第142話 超獣討伐
前回のあらすじ
ベヒモスの耐性を突破する為に、様々な攻撃を行った結果、ユーマは質量を持った属性ならダメージを与えられる事に気付く。
そしてアインの鱗粉を吸わせる有効策も思いつき、その準備を進ませるために前衛組と時間稼ぎを行う。
「少しでも奴の戦闘力を奪うよ! アリア! 僕と同時に荷電粒子で挟撃だ!」
『分かりました!』
アリアはベヒモスの頭を両前脚で踏みつけ、その勢いで僕の位置とは正反対の場所に立った。
「サンダーホークの能力解放!! 荷電粒子砲!!」
「荷電粒子咆哮波!!」
雷属性の干渉力を強化した状態でのアメノハバキリを媒体にして放った荷電粒子砲と、アリアの雷属性の上級ブレスが挟み撃ちとなってベヒモスに炸裂した。
しかし、強力な魔力耐性でベヒモスは殆どノーダメージだった。
「でもお陰動できが止まったぜ! レクス! 畳みかけるぞ!!」
「ウォン!!」
今の攻撃でベヒモスの動きが止まった一瞬を突く為、戦闘形態のクレイルと、俊敏なレクスがベヒモスに突貫した。
ベヒモスは2人の猛攻を真正面から受け、頭部の角を振り回して2人を弾き返した。
「今だ! ユーマ!!」
「オッケー、クレイル! アリア!!」
『はい!!』
僕はドラグーンフォースのスピードで接近し、ミネルヴァを一閃して左の角を切断する事に成功した。
頭部の角が片方失われた事で、ベヒモスは頭部のバランスが崩れて一瞬だが右側に首が傾いた。
『あなたにはそのバランスはすぐに建て直せても、その隙があれば十分です!! ジェノサイドクラッシャー!!』
アリアは両前脚に強力な雷の魔力を集約させ、巨大な雷を纏った爪を振るってベヒモスの顔面を攻撃した。
雷属性としてのダメージは耐性で防がれたが、爪による物理的なダメージは受けていた。
その証拠に、ベヒモスの顔面に巨大な爪跡がついていた。
「グルルルルルゥ!!」
更に首元にレクスが噛みついた。
ベヒモスはすかさず頭を振り回してレクスを地面に叩きつけて引き剥がした。
『まだです!!』
今度はアリアが喰らい付き、ベヒモスを組み伏せた。
『ユーマ、クレイル! こっちは準備が出来たわ! 一旦そこから下がって!!』
その時、通話の腕輪からコレットの声が聞こえ、瞬時に向こうの準備が整った事を理解し、僕とクレイルはレクスと一緒にその場からコレット達の所へ下がった。
「アリアが奴を抑え付けている今がチャンスよ! クルス、お願い!」
「グルルルゥ!!」
アインの合図でクルスが翼を羽ばたかせ、巨大な竜巻を放った。
「さあ! この鱗粉を加えた竜巻を受けなさい!!」
その竜巻に、アインが翅から鱗粉を撒き、竜巻は無色から鱗粉の虹色が加わった虹色の竜巻に変化した。
「アリア!! もういい!! そこから離れて!!」
『分かりました!!』
アリアが間一髪で離れた直後に、ベヒモスの顔面に竜巻が命中した。
竜巻自体はクルスの魔力で生み出された風魔法な為、風自体はベヒモスの耐性で効果が無かったが、僕達の狙いは別にあった。
竜巻が止み、ベヒモスが風圧から解放された時、突然ベヒモスの様子が一変した。
「どうやらあたしのレジスト能力を低下させる鱗粉の効果が表れた様ね。あの巨体だと普通の量なら効き目が出るのに多少の時間がいるけど、クルスの竜巻のお陰であの巨体に見合う量を吸わせる事が出来たわ」
これこそが、アインの鱗粉を遠距離から吸わせて耐性を奪う為の作戦だった。
ベヒモスの身体はアリアを上待る巨体で、その巨大さからすぐに効き目が出る程の量の鱗粉を吸わせるには、目の前まで接近する必要がある。
だが、アインは物理的な防御力は皆無な為、ベヒモスの攻撃をまともに受ければ一撃で殺される危険がある。
そこで僕が考えた作戦が、風の勢いで遠距離から鱗粉を吸わせる事だった。
大量の鱗粉とそれに見合う威力の風を生み出す為の魔力、そしてその鱗粉を生成する為の時間を僕、アリア、クレイル、レクスがベヒモスの注意を惹きつけて稼ぎ、準備が出来たらアリアがその場に抑えつつ僕達は巻き込まれない様に離れ、クルスとアインの合体技の鱗粉の竜巻を放ち、ベヒモスの顔面に目掛けて竜巻を当てて鱗粉を直接吸わせる。
これでベヒモスに接近しなくても鱗粉を確実に吸わせる事が出来るという訳だ。
「さあ! 今ならベヒモスに魔法が通じる筈だ! 全員、魔法を中心に攻めて奴を仕留める!!」
「「「了解!!」」」
『分かりました!!』
「グルルルルゥ!!」
「ウォン!!」
「任せて!!」
僕達は決着をつけるべく、ベヒモスに最後の勝負を仕掛けた。
「いっくわよお!! ゾディアックメテオ!!」
アインが放った13個の隕石が全弾ベヒモスに炸裂した。
元々効果が比較的あった土属性の質量のダメージに加えて、炎属性のダメージが入り、ベヒモスは大ダメージを受けた。
しかも失った耐性の中には防御力も入っていた様で、隕石による物理ダメージもさっきより大きかった。
「行ける! 今度はこっちだ!! ライトニングタイガー、サンダーマンモスの能力解放!! 荷電粒子砲!!」
続けて僕が、2体の雷属性の魔物の能力を解放させたアメノハバキリを媒体にした荷電粒子の魔力波を放ち、それがベヒモスの右肩を貫通させた。
