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第160話 訓練の成果

前回のあらすじ

想像以上に力が付いた事を痛感したユーマ達は、どうすればいいかを話し合う。

そこにコレットから魔力制御の訓練を進められ、3人は1度原点に戻ろうと訓練を始める。

 僕達は首都を目指す途中だったが、僕達の力が制御しきれていない部分が見つかった事で、それを克服する為にまだこの荒野にいた。


 力の制御を目指して魔力制御の訓練を行い、更に身体強化の応用で体の各部を限定的に魔力を流すなどの訓練も行い、その魔力の量と循環を細かく調節し、3日程で大分ものにする事が出来た。


 元々魔力制御に関しては、僕とラティは幼い頃から、クレイルもコレットの所で修行していた時に常にさせられていたから、その勘を取り戻すのは然程難しくはなかった。

 後はそれを細かく調整して力を制御するだけだった為、3日でものにする事が出来たという訳だ。


 そして現在僕達は、僕、ラティ、クレイルの3人による三つ巴の模擬戦をしようとしている。


 この模擬戦で、僕達が力を制御できているのかを確認する為だ。


 視界の端ではアリア達が見守っていて、僕達の中央にはコレットがいる。


「いいわね。今回の模擬戦は、勝敗に関係なく、3人が力の制御が出来ていると判断できた時点で終了とするわ」


「僕は何時でもいいよ」


 今回は模擬戦なのを意識して、右手にはアメノハバキリ、左手には白百合が持たれ、どちらも鞘に納められている。

 振り回した時に抜けない様、鍔の部分に鎖を巻いて固定して抜けなくなっている。


「俺も問題はねえぜ」


 クレイルはいつも通りメルクリウスを装備しているが、彼の場合はこうしなければ意味がない。

 クレイルの戦闘はメルクリウスを装備しての徒手格闘だから、これで制御が出来ていないと、これから先メルクリウスで安全に戦う事が難しいからだ。


「あたしもオッケーよ」


 ラティは魔法での戦闘が中心だから、持っている武器はウラノスと、接近戦用の腰に帯剣されている2本のミスリルの短剣。

 あれを使うとなれば、僕と同様に鞘に納めたままで使う筈だ。

 その証拠に僕の剣程ではないがロープを巻いて固定しているからね。


 やがて僕達への確認を終えたコレットが中央から離れて、右手を上げた。


「それでは……始め!!」


 開始の合図が出て、僕はまずクレイルへと向かった。


 まずは複合強化はおろか、身体強化すらかけていない、素の能力でだ。


 クレイルも接近してくる僕を捉え、右腕を突き出してきた。


 神器同士であるアメノハバキリとメルクリウスが激突し、凄まじい金属音と衝撃が生まれた。


「おい、ユーマ! お前、当たる瞬間に右腕のみを強化したな!」


「クレイルこそ! 右腕だけが突然魔力が強くなった。これは、魔力を部分的に流して右腕とメルクリウスを限定的に強化したでしょ!」


 僕とクレイルは課題の1つだった、魔力を部分的に流して力を調節する事で、武器での攻撃力を調節する事が出来た。

 だが流した武器が互いに神器だった事で、その神器同士が激突した事による相乗効果で生まれた衝撃波は凄かった。


「フレイムジャベリン!!」


 そこに、ラティが放った炎魔法が接近し、僕とクレイルは互いを押す力で離れて回避した。


「まだまだ行くわよ! 重力変化!」


 ラティは自分の周囲に重力魔法を発動させ、自分の周りの重力を変化させた。

 するとジャンプして、僕達の頭上を高く跳んだ。


 重力魔法で自分の重力を軽減させている様だ。

 今までは重力を強くして動きを封じたり、目標を押し潰したりしていたけど、今回は自分の重力を小さくしてあのジャンプが出来た。

 もしこれが上手く魔力制御できていないと果て無く跳んでしまうが、ラティは明確にジャンプするときの高さを計算して頭上を取れるように重力を調節している。

 これも自分の中にある魔法のイメージを瞬時に纏めて、的確に魔力を調節できている証拠なのである。


「ロックフォール!!」


 そこに僕達の頭上に同じぐらいの大きさの岩塊を落としたが、僕とクレイルは鞘に入っている剣と拳で砕いた。


「重力魔法の制御が以前よりも正確になっている。この分だと僕達に使った場合……」


「ああ。俺達は1歩も動けずに魔法を喰らっちまうな……」


 クレイルへの攻撃も大事だが、ラティの重力魔法と組み合わせた魔法攻撃にも注意しなければいけない。


 そうなると僕達の選択肢は――


「「とにかく動きまくる!!」」


 僕とクレイルは同時に周囲を駆け回り、ラティに重力魔法の対象に取られない様にした。


