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第143話 神杖ウラノス

前回のあらすじ

ベヒモスと決着をつける為に、アインの鱗粉を吸わせる作戦を実行したユーマ達は、見事にベヒモスの耐性を奪う事に成功する。

そして、全員の力を合わせて、遂に超獣ベヒモスを討伐する事に成功した。

 ボス部屋の奥にやってきた僕達は、その場所の1ヵ所にだけ光が指した所がある事に気付いた。


 そしてそこに、1本の神々しい杖が鎮座するかの様に存在していた。


「あれがガリアンさんの言っていた神器の杖……」


「ええ。これこそが、このダンジョンの攻略のアイテムで、今までに何人もの冒険者達が挑戦して、あのベヒモスに敗れて命を落としたり、命からがら脱出したりして手に入れる事が出来なかった杖よ」


「俺達、遂にこいつを手に入れる事が出来たんだな」


「さあ、ラティ。今こそこの杖を手にするんだ。その為に、僕達はここまで来たんだ」


「うん」


 ラティはゆっくりと杖に近づき、両手で杖に触れ、地面から引き抜いた。

 するとのその瞬間、神器の杖を中心に差し照らされていて光がラティの手の杖へと集約され、光が消えた時杖が輝きだした。


「これで、この杖はあたしの神器になったの?」


「一先ずはね。後はユーマがアメノハバキリにやった様に自分の魔力を流して本当の主として認められれば、その神器は正真正銘ラティの物よ」


 コレットからの説明を聞くと、アリアが何かを発見した。


『ユーマ、あそこに何か落ちています』


 アリアの指した所を見ると、1枚の紙が落ちていた。

 そこは、ラティが杖を引き抜いた場所だった。


「何だろう、これ?」


 僕は紙を拾い、中身を開いた。


「ラティ、この紙にその杖の説明が記されている。今から読み上げるけど、これは読み終えると自動的に消滅する仕掛けになっているとも書かれているから、この説明をよく聞いてね」


 ラティが頷き、僕はゆっくりと丁寧に説明文を読み上げた。


 この神器の杖の名前は、神杖(しんじょう)ウラノス。

 女神イリアステル様が創った、神器の1つで、最強の杖だ。

 この杖は魔力の循環率において随一のヒヒイロカネを中心に作り上げられていて、先端部に埋め込まれている虹色の大きな宝玉は「虹幻晶(こうげんしょう)」という世界に2つとない宝玉で、これもイリアステル様がこの杖の為だけに創った宝玉らしい。


 そしてこの杖にも神器特有の特殊能力が備わっている。

 ウラノスの特殊能力は、森羅万象、つまり、自然のあらゆる現象を所有者の意のままに操れる能力だ。

 その気になれば、一定の場所の空気を一定期間から永久まで無くす事も出来るし、休火山を活火山に変える事も出来れば、水面を割って旧約聖書に出て来るモーセの場面のような事だって出来るという、僕がこれまで見てきた神器の中でも特にチートな能力を持った杖だ。


 この森羅万象の能力を聞いた時の皆は、ラティやクレイルは勿論、アリア、コレット、アインまでもが銅像の様に固まっていた。

 かくいう僕自身も固まってしまった。


「神器がとんでもないというのは知ってはいたけど、これは下手するとユーマのアメノハバキリに引けを取らないとんでも能力ね」


「ああ。この自然界のあらゆる現象を意のままにとか、そんなのどうやって防げばいいのかわかんねえよ」


 流石のクレイルもこの杖から繰り出される能力の脅威が分かった様だな。

 確かに、これに関しては僕も防ぐ手段が思いつかない。

 イリスさんの無効魔法ならもしかしたらと一瞬思ったが、あれは魔法の発動を無効にする物だから、神器の特殊能力に通用するとは思えない。

 だから、イリスさんや僕でもこの杖の脅威を防ぐ事は出来ないという事だ。


「何だか僕達、とんでもない神器を手に入れてしまった様だね」


「ええ……これから使う事になるあたしだって、既に怖いわよ……」


『説明書にはまだ書いてありますか?』


 アリアに尋ねられ、僕は再び説明書に目を通し、まだ未読の部分を見つけた。


「最後に注意事項がある。どうやらイリアステル様からのメッセージの様だ」


 この杖を所有する者は清らかな心の持ち主でなければならない。

 この杖の所有者が邪な心を持つ者であると、このアスタリスクを思いのままに出来る危険性がある事から、イリアステル様はこの杖にそういう制限を掛ける事でウラノスの悪用を防いだのだろう。


