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幕間 その頃の親達

 ユーマ達がSランクになったという知らせは、セレストの街のギルドから世界中のギルドや国に伝わった。


 そして、その知らせはこの者達の所へと伝わっていた。


「ユーマ達が、到頭Sランクになったそうです」


「そうですか……遂にここまで来たのですか」


 ここは、ユーマとラティの故郷の国、アルビラ王国。

 そしてその王城の中庭で、数人の男女が話し合っていた。


 ユーマの両親のゲイルとサラ、ラティの両親のダンテとエリー、そしてこのアルビラ王国の国王であるアベルクスとその妻であり王妃のヴィクトリアだった。

 更に、この国の次期王太子になる事が決まった第2王子のルドルフとその双子の妹、第1王女のアンリエッタもいた。


「最初にあなた達がお見えになった時、何かあるかと思いましたが、聞いてみれば嬉しい報告でしたわね」


 ヴィクトリアが口元を手で隠しながら、嬉しそうに微笑んだ。


 今回ゲイル達が王城を訪れた理由は、自分達の子供達の後ろ盾になってくれているアベルクスにユーマ達銀月の翼がSランクになったという事を知らせに来たからだ。


「最近、王都がやけに賑やかだと思いましたが、ユーマさん達の事で騒がれていたのですね」


「でも、その内容はどれもユーマさんやラティさんを称える事ですので、友達として私達も嬉しいです」


 ルドルフとアンリエッタは、かつての兄であり元第1王子のヘラルが起こした誘拐事件の被害者のアフターケアとして王都にある福祉施設への行き帰りで王都を歩いていた時、冒険者を中心に何やら賑わっている事に気付いた。


 しかし、被害者達の治療の他に、ルドルフは次期王としてやるべき仕事が多くあり、アンリエッタはその未来の王妹殿下として受けるべき教育が多くあった為、詳しく王都の様子を調べる事が出来なかった。


 だが今日、ゲイル達暁の大地が訪問した事でその内容を聞き、2人は自分達の友人がSランク冒険者になったという事を知る事が出来たのだ。

 これは、2人に取ってこれ以上ないくらいの嬉しい報告であった。


「しかし、銀月の翼の全員がSランクになったという事は、コレット殿はともかく、ユーマ、ラティ、クレイル殿の3人は、皆さんの最年少記録を上回って昇格したという事になりますな」


「はい。俺やゲイル達がSランクになったのは、18歳――あなたと出会う少し前でしたからね。それをうちの娘達は16歳でなったのですから、俺達を超えてしまったのですよ」


「ダルモウス山脈のダンジョンは私達も昔挑戦した事がありましたけど、90階層程が限界でした。ですがあの子達はアリアちゃん達がいたとはいえそのSランクの魔物を次々と倒して、更にはボスの『超獣』のベヒモスをも討伐したという事ですから、実力では完全に私達を超えてしまいましたね」