「アイディアは悪くないけど、あたしが銀月の翼でも屈指の魔法の使い手だという事を忘れないでね! アースクエイク!!」


 ラティはウラノスを地面に差し、辺り一帯の大地を揺らし始めた。


 アースクエイク、魔力を地中に流して地震を起こす、土属性の中級魔法で、主に相手の動きを封じたり、地中にいる敵を引き摺り出したりするのに使われる。

 しかしラティはそのアースクエイクをウラノスの森羅万象の効果で増幅させ、僕とクレイルですら立つ事が困難な程の振動を生み出した。


 それでいて周りの地形を破壊する事なく、ただ地面を揺らす事だけに魔力とウラノスの効果を調節までして、ラティの魔力操作の技術が更に向上しているのが伝わってくる。


「ぐっ……! こうなったら……ライトニングウィング!!」


 僕は雷の飛翔魔法を発動させ、空中へと逃れた。

 空中にいれば、地震の振動を感じる事もない為、対抗策としては最善の手段だ。


「俺も……! エアステップ!!」


 クレイルも空中を掛ける事で上空にのがれ、僕達はラティのアースクエイクから逃れる事が出来た。


「まずはお前からだ、ラティ!」


 そのままクレイルはエアステップで急降下し、ラティに目掛けて急降下によるキックを繰り出した。


「甘いわよ!」


 ラティは足に魔力を流し、左手に鞘に納められたミスリルの短剣を取り出してクレイルのキックを受け流した。


 ラティも身体の魔力による強化を部分的に行って、魔力の使用量と動きを最小限に抑えて回避出来た。


「やるな、ラティ!」


「あたしだって、接近戦の心得くらいは持ってるわよ!」


 2人が1ヵ所に来た事で、僕もライトニングウィングで急降下し、アメノハバキリと白百合を構えて攻撃を仕掛けた。


「俺達が集まるのを待ってたか! だけど俺だって負けないぜ!」


「あたしもよ、ユーマくん!」


 まずはクレイルがメルクリウスを装備した右手でアメノハバキリを掴み、僕をそのまま地面に叩きつけようとしたが、僕はアメノハバキリを軸にして態勢を整えて着地し、そのまま白百合を振り下ろしたが、ラティのウラノスによって防がれた。


 僕はそのまま体を捻って魔力を纏った2本の剣を振って、2人を大きく弾き飛ばした。


「終了! そこまでよ!」


 その瞬間、コレットが終了の合図を出し、僕達は武器や手を下げてその場に座り込んだ。


「皆、お疲れ様。折角これからって所で終了させて、正直悪かったと思ってるわ。でも、3人が十分過ぎるほど力を制御出来ているのが分かったから、キリの良い所で終わらせたかったので、ここで終わらせたわ」


 コレットが人数分の水筒を渡して来て、僕らは水分を補充しながらさっきまでの模擬戦を振り返っていた。


「俺達、途中から夢中になって戦っていたけど、そんなに上手く戦えていたか?」


「ええ。クレイルの場合は手足に流した魔力の調節も出来ていたし、これなら人が相手でも命を奪わない時にはしっかりと出来るわ。うっかり忘れない限りわね」


「コレットさん、あたしは?」


「ラティは魔力の制御が元々上手だったから、もう何も言う事は無いわね。重力魔法もさっきのアースクエイクとウラノスの組み合わせも完璧だったし、この分なら魔法の威力を常に任意に抑えて放てるわ」


 そしてコレットは最後に僕を見た。


「ユーマも大丈夫ね。ユーマも武器を使っての戦闘が主だから、その武器に流した魔力制御も以前から出来ていて、今回の訓練で更に上手くなっていたわ。クレイルを相手にあそこまで順応出来るんだから、これからも魔力制御を欠かさずに行えば、大丈夫よ」


 僕達3人共、コレットからお墨付きを貰い、力の制御が出来る様になった。


「やったわね!」


「ああ! これならこないだみたいな事はそう起こらないだろうな」


 安堵した2人に、コレットが軽く釘を刺した。


「とはいえ、2人もユーマと同じく、普段から魔力制御を欠かさずにした方が良いわよ。そうすれば、もっと力のコントロールが正確になるから」


 要するに、こういうのは普段からの積み重ねが大切という訳ね。


「分かってるよ、コレット。心配しないで」


 クレイルとラティも頷き、コレットは納得した様な顔になった。


「ならよし。じゃあ、今日はこのまま休んで、明日からまた出発しましょう」


 アリア達も了承して、こうして僕達の旅が明日からまた再開されたのだった。

次回予告

オベリスク王国の王都へ到着したユーマ達は、巨人族の国の街並みを改めて目の当たりにする。

王城へ行く前に、ギルドで素材の換金を行う。


次回、オベリスク王国の王都

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