第161話 オベリスク王国の王都
前回のあらすじ
魔力制御の訓練を行い、ユーマ達は三つ巴の模擬戦を行う。
結果3人ともこれまで以上に細かい制御が出来ているとコレットに評価され、無事に訓練を終える。
力の制御の訓練を終えてから2日が経ち、僕達はオベリスク王国の王都へと到着した。
巨人族が住む国の王都なだけあり、城壁の高さもこれまでのと比べると遥かに大きく、門も相応に巨大だった。
まだそれなりの距離があるけど、その巨大さから遠近感が狂いそうな程で、ここからだとこれまでの城壁の大きさと錯覚して見えそうだった。
途中アリアから降りて馬車に乗り込み、標準サイズになったアリアや元のサイズになったクルス、亜空間から出たレクスを伴って城壁に近づくと、その城壁の高さを目の当たりにした。
「うわぁ……大きいわねぇ……」
ラティはその巨大な城壁を見上げて、そう呟いた。
確かにそう言いたくなるな。
間近で見るとまるで超高層ビルを見上げている様な感覚だから。
ふと視点を前に戻すと、その巨大な門とそれを護る巨人族の門番がいたが、ギルドカードを見せて身分を明かし、門番に驚かれこそはしたけど問題なく王都に入る事が出来た。
門を潜り入ると、そこには壮観な景色が広がっていた。
この国の人口の中心を収める巨人族を筆頭に、人族などの他種族の冒険者や商人があちこちで素材の買取や商売などをして賑わっていたのだ。
オベリスク王国は大型の魔物の肉や素材が各都市に流通されていて、年中冒険者や商人などで賑わっている国だ。
それが王都となればその流通されている物資の量なども他の街より多いと思うから、こんなにも賑わっているのは納得出来る。
「まずはギルドに行って、魔物の素材や魔石の換金をしよう」
まずは冒険者ギルドを訪れて、魔物の素材の換金をする事にした。
ギルドに到着して中に入ると、奥にある受付カウンターは2種類に分かれていた。
1つ目は巨人族に対応出来る様にした、巨人族の受付嬢がいるカウンターで、2つ目がそれ以外の種族を対象にした、他の種族の受付嬢がいるカウンターだ。
尤も、巨人族の場合はどちらでも対応が可能だが、他の種族が使うには巨人族のカウンターは高すぎる為、2種類のカウンターを設けている様だ。
休憩するのも兼ねて、ラティとクレイルに席を取って来る様に頼み、僕とコレットはカウンターに行き、エルフの受付嬢に声をかけた。
このパーティー内で金銭管理を担っているのが僕とコレットだから、金銭面の類の仕事は僕達が担当している。
「すみません、魔物の素材の買取を頼みたいのですが」
「はい。本日は当ギルドをご利用くださり、誠にありがとうございます。では、担当のスタッフをお呼びしますので、少々お待ちください」
暫くして、素材を鑑定するギルドスタッフが来て、コレットをクレイル達の所に向かわせて僕はその人について行った。
ギルドの中を進むと、1つの大きな部屋へとやって来た。
かなりの広さがあり、全体的にベヒモスやグランドサウルスといった巨大な魔物の死体が収まる程だった。
僕の反応が顔に出ていたのか、スタッフに男性が教えてくれた。
「この国のギルドは換金する魔物が大型なのが主な為、買取の素材を換金する為の専用の部屋を設えているのです。他の国でしたらその場や、数によっては鍛練場や解体用の部屋を使いますがね」
そう言われて納得した僕は、収納魔法からグランドサウルスの他に、昨日移動中に遭遇して討伐した、ギガントスというサイクロプスの上位種のAランクの魔物の死体を出した。
「畏まりました。査定にお時間を頂きますが、状態がよろしいのですぐに終わるでしょう。ギルドの中でお待ちしていてください」
そう言われて部屋を後にし、フロアに戻った僕はラティ達の所に向かった。
飲食スペースで席についていて飲み物や軽食を摘まんでいた3人を見つけ、僕は声をかけた。
「お待たせ」
「あっ、ユーマくん」
「査定は終わったのか?」
「少し時間を頂くってさ。でもどっちも状態が良いから、すぐに終わるって言われたよ」
「じゃあ、ユーマも座って待ちましょう。この唐揚げ、美味しいわよ」
促されて席に着き、コレットが美味しそうな唐揚げを取り皿に盛って僕に渡した。
「ありがとう、コレット」
僕はその唐揚げを食べて、4人で査定が終わるまで時間を潰していた。
やがてさっきのエルフの受付嬢に呼ばれ、僕達は食器を纏めて席を立ち、カウンターへと向かった。
「こちらが、グランドサウルスとギガントスの魔石込みの討伐報酬です」
受付嬢はそう言って、僕達の前に2つの金銭袋を出した。
それぞれの魔物の報酬だそうだ。
「ありがとうございます」
「いえいえ。あの有名な銀月の翼にご利用頂けるなんて、当ギルドも嬉しい限りです。また何かありましたら、いつでもご利用ください」
その営業スマイルに見送られ、僕達はギルドを後にした。
「素材の買取、よし。お金もよし」
「次はいよいよ……」
「そう。1番の目的の王城さ」
僕達はこの国の国王に挨拶する為に、王城へと向かった。
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オベリスク王国の王城は、アルビラ王国やエリアル王国の何倍もある巨大な城だった。
巨人族の王国の城だけあって、その建物自体もとんでもないスケールで、まるでガリバーの建物バージョンの様だった。
門番兵の巨人族にギルドカードを見せて、国王への謁見を求めた。
そしてその門番は一旦城の奥へと行き、暫くして戻ってくると僕達を中へと案内した。
「どうぞこちらへ。国王陛下がお待ちです」
どうやら国王も僕達との対面を望んでいる様だった。
理由までは分からないが、とりあえず僕達からすれば好都合だった。
その理由を推測せず、僕達は国王のいる玉座の前と足を運んだ。
魔物情報
ギガントス
サイクロプスの上位種に当たるAランクの鬼人種の魔物。
サイクロプスを超える10メートルの体躯に、建物を軽々と吹き飛ばすパワーを備えている。
また知能もより発達しており、サイクロプスの感覚で戦うと足元をすくわれ、命の危険が付く。
単眼から発する衝撃波も協力になっており、それだけで並みの魔物の身体を貫く事も出来る。
討伐証明部位は頭部の角。
次回予告
オベリスク王国の国王と対面するユーマ達だが、ここでユーマの巻き込まれ体質が発生する。
その国王は、一種の戦闘狂だったのだ。
次回、グレイドニル・フォン・オベリスク