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幕間 その頃の仲間達

 エリアル王国のハイアンスの街でバロン殿達と再会した後、私達はそれからも彼らと行動を共にし、現在は王都にいる。


 私達は先程Aランクの魔物の討伐依頼を終えて王都に帰還し、ギルドで報告をして報酬を受け取り現在はギルド内の飲食スペースで酒を飲みながら食事をしている。


「ング、ング、ング……プハァ~! 依頼を終えた後に飲む酒は最高だな!」


「バロン、気持ちは分かりますが、もう少し行儀良くしてください。品が悪いですよ」


「堅い事言うなよ、トロス。冒険者はもっと自由に振る舞うのがいいに決まってんだろ!」


 バロン殿は豪快にジョッキに注がれた酒を一気飲みして豪快に笑い、それをトロス殿に窘められるがバロン殿は何処と吹く風の様に流した。

 武器や戦い方が風属性中心なら、立ち振る舞いも風というものか。


「武器だけじゃなくて振る舞いまで風の様ね」


 相方のイリスも同じ事を思っていた様で、こちらの場合は思いっきり口にしていた。


「上手いな、イリス!」


 バロン殿はそれが受けた様で、何時の間にか私達の席は笑いに包まれていた。


 それから間もなくして、私はある違和感を感じた。


「しかし、私達が王都に戻って来てから、街やギルドが妙に騒がしくないか?」


「そうね。ギルドに関してはいつも賑わっているけど、これは余りにも騒がしすぎるわ」


「街の方でも、冒険者を中心に吟遊詩人や商人が何か話していましたね。そこから徐々に広がっている様に」


 私達が今回の依頼で王都を離れていたのは1週間。

 この間に何かがあったのだろうと推測したが、それが何なのかは分からなかった。


「あら。ゼノンさん、バロンさん、イリスさん、トロスさん、ダグリスさん、戻っていたのですか?」


 ふと後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには資料を抱えていたこのギルドの受付嬢の1人であり、アルビラ王国のギルドのリーゼ殿の五つ子の姉、ラーゼ殿だった。


「ラーゼ殿、この騒ぎは一体何事なのであろうか?」


「何か凄い事でもあったのか?」


「皆さん、知らないんですか? 先日、ロマージュ共和国領内にある、ダルモウス山脈のダンジョンを攻略したパーティーが現れたんですよ」


 どうやらラーゼ殿によると、あの誰も攻略出来た者がいなかった、難攻不落のダルモウス山脈のダンジョンを制覇したパーティーが現れたという。

 そしてその情報をセレストの街のギルドマスターが全てのギルドに連絡して告げた事で、今冒険者を始めとする話題ではそのパーティーの事で持ち切りなのだそうだ。


 確かあのダンジョンのボスは『超獣』の異名を持つベヒモスだった筈だ。

 攻略したという事は、必然的にベヒモスも討伐できたという事になる。


 そんな事が出来る者となると、余程の凄腕の冒険者か、従魔が途轍もなく優れた魔物であるかのどちらかという風に考えるのが自然だが。


「ねえ、ゼノン。確か、ユーマくん達が私達と別れた時、あの子達はロマージュ共和国に行くって言っていなかった?」


 イリスに言われ、私はある可能性に気付いた。

 確かにユーマ殿達があの国へ行ってからの時期と、ダンジョンを攻略したという時期はある程度一致している。

 更にベヒモスの様な魔物と渡り合える従魔を連れているパーティーなど、私達は1つしか知らない。


 既にある程度の確信を持った私は、ラーゼ殿に尋ねた。


「ラーゼ殿、そのダンジョンを攻略したパーティーの名前は分かるか?」


「勿論ですよ。皆さんの知っている、あの銀月の翼ですよ」


 やはりそのパーティーはユーマ殿達だった。


「やはりそうか。しかし、ユーマ殿達がベヒモスを倒したのなら納得は出来るが、何故彼らはそのダンジョンに挑戦したのだ? あのダンジョンの危険度は調べればいくら彼らでも、相当手を焼く筈だが」


「そうだな。いくらアリア達がいても、あのダンジョンの魔物の全体の平均ランクはSランクにも届いている。それを攻略したとなると、あいつらに何か理由がある筈だ。でなきゃ、あのユーマが功名心で家族同然に大切にしている仲間達をそんな危険に巻き込むなんて、まず考えられねぇ」


