第125話 強化された装備
今年も今日で終わりですが、来年以降も頑張って、今日も更新します。
前回のあらすじ
デミウル工房を訪れたユーマ達は、ラティのエンシェントロッドがいずれラティの膨大な魔力に耐えられなくなると告げられる。
その為には、ダルモウス山脈のダンジョンにある神器の杖が必要だが、そこにいるボスがSランクのベヒモスだという事を知る。
その危険度に、ラティは杖を諦めようとするが、ユーマ達の覚悟を聞き、一緒にダンジョンへ挑む事を決める。
僕達はダルモウス山脈のダンジョンに挑戦して、神器の杖を手に入れる事を決めた。
だがその為には、色々と準備も必要だ。
「よし! ダンジョンに行く事が決まった以上、僕達の装備をちゃんと整えないとね。ガリアンさん、ネルスさん、僕達の武器をお願いします」
「勿論だ。お前達が行くと言うと思って、しっかりと預かっていた武器の整備と強化を済ませておいた。これから返すと同時に、強化された事による新機能の説明もするから、しっかりと聞いておけ」
ガリアンさんの言葉に合わせて、ネルスさんが収納魔法から残りの僕の魔剣と魔槍を出し、まずは2本のエンシェントロッドを差し出した。
「まずはこのエンシェントロッドの説明からです。この2本は、皆さんからお預かりした素材から、三つ首竜の血や骨を使って強化しました。その名も、『エンシェントロッド・覇竜』です」
このエンシェントロッドは、ネルスさんが錬金魔法で杖自体に三つ首竜の血や骨を組み合わせた事で、魔力の循環率を高めただけでなく、杖自体の強度も上げた事で今のラティの魔力量にも耐えられる程の強度になったとの事だ。
更に魔法の威力もこれまで以上に底上げされていて、これでの最上級魔法ならベヒモスの魔法耐性も突破できる可能性があるとの事だ。
「今の私には、この強化が限界でしたが、間違いなく今までに強化した魔法杖では最高の仕上がりになっています」
「ありがとうございます、ネルスさん」
ラティはずっと愛用してきた杖が戻ってきて、とても嬉しそうだった。
「そしてユーマさんですが、私は基本的にラティさんのエンシェントロッドの修復と強化につきっきりでしたので、あなたのエンシェントロッドと魔剣と魔槍の強化は、私の弟子の錬金術師達に行わせました。ですが安心してください。彼らの腕は既に一流ですし、最終的な調整は私も加わっていますので、私から見ても最高の仕上がりになっています」
そう言って、ネルスさんは白百合、黒薔薇、ジルドラスを並べて順番に説明した。
まず白百合は、「白百合・迅」。
三つ首竜の風属性の首から採れた素材で強化して、風属性の付与が施された白百合だ。
風属性が付与された所為か、元々は純白だった白百合に、所々緑色が入っていて、より綺麗な彩りの剣に仕上がっていた。
風属性の効果で、攻撃に風属性が加わっての追加ダメージが与えられたり、神速効果にも風の力でより速く動けるそうだ。
黒薔薇は、「黒薔薇・雷」。
三つ首竜の雷属性の首から採れた素材で強化されて、雷属性の付与が施された黒薔薇だ。
こっちも元々は漆黒だった黒薔薇だったが、雷属性の付与によってか所々に黄色が入っていた。
攻撃時に雷属性の追加攻撃ができ、黒薔薇に備わっていた撃滅の力が強化されたらしい。
また、この2本、ガリアンさんによって柄頭にもあるギミックが追加されているらしい。
「この2本の柄頭同士を合わせてみてください」
ネルスさんに促されてやってみると、なんと白百合と黒薔薇の柄が繋がって、双頭剣になった。
「親方が剣を整備した時に、柄にもちょっと手を入れて、ユーマさんの二刀流での戦いの幅を広げる為にしたそうです」
確かに、これなら僕は片手で白百合と黒薔薇を同時に持てて、空いたもう片手でエンシェントロッドやジルドラス、そして新たに手に入れたアメノハバキリを持って戦う事が出来る。
