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第163話 神槌トール

※感想やレビューなどで違和感があるという内容のがあった為、その違和感解消の為に主人公の信者という設定を無くしました。

 それに伴い、感想欄とレビュー欄のその報告を19時頃に削除させて頂きます。

 送ってくれた方々には勝手ではございますが、ご了承お願いします。


前回のあらすじ

グレイドニル国王と対面したユーマは、彼から模擬戦を申し込まれる。

家臣たちは国王を倒すように頼み、ユーマの巻き込まれ体質に巻き込まれまいと、ラティ達は無情にもユーマを置いて退避してしまう。

「ではまずは、儂から行くぞ!!」


 最初に動いたのはグレイドニル国王だった。


 彼は巨大なハンマーの柄を両手で持ち、大きく振りかぶって勢いよく振り下ろしてきた。


「ちょっ……!?」


 僕は身体強化でバックステップして、その一撃を回避する事が出来た。

 ……だが、そのハンマーが振り下ろされた箇所は大きく粉砕されたかの様に陥没していた。


「……って! 国王陛下! 今の明らかに殺すつもりで来たでしょう!?」


 僕が思わず指摘すると、グレイドニル国王は開き直ったかの様に答えた。


「何を言っておる! 例え模擬戦でも戦士と戦士が向き合えば、それは常に真剣勝負! 常に殺す殺される勢いでやらねば、相手の実力を見抜く事など出来ぬではないか!」


 確かに言ってる事は筋が通ってるけど、これは流石にやり過ぎなのでは……。


「それに『雷帝』殿だって、相手が手を抜いている状態で勝負しては、勝っても勝った気分にはならぬではないか。勝負というのはそういう物だ。儂は巨人族故に細かい事を考える事は向いていないが、戦いを通して相手と分かり合えると信じている。だからこそ、お主も本気でかかって来い! そして儂と語り合おうではないか!」


 ……確かに言われてみればその通りだな。

 余程心が捻じ曲がった奴でない限り、真剣勝負に手を抜かれたら堪った物じゃないよね。


「分かりました。では、僕も思いっきり行かせて貰います!」


 僕は白百合と黒薔薇を構え、全身に魔力を流した。


「ライトニングエンチャント!!」


 雷の複合強化を発動させ、グレイドニル国王に向かって駆けだした。


「それが噂の雷属性の身体強化か! 面白い! では改めて行くぞ!」


 グレイドニル国王はハンマーを横に振って迎撃してきたが、その時分に向かって来るハンマーの横の面を足場にしてジャンプして上を取り、黒薔薇の腹の部分を向けて振り下ろした。

 いくら真剣勝負でも、これは模擬戦。

 命を奪わないようにしないといけない為、僕は黒薔薇の腹の部分で殴る事にした。


「甘いぞ!!」


 だがグレイドニル国王はハンマーを上に振り上げ、僕にその面を向けてきた。


「くっ!?」


 とっさに白百合と黒薔薇を交差させて防いだが、斧が激突した瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、僕は魔剣を手放して吹き飛ばされてしまった。


 同時に、今の衝撃には覚えがあった。

 今まで何度も自分達が発生させてきた、()()衝撃に……。


「今の衝撃……まさかそのハンマーは!?」


 僕の反応を見て国王はにやりと笑い、右手に持ったハンマーを見せつけた。


「どうだ、驚いたか? 儂の愛用の武具、神槌(しんづち)トールの威力は」


 その言葉は僕だけでなく、端で観戦していたラティ達までも驚愕させた。


 なんとこの国王は神器の1つを所持していたのだ。


「神槌……トール……」


 これまで僕達が見てきた神器は、僕の神剣ミネルヴァと神刀アメノハバキリ、ラティの神杖ウラノス、クレイルの神甲メルクリウス、コレットの神弓ユグドラシルと神弩アルテミスと、僕達の神器だけだったから、他の人が使う神器を見るのはこれが初めてだ。


「まさか……こんな所で神器を見る事になるなんて……」


「ほう。神器を知っておったのか。なら話が速い。このトールは、我が王家に代々伝わる物で、この神器を扱う物こそがこのオベリスク王国の王になる資格を得るのだ。儂は先代王の3男に生まれたが、このトールに認められた事で兄者達を超えて王になれたのだ」


