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第158話 付き過ぎた力

前回のあらすじ

ゼピロウス大陸へとやって来たユーマ達は、まずオベリスク王国に向かった。

そこでは巨人族と他の種族が協力し合っている姿があり、ユーマはその姿に感動する。

その後、この国の王都繋がりを持つべく、王都に向かう事を決める。

 朝を迎え、僕達は支度を済ませて潮風亭の部屋を引き払い、そのままグランミアの街を出てアリアに乗って王都を目指して出発した。


 上空から見てみると、街の外は街道らしき道は見当たらず、荒野が広がっていた。


「一面に荒野が広がっているな。これじゃあ、盗賊とかの犯罪者が身を隠す場所も少ないし、魔物とかも見つけやすいな」


 クレイルも同じ事を思っていた様で、ラティも頷いていた。


「オベリスク王国の道は大体こんな感じよ。勿論緑のある所もあるけど、基本的にはこんな感じの地形が中心よ」


「だけど、基本的にはこんな荒野が広がっていて、結構見晴らしもいいの。その分、魔物の接近にも気づきやすいし見つけやすい上に、障害物とかも少ないから、戦闘も行いやすいわよ」


 コレットとアインはかつて世界を回った事があるから、当然このオベリスクウ国の地形についても知っている。


 確かにこんな荒野だと障害物といえば精々岩山くらいで、寧ろそれも魔法や矢を放つ際に利用できそうだから、魔物とかの戦闘時にはかなり使えそうだ。

 しかし同時に、魔物はともかく人間相手だと身を隠せる場所が限られているから襲撃を仕掛けるのは苦労しそうだな。


 そう思っていると、前方の荒野で何かがいるのが見えた。


『ユーマ、あそこに何か魔物らしきのがいますね』


「うん。僕も補足している。ランクはBの様だ」


 アリアがその魔物に気付かれない様に高度を調節して接近すると、そこには首の長さも入れて全長が30メートルはありそうな竜脚下目に分類される恐竜の姿をした魔物がいた。

 また首や背中、脚などに岩や固まった泥の様な物で出来た物を纏っている。


『あれは爬虫類種のグランドサウルス。Bランクの中でも最大級のサイズを誇る大型の魔物です』


 Bランクの最大級サイズか。


 そういえば、グランミアの街でも巨人族と共に仕事をしている従魔の中には、かなり体の大きい魔物の姿があったな。


「オベリスク王国にはもう1つの特徴があって、その領内で見る魔物は基本的にあの様な体の大きい魔物よ。どうしてその様な事になるのかは分からないけど、一説によると巨人族という種族がある様に、その空気中にある魔力が特殊な作用を生んで巨大な魔物を発生させていると言われているわ。でも、詳しい事は分かっていなくて、本当にそうなのかも不明だけどね」


