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第156話 無人島で過ごす1日

全開のあらすじ

デビルジェリーフィッシュを討伐したユーマ達は、バイライルの街の人々から英雄として崇められる。

そして出発の時、フォルラを筆頭に街の人総出で見送られる。

 ゼピロウス大陸を目指してバイライルの街を出て半日が過ぎ、竜神のアリアの飛行速度のお陰で既にゼピロウス大陸まで半分以上の距離を進んでいた。


 やはり空を飛べば、飛行機と同じように1日も経たずに進めるから、アリアに乗って移動するというやり方にして大正解だった。


 しかも船と違って上空を飛んでいるから、危険な海の魔物と遭遇する事もなく、ここまでノーストップで進む事が出来た。


「とはいえ、アリアのスタミナなら大丈夫だとは思うけど、やっぱり何処かで休めないとね」


「どっかに手ごろな場所はねえかなぁ?」


 僕とクレイルはアリアの背から周囲を見回して、何処か休めそうな島を探していた。


『大丈夫ですよ。私ならこのまま一気に飛ぶ事が出来ます』


「そこまで気張らなくても大丈夫だよ、アリア。元々先を急ぐ旅じゃないから、気ままに行こう」


『分かりました』


 アリアを宥めた直後、コレットとラティが何かを発見した。


「ユーマくん、あそこに何かあるよ!」


 ラティの指した方角を見ると、右手側の遠くに海面に緑色が見えた。


「どうやら島の様だ。丁度良い。アリアの休息も兼ねて、今日はあの島で休んで行こう」


「賛成だ! 早く行こうぜ!」


「他に止める場所もなさそうだから、今の内に決めた方が良さそうね」


「島でお泊りって、とっても面白そうね」


 満場一致で、僕達はあの島で1泊する事を決め、アリアにそこへ向かって貰った。


 着陸した後、アリアはそこで休ませ、僕はライトニングウィングで飛翔し、この島全体を見下ろしながら探知魔法で島民がいないかどうかを確認した。


「これといった反応は無いな。どうやら、無人島の様だ」


 確認を終えた僕は皆の所に戻り、ここが無人島だという事を話した。


「ここにいるのは僕達だけみたいだ。だから今日はここで問題なく休めるよ」


「つまり今日だけ、ここは俺達だけの島って奴か。いいな、それ」


「こういう島で寝泊まりするのは初めてね。かつて旅していた時は、船で大陸を渡っていたから、こんな風に無人島に来る機会なんてなかったわね」


「だからこうしてみると、結構楽しそうね」


「ユーマくん、あたしクルスと一緒に森の中を探索してきていい?」


 ラティが森を散策してみたいと言い出した。


「まあ……さっき確認してみた限り、危険な魔力反応もなかったから、多分大丈夫だと思う。でもいざという時の為にちゃんと武器は持っていてね」


「分かってるわよ」


「クルス、ラティを頼んだよ」


「グルルルゥ!」


 クルスを撫でると、「任せて!」と言わんばかりに鳴いて答えた。


「ユーマ、俺もその辺を見て来るぜ。ついでに何か食えそうな物があったら持ってくるからな」


「ウォン!」


 クレイルもレクスを連れて島の探検に出かけた。


「2人ともかなり自由ね。ユーマは行かないの?」


「僕はここにいるよ。偶にはアリアと思いっきりのんびりしたいからね」


『賛成です。こんな日差しの気持ちい日は、ゆっくりと眠れそうですからね』


 ラティ達が島を探検している間、僕は寝そべって休んでいるアリアに寄りかかって読書をし、コレットとアインも潮風に当たりながらゆっくりと休んでいた。


――――――――――――――――――――


 夕暮れになり、探検を終えて戻って来たラティ達が手を洗っている間に、僕は夕食の用意をしていた。


 バイライルの街で新鮮な魚が手に入った為、それを捌いて刺身や煮つけなどに加え、海老や雲丹などと言った海鮮物の網焼きも振る舞い、皆喜んでいた。