 どうやらこの国の王族はあの神器に所有者として認められるか否かで、王位継承権が与えられる様だな。

 つまりあの人がまだ王子だった頃、兄弟の中で最も神槌トールに認められた事で王太子になり、後に国王になったのか。


 とにかく、あの人が神器使いというのは想定外だったけど、それなら僕も遠慮する事なくこれを使う事が出来そうだ。


 僕は弾かれて近くに落ちた白百合と黒薔薇を鞘に納めて、代わりにアメノハバキリを抜いた。


「む? 武器を替えただと?」


「国王陛下、ここからは僕の愛刀、神刀アメノハバキリが相手です!」


 僕のアメノハバキリを見て、グレイドニル国王も驚愕していた。


「何と……お主も神器を所持していたのか……」


 最初は驚愕していたけど、国王は徐々に高笑いを上げ始めた。


「ククク……ハァハハハハハハ!! これは何と喜ばしい事だ! まさかこうして神器同士の戦いが出来るとはな! よかろう。『雷帝』ユーマ殿、儂も全力で相手になろう!」


 その時、国王のトールの頭の部分が青白い稲妻に包まれた。


「これこそがこの神槌トールの能力(ちから)だ! 雷の力を纏う事で破壊力を増加させる。それだけだかその破壊力はオリハルコンをも粉々に砕く威力を発揮出来る! これこそが我が神器、トールの能力よ!」


