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第167話 魔力栓症

前回のあらすじ

商人からの素材採取の指名依頼を聞かされ、ユーマ達はその詳細を聞く。

その採取場所にヒュドラが現れ、自分達に頼る形で出された物だと知り、ユーマ達は依頼承諾の手続きをする為に依頼人の許に向かう。

 ギルドを出て暫く王都を歩き、僕達はテルミニア商会へとやって来た。

 地図には会頭のマグルスさんの屋敷の場所も記されていたが、今の時間なら紹介にいると教えられたので、商会へと来た。


 警備は冒険者や騎士を引退した人達だったが、単純な強盗程度なら十分対処できる程の強さを持った人達だった。

 中には現役の冒険者もいたが、それらはギルドの依頼でやって来ていた期間付きの雇用者だった。


 彼らに僕達の名前を明かすと、すぐに商会のスタッフ専用の場へと案内してくれて、僕達は会頭の部屋へとやって来た。


 扉を開けると、そこには巨人族ではなく人族の男性の姿があった。


「銀月の翼の方達ですね? 私はマグルス・テルミニア。このテルミニア商会の会頭を務めている者です」


 マグルスと名乗った男性は、僕達が入って来ると微笑みながら歓迎した。


「巨人族の国ですけど、人族が会頭をしている商会なんですね」


 ラティの言葉に、彼は笑いながら答えた。


「最初の方は、皆そんな風に思いますね。この商会は、私で4代目でして、初代会頭の曾祖父がこの国で生まれ育った人族だったのです。それから祖父、父、私と会頭を受け継ぎ、この商会を繁栄させてきたのです」


 マグルスさんの商会は世襲制の様で、代々この国で人族の商会としてやって来たそうだ。


 いかに巨人族の国と言えど、こうして他の種族が何世代にもわたって暮らしている所を見て、種族の壁を越えた共存に、密かに感動を覚えていた。


「さて、私の話はここまでにして、そろそろ依頼の詳細についてお話ししましょう。どうぞ、そこにおかけになってください」


 僕達はソファに座り、マグルスさんが向かい合う形で詳細が語られた。


「まず最初にですが、この指名依頼の内容は、ある素材の採取依頼です。実は、私の商会を贔屓にしてくださっている巨人族の伯爵様の奥様が病に倒れ、病名が『魔力栓症』という物でした」


 魔力栓症は、魔力の体内の循環が出来なくなる原因不明の病気だ。

 このアスタリスクに住む人間は、皆体内に魔力を宿していて、それは魔力炉という目には見えない魔力の中心となる器官を中心に心臓と血液の様に体内中を循環している。


 しかし、その魔力の流れが不安定になり、一部の循環がストップしてそこから魔力が他の所に流れなくなり、血液で言う血栓による症状に近い状態になる。

 魔力が一定の部分で止まって溜まり続け、最後は魔力が暴発して魔力障害を引き起こしてしまい、適切な治療を受けないと後に後遺症が残って、魔法の行使や身体が思う様に動かせなくなる。


「確か、魔力栓症には、特殊な薬草が必要でしたよね」


 僕はお母さんの授業の一環でこの病気の治療法を知っていて、その治療法に使われている薬草を尋ねた。


「そうです。魔力栓症には、『魔流草』と呼ばれる魔力の循環を補助する薬草を使った薬が治療法となります。魔流草は主に洞窟などにある発光のコケから発する光を浴びて成長する薬草で、その薬草が取れる洞窟がこの王都から離れた所になるのですが……」


「その洞窟に、問題のヒュドラが発生したんですね?」


 マグルスさんは無言で頷いた。


「はい。それは唐突でした。その洞窟に魔流草があるというのは、この王都にいる者なら誰でも知っています。ですが1週間前、その伯爵様から魔流草で薬を調合して欲しいと頼まれたのですが、タイミング悪く在庫が切らして、私はすぐにギルドに採取依頼を出しました。いつもなら2日もあれば届くのですが、その後クエスト失敗という結果を聞かされ、私は訳を聞きました。その結果がヒュドラが現れて採取どころではなくなったという内容だったのです。ギルドも真偽を確かめる為に調査隊を派遣し、結果本当の事であるという事が判明し、現在では並の冒険者では達成が困難な依頼になってしまったのです」


 それで魔流草が取れなくなり、伯爵の奥さんがどんどん衰弱して困っていた処に、偶然僕達が王都に来ているという噂を聞きつけて藁にも縋る思いで指名依頼を出したのか。


 僕は皆と顔を合わせると、全員僕と同じ気持ちの様だった。


「話は分かりました。マグルスさん、その指名依頼、僕達で良ければ喜んでお受けしましょう」


 僕が受けると言った瞬間、マグルスさんはとても嬉しい表情になった。


「本当ですか! ありがとうございます!」


「僕達を頼ってくれるという事は、それだけ僕達を信頼してくれているという事ですからね」


「例え初めて見る相手でも、そんなに信頼してくれるなら、俺達も応えるまでさ」


「嘘は言っている様には見えないしね。それに、病気の為となれば一刻も早く魔流草を採って来ないと」


「あたし達に任せてください!」


 マグルスさんは深く頭を下げてお礼を言い、僕達はその魔流草が取れる洞窟の場所を教えて貰った。


「この洞窟は魔流草が獲れる場所だけ大きな空間があります。そこでしたら、『雷帝』様の従魔の竜神様も思う存分戦えると思います」


 いい事を教えて貰い、僕達は早速商会を後にして、王都を出た後アリアに乗ってそのヒュドラがいるという洞窟を目指した。

次回予告

ヒュドラのいる洞窟にやって来たユーマ達は、薬草の採取をコレットに任せて自分達はヒュドラと対峙する。

ヒュドラの猛毒の能力はとても強力で、恐ろしい能力もあった。


次回、特殊属性

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