 私とバロン殿がその理由が何なのかを考えているとき、イリスが何かを思い出した。


「そういえば! あのダンジョンには確か、数十年前にそのダンジョンから命からがら帰還した冒険者が言った情報の中に、神器の杖があるって話を聞いた事があるわ! もしかしたら、ラティちゃんの為にその杖を手に入れようと挑戦したんじゃないかしら!」


 成程、神器の杖か。

 確かラティ殿は自身の固有魔法の効果で、常人を……否、魔族やエルフを遥かに超える魔力量を誇っている。

 ラティ殿の使っているエンシェントロッドもかなりの物だが、それでも耐えられる魔力量には限界がある。


「もしかしたら、ラティさんの魔力に耐えられる新しい杖を求めて、それでダルモウス山脈のダンジョンにその神器の杖があるという情報を入手して、それでユーマくんやクレイルくん達はそれを手に入れようとラティさんの為に挑戦したのでは」


「有り得るわね。私とゼノンはアルビラ王国でコレットというハイエルフにもあったけど、あの人もユーマくんやラティちゃんと似た部分があったわ。それに従魔のティターニアのアインやアリア、クルスにレクスもラティちゃんの為に一致団結したとなれば、話が繋がるわね」


 そして彼らは見事にダンジョンの魔物達を倒し、遂にはベヒモスの討伐をも達成して神器の杖を手に入れたという所か。


「してラーゼ殿、ユーマ殿達はその後どうなったのか?」


 私はラーゼ殿に彼らのその後の事を聞いた。


「それがですねぇ……何と彼らはそのダンジョン攻略の実績と、これまでの実績で史上最年少でSランクに昇格したのですよ!」


「何と!? それは真か!?」


「真ですよ!」


 私達は彼らがSランクになった事を知り、とても嬉しくなった。


「あいつら、遂にSランクになっちまったか……到頭俺達を追い越しちまったな」


「ですが納得もしますよ。あの子達は初めて会った時からランクに見合わない実力を持っていましたからね」


「寧ろ私達を超える様にもなって、逆に嬉しくなってしまうわ」


 イリスは嬉しさのあまり、涙ぐんでいた。


「そうだな。以前このエリアル王国で発生したスタンピードを鎮圧させた時にも、その活躍を聞いた際はとても嬉しく思った。そして今、彼の者達はSランクの冒険者となり、この私達を超える者となった。これ程嬉しい事は無い」


「ああ、俺達もだ。あいつとの出会いは偶然だったけど、それでもこうしてアライアンスを結んだ仲間としてあいつらの活躍をこうして聞けるのが嬉しいぜ」


 私達はユーマ殿の存在があったからこそ、こうして繋がる事が出来た仲間。

 それはつまり、ユーマ殿の存在が私達を繋ぐ架け橋となっている。


 今の私達にとって、ユーマ殿はこれ以上にない掛け替えのない存在となっている。

 その存在がこうして力をつけている事が、私達の喜びとなっていた。


「よおし! なら今日は、ユーマ達の昇格を祝って、このまま飲み明かそうぜ!」


「乗ったぜ、バロン! とことん付き合うぞ!」


「仕方ありませんね。今日はめでたいですから大目に見ましょう」


「当然私達も付き合うわよ! ねえ、ゼノン!」


「ああ、そうだな。スニィ達も一緒に入れて、何処か大きな店に移ろう。そこで全員で宴と行こうではないか」


「おお! ゼノン、ナイスだな! よし! 皆、行こうぜ!」


 それから私達は、ユーマ殿達のダルモウス山脈のダンジョンの制覇、Sランクの昇格を祝して酒場で従魔達と共に騒いだのだった。


 ユーマ殿、お主達の活躍は私達の耳にも届いている。

 これからも頑張って精進するのだぞ。

 我々も負けずに、これからの冒険者稼業を頑張るからな。

ここまでお読みくださって、誠にありがとうございます。

「面白い」、「続きが気になる」、「更新頑張れ」と思いました方は、ブクマ、感想、評価してくださると今後の励みになります。

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