 コレットの説明を聞いて思い出した事がある。


 お母さんの授業で、オベリスク王国では巨人族の狩りの腕が優秀で、国内では大型の魔物の肉や素材が出回っていて商人や冒険者で賑わっていると。

 もしその大型の魔物が、国内で発生した魔物だと限定すれば、この国はランクに関係なく大型の魔物が存在しているという事になる。


 見方によれば素材や肉の宝庫とも言えるけど、別の見方だとかなり危険も伴うな。

 でもそんな事は聞いた事もないから、それだけ巨人族の戦闘力が凄いという事なのだろう。


「なあ、ユーマ。あの魔物、かなり大きいじゃん? このまま倒して俺達の食料にしちまおうぜ」


「いいんじゃない? もし余ったら、街で売る事も出来るんだし」


 クレイルとラティは既に、あのグランドサウルスを倒す事を前提にしていた。

 ふとコレットの方を見ると、仕方ない感じに頷いていた。


「分かったよ。なら、僕とクレイルが降りるから、ラティとコレットはアリアの背から援護して」


「「了解」」


「クルスとレクスはここに残って待機して」


「グルゥ」


「ウォン」


「アリアはこのまま上空で援護出来る様にして」


『分かりました』


「行くよ、クレイル」


「おっしゃ!」


 僕はアメノハバキリと黒薔薇を抜き、メルクリウスを構えたクレイルと一緒にアリアの背から飛び降りた。


「ライトニングウィング!!」


「エアステップ!!」


 そして落下中に僕は雷の翼を展開して飛翔し、クレイルも空気の足場で空を駆けた。


「いっくぜえ!! おらぁっ!!」


 クレイルがグランドサウルスの長い首に接近し、エアステップの勢いで体を捻った空中回し蹴りが決まった時、グランドサウルスの首から「ボキッ」という鈍い音が響いて、その巨体が吹き飛んだ。


「あれ?」


「おろ?」


 僕とクレイルが揃って間の抜けた声を発し、アリアがラティ達を乗せたまま倒れたグランドサウルスに近づいて着陸して、その状態を確かめた。


『ユーマ、この魔物、既に死んでいます』


 そして呆気なく死んでいると告げられた。


「おい。俺はただ1発入れようと先制攻撃しただけだぞ」


 確かにクレイルの一撃は、これまでならBランクの魔物に牽制を入れる程度の威力だった。

 弱めのBランクなら十分倒す事も出来ていたが、グランドサウルスはかなりの巨体だ。

 いくら生き物の急所である首を狙ったとしても、こんな呆気なく決まるなんて。


「もしかしたら、クレイルの実力が余りにも付き過ぎているのかもしれない」


 その時、アインが何かに気付いた様に呟いた。


「アイン、どういう事?」


「確かにクレイルのこれまでの実力から考えれば今の一撃はかなり凄すぎるわ。でも、それはあくまでもそれまでのクレイル、もっと言えば、あのベヒモスと戦った時くらいかしら」


 アインによると、クレイルだけでなく僕達は皆、あのダンジョンでの戦いで多くのAランクやSランクの魔物と戦い、討伐して来て、遂には『超獣』のベヒモスまでをも討伐する程にまでなった。


 そしてラティが神杖ウラノスを手に入れた事で、僕達は全員が神器持ち、しかもその神器に認められるにまで至った。


 その際神器による強化と、僕達の向上した実力が相まって、既に僕達の強さは例え大型でもBランクの魔物では敵にならない程にまで成長したのだという。


「つまり、俺だけじゃなくて、ユーマ達も今のグランドサウルスみたいな魔物とかじゃ、簡単に倒せるって事か?」


「そういう事よ。少なくとも神器を使っただけで、今みたいにハエを叩き落とすかの如くね。この前のデビルジェリーフィッシュみたいなSランクや一部のAランクなら、そうはならないと思うけど」


 どうやら僕達は、あのダンジョンでかなりの成長を遂げていた様だ。


 それを実感した事で、僕達はこれからの課題を持つ事にした。


「こうなったら、僕達は自分達の力の制御をこれまで以上に出来る様にしよう。対人戦とかで、無暗に命を奪わないようにする為に」


 このままだと模擬戦やヴォルスガ王国の武闘大会とかでの対人戦でだと、力を誤って相手を殺してしまう危険性がある。

 犯罪者ならともかく、純粋な競技や模擬戦で相手を殺してしまっては、僕達が危険人物として犯罪者になりかねないからだ。


 ラティ達も頷き、僕達は自分達の力の制御をより出来る様にする事を決めた。

魔物情報


グランドサウルス

全長が30メートルもある、Bランクの魔物のン下では最大級の爬虫類種。

首や尻尾、脚部などに岩や固まった泥などで出来た鎧をまとっており、高い防御力を持つ。

戦闘時には長い首や尻尾をしならせて、敵を薙ぎ払う。

討伐証明部位は、頭部に生えている角。


次回予告

自分達の力の制御をどうするかを話し合うユーマ達。

そこにコレットがある提案をする。


次回、力の制御をする為に

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