 特にクルスの食べっぷりが凄かった。

 体が獅子、つまりネコ科だから魚が好物という理屈なんだろうか。


「無人島で夕焼けを見ながら、美味しい物を食べるというのもとても素敵ね」


 コレットは箸を休めながら、水平線に映る夕焼けを見ながら、そう言った。


 それに続いて、ラティも感慨深そうな表情をしていた。


「それに、バイライルの街で海を見た時にも思ったけど、こうしてゆっくりと海を見ていると、不思議と心が安らぐ感じがするわ。どうしてかしら」


 そのラティの言葉に、僕はある答えがあった。


「それはきっとラティ、生き物は、海から生まれたからじゃないかな。海は全ての生き物の、お母さんなんだよ」


 前世の地球でも、生命は30億年以上も前の海から生まれた。

 その生まれた小さな命を海は優しく育み、やがて生命は進化を繰り返して陸へと進出し更に進化を繰り返しながら激しい生き残り競争を繰り広げ、僕達人類が生まれた。


「でもその中には、進化の果てに住む場所を再び母なる海に戻した生物もいるんだよ」


「陸から海へか? 一体、どんな生物だ?」


 クレイルの質問に、僕は鯨やイルカなどと答えた。

 地球の生物学者の研究で、鯨の胸鰭の骨格がそれが古代では前脚だった事が分かると説明すると、クレイル達はとても面白そうに聞いている。


「だから、そんな風に母なる海を見ていると、今の様に心が安らぐ感じがするんじゃないかな。尤も、これはあくまで僕の推測だけどね。それに、ここは地球じゃなくてアスタリスク。その生物の進化論がこの世界でも通用するとは思えないけどね」


 このアスタリスクには、地球でもいた馬や牛、犬や猫などの普通の動物もいたが、その中でもこの世界に生き物で目立つのは魔物だ。

 その魔物の中には、レクスやバルバドスの様な狼の魔物といった現代生物の魔物もいれば、アリアの竜やクルスのグリフォンといった前世では空想動物として知られていた魔物に、恐竜やマンモスといった前世では絶滅した古代生物の魔物もいた。

 だから、その魔物にそういった前世の生物学的な部分が通じるかと言われたら、正直自信がない。


 そして何より人種でも、普通の人間である人族だけでなく、獣人やエルフ、魔族にドワーフといった色んな種族がある。

 そういう風になったのは、イリアステル様がそうなる様に導いたのだろうけど、それでもこの異世界であるアスタリスクに地球の進化論が通用するのかは分からない。


「いや、お前の説明は結構納得出来るぜ。俺達も今のお前の言葉を聞いてからそれで海を見ていると、なんかこう……母性に包まれた様な気分になるんだ」


 ところが、クレイルは僕の地球での話を聞いて、かなり共感していた。


「そうね。ユーマの説明にはとても実感が籠っているわ。私も、今こうして海を見ているととても暖かい気分になってくる」


『私もですね』


「あたしも」


 ラティ達だけでなく、アリア達従魔もそんな事を言っていた。


 まあ、言っていた自分も海を見ていると同じ気分になっていたから、こうして皆と気持ちを共感出来てとても嬉しくなる。


 こうして僕達は海に心を安らいでもらってゆっくりと休む事が出来、その夜は波の音と潮風に煽られて気持ち良く眠る事が出来た。


 翌朝になって身も心もリフレッシュした僕達は、同じように全快になったアリアに乗ってゼピロウス大陸へと出発した。

これで第9章は終わりです。

次回から「第10章 オベリスク王国」に入ります。


次回予告

ゼピロウス大陸へやって来たユーマ達は、オベリスク王国へと入国する。

そこでは、巨人族と他の種族が力を合わせて生活する光景があった。


次回、ゼピロウス大陸に到着

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば旅の最終目的は安住の地探しだったっけ
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