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第172話 再びヴォルスガ王国へ

前回のあらすじ

騎士団の強化を終えたユーマ達は、グレイドニル国王から依頼達成の手続きをして貰う。

その後ヴォルスガ王国で武闘大会が開かれる事を知り、再び出場するべく、一旦目にレウス大陸へと転移する。

 転移した先はヴォルスガ王国を目指す途中の場所で、そこからアリアに乗って王都を目指した。


 やがて城壁が見えて、アリアから降りて近づき、僕達はギルドカードを見せて無事に通れた。


「久し振りのヴォルスガ王国だ」


「まだ1年しか経っていないのに、随分と昔の出来事の様に思えるわね」


「あれから俺達、色んな物事を見て来たからな。内容が濃すぎてそう錯覚するのかもな」


 確かに、この1年間で僕達が見たり経験した出来事は、かなり濃密な内容ばかりだった。


 エリアル王国ではスタンピード、


 アルビラ王国では屑王子の陰謀による事件、


 ロマージュ共和国では2つのダンジョンの制覇、


 オベリスク王国では……他のよりはスケールが小さいと思うけど、国王に戦いを申し込まれたり、ヒュドラと戦ったり、騎士団を強化したり……まあ、それなりの事はあったかな……。


 とにかく、僕達はこの1年の出来事を思い出しながら、武闘大会に出場するべくコロシアムを訪れた。


――――――――――――――――――――


 コロシアムを訪れると、そこには多くの人々が殺到していた。

 だが僕らの姿を見ると、たちまち僕達に注目し始めた。


「あれは、銀月の翼だ。去年の優勝者の『雷帝』に『賢者』、準優勝者の『闘王』が加入しているぞ」


「やっぱりあいつらも出るのか。この大会はかなり盛り上がりそうだな」


「あいつらに勝てれば、俺達も念願のSランクになれるかもしれない! 絶対にやってやるぞ!」


「今年からは『聖弓』もいるんだ。その分より強くなってそうだ」


 皆僕とラティ、クレイルに意識が行き、僕達がまた優勝すんじゃないかと盛り上がっている。


「ユーマくん、あたし達、なんだか注目されてるわね」


「まあ、去年の優勝チームに、単身参加して準優勝したクレイルがいるんだ。その実力者が集まればそう思うのは無理ないかな」


 僕達は周りの視線を感じながらも受付に向かい、参加受付を担当している人に声をかけた。


「あの、武闘大会に参加を希望したいのですが」


「はい。大会参加ですね。では、こちらの用紙に参加者の名前とチーム名をご記入ください」


 これは去年もやった事があるので、僕は問題なく記入する事が出来た。


 唯一違うのは、クレイルとコレットがいる事くらいで、僕達はチーム名を前回と同様に銀月の翼にして、僕をチームリーダーとして登録した。


「これでお願いします」


 そして書き終えた用紙を受付嬢に渡し、受付嬢は4つのタグを取り出した。


「こちらが参加者を証明するタグでございます。それから大会に関するルール説明が記された説明書をお渡ししますので、どうぞお役に立ててください」


 説明書に関しては前回の時に呼んだが、今回はコレットもいる事だし、彼女に説明する為にも必要と判断した僕は説明書をタグと共に受け取った。


「ではこれで銀月の翼の登録が完了しました。大会は2週間後に開催ですので、間違いのないようにお気をつけてください」


 無事に登録を済ませた僕達は、宿を探す事にした。


「ねえユーマくん、宿ならあそこにしない?」


「あそこ?」


「ほら、前回あたし達を泊めてくれたあの――」


 ラティの指摘に、僕はあの宿を思い出した。


「セイナさんが経営している月の狐だね!」


「そう! あそこならあたし達の事を知っているし、去年みたいに宿屋を探し回る苦労をする事もないと思うわ!」


 確かに前回は宿屋を探す際にどの宿屋もいっぱいで困ったからな。

 あの時は偶々迷子になっていた娘のスーちゃんを保護した事で、月の狐を紹介されたから、1度知っている宿屋なら多少の融通も聞くかもしれない」


「そうだね。物は試しに、行ってみよう」


 僕達は記憶を頼りに月の狐を探し、暫くして見つける事が出来た。


「ここだ」


『あの時とあまり変わっていませんね』


 月の狐の全体的な感じを確認して、僕達は中へと入った。


「いらっしゃいませ……あら! あなた達は!」


 中に入ると、早速おかみの狐人族の獣人、セイナさんの姿があった。


「お久し振りです、セイナさん」


「本当にお久し振りです。皆様の事は、私の耳にも噂が届いています。まさかあの時の子供達が、伝説の魔物達と適合した英雄とまで言われる様になって、その方達を泊めた宿の女将として、私も誇りに思っています」


