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第117話 攻略は順調

前回のあらすじ

初のダンジョンに挑戦するべくやって来たユーマ達は、神器や新装備に慣れる為に挑戦する。

そこでゴブリンと遭遇し、ユーマとクレイルは神器に意識を向けての戦闘を開始する。

しかしその直後ミネルヴァとメルクリウスは2人を所有者として認めるかの試練を開始する。

そして2人はその試練に打ち勝ち、晴れて神器の所有者として認められ、ゴブリンを一掃する。

 僕達がダンジョンの攻略を始めて、体内感覚から見て6時間程が経過した。


 ここまで僕の探知魔法で地形を把握しながら道中の魔物を僕、ラティ、クレイルでローテーションしながら倒しながら進み、現在8階層まで来た。


 何故僅か6時間程で8階層まで来れたかと言うと、僕が各階層で探知魔法を使って地形を調べて次の階層への階段の場所を進みながら探し、全く道を間違えずに最短で辿り着く事が出来たからだ。


 6階層からは情報通り森の階層となっているが、これも僕の探知魔法で草木の魔力の計上で地形を把握しながら進めている。


 そして今の僕達は、


「喰らいやがれ!!」


 クレイルの空中回し蹴りでオークの頭を跳ね飛ばし、討伐した所だった。

 頭部を失ったオークはその場に倒れて絶命した。


「ライトニングブラスト!!」


 僕も雷の放出魔法を使って目の前のオークを倒した。

 元々雷魔法は僕の最も得意な属性だったが、ベルスティア商会で買ったライトニンググローブの効果で僕の雷の魔力はより安定して、今までよりも効率よく強力な魔法ができる様になった。


 他にも魔物を倒した時、吸魔の腕輪の効果で魔力も回復でき、探知魔法で消費した分の魔力も回復する事が出来ている。


「そっちも終わったな。俺も倒したぜ」


「やったねクレイル。大分メルクリウスの本当の力に慣れて来たんじゃないかな?」


「そうだな。今までと違って、体が凄く軽いし、それに殴ったり蹴ったりする度に身体中に魔力が漲って来るんだ。それも今までの様な微量なのとは違って、攻撃する度に魔力が全快しているみたいだ」


 ここまでの戦闘で、僕とクレイルは神器に、ラティの元素の杖の扱いにかなり慣れてきた。


 僕とクレイルは戦闘を通して、ミネルヴァとメルクリウスの本当の能力を把握でき、着々と使いこなせている。


 同時に、僕はミネルヴァの本当の能力(ちから)も把握する事が出来た


 ミネルヴァは元々魔力を切り裂く効果があり、これで魔法を斬ったり相手を身体を傷つけずに魔力炉だけを斬る事で魔力の欠乏症を起こす事で倒す事が出来たが、ミネルヴァに認められた事でもう1つの能力に気付く事が出来た。

 それが重力操作の効果だった。

 ミネルヴァには自身や所有者の重力を変える能力があり、剣自体の重力を強めて振るった時の攻撃力を高めたりも出来れば、所有者の重力を小さくして跳躍力を上げたり、強めて落下速度を上げて攻撃力を上げたりする事も出来る。

 今までの跳躍力の強化は、この重力操作の効果が働いていた事によるものだった為、こうしてミネルヴァに認められた今では自由自在に重力を操作して、振るう時だけ重力を強めて攻撃力を上げたり、重力を弱めて高くジャンプしてからの重力を強くしての落下による攻撃もできる様になった。


 クレイルはこれまで使って来たメルクリウスの効果を十二分に発揮できる様になった。

 今までのメルクリウスの魔力吸収は、敵を打ち付けたクレイルの攻撃の威力に比例しての微量の回復だったが、今では大幅な回復ができる様になり、その回復量は相手に与えたダメージ分となり、更にそのダメージがオーバーキルだった場合、その余剰ダメージの分まで回復できるという事が出来る様になった。

 つまり、クレイルは事実上消費した分の魔力をすぐに回復する事から、実質無尽蔵の戦闘ができる様になった。


 ラティはデミウル工房で元素の杖を試した時にその杖の効果を把握していた為、今彼女は杖の宝玉に魔力を効率的に溜める為、複合魔法を中心に戦っている。

 元素の杖には複合魔法を使った場合、その複合させた属性の魔力が両方ともその属性の宝玉に蓄積される効果もある事が分かった為、ラティは複合魔法中心で戦闘をしてきた。

 その結果、現在ラティの杖には各属性の魔力が順調に蓄積されており、まだ完全解放出来る様にはなっていないが、そうなるのもおそらくは時間の問題だろう。


 これが僕達のダンジョン攻略の過程における途中経過だ。


「よし。じゃあ、このまま続行しつつダンジョンを攻略だ」


「了解だ、ユーマ」


「オッケー、ユーマくん」


「私はこれまで通り、後ろで控えているから、非常時は任せて。尤も、このダンジョンで皆の実力を考えればあまり心配は無いと思うけど、念には念を入れなきゃね。それに、皆も連戦で消耗してると思うから、あまり無理しないでね」