「ならさ、ラティならこいつの所有者になれるんじゃないか? ラティやユーマ程、清らかな心を持った奴なんて俺は他に知らないぞ」


「そうね。目の前で助けられる命を迷わず助ける優しさ、私達の身の危険を優先させて神器を諦めようとする思いやり、ダンジョンの情報収集をした時にその危険度を知って私達に謝罪した誠実さ、どれも素晴らしい清らかさね。あなたなら必ずその杖を使いこなせられるわ」


 クレイルとコレットはラティがウラノスに所有者として認められ、使いこなす事が出来ると確信していた。


「ラティ、僕もだよ。君は誰よりも優しい。そして、迷う事無く人々の為に動ける事が出来る程の清い心を持っている。その神器は、まさに君の為にある様な物だ。君ならその神器を使いこなす事が出来ると、僕達は信じているよ」


 僕の言葉に、クレイルも、コレットも、アリアも、レクスも、アインも頷いた。


「グルルルゥ」


 クルスもラティの頬に顔を摺り寄せて、「ラティなら出来るよ」と励ました。


「ありがとう、ユーマくん、皆。分かったわ。あたしやる!」


 ラティは懐から魔力回復のポーションを何本も飲んで魔力を回復させ、そしてウラノスを両手で持って上にかざした。


「神杖ウラノスよ。あたしの名前はラティ・アルグラース。あなたの主になる者の名前よ。あたしの魔力を受け取って、あたしを所有者として認めてください!」


 ラティは貯蔵魔法で無尽蔵に溜め込まれた魔力があるのを利用して、遠慮なくウラノスに魔力を流した。


 ウラノスもラティの魔力に反応して輝きだし、所有者として認めるかの試練を開始した。


 僕やクレイルの時と違って、ラティは何ともなさそうな顔で次第に流す魔力を強くした。


「流石ラティね。普通なら消費する魔力で顔色が悪くなる所だけど、あの子は魔法が中心の戦闘スタイルだから魔力の消費ならここにいる誰よりも慣れている。だからこその神器に魔力を流しても平気そうな顔をしていられるのね」


 コレットがラティを評価している間に、やがてウラノスの輝きが治まった。


「これで、あたしは改めてウラノスの所有者になったの?」


「ええ。おめでとうラティ。これでその神杖ウラノスは正式にあなたの物よ」


 コレットが言った瞬間、ラティは涙をボロボロと流し始めた。


「やった……あたし、本当に神器を手にしたのね……」


 僕はそっとラティを抱き締め、背中を擦ってあげた。


「おめでとう、ラティ」


「ありがとう、ユーマくん」


 僕達の下に、クレイルとコレットも寄って来た。


「やったな、ラティ! これで、神器持ちが全員揃ったな!」


「ええ。私とユーマが2つ、クレイルとあなたが1つ。これで私達銀月の翼は、史上最強のパーティーになったと言っても過言ではないわ」


「ありがとう、クレイルくん、コレットさん」


『おめでとうございます、ラティ。あなたならやれると信じていました』


「おめでとう、ラティ」


「ウォン」


「グルルルゥ」


 アリア達もラティに寄り添い、身体を密着させて祝った。


「ありがとう、クルス、アリア、レクス、アイン」


 こうして僕達銀月の翼に4人目の神器の所有者が誕生し、僕達が歴史に名を遺すパーティーとしての新たな項目が誕生したのだった。

ここまでお読みくださって、誠にありがとうございます。

「面白い」、「続きが気になる」、「更新頑張れ」と思いました方は、ブクマ、感想、評価してくださると今後の励みになります。


次回予告

神杖ウラノスを入手して無事に攻略が認められたユーマ達は、ダンジョンを脱出後麓のセレストの街へと帰還する。

ギルドで攻略達成の報告をすると、多大な評価を受け、4人にあるイベントが発生する。


次回、帰還、そして昇格

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラティが物凄いヒロインしてる。しかも 「主人公と一緒に」「戦う」「幼馴染の」「心優しくて」「強くて」「可愛らしい」「ヒロイン」
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