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第119話 夜明けの風との再会

前回のあらすじ

ダンジョンを順調に進んでいたユーマ達は、その先で冒険者が魔物に襲われている事を知る。

ラティはすぐに助けに行こうとしたが、冒険者の掟を説くコレットに止められるも、ユーマ、クレイル、アインの言葉に自分の心を再確認したコレットは救出を決める。

そして魔物を倒し冒険者達を救出するが、その冒険者達はかつてユーマとラティが出会った、夜明けの風だった。

 夜明けの風、人族のワッケンさんとソニアさん、獣人の犬人族のシェイルさん、双子のエルフのトーマさんとカーマさんの5人で成り立ったパーティーで、僕とラティが初めてできた友人の冒険者パーティーだ。


 最初に出会った時は、僕とラティのミニサイズだったとはいえ竜とグリフォンのクルスを見て怯えたが、すぐに僕達に不快な思いをさせたと謝罪し、そに翌日僕達が初めての依頼を受ける時に、僕達に『魔の平原』の調査依頼の詳細を話してくれた。

 そして当時新人冒険者だった僕達の身を案じて、その依頼を受けるのはやめた方がいいと忠告してくれたが、僕達は己の信念に従って調査依頼を受けると決め、彼らはその依頼に同行する事を条件として聞き入れてくれ、僕達はその『魔の平原』へとやって来た。


 その際に彼らの従魔とも出会った。


 しかし、その平原にいたのは第一級危険生物のデビルスコーピオンで、当時僕達はアリアとクルスの事を秘密にしていた事と、彼らがまだ低ランク冒険者だった事が相まって、僕らは苦戦を強いられた。

 だが僕達はアリア達の正体を明かす事と引き換えにデビルスコーピオンの討伐に成功し、ワッケンさん達にアリア達の秘密を明かして、その秘密を守ってくれる事を約束してくれた。


 他にも僕達がその依頼でDランクに上がった時、冒険者として人の命を奪う覚悟も説かれ、僕達の事を案じたりもしてくれた事でより親交を深める事も出来た。


 そして僕達がローレンスの街を発つ時、彼らは街に残った事で僕達はそこで別れたのだが、まさかこの国のダンジョンで再会する事になるとはな。


「ワッケンさん、ソニアさん、シェイルさん、トーマさん、カーマさん、お久し振りです」


「また会えて嬉しいです!」


『お元気そうで何よりです』


「グルルルゥ!」


 僕とラティ、アリアとクルスは、彼らとの再会を喜んだ。


「ああ、本当に久し振りだな。それから、今さっきも助けてくれてありがとう」


 ワッケンさんに続いて、ソニアさん達もお礼を言ってきた。


「ありがとう。あなた達が来なかったら、私達の従魔が失われていたかもしれないわ」


 ソニアさんの言葉に、彼らの従魔の方を見ると、アイル達は所々負傷していて大事には至ってはいないが戦闘は難しそうな状態だった。


「私に任せてください。エリアハイヒール!」


 ラティの広範囲回復魔法で、アイル達の傷が回復し、万全の状態となった。


「ありがとうございます、ラティさん。お陰でリリー達が元気になりました」


「あのデビルスコーピオンの時も含めたら、君達に助けられたのはこれで2回目だね。本当にありがとう」


「気にしないでください」


 ラティが彼らと話している間に、クレイルとコレットが僕に尋ねてきた。


「なあ、ユーマ。あの冒険者達と知り合いなのか?」


「うん。前に話したでしょ? 僕とラティが冒険者としての初依頼を受けた時に、一緒にデビルスコーピオンと戦った先輩冒険者だよ」


「尤も、今では冒険者歴では俺達が先輩でも、実力はお前達が明らかに上だがな。冒険者はキャリアよりも実力がものをいう世界だからな」


 ワッケンさんはそう言いながらクレイル達に手を差し出した。


「お前さん達とは初めましてだな。俺達はBランク冒険者パーティー、夜明けの風で、俺はリーダーのワッケン・エルトルトだ」


「俺はクレイル・クロスフォード。銀月の翼の一員で、Aランクの冒険者だ。こいつは俺の従魔のフェンリルのレクスだ」


「ウォン」


「私はコレット・セルジリオン。銀月の翼の一員のAランクの冒険者で、こちらのクレイルの婚約者です。こっちは従魔のティターニアのアインです」


「アインよ。よろしくね」


「そうか。2人があのエリアル王国の4人の英雄の内の2人か。やっぱりユーマとラティの新しい仲間だったんだな」


 どうやらワッケンさんはクレイル達の存在を知っていた様で、3人は握手を交わし、僕はワッケンさんに気になった事を話しかける事にした。


「処で、ワッケンさん達はどうしてこのダンジョンにいるんですか? それにBランクにも上がっているし」


 ワッケンさん達はアルビラ王国領のローレンスの街を拠点にしていた筈なのに、それがロマージュ共和国領内のダンジョンにいた。

 それに別れた時はCランクだったけど、今ではBランクにも上がっている。

 まあ、彼らも冒険者だからより実力をつければランクも上がるし、新たな拠点を目指してここに来たのだろうけど、やはりその経緯というのは気になるな。


「実は、ユーマ達と別れた後、あれから俺達はローレンスの街を拠点に日々冒険者活動を続けて、お前達がエリアル王国で起こったスタンピードを鎮圧させて暫くした頃に、俺達はBランクになったんだ」


