第14話 魔法訓練
前回のあらすじ
冒険者になる為の修業が始まったユーマとラティ。
最初の訓練はゲイルとダンテの2人による、武器での戦闘訓練だった。
2人は連携してゲイルに挑むが一蹴され、同時に冒険者になる際の死の覚悟というのを突き付けられる。
それから暫くして、お父さんが手に持った訓練用の大剣を地面に置いた。
「よし、今日はこれまで。2人ともよく頑張った」
僕達は息を切らしながらも、なんとか口を開いた。
「「はい……ありがとう……ございます……」」
お父さんの言葉により、今日の武器での訓練は終わった。
僕達2人はよく見ると、あちこちに痣や擦り傷が見えた。
対してお父さん達は流石というべきか、息一つ乱れておらず、しかも無傷だった。
その結果、今日の訓練の成果は1回も一撃を入れるどころか、掠りすらしなかった。
でもまだ訓練は始まったばかりだ。
模擬戦の繰り返しを通して、ラティとの息も段々良くなってきていた。
でも、お父さん達にはこのままいけば、僕達は最高のコンビなると言われ、とても嬉しくなった。
「はいはい、2人共。今、怪我を治してあげますからね」
振り向くと、お母さんが笑みを浮かべて来ていた。
「ヒール」
その掛け声とともに、僕達の体が優しい光に包まれて、たちまち痣や怪我が治っていった。
「凄い! 体が痛くなくなった!」
「光属性の初級回復魔法、ヒールよ。初級とはいえ、魔力を練り上げれば今みたいに複数の人数の完治も出来る様になるわ」
これが回復魔法か。
こうして戦闘訓練や魔法を見ると、今更なのだが本当に異世界に転生したんだなとより実感が湧いた。
「お弁当を作ってきたから、みんなでお昼にしましょう。食べ終わって少ししたら、私達による魔法の訓練よ」
「「はいっ!」」
魔法の訓練。
武器での訓練もだが、実はこれが一番楽しみだったんだ。
いくら精神年齢が前世と合わせて20歳を超えても、魔法が出来るとなると体は子供だが心まで童心に戻った感じがする。
お母さんとエリーさんが用意したお弁当を食べ、少し食後の休憩をしたら、今度はお母さんとエリーさんによる魔法の訓練だった。
「実技訓練の日の午後は、魔法の訓練を行います。魔法を使用する際、一番重要な事は魔力の制御です。魔法は魔力を練り上げて、イメージを纏めて使いたい魔法を形にして、魔法として放出するのが一連の流れです。ですが、自分の中に流れる魔力の制御が出来ていないと、魔法を使う事は出来ません。それでも無理して魔法を使おうとすると、体内の魔力が暴発して魔力による衝撃波が発生し、辺りを吹き飛ばしてしまう事があります」
そうなんだ。
こうして聞いてみると、魔力というのは体内に流れる前世でいう「気」に似た物なのかもしれない。
魔力の練り上げは「気」で例えるならおそらく、技を出す際の精神統一と同じかもしれない。
「よって、2人にはこれから毎日魔力制御の訓練を行い、それに魔法の実技訓練を行います。人間の魔力は個人差でその濃度が変わるけど、2人の場合は常人より遥かに濃密な魔力だというのが分かるわ」
「どうして?」
「アリアちゃんとクルスちゃんの存在よ。実は、高ランクの魔物と適合した者の魔力は、普通より濃度が高いというケースが多いの。そして2人は、その中でも最高ランクのEXランクの竜神と特異種のグリフォンと適合した。実は前から、あなた達の魔力を私の魔法で測ってみてたんだけど、2人の魔力は現時点で私達の魔力を遥かに超えた濃度と魔力量なの。しかも、あなた達はまだ5歳だからこれからの修業でさらに魔力量は増えるわ。だから、まずは魔力制御から始めないと暴発した時の被害は計り知れない。分かったかしら?」
「難しい事は分からないけど、その訓練をしてからの方が後で役に立つんでしょ? それなら、あたしはやります」
