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第123話 ダンジョンからの帰還

前回のあらすじ

ダンジョンを攻略したユーマ達の前に現れた1本の刀。

それはイリアステルからユーマに転生特典として与えられた神器、神刀アメノハバキリだった。

ユーマはそれに魔力を流し試練を開始し、無事に受け入れられ、第2の神器を得た。

 アメノハバキリを手に入れた事で、僕達は晴れてダンジョンを攻略した事でボスのメタルグリズリーの死体から肉や素材、魔石を回収して、ワープゾーンでダンジョンの入口へと転移した。


 転移した先で、僕達は数日振りに太陽の日差しを浴びた。

 ダンジョンでの森の階層には太陽の役割を持つ光などがあったが、やはり本物の太陽の光を浴びると、体がリフレッシュした気分になる。


「ああぁっ……戻って来たな……」


 クレイルも日差しを浴びながら背伸びしやストレッチをして、暫くダンジョンの中にいた分本物の日差しを浴びていなかったストレスなどを解消している。


「ユーマくん、これからどうするの?」


「まずはギルドに行って、ダンジョンの攻略の報告と、素材の買取を済ませよう」


「素材は全部買取でいいかしらね。少なくとも、今の私達の装備の強化には若干弱い物ばかりだから」


 僕達はこの後の予定を決め、まずは街に戻って最初にギルドへ行く事にした。


 首都を目指している途中、アリアが僕にある事を聞いてきた。


『そういえば、ユーマはその新しい神器を腰に差しているんですね』


 アリアは僕の左腰に帯刀されているアメノハバキリを指して聞いてきた。


「うん。地球の神様とイリアステル様の2人の神様が、僕の為に贈ってくれた物だから、普段はこうしていようと思っていてね。ミネルヴァも僕を認めたからか、アメノハバキリと一緒に背中に差していても殆ど重く感じないから、これからはこの2つを基本的に常備していようと思っている」


『成程ですね』


 ダンジョンを攻略した後、僕はアメノハバキリをミネルヴァと一緒に収納魔法に入れずに、腰に帯刀して、ミネルヴァを背中に帯剣して持ち歩いている。


 僕にとってはミネルヴァも、整備中の白百合も黒薔薇もジルドラスもエンシェントロッドも、とても大切な物で仲間も同然の存在だ。

 こうして無事に認められた以上、こうして常に一緒にいようと思っている。


 そしてこの刀は、イリアステル様と地球の神様の想いが込められた贈り物。

 だからできる限りこうして、少しでも2人に感謝の姿勢を示したいというのもある。


「おっ! 門が見えたぞ」


 クレイルが前方に城壁が見えるのを確認し、そこに門もある事に気付いた。


 アリア達と会話している内に、既にここまで戻っていた様だ。


 城壁にいる門番の人達に冒険者カードを見せ、無事に門を通って、僕達は漸く首都まで戻って来る事が出来た。


「戻って来たな」


「そうだね」


 首都に入るなり、いきなり商人や冒険者などで賑わう声や音を聞き、僕達は暫くダンジョンにいた事もあってかなり新鮮な気分になった。


「じゃあ、早速ギルドに行こうか」


 皆も頷き、僕達はギルドを目指した。


――――――――――――――――――――


 ギルドが見えて、アリア達を従魔スペースに留守番させてから入ると、早速見慣れた人達と会った。


「おお! ユーマじゃないか!」


「おかえりなさい! 戻って来たという事は、ダンジョンを攻略したのね!」


 ワッケンさん達夜明けの風だった。

 彼らは僕達を見るなり、駆け寄ってきて声をかけてきた。


「はい。先程ボスの魔物を倒して、ダンジョンを攻略してワープゾーンで戻ってきました」


「お陰で、あたし達は更に強くなる事が出来ました!」


 僕達がワッケンさん達と話している内容を聞いていた周りの冒険者達は、ザワザワと声を上げていた。


「おい、聞いたか? 銀月の翼があのダンジョンを攻略したって」


「あいつらが来たのって、まだ数日前だぞ。それをこんな短期間で攻略したのか?」


「やっぱ従魔が強いってのもあるんじゃないか? 銀月の翼の従魔は全て最強ランクのEXランクって話だしさ」


 冒険者達は僕達がこの数日でダンジョンを攻略した事に、かなり驚いていて、色々と推測を立てていた。

 従魔が強いっていうのは、それも僕達のパーティーが有名な要素の1つだから否定はしないけど、今回は僕、ラティ、クレイルの3人だけで攻略したんだけどね。

 それも神器や新しい武器を使いこなすという目的で……。


「だから、今からダンジョンで倒した魔物の素材や魔石の換金をしに来たんです」


「そうか。じゃあ、それが終わったら、俺達と一緒に飯に行かないか? 久振りに会えた事を祝って、また皆でパアッとやらないか?」


「いいですね。それじゃあ、今から報告と換金してきますので、ちょっと待っててください」


「おう」


 僕達は一旦ワッケンさん達と別れ、受付のカウンターへと向かった。


「すみません。ダンジョンで討伐した魔物の報告と素材の換金がしたいんですが」


「はい、畏まりました。その討伐した魔物はどれ程の数がありますでしょうか? 数によってはギルドの解体部屋で行う事も出来ますが」


 営業スマイルでの受付嬢さんの言葉に、僕はこう答えた。


「そうですね……ゴブリンやオーク、オーガにリザードマン、他にもボスのメタルグリズリーの素材とかがありますから、すみませんが解体部屋で行ってくれますでしょうか?」


「はい、畏まりました。では、係りの者をお呼びしますので、少々お待ちください」


 少しして係りの職員がやって来て、僕達はその人に連れられ、解体部屋へとやって来た。


「それでは、その魔物の討伐証明部位と、換金したい素材と魔石をお出しください」


 職員に促され、僕とコレットは収納魔法からダンジョンで討伐した魔物の討伐証明部位と素材、魔石を取り出した。


 ボスのメタルグリズリーを始めとする魔物を全てだし、その数は優に100は超えていた。


「これはまた……凄い数ですね……ダンジョンを攻略した以上、ボスであるメタルグリズリーがあるのは分かりますが、他にもオーガやスラッシュリザードの素材もあるとは。もしや、ダンジョンで遭遇した魔物は迂回したりせず、出会い頭に討伐されたのですか?」