 セイナさんも僕達の事を噂で聞いて、とても喜んでいた。


「それで、今回もこの宿に泊まりたいんですが」


「そうですか。皆さんなら大歓迎ですよ。見た所、初めて見る方もいらっしゃる様ですが」


 前回のこの宿に泊まっていたのは、僕とラティに、あの頃はまだ銀月の翼に加入していなかったクレイルだけで、この国を出た後に仲間になったコレットはセイナさんとは初対面だった。


「初めまして。コレット・セルジリオンです。銀月の翼に所属しているハイエルフです。こっちは従魔のアインです」


「初めまして。ティターニアのアインよ。よろしくね」


「初めまして。この宿屋、月の狐の女将をしています、セイナと申します。ユーマさんとラティさんには、以前娘を助けてくれた事がありまして」


 少ししてコレットとセイナさんの自己紹介が済み、僕達はこの宿に部屋が空いている事を知り、2人部屋を2つ1ヶ月分取った。


「それではお部屋へご案内します。スー、ちょっといいかしら?」


 セイナさんが呼ぶと、奥から1体の魔物に跨ったスーちゃんが出て来た。


「どうしたの、ママ? あっ! お兄ちゃん! お姉ちゃん!」


 スーちゃんも僕達の事を覚えていたらしく、僕とラティを見て嬉しそうな表情になった。


「久し振り、スーちゃん。元気そうだね」


「うん! スーは元気だよ!」


 そのスーちゃんの許に、アリアもミニサイズになって飛んで近づいた。


『お久し振りです、スーさん。私もまた会えて嬉しです』


 ミニサイズのアリアを見て、スーちゃんは嬉しそうに抱き締めた。


「アリアちゃん、久し振りだね! 本当に可愛いね!」


『ありがとうございます』


「スーちゃん、その魔物はもしかして……」


 ラティがスーちゃんが跨っている魔物を指すと、スーちゃんは自慢げに紹介した。


「この子はスーの従魔。ウールキャットのモココちゃんだよ」


 スーちゃんが跨っている魔物は、全身が羊の様なモコモコした毛皮に覆われた猫の魔物だった。


 そのウールキャットに、アインが興味深そうに近づいた。


「へえぇ。あなたウールキャットに適合していたのね。とても可愛いじゃない」


 そしてそのアインを見たスーちゃんは、アインを掌に乗せた。


「ふわぁああ! 妖精さんだ! 可愛い!」


「よろしくね。あたしはアイン。あそこのコレットの従魔のティターニアよ」


「アインちゃん、スーはスーだよ。よろしくね!」


「こちらこそよろしく」


 スーちゃんはアインと早速仲良くなれた様だ。


「さあ、スー。この人達は2階の部屋に案内してあげて」


「はい、ママ。皆さん、こっちへどうぞ。モココちゃん、アインちゃんを乗せて行こう」


「ミェエエエエエエ」


 モココちゃんと呼ばれたウールキャットはまるで羊と猫を合わせたような鳴き声を上げて、背中にスーちゃんとアインを乗せたまま僕達を部屋へと案内してくれた。


 後からセイナさんに聞いたが、スーちゃんがあのウールキャットを召喚したのがつい最近の事だが、それからスーちゃんは基本的にモココちゃんの背に乗るようになり、その姿は近所では可愛いと評判になっているそうだ。

 確かに小さい女の子があんなにモフモフした生き物に乗っている姿を見たら、もう可愛いの一言しか出なくなるな。


 そう納得しながら、僕達はスーちゃんに部屋へ案内して貰った。


 その際、スーちゃんはアインを連れて行こうとしたが、寸前でアインがコレットの方へ戻っていき、スーちゃんはちょっとしょんぼりしながらロビーへと戻っていった。


 その後僕達は宿を出て、冒険者ギルドを目指した。


「ギルドに行けば、ゼノンさん達に会えるかもしれない」


「同じ冒険者だから、ギルドの方が会える確率もありそうだからな」


「イリスさんにも会いたいけど、バロンさん達にも久し振りに会いたいわね」


「ユーマ達がアライアンスを結んだもう1つのパーティー、会えたら私も会いたいわね」


 僕達はそんな期待を胸にギルドへ赴き、扉を開けた。

評価のやり方が新しくなりました。

まだ未評価の方は、是非お願いします。

また、既に評価された方も、この機会に評価し直してみてはどうでしょうか?


魔物情報


ウールキャット

全身が羊の様な綿毛に覆われた、Dランクの獣種の魔物。

戦闘力は高くはないが、その愛くるしい外見から、主に女性が従魔にしたい魔物ランキングで上位に入っている。

綿毛は刈り取っても2~3日すればまた元に生える。

討伐証明部位は尻尾。


次回予告

ギルドでユーマ達は、久し振りにアライアンス組と再会する。

積もる話もあり、歓談に盛り上がるが、ある人物が現れた。

どうやらユーマに用件がある様だが……。


次回、スカウトされた『雷帝』

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