「僕もだよ、お母さん。魔力制御が魔法訓練の基礎なら、それをしっかりやってから魔法を練習する」
「いい子ね。それじゃあ、魔力制御の訓練を始めます。まずは自分の体の中心に意識を集中させて」
そう言われ目を閉じて体の中心に意識を集中させると、血液とは違う何かが体の中心へ流れていき1カ所に集まっていく感覚がした。
ふとラティの方を向くと、彼女も同じ感覚を感じたのか同じ様に僕の方を向いていた。
「どうやらできたみたいね。今あなた達が感じているもの、それが魔力よ。魔力は体の中心にある魔力炉と呼ばれる部分から全身に流れているの。そしてその魔力を一部分に集中すると、今の様に目に見える様になるわ。次はその魔力を、両手の間に流して集束してみて」
その体の中心に集まった魔力を少しずつ両手の間に流すように流してみた。
すると、僕とラティの両手の間に少しずつだがうっすらとした塊が現れ、それは段々と大きくなっていった。
「2人共上出来よ。そのうっすらとしたのが、魔力の塊よ。2人とも初めてやるのに、これほど上手く魔力の制御ができるなんて。2人は魔法の適正がとても高そうね」
「これなら、次の段階に移っても問題なさそうね。次は魔法の8属性の魔力を制御してみましょう。まずは私達がお手本を見せるから、それに続いて同じ事をやってみて」
お母さんとエリーさんは僕達と同じ様に両手に魔力を集中させたが、その魔力はうっすらとしたものではなく炎の様な赤い魔力だった。
「今集中して制御したのは、炎属性の魔力です。2人が最初に制御したのは、どの属性も持っていない所謂無属性の魔力です。魔力に属性を込めると、今の様に色を持った魔力に変化します。炎が赤、水が青、風が緑、土が茶色、氷が水色、雷が黄色、闇が黒、光が白とそれぞれの色に変化して制御されます」
「さあ、2人はその魔力に炎属性のイメージを込めて、私達みたいに魔力を赤くしてみて」
エリーさんに言われたけど、どうやれば。
待てよ、イメージを込めるという事は、僕は今制御している魔力に炎が燃え上がるイメージを注いでみた。
すると、僕の制御している魔力がお母さん達の魔力と同じ赤に染まった。
隣を見ると、ラティの魔力も赤に染まっていた。
しかし心なしか、僕らの魔力がお母さん達よりも赤の純度が高い気がする。
「……なんて澄みきった赤なの……色が澄みきっているのは、それほど魔力の純度が高いという事を意味するの。純度が高ければ高い程、魔法にした時の完成度や威力、効果が絶大になるの。つまり、2人が炎属性の魔法を使ったら、おそらく私達を上回るわよ」
お母さんの言葉を聞いて、僕達は嬉しくなった。
それからは、お母さん達が他の属性の魔力制御を手本として見せて、僕達はそれぞれのイメージを注いだ結果、全ての属性が澄みきった青、緑、茶色、水色、黄色、黒、白の魔力になりお母さんとエリーさんを愕然とさせた。
因みに、僕はその中でも雷属性の魔力が最も澄みきっていた。
一方ラティは、全ての属性が僕の雷の魔力と同じ位に澄みきっていた。
何でも、全ての属性を澄みきった色の魔力で制御するのは、何年も鍛錬を積み重ねた一流の魔法使いでもできるかすら怪しいらしい。
「2人は魔法に関しては天才的な才能があるわ。これから5年間、私達がとことん指導するからね。しっかりついてくるのよ」
「「はいっ!」」
それからの今日の修業は、各属性の魔力制御の反復練習をひたすら続けて、冒険者になる為の修業の1日目が終わった。
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次回予告
サラの座学の授業の日を迎えたユーマ達。
最初の授業はお金による計算だった。
そこでユーマはある罪悪感を抱く。
次回予告、お母さんの授業 通貨編
次回は21時に更新します。