 成程、トールの能力は雷のエネルギーを加えての爆発的な破壊力か。

 確かにシンプルだが、ハンマーの打撃力を考えればこれ以上はないくらいの相性の良さかもしれない。


 他にも、巨人族は8属性よりも無属性魔法の方を得意としているから、身体強化と合わせればその破壊力もより大きくなる。


 それに、ああしてトールの能力を扱えている辺り、認められているだけあってあの人は神器を見事に従えている様だ。


 ここからはトールのパワーにより警戒しないといけないな。


「なら僕も。フレイムキャンサーの能力解放!」


 アメノハバキリに蓄えれらている魔物の中から、Bランクのフレイムキャンサーの能力を選択し、アメノハバキリの力を発揮した。

 すると、アメノハバキリの刀身が赤い炎に包まれ、燃え盛る刀へと変化した。


「行きます! シュベルトフレイム!!」


 炎の刀身を構えて突撃し、グレイドニル国王へと距離を詰め、アメノハバキリを一閃した。


「甘いわ!!」


 国王も即座に反応し、雷を纏ったトールを振り回し、2つの神器が激突した。


 その瞬間、雷鳴が轟く音が響き、それに動揺した事でトールが振り抜かれて、僕は大きく吹き飛ばされてしまった。


 雷鳴が轟くなんて、空気が音速で膨張した証拠だ。

 それ程の光熱を帯びた雷を纏っているって事だ。


「僕の魔法の雷とはエネルギーのスケールが違いすぎる……あのハンマーは、今は雷その物の破壊力を持っているんだ……」


 僕の場合は雷魔法に特化している分、雷系の攻撃に対してはある程度の耐性があるけど、神器の雷ともなれば話が変わってくる。

 そこにトールの元々のでの破壊力が加わると、まともに喰らえばこの魔竜のローブでも衝撃を受けて助かるかどうかわからない。


 そしてあのパワー、魔力の耐性が無ければあのベヒモスにも致命傷を与えられるんじゃないかと言いたくなる程のパワーがある。


「でもあの雷が魔力による物なら、まだ僕には手がある」


 僕は一旦複合強化を解除し、アメノハバキリを左手に持ち替え、右腕に雷の魔力を注ぎ込んだ。


「ドラグーンアーム・ライトニング」


 そして僕の右腕がドラグーンフォースの状態になり、雷の魔力によって強化された。


 ドラグーンアーム、先日の魔力の細かい制御の訓練で使える様になった、ドラグーンフォースの派生形態の魔法だ。

 片腕か両腕のみにフォースの魔力を注ぐ事によって、部分的に強化させる事が出来る。

 また、アイディアの原型は竜化魔法で腕を竜化させたゼノンさんをモデルにさせて貰ったりする。


 そしてその右腕で背中のミネルヴァを抜いて、フォースを使う事なく神器の二刀流となった。

 神器の二刀流をやるにはフォースが必要になるが、このドラグーンアームで腕のみを強化すれば、僕は全身をフォースで強化する事なく神器の二刀流をやる事が出来る。


「何と……右腕が竜の形をした雷に……さながら竜人族の様だ。そしてその大剣、もしやそれも……」


 グレイドニル国王は一目でミネルヴァが何なのかを見抜いた様だ。


「そうです。この神剣ミネルヴァも神器の1つです。ここからは、この神器の二刀流で行かせて貰います」


 僕はミネルヴァとアメノハバキリを構え、瞬時に距離を詰めて斬りかかったが、彼もそれに反応してトールの雷の面で迎え撃った。


「馬鹿め、忘れたか! このトールは今は雷その物! これに触れた瞬間、お前は感電してしまうわ!」


 だが僕は恐れる事なく、ミネルヴァでトールの一撃を受け止めた。

 その結果、ミネルヴァの能力によってトールの雷が僕に届く事なく、そのままアメノハバキリを加えた事で弾き返す事に成功した。


「何っ……!? 馬鹿な!? 儂のトールを受け止めて無事だと!? 一体、何をした!?」


「これこそがミネルヴァの魔力を斬る能力ですよ。このミネルヴァは魔力を斬る事によって、相手の身体を傷つけずに、魔力炉を斬る事で相手を一時的に魔力の欠乏症にさせて戦闘力を奪う事が出来ます。そして今はトールに帯びた雷の魔力を斬った事により、魔力が霧散して僕に届かなかったんです」


 僕が説明すると、グレイドニル国王は驚愕していた。


「何と……魔力のみを斬れるとは……これは儂には相性の悪い神器だな。だがそれでこそ戦い甲斐があるという物だ! 『雷帝』殿! こうなったら勝敗が付くまでとことんやりあおうぞ!」


 国王はトールに再び雷を纏わせて僕に突撃してきた。


「分かりました。僕も付き合いますよ!」


 僕は右腕のミネルヴァを中心にトールの攻撃を受け流し、アメノハバキリを峰打ちで攻撃したが、それをトールの柄で弾かれ、3つの神器による鍔迫り合いにも発展したが、次第に僕の方が優勢になって来た。

 国王がミネルヴァの能力を警戒して、攻めあぐね始めたからだ。


 僕はその隙を狙ってアメノハバキリを上手く柄の部分を狙って振り上げ、彼のバランスを崩して隙を作る事に成功した。


「しまったっ……!?」


「貰いました!」


 その瞬間、ミネルヴァを振り下ろして胴体を袈裟斬りにした。


 身体こそは傷ついていないが、魔力炉を斬られた事により、国王は魔力の欠乏症になって崩れ落ちた。


「ぐっ……! み……見事だ……『雷帝』殿……! この勝負……お主の勝ちだ……」


 国王はトールを手放して倒れ伏し、この勝負は僕の勝ちで終わった。


「勝った……勝ったぞ……!」


 僕は初めて巨人族に勝てたという事実に喜び、ラティ達も駆け寄って僕を称えた。

 宰相や大臣達も僕が国王に勝った事を喜び、とてもはしゃいでいた。


 別に喜ぶのは良いけど、皆が僕を見捨てたのは忘れていないからね……。

魔物情報


フレイムキャンサー

炎属性のカニの魔物。Bランク。

各関節の間から炎を吹き出す能力を持っていて、その炎を鋏や脚、身体に纏う事で攻撃力や防御力の強化をする。

口からも泡ではなく火の粉を吹き出す事が出来、それで相手を威嚇したり、撹乱する。

討伐証明部位は右の鋏。


次回予告

模擬戦を終えたユーマはグレイドニル国王と今後を話し合い、結果国王はある提案をする。

そして、ユーマは自分を見捨てたラティ達にお仕置きを実行する。


次回、第4の後ろ盾

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