耐性が失われた事で、今度は確実に貫通させる事が出来た。
「こっちにもいるぜ!! メテオストライク・ブレイク!!」
次の瞬間に、クレイルが加速魔法とフェンリルフォースによる超加速で、ベヒモスの左目の前まで移動した。
そしてクレイルのフェンリルフォースによって強化された一撃がベヒモスの左目を抉り、左側の視界を奪う事に成功した。
「ガルルルルルゥゥゥゥゥゥ!!」
「グルルルルルゥゥゥゥゥゥ!!」
更にレクスとクルスの地上と空中からの挟撃で、ベヒモスは僕が貫通させた右肩に更に大きなダメージを負った。
「メテオスコール!! 更にユーマのマジックアイテムのおまけつきよ!!」
コレットのユグドラシルとアルテミスから放たれた隕石の如くの矢の雨と、制御魔法で操作された白百合、黒薔薇、ジルドラスの追加攻撃で、ベヒモスの身体の左側に多大なダメージを与えた。
『今なら、この攻撃には耐えられますか!! プロミネンスコア!!』
そこにアリアが炎属性の上級ブレスを放ち、太陽の如くの炎の魔力波がベヒモスの背中を大きく抉り取った。
「今こそ、この元素の杖に溜められた魔力を全て解放するわ!! 全魔力解放!! 八岐大蛇!!」
ラティが左手の元素の杖に魔力を注ぎ、元素の杖の宝玉に溜められていた全属性の魔力を全て解放させて強化させた、超特大の八岐大蛇を発動させた。
元々巨大な八岐大蛇が、元素の杖に溜められた全ての属性の魔力を解放した事で、これまでの八岐大蛇とは比べ物にならない程の巨大さと、魔力量を誇っていた。
ベヒモスはその魔法を視認し、今の自分では耐えきれる自信がなかったのか、その場を移動して躱そうとした。
「させない! デビルオクトパスの能力解放!!」
僕はそれを阻止するべく、とっておきのデビルオクトパスの能力を解放し、アメノハバキリの刀身を鞭の様に延ばして振り回し、ベヒモスの左後ろ足を切断させ、更に手首を捻って全身を斬り刻んだ。
刀身に乗せられていた僕の殺気が能力によって隠され、ベヒモスも迫りくるアメノハバキリに気付かなかった。
その直後に、ラティの八岐大蛇が全て決まり、ベヒモスは全ての頭によって致命傷を負って倒れていた。
「……やったのか……?」
クレイルがそう呟いた瞬間、ベヒモスは残った右目を開け、満身創痍になりながらも立ち上がった。
「まだ息が残っていたのか。でも、既に虫の息だ。僕が仕留める」
僕は両手の神器に魔力を流し、ドラグーンフォースのスピードで一気に距離を詰めた。
「超獣ベヒモス、これで終わりだ!!」
僕はミネルヴァとアメノハバキリを交差させて、ベヒモスの首を胴体から切断させた。
首を失った事で、ベヒモスの身体は崩れ落ち、今度こそ絶命させる事が出来た。
完全に絶命が確認出来た事で、僕達は緊張が解けたからか思考が現実に追いついていなかった。
「やったのか……今度こそ倒したのか……」
「ええ……私達は勝ったのよ……」
「あたし達が、『超獣』と呼ばれた魔物を討伐したのね……」
「やったわね! アリア!!」
『はい、お姉様!!』
「グルルルルルゥゥゥゥゥ!!」
「ウォオオオオオオオオオンンンンン!!」
クレイル達は勝利に喜び、アインとアリアは共にはしゃぎ、クルスとレクスは勝利の雄叫びを上げた。
「やった……勝ったぞ……」
そして僕はドラグーンフォースを解除し、今回の戦闘による疲労でふらつきながらも、ミネルヴァを杖にして立っていた。
「やったわね、ユーマくん!!」
そこにラティが抱き着いてきた。
「あたし達、このダンジョンを攻略したのね!」
「うん。これで、ラティは神器の杖を手にする事が出来る。僕達はやっとここまで来たんだ」
「ありがとう……ユーマくん……皆……」
ラティは感謝のあまり、涙を流しながらも僕達のお礼を言った。
「お礼を言うのは後回しよ、ラティ。まだ神器の杖を手に入れてないんだから」
コレットに指摘され、僕達は本当の目的を果たすべく、ボス部屋の奥を目指した。
ここまでお読みくださって、誠にありがとうございます。
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魔物情報
ライトニングタイガー
Aランクの獣種の魔物。
全身の体毛や爪、牙に静電気を溜め、体内の電気を発する器官と合わせる事で強力な放電を発する。
また、常に帯電した状態な為、従魔になっても下手に触ると感電してしまう為に、接触には細心の注意が必要。
討伐証明部位は牙。
サンダーマンモス
Sランクの獣種の魔物。
口から空気中に含まれた魔力を吸収し、体内の電気を発する器官に溜める事で、鼻先から電撃を発射するという攻撃法を持つ。
体内で生成される電気は、時に周囲一帯を吹き飛ばす事もあり、自身の巨体も相まって雷を溜め込んだ爆弾のような危険な魔物である。
討伐証明部位は牙。
次回予告
遂に神器の杖がある場所へとやって来たユーマ達は、その神器を発見する。
その神器には、その強力な能力故にミネルヴァやメルクリウスとは別にある制約がかけられていた。
次回、神杖ウラノス