 その質問に、僕達は「はい」と答えて頷いた。


「分かりました。ではこの数ですと査定に少々お時間を頂く事になります。それまでの間、少々お待ちください」


「分かりました」


――――――――――――――――――――


 その後フロントに戻り、ワッケンさん達と合流した僕達は、飲食スペースで久し振りの再会を祝ってお酒や料理を食べ始めた。


「しっかし、まさかあそこでユーマ達に会うなんて思わなかったぜ」


「そうですね。正直、リリー達を失う事も覚悟していましたが、ユーマさん達が来てくれた事は、僕達にとっても嬉しい誤算でした。そのお陰で、僕達は従魔も含めて誰1人欠ける事なく助かったんですから」


「お礼なら、ラティに言ってください。僕が探知魔法であなた達が魔物に襲われている事に気付いて、それで彼女が迷わず助けに行こうとしたから、僕達は駆け付けたんです」


「まっ、どっかのハイエルフは尤もな言い分だが結構意地悪な事を言って、ラティと衝突しかけたけどな」


 クレイルが茶化しながら言うと、その当人のコレットは赤面しながら反応した。


「ちょっと、クレイル! 今ここでそれを言う!? 確かに私はあの時そんな事を言ったけど、それはあくまで冒険者としての心構えを言っただけで――」


「ユーマくん、コレットさんは何の事を言っているの?」


 ソニアさんに聞かれ、僕はあの時ラティがその時はワッケンさん達とは知らなかったけど、襲われている冒険者を助けに行こうとした際、コレットが冒険者の掟を言って彼女を呼び止めた事を話した。


 それを聞いたワッケンさん達は怒る事なく、寧ろ納得した様に頷いていた。


「ああ……それは冒険者として言うとコレットさんの言う事も正しいわね。私達は常に死と隣り合わせの冒険者だから、基本的にはどんな事態が起こってもそれは自己責任だからね」


「でも、同時に人としての心を大切にしているラティちゃんも正しいよ。いくら冒険者でも、結局は僕達は人間。たった1つしかない命を大切にして、助けられる命を守ろうとするのは、人としても正しいからね」


「結局は、どっちの言ってる事も正しいけど、最終的にはコレットさんも俺達を助ける事に同意してくれたんだ。ありがとう、コレットさん」


 ワッケンさんがコレットに頭を下げてお礼を言い、それに続いてソニアさん達も頭を下げた。


「いいのよ、気にしないで。私だって、魔物に襲われているのがユーマとラティの友達だって知っていたら、最初から助ける事に賛成していたから。それに、ラティを呼び止めたのは、顔も知らない全くの他人を助ける事に対してであって……それからえっと――」


 コレットは両手を振りたくって、必死に言葉を並べている。


 普段は知的であらゆる事に冷静に判断するコレットがここまで動揺する姿は、なんだか新鮮だった。

 まあ、レイザードの時や黒の獣の時とかはかなり怒りを露わにした時もあったけど、こんな風に動揺するのは珍しいな。


「まあ、それはさておきで……ユーマ、お前達はこれからどうするんだ?」


 言葉を並べているコレットをシェイルさん達に任せ、ワッケンさんが僕に今後の予定を尋ねた。


「今、僕の魔剣や魔槍、ラティの杖などをデミウル工房という所に整備で預けていて、明日整備から1週間経ちますから、取りに行こうと思っています。その後は、少し依頼を受けて他の国へ旅立とうと思っています」


「そうか。俺達は、当分はこの首都を拠点にしている。空を飛べる竜のアリアがいるお前達なら、いつでも会えるから、何かあったら俺達でよければ力になるぜ。って、Bランクの俺達がAランクのお前達に言う事じゃないかもな」


 その言葉に僕は首を横に振って否定した。


「そんな事はありません。ワッケンさん達は僕達にとっては頼りになる先輩ですから、何かあったら頼らせてください」


「ありがとうな。じゃあ、何時でも俺達を頼ってくれ」


 僕らはワッケンさん達夜明けの風と食事した後、査定が終了したという知らせを受けて先程の解体部屋に行き、そこで査定結果を聞いた。


 査定によると、どの魔物も綺麗に討伐され、加えて素材もいい状態であった為、報酬の上乗せも兼ねて僕達は合計で金貨や銀貨を大量に受け取った。


 そして久し振りというのもおかしいが、宿に戻りその日はふかふかのベッドでゆっくりと休めた。

ここまでお読みくださって、誠にありがとうございます。

「面白い」、「続きが気になる」、「更新頑張れ」と思いました方は、ブクマ、感想、評価してくださると今後の励みになります。


次回予告

整備された武器を受け取りに、ユーマ達はデミウル工房を訪れる。

しかしその際、ラティに関する重大な話を聞かされ、ユーマ達はある決意をする。


次回、再びデミウル工房へ

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[一言] ワッケンさん人格者だな あとコレットさんドライかと思ったらそんな事無かったぜ
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