕達は戦闘態勢に入った。


「それではこれより、銀月の翼と静寂の支配者の試合を始めます! では……始め!!」


 試合開始と同時に、背中に雷の魔力を集中させた。


「ライトニングウィング!!」


 出現させた雷の竜の翼を広げ、僕は鳥人に向かって飛び出した。


「何!? 『雷帝』って空も飛べたのか!?」


 相手は僕の出方に驚いたが、自分も翼を広げて空中に逃げた。


 そういえば、僕がこうして公の場で飛翔魔法を使ったのは今回が初めてだったな。

 ついでに言えば、ゼノンさん達にも言う機会がなかったから、実質秘密にしていた様な物だ。


 そう思いながら、僕は空歩の靴で方向転換し、アメノハバキリで峰打ちを仕掛けた。


「させるか!」


 だがその攻撃を相手は身を捩って躱し、その鳥人は僕と距離を空けた。


 その際に皆の方を見ると、ラティとコレットが戦っていた三つ目族の男は、2人を相手に距離を空けながら魔法で牽制して何かを待っていた。

 クレイルの方も、エルフの女性はクレイルに決定打となる攻撃はせず、やはり何かを待っている様に戦っていた。


 だが鳥人が動いたのと同時に2人も動き出し、3人の位置が丁度僕達を囲んだ三角形になった。


「「「サイレントディメンジョン!!」」」


 3人が同時に魔法名を唱えたのと同時に、3人を結ぶかのように巨大な魔力の空間が形成され、僕達はその中に閉じ込められる様に収まった。


 一見どんな効果なのか分からなかったが、その効果に気付いたのはこの直後だった。


「……………………」


 僕の側に寄って来たラティが何かを言おうとしたら、その声が聞こえなかった。


「……………………!?」


 僕も慌てて声を発しようとしたが、僕も声が出せなかった。


 その時、僕の正面にいたクレイルが突然吹き飛された。

 しかも、その際攻撃が当たる音も、クレイルが吹き飛ばされた時の音も一切しなかった。


 その後も僕達は様々な所から攻撃を受け、何とか避けても音がない分寸前まで分からないから、かなり神経を使った。

 まるで全ての音が消されている様だ。


 そういえば、この状態になる前に相手の3人が「サイレントディメンジョン」という魔法名を唱えていた。

 それから察するに、これは3人が張った魔法の効果かもしれない。


 確か、固有魔法の中に音を操る音波魔法というのがあった。

 そしてこのサイレントディメンジョンは、もしかしたら超音波を用いた魔法なのかもしれない。


 超音波は人間の耳には聞き取れない振動数をもつ弾性振動波だ。

 耳には聞こえない音な為、回避する事はまず不可能。

 しかもその音波は共鳴を起こせば、何倍にも増幅する。

 あの3人はその超音波を同時に発する事で、その相乗効果で威力を増幅させて無音の空間を形成したんだ。


 同時にある事を思い出した。

 基本的にチーム名やパーティー名というのは、基本的に自分達の特徴を表した名前である事が多い。

 暁の大地や夜明けの風の様な例外もあるけど、基本的にはパーティー名には必ず意味の様な物が存在している。


 僕達銀月の翼なら結成時の僕とラティ、アリアとクルスの特徴を合わせた、

 赤黒の魔竜ならゼノンさんとイリスさんの種族や髪の色など、

 マッハストームなら、リーダーのバロンさんの戦い方、

 そして八輝帝ならメンバーの異名とその人数の理想、


 そんな感じに名前でその特徴がわかりやすいという点から、彼らの静寂の支配者という名前を思い出した。

 「静寂」というのはこの超音波による無音の空間で、「支配者」が彼ら3人の事を意味していたんだ。


 こんな事なら、もっと早く奴らの手の内に気付くべきだった。

 まあ、そんな事を言っていても仕方ないよね。


 でもこのままだと相手のペースになって、僕達も言葉を交わす事も出来ず、攻撃の音にも気づけない。

 早く何とかしないと。


 こうしている間にも、相手は魔法や接近戦で僕達を1ヵ所に追い込んでいた。

 皆は何とかしようとしているが、音が聞こえない以上どうしても対処が遅れてしまう。


 その時、僕はある事を思いついた。

 この空間は相手が魔法で作った物で、所謂魔力のドームの中だ。

 魔力に対する攻撃なら、あれが使えるかもしれない。


 僕はアメノハバキリを鞘に戻し、背中のミネルヴァを抜いた。


「……………………?」


 クレイルが何かを言っていたが、今なら大体の事は予想出来る。

 でも、皆なら今僕がやろうとしている事が分かる筈だ。


「……………………!!」


 ライトニングウィングを発動させ、僕はこの空間の中心に向かって飛翔した。

 相手は僕が何をしようとしているのかは分かっていない様だが、それでもと鳥人が僕に向かって突撃してきた。

 その動きを探知魔法で探り、僕はその攻撃の軌道を予測した。


「………………!?」


 カウンターで仕掛けた回し蹴りを喰らい、鳥人は地上へと墜落した。

 続いて三つ目族の男が魔法を放ち、エルフの女性が短剣を投擲したが、ミネルヴァを振るって魔法を霧散し、短剣を真っ二つに斬って防いだ。


 そしてこの隙にミネルヴァに魔力を込め、僕を軸に360度に振り抜いて巨大な魔力の斬撃を放ち、魔力のドームを一瞬にして霧散させた。


「ああ、ああ……よし! 声が聞こえる!」


 自分の声で確認し、超音波の空間が消えた事がはっきりとした。


「馬鹿な!? 俺達のサイレントディメンジョンが、こんなにあっさりだと!?」


 相手は自分達の切り札の魔法が破られた事に驚愕していた。


 ミネルヴァの魔力を斬る能力を使えば、この無音の空間を破れると踏んでやってみたら、効果は絶大だった。


「これで元の環境下で戦える! 一気に決めるよ!」


「でかしたぜ、ユーマ!」


 その後僕達はミネルヴァで鳥人の魔力炉を斬って一時的な魔力欠乏症に、クレイルのメルクリウスによる打撃でエルフの女性を倒し、ラティとコレットの同時攻撃で三つ目族の男を仕留め、一瞬で勝負を決めた。


「そこまで! 勝者、銀月の翼!!」


 無事に2回戦を突破し、僕達は武闘大会の1日目を無事に戦い抜いた。


 そしてゼノンさん達も無事に3回戦へと駒を進め、あの八輝帝の2チームもまた勝ち進んだのだった。

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※お知らせ

この度、皆様から魔物のアイディアを募集しようと思います。

魔物の名前、ランク、種類、特徴、戦闘スタイルなどを感想や活動報告のコメントなどで送ってもらえれば、こちらで採用するかどうかを判断します。

採用された魔物は、後のストーリーに手出す予定ですので、是非アイディアを送ってみてください。

待っています。


次回予告

順調に勝ち進むユーマ達は、準決勝まで駒を進める。

同時に八輝帝のA、Bチームも勝ち上がり、再びイグザム達がちょっかいを出す。

その度重なる彼らの態度に、ユーマの真の怒りが爆発する。


次回、ブチギレた『雷帝』

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