第145話 イリアステルと久々に会話
前回のあらすじ
ダンジョンから帰還したユーマ達はセレストの街のギルドで報告をする。
そしてその功績で、ユーマ達はSランクへと昇格した。
ギルドでSランクになった後、僕達は今日はこの街の宿に泊まり、明日ギルドで査定された素材のお金を受け取ったら首都に戻る事にした。
宿をとるべく街を歩いていた途中、僕はある事を思い出した。
「あっ、そうだ」
「どうした?」
「明日には首都に戻るから、今の内に教会に行ってイリアステル様に挨拶しておこうと思って。これから行ってくるから、クレイル達は先に宿をとってて」
「分かった。教会から出たら、通話の腕輪で知らせてくれ」
「分かった」
「ユーマくん、あたしも一緒に行くわ。このウラノスはイリアステル様が創った物だから、例え会う事は出来なくてもお礼のお祈りがしておきたい」
ラティも同行を希望し、結果教会に行くのは僕とラティ、そして僕達の傍にいるアリアとクルスも一緒に行く事となった。
僕達はクレイルとコレット達と一旦別れ、教会を目指した。
場所は分からなかったが、何人かの町の人に尋ねて教えて貰い、暫くして教会に行く事が出来た。
アリアとクルスをミニサイズにしてから中に入り、シスターに目的を話してイリアステル様の女神像がある祈りの間へと案内された。
女神像の前に跪いて手を組んでお祈りの姿勢を取ると、久し振りに意識が遠のく感覚がして、次に目を開けるとそこはあの神の間の空間だった。
傍を見ると、そこにはミニサイズのアリアがいた。
「お久し振りですね、ユーマさん、アリアさん」
声がした方に振り向くと、そこには女神イリアステル様の姿があった。
「お久し振りです、イリアステル様。中々来る事が出来なくて、申し訳ありませんでした」
僕は深々と頭を下げて、結構ご無沙汰をしていた事をお詫びした。
「いえいえ、どうか気になさらないでください。ユーマさんは冒険者として世界を巡る旅をしているのですから、中々教会に来る事が出来ないのは私も承知しています。それに、ここから皆さんの動向は見守っていましたので、あまり気になさらないでください」
イリアステル様からのお許しを貰い、僕は本題に移った。
「ありがとうございます。それでここからが本題ですが、先日首都のダンジョンでこのアメノハバキリを頂きました。このような素晴らしい神器を贈って貰えて、本当に嬉しいです」
腰に差したアメノハバキリを指して、僕はこの神器を与えられたお礼を言った。
「お気に召したようで何よりです。その神器を使いこなしている様子も見ていましたので、私も嬉しいですよ。それに、今も下界からもう1つの感謝のお祈りを感じています。ラティさんも神杖ウラノスを手に入れた事を私に報告し、感謝を伝えています」
ちょうど今もラティがウラノスを手に入れた事を報告している様だ。
無事に伝わっているようで何よりだ。
『実は、そのアメノハバキリの事でイリアステル様にお聞きしたい事があるのです』
そこに、アリアがイリアステル様に尋ねた。
「何でしょうか?」
『ユーマのアメノハバキリがイリアステル様が地球の神様の代理として与えた転生特典というのは、あの手紙で知っています。ですが、ダンジョンの攻略したドロップアイテムをその転生特典として与えるというのは大丈夫なのでしょうか? 以前イリアステル様は仰っていました。『神が1人の人間に運勢や人生などで干渉しすぎると、その人の身に反動が掛かって身を滅ぼしてしまう事がある』と。ユーマの転生特典というのは分かっていますが、ダンジョンに干渉してまでユーマに渡して大丈夫なのでしょうか?』
アリアはあの時、僕の為にダンジョンに干渉しえアメノハバキリを与えて事の懸念を聞いた。
「それに関しましては問題ありません。確かに私は転生者であるユーマさんであっても、既にこのアスタリスクの人間である彼に必要以上の干渉はしない様にしています。この神の間に招きいられるのは、彼が神の力で転生した存在である事で神の力が受けやすくなっているからです。そしてアメノハバキリの件は転生特典を与えられていない事が働いて、私の好きなタイミングで与えられる事が出来たのです。ですから、ユーマさん達があのダンジョンを制覇した時にその権限を使って与えたので、全く問題はありません。故にユーマさんの身に反動が掛かる事もありませんので、ご安心ください」
イリアステル様の説明に納得したのか、アリアは安心した。
『それを聞いて安心しました。ありがとうございます』
「いいですよ。元々はあの地球の神が転生特典を与えるのを忘れたのが原因なのですから、そこまで悩ました責任はあのドジ神にあります」
突然の地球の神様に対する容赦ない発言に、僕は遠い次元で「ぎゃん!?」というトンガリ頭の名前の叫び声が聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
それからは僕達はこれまでの出来事を話した。
僕とクレイルが神器のミネルヴァとメルクリウスに認められた事、
デミウル工房で、僕の魔剣や魔槍を強化して貰った事、
ダルモウス山脈のダンジョンでアメノハバキリを使いこなして戦えた事、
そのダンジョンの攻略で僕とクレイルが新たにドラグーンフォースとフェンリルフォースを編み出した事、
ボスのベヒモスを倒してラティが神杖ウラノスを手に入れた事、
そのダンジョンを攻略した事と、それまでの実績でSランクになった事、
それらは全てイリアステル様もここから見ていたので知っていたが、こうして僕達の口から聞かされてとても嬉しそうだった。
「本当にありがとうございます、ユーマさん、アリアさん。やはり人の口から直接聞かされると、見ているよりも断然嬉しいですね」
それからも、僕達は神の間にいる時間が許される限り、イリアステル様と語り合っているのだった。
やがてその時間が訪れ、僕とアリアはイリアステル様にお別れの挨拶をした。
「ではイリアステル様、今日はこれまでですが、また教会に来る時がありましたら必ず来ます」
『どうか楽しみにしていてください』
「はい。私はこれからもここであなた達の事を見守っています。また来る日を楽しみにしていますから」
そして神の間から意識が無くなり、次に目を覚ますと僕は教会の女神像の前にいた。
「ユーマくん、あたしはお祈りが終わったわよ。そっちは終わった?」
隣のラティに声を掛けられ、僕は立ち上がって答えた。
「うん。こっちも済んだよ。それじゃあ、クレイル達のいる宿へ行こう」
「うん」
僕達はシスターにお礼を言って教会を後にし、通話の腕輪でクレイルとコレットに連絡を取った。
2人もあれからすぐに宿を取り、僕達はその2人が取った宿へ向かった。
ここまでお読みくださって、誠にありがとうございます。
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次回予告
ユーマ達はセレストの街から一旦、首都へと移動する。
メビレウス大陸の国を全て回った事で、4人は次なる目的地を話し合う。
次回、新たな旅路に向けて
次回で第8章が終わりです。