 ダンテとサラは自分達の過去の活動歴とユーマ達の活躍を見比べて、銀月の翼が完全に自分達暁の大地を超えている事を実感していた。


 暁の大地がダルモウス山脈のダンジョンに挑戦したのが、彼らが16歳でBランクの時で、それから2年近くかけて90階層まで到達した。

 そのダンジョンでの活動での実績で彼らはAランクに昇格し、その後竜王種を討伐した事で、当時最年少でSランクまで昇格した。


 しかしユーマ達が先日アリアに乗ってこの国を発ち、装備を整備する為にロマージュ共和国へ向かったのが1ヶ月半ほど前だ。

 確かにダルモウス山脈は共和国の首都へ行く途中で、必ず通過するべき場所にあるから、山脈に訪れるのは分かる。

 それがどういった経緯でダンジョンを攻略する必要があったのか。

 いったいこの1ヶ月半の間に何があったのかは、ゲイル達暁の大地もアベルクス達王族一家もまだ知らなかった。


「何はともあれ、本日は我々に知らせてくれて、ありがとうございます」


 アベルクスはゲイル達にユーマ達の事を知らせてくれた事を感謝した。


「いえいえ。陛下にはうちの息子達やその友達の後ろ盾になってくれてますから、こうして報告するのは当然ですよ」


 その後も王族一家とお茶をした後、ゲイル達は王城を後にして家へと戻った。


――――――――――――――――――


 家に戻ると、自分達の家に1通の手紙が届いていた。


「おお! ユーマ達からの手紙だ!」


 ゲイルは手紙の差出人を確認し、それがユーマ達から送られてきた物だと知った。


「ゲイル! 早く中を読もう!」


 ダンテに急かされ、4人は一旦家に入ってから興奮気味に封筒を開け、中の便箋を取り出した。


 その便箋はユーマとラティ、それにクレイルとコレットが書いた手紙に分けられており、3人はそれぞれの手紙を読み上げた。

 手紙の中は主に、ユーマ達がアルビラ王国を発った後の出来事が書かれており、途中から自分達が知りたかった事が書かれていた。


 自分達が紹介したデミウル工房でガリアンから、クレイルのメルクリウスが神器だと知った事、


 神器以外の装備の整備を単打後、工房でラティの新しい杖、元素の杖を購入した事、


 首都の宮殿に招待され、大統領のグレンツェンに後ろ盾になって貰った事、


 ガリアンとネルスの作ったマジックアイテムを扱っているベルスティア商会で装備を整えて、通話の腕輪も購入した事、


 ユーマとクレイルが神器に所有者として認めてもらうべく、首都のダンジョンに挑戦して見事に認められた事、


 そのダンジョンの中で偶然にも、以前ユーマからの手紙に書かれていた夜明けの風と再会した事、


 ダンジョンを攻略した際、女神イリアステルからの転生特典として、ユーマが新たな神器、神刀アメノハバキリを手に入れた事、


 その後再びデミウル工房を訪れ、そこでラティのエンシェントロッドがいずれラティの魔力に耐えられなくなると告げられた事、


 そしてガリアンからダルモウス山脈のダンジョンに神器の杖があると教えられ、そこに挑むと決意した事、


 以前コレットが挑戦して最後に訪れた階層まで転移し、全員の力を合わせて攻略した事、


 また途中で、ユーマとクレイルはそれぞれ新しい複合魔法、ドラグーンフォースとフェンリルフォースを編み出した事、


 ボスのベヒモスの魔力の耐性に苦しめられたものの、ユーマの機転とアリア達の尽力で遂に討伐出来た事、


 その後ラティは目標の神器の杖、神杖ウラノスを手に入れて、そのまま所有者として認められた事、


 ダンジョンから帰還後、山脈の麓にあるセレストの街のギルドで報告し、Sランクになった事、


 その後首都に戻り、次の目的地に他大陸のゼピロウス大陸に向かうと決めた事、


 それらを読み終えて、ゲイル達は何故ユーマ達がダルモウス山脈のダンジョンに挑戦したのかという理由を知る事が出来た。


「成程。ラティちゃんの為だったのか。確かにユーマやクレイルくん、コレットさんならその理由だけで実行するのに十分だな」


「アリアちゃん達も同様ね。クルスちゃんは特にラティちゃんの事を大切に思っていたから」


「ありがとう、ユーマくん。俺達の娘の為にここまでしてくれて」


「ありがとう、ユーマくん」


 4人はユーマ達の手紙に書かれた彼らの絆の強さに感動し、その成長を喜んでいた。


 そしてこの事を知らせる為に4人は後日また王城を訪れ、アベルクス達に自分達の子供達の自慢話を聞かせるのだった。

ここまでお読みくださって、誠にありがとうございます。

「面白い」、「続きが気になる」、「更新頑張れ」と思いました方は、ブクマ、感想、評価してくださると今後の励みになります。


次回から第9章になります。

このペースなら、明日には更新できるかもしれません。

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