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第153話 見えざる悪魔

前回のあらすじ

バイライルの街にやって来たユーマ達は、アリアに乗ってゼピロウス大陸へ行く事を話す為に、領主の屋敷を目指す。

その途中、初めて海人族を見て、ユーマ、ラティ、クレイルは、コレットやアインから海人族と巨人族の事を教わる。

「話は分かりました。大統領の証文も本物ですし、あなたの従魔の竜に乗って大陸を移動するのは問題ないでしょう」


 ゼピロウス大陸に行く為に船に乗らず、アリアに乗って移動する事を話し、保険として大統領の証文を見せた事で、僕達は無事にこの街の領主、フォルラ氏の許可を得る事が出来た。


「御許可頂き、ありがとうございます。では、準備が整いましたら、僕達は早朝に出発しようと思います」


「分かりました。街にいる騎士達には私の方から伝えておきますので、皆さんは安心して出発して頂いて大丈夫です」


 無事に交渉が上手くいき、僕達は街で宿をとるべく屋敷を後にしようとした時、フォルラさんが「処で」と尋ねてきた。


「皆様は港での噂を知っていますでしょうか?」


 港での噂?

 何だろう?


「一体、どんな噂でしょうか?」


「実は……」


 フォルラさんによると、2カ月ほど前に海に謎の魔物が現れる様になったそうだ。

 正体は分からず、海にいる事から水棲種の魔物である事は間違いないのだが、その姿が見えないそうだ。


 この街には海人族の漁師や冒険者がいる為、その人達が中心に調べているのだが、水中から調べてもその魔物は見当たらずに、逆に次々と犠牲者が出て何時しか『見えざる悪魔』と呼ばれるようになり、それが数日に数回という間隔で漁などに被害が出ているそうだ。

 なんでも網や獲れた魚が腐食していて、水揚げ量にも大きな影響が出ているらしい。


 不幸中の幸いなのは、他大陸へ向かう客船には被害が出ていない事らしい。

 漁船や客船と言った船には、船底に魔物を寄せ付けないマジックアイテムが使われているらしく、『見えざる悪魔』もその効果で被害を出せないらしい。

 しかし、その悪魔が潜んでいる以上、何時客船にも被害が出るかは分からない為、漁師たちもかなり不安になっているそうだ。


 フォルラさんも既に首都にその事を報告していて、近い内に首都から冒険者や騎士がやって来て安全強化に繋げるそうだ。


「……という訳なのです。皆様も出発する際には、その『見えざる悪魔』にくれぐれも気を付けてください」


「御忠告ありがとうございます。では、これで失礼します」


 僕達はフォルラさんからの忠告を胸に刻み、屋敷を出た後街で宿をとってそこに泊まる事になった。


――――――――――――――――――――


 その後僕達は僕とラティの部屋に集まり、その『見えざる悪魔』について話し合っていた。


「んで、どうする、ユーマ? まさかこのままその悪魔を知らんぷりして出発するつもりじゃないよな?」


「それこそまさかだよ。悪魔の正体が分からない以上、僕達にも危険がある可能性は十分ある。それを無くすために、少しその悪魔の情報を集めよう」


「流石ユーマくん! 困ってる人を見過ごせない優しさ、本当に大好きよ」


 僕達は満場一致で、『見えざる悪魔』を何とかしようと決めた。


「だけどどうする? 相手は水中戦のエキスパートの海人族ですら、正体を突き止められなかったほどの奴よ。そんな奴の正体をどうやって突き止めるの?」


 アインに聞かれ、僕は考えていた作戦を話した。


「いくら相手の姿が見えなくても、やりようはあるさ。その悪魔の正体が魔物か動物かは分からないけど、少なくともそいつは僕達と同様に魔力を持っている筈だ。僕の探知魔法の周囲の地形を把握する探知を応用して、海中の魔力を探ればその悪魔の反応もある筈だ」


『成程。悪魔の魔力を探してその形を把握する事で、正体が何なのかを探るのですね』


 今回は探知魔法を応用した、エコーロケーションのような事をやるつもりだ。

 蝙蝠やイルカは超音波を発する事で周囲に反響させ、周囲の地形や獲物の場所や距離、大きさなどを把握する事が出来る。


 そして僕がやっている地形把握は、その超音波の理屈を魔力で代用して行っている物だから、海中でも通用するんじゃないかという確信がある。


 だからその理屈を活かして僕が海中に向けて探知魔法を使い、その中から感じる魔力反応で海中の様子を探り悪魔の反応を探るという訳だ。


 どんなに姿を隠す事は出来ても、魔力までは隠す事は出来ない筈だ。

 例え魔力を内側に隠して感知できなくしても、それでもわずかに発する魔力を捉える事が出来れば、アリアがその場所に潜ってその悪魔を捕らえ、空中に引き摺り出せれば正体が分かるかもしれない。


 またはラティのウラノスの森羅万象で海の一部を操作して海水を無くすような事が出来れば、その悪魔も身動きが取れなくなり戦いやすくなるかもしれない。


「話は分かったわ。あたし達はどうすればいい?」


「まず僕とアリアがその悪魔を探す。ラティはクルスに乗って僕と一緒に空中から警戒して。クレイルとコレットは湾頭で被害が出てないかを警戒しながら僕達の援護を頼む」


「分かったわ。空ならあたしとクルスも戦えるわ」


「クルルゥ」


 ラティとミニサイズのクルスが気合を入れている。


「任せろ、ユーマ。街に被害は出させねえ。俺とコレットに任せろ」


「ウォン」


「クレイル、レクス達を忘れているわよ」


「でもこっちは任せて」


 僕達はその悪魔への対策を整え、調査をするべく港の方へと情報収集に向かった。


――――――――――――――――――――


 漁師や冒険者に尋ねた結果、『見えざる悪魔』は主に沖合で現れる事が分かった。


「沖合に行けば多くの獲物が獲れる。悪魔はその獲物や、近づいた漁船を狙っている可能性が大きいな」


「となると、その部分を中心に探せば、悪魔が出てくる可能性も大きいという事ね」


「しかも情報によると、その悪魔が現れる感覚からして、今がその現れる絶好の機会よ」


 今そのチャンスを逃せば数日は現れないかもしれないから、正体を暴くには今しかないな。


「ちょっと計画を急がせよう。アリア、早速だけど僕を乗せて沖合まで飛んで」


『お任せください』


「クルス、あたし達も一緒に行くわよ」


「グルルゥ」


「湾頭は俺達に任せろ」


「ユーマは安心して探ってきて。ここからなら私も矢で援護が可能だから」


 この場はクレイル達に任せ、僕とラティはアリアとクルスに乗って沖合へと飛び立った。

次回予告

『見えざる悪魔』を探すべく、ユーマ達は会場を飛びながらその姿を探す。

やがて襲われている漁船を発見し、その正体を突き止めるが、その悪魔の正体は意外な生物の魔物だった。


次回、意外な最強生物

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