「確かにこれなら、この状態だけでも攻撃の幅が広がります。これは凄い良いですよ。ガリアンさん、ありがとうございます!」
「おう。俺も気に入ってくれて嬉しいぜ」
そして最後にジルドラスの説明を受けた。
ジルドラスは強化されて、「ジルドラス・瘴」。
黒の獣のリーダーのべオルフの従魔だった、特異種のケルベロスの牙やデビルスコーピオンの甲殻などを使って強化されたジルドラスで、主に闇属性の効果が付与されているそうだ。
ケルベロスの牙に宿っていた瘴気が宿った槍は、ケルベロスの特徴を引き継いでおり、受けた相手の体を瘴気で蝕み、体の自由を奪う効果が表れる。
死に至らない点は、ネルスさんが錬金魔法で中和効果のある素材を組み合わせてここまで抑えた様だ。
また柄にはデビルスコーピオンの素材を使った為か、ケルベルスのと合わせて全体的に禍々しい感じの槍に仕上がっている。
見るからに闇属性の魔槍だという感じにね。
「成程。これ程に強化された武器なら、ダルモウス山脈のダンジョンの魔物にも十分通用しそうです。ガリアンさん、ちょっと素振りさせて貰っていいですか?」
「ああ、いいぜ」
ガリアンさんの許可をとって、僕達は工房の敷地内にある庭に移動した。
まずは白百合と黒薔薇の二刀流の素振りだった。
いつも通り、右手に白百合、左手に黒薔薇を持って、目を閉じつつ魔物がこちらに向かって来る光景をイメージしながら、体を動かしつつ魔剣を振った。
その結果、白百合と黒薔薇は以前よりも軽くなっていて、より振りやすくなり、攻撃した時のイメージもしやすくなった。
最後に2本を連結して双頭剣にしての素振りだったが、片方の剣で攻撃した後にもう片端の剣で攻撃する追撃や、途中で分離して交差させて斬りつけてからの連結して同時に体を捻っての連続斬りなど、あらゆる攻撃を繰り出した。
「いい感じです。最後はジルドラスですね」
そう言って2本を一旦鞘に収め、クレイルからジルドラスを受け取って構えた。
まずは突きによる一閃、そこから石突を槍に変形させて双頭の槍にしてからの振り上げ、腰を捻って右に1回転しての二連撃、更にハルバードにしての振り落とし。
そういったあらゆる動作での攻撃を出して、強化されたジルドラスの感触を確かめた。
そして問題なく、全ての武器の素振りが終わった。
「大丈夫です。どれも問題なく使えます。これならダンジョンでも戦えそうです」
「そうか。役に立てたようで何よりだ」
その後ガリアンさんとネルスさんに整備と強化してくれた分の代金を払い、僕達は工房を後にした。
宿に戻る前に、僕達は街で消耗品の補充や、ギルドでダルモウス山脈のダンジョンの情報などを集めて、これから行うダンジョン攻略の準備を進めた。
そして日が暮れて宿に戻った後、僕とラティが取っている部屋に集まり、明日からの予定を話し合った。
「明日はこのままダンジョンへ、お前の空間魔法で行くのか?」
「いや、その前に、前にコレットが言っていた、山脈の麓にある街に行こう。首都のギルドではそんなに有力な情報は得られなかったから、今度はダンジョンから1番近い街に行って、そこで情報を集めてから挑もう」
「そうね。もしかしたら、私が昔挑戦した後で何か新しい情報が出来て、それが攻略の糸口になるかもしれないからね」
コレットの同意にみんなが頷き、その翌日、僕達は宿をチェックアウトして、一旦首都を離れた。
ここまでお読みくださって、誠にありがとうございます。
「面白い」、「続きが気になる」、「更新頑張れ」と思いました方は、ブクマ、感想、評価してくださると今後の励みになります。
次回予告
首都を出発したユーマ達は山脈の麓にある街で情報収集をする。
ギルドの資料室で、ダンジョンに関する情報をすべて集める。
次回、麓の街で情報収集
次回は明日更新します。
それではよいお年を。