 ワッケンさん達はBランクになった後、新しい情報を調べたら、丁度その頃にはエリアル王国で起こったスタンピードを鎮圧させた4人の英雄――つまり僕達の事がローレンスの街にも伝わっていて、その時に僕達の事を知った様だ。

 そして詳しく調べ、その英雄が竜神やグリフォンを従魔にしているという事から、4人の内2人が僕とラティだと確信を持ち、残り2人のフェンリルとティターニアを従魔にした英雄――クレイルとコレットが僕達の新しい仲間と推測したらしい。


 そして僕達が元気にやり更に一躍有名になった事を喜んだワッケンさん達は、Bランクになった事を機に新たな高みを目指すべく、半年前にローレンスの街を発ち、このロマージュ共和国の首都を新たな拠点にした様だ。


 因みにその旅は商人などの護衛の依頼を繰り返して進み、このロマージュ共和国の首都を目指しながら同時に稼いでいたそうだ。


 その後首都で装備を一新した後は、このダンジョンで魔物を倒したり、ダンジョンでの依頼を受けたりして冒険者活動をしてきたとの事だ。


 しかし今日、とある依頼でこの階層にいる対象の魔物を倒した際、ちょっとしたミスでアイル達従魔が負傷してしまい、依頼を達成していたので外に出て従魔達を治療する為に急いでワープゾーンを目指していた途中、あのオーガ達に囲まれた所を僕達が駆け付けたという訳だ。


「では、ワッケンさん達はこのダンジョンに詳しいんですか?」


「ああ。俺達も1度このダンジョンのボスを倒して、ダンジョンを攻略した事があるしな。大体の各階層の情報は持ってるな」


「それでしたら、次のワープゾーンまで、一緒に行きませんか? 僕達はこのままダンジョンの攻略を続けますけどそれまでは一緒に行きますよ」


「そうだな。正直、俺達もさっきのゴタゴタで消耗している。回復のアイテムも残っていないから従魔達の傷が回復しても、当の俺達がこれじゃあ、また魔物が出てくるとただじゃ済みそうにないからな」


 ワッケンさんは僕達と行動する事で、より安全にダンジョンを出る方を選んだ様だ。

 だがこれは冒険者としては何も悪い事ではない。

 冒険者というのは、一見は自由に生きる職業に見えるけど、魔物や盗賊などの戦いが主流となる為、実際はこの世界で最も死と隣り合わせの職業だ。


 だからこそ、冒険者は生き残る為に、周りにある物は何でも利用する傾向がある。

 故に、ワッケンさんの僕達と一緒にワープゾーンに行って脱出するという判断は、冒険者という目で見たら非常に合理的かつ安全な判断だ。


 まあ、冒険者の判断や合理的などを差し引いても、元々彼らとは一緒に依頼を受け魔物と戦った仲だから、どの道僕ならワープゾーンまで一緒に行くという選択肢が生まれたけどね。


「それでは行きましょう。いつまでもここにいると、他の魔物が今倒したオーガの血の匂いに引き寄せられて、また戦闘になってしまいます」


 僕の発言に皆が頷き、僕達はワッケンさんの案内でワープゾーンを目指した。


 ワッケンさんの案内に従い、僕達はスムーズにこの階層のワープゾーンであり、次の階層への階段に辿り着いた。


「それじゃあ、俺達は一旦ダンジョンから出るけど、お前達はこのまま攻略するのか?」


「はい。僕達はこのまま一気に攻略してしまおうかと思っています」


「君達なら大丈夫だとは思うけど、気を付けてね。戻ってきたら、また皆で食事でもしよう」


「じゃあ、私達は先に行くわね」


「お気をつけて」


「またね」


 ワッケンさん達はワープゾーンの魔法陣に乗り、僕らは見送りをした。


「はい。また会いましょう」


『お達者で』


「すぐにまた会いましょう」


「グルルルゥ」


「またな」


「ウォン」


「気をつけて帰ってね」


「バイバイ」


 そしてワッケンさん達はワープゾーンの魔法陣を起動させて、ダンジョンから離脱した。


「よし。僕達も先を目指そう」


「「「「了解」」」」

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次回予告

ダンジョンの下層部にやって来たユーマ達は、順調に魔物を倒しながら先を進む。

そしてユーマ達は遂にとある場所にやってくる。


次回、ダンジョン下層部

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