 コレットの言葉に従い、僕達は引き続きダンジョンの攻略をつづけた。


 そうしていたその時、僕の探知魔法に魔物の反応が現れた。


「反応がある。場所は……コレットの後ろだ」


 それにいち早くコレットが振り向くと、そこには新たなオークの姿があった。


「またオークか。おし! こいつもやっちまおうぜ」


 クレイルがメルクリウスで構えたその時、コレットが前に出て制した。


「皆、あいつは私に任せて。あなた達はこれまでの連戦で、まめに回復はしているけど身体はそれなりに疲労が溜まっていると思うから、ちょっと休憩がてら私に任せて。それからいい機会だから、ユグドラシルの本当の能力(ちから)を見せてあげる。ユーマ、私の周囲を探知魔法で見ていて」


「えっ? よく分からないけど、分かった」


 そう言い、僕は探知魔法を発動させ、コレットの周囲の魔力を探知してみた。


 すると、コレットの周囲から魔力が集まり、それがユグドラシルの矢に集まっていった。


「ウィンドアロー!」


 そしてコレットが放った矢が巨大な風の矢となり、射線上にいたオークの眉間に当ててそのまま鼻から上の頭部を跡形もなく吹き飛ばした。

 オークは何が起こったのか分からないまま崩れ落ちた。


「コレットさん、何をしたの? あたしには普通に攻撃した様にしか見えなかったけど」


「俺もだ。本当の能力って言ってたけど、何が違うんだ?」


「そうね。ユーマなら分かったんじゃない? 私が何をしていたのか」


 コレットは期待する様に僕の答えを待った。


「うん。あっているかは分からないけど、今探知魔法で見てみたら、コレットの身体から魔力が流れているようには見えなかった。それどころか、まるで空気中から魔力を集めてウィンドアローを放った様に見えた。これは推測だけど、コレットはもしかして、自分の魔力を使わずに周囲の魔力で攻撃したんじゃ……」


 僕の答えを聞いて、コレットは嬉しそうに微笑んだ。


「正解よ。それがこのユグドラシル、それからアルテミスにも備わっている本当の能力(ちから)なの。皆は、この世界には人間や魔物の他に、木や岩といったあらゆる物体に魔力が宿っているのは知っているわね?」


「それは勿論。実際僕も探知魔法で周囲の物体の魔力を探知して、それで地形を把握したりしているからね」


「そう。そしてその魔力の源になっているのが、エリアル王国にあるあの世界樹。そしてユグドラシルとアルテミスは、そのユグドラシルの枝から生み出された物。ここまで言えば、もう分かるかしら?」


 コレットの説明を受け、僕達は少し考えてある考えに至った。


「それってまさか……」


「そのまさかよ。ユグドラシルとアルテミスは、その世界樹の一部だから、あらゆる物体の魔力に反応し、所有者の魔力が魔法を使うだけの量が残っていなくても、その周囲の魔力を代用して魔法を使えるようにするの。簡単に言えば、クレイルとはまた違う意味で無尽蔵に戦える様になるって事」


 その説明を聞き、僕達は絶句した。

 つまりコレットはどんな所にいても世界樹の恩恵を受けて、自分の魔力を使わずに周囲の魔力で矢を生成して攻撃できるという事だ。


 そうなると、僕達が魔力不足で戦えない時でも、コレットだけは常に戦い続ける事が出来る。


 ミネルヴァにメルクリウスと、僕達の神器はどれもチートじみた能力を持っていたが、ユグドラシルとアルテミスはそれらに負けず劣らずの効果だった。


「という訳だから、皆も疲れたいつでも言って。いざとなったら私がみんなの為に頑張って魔物と戦うから。ああ、その時はアイン達も一緒ね。なんせあなた達は疲れ知らずだから」


「任せて。あたしの手に懸かれば、皆が休む間位お安い御用だから」


 アインはそう言って胸を叩き、頼れる女らしさを出した。


『お姉様、カッコいいです。私も負けてはいられません』


「その意気よ。頑張りましょ」


『はい』


 従魔姉妹も賑わっており、僕達は改めて安心しながらコレットの真の強さを目の当たりにした。


 その後僕達は引き続きダンジョン攻略を始め、僕の探知魔法で次の階層へ続く道を探した。


 暫くして第9階層へ続く階段を発見した。


「これが次の階層への階段ね?」


 ラティが聞いてきた。


「そうみたいだな。どうする? このまま行くか?」


 クレイルの質問に僕は首を横に振った。


「いや。ここで少し休憩しよう。ここまで休まずに来たから、食事がてら休憩してからにしよう」


「そうね。皆もお腹を空かしているでしょうし、ラティも少し休憩して少しでも魔力を回復させましょう」


 ラティの魔力に関しては魔力回復のポーションで賄えるが、ポーションは数に限りがあるからそれは出来る限り戦闘中での回復で使っている。

 そしてラティは貯蔵魔法の効果で魔力量が膨大な為、普段は時間経過による魔力回復を中心している。


 僕とコレットの案に2人も頷き、僕達は階段の近くで食事休憩する事にした。


 食料に匂いにつられて魔物が来ても良いように、アリアとアイン、クルスとレクスを交互に周囲を警戒して貰っている。


 その間に僕は収納魔法から取り出した鍋を取り出し、オークの肉と野菜を入れて裏ごしにしたトマトとニンニクや香辛料、少量の水を入れて煮込んだ、トマトシチューを作った。


 その匂いにつられてオークやグリーンウルフといった魔物達が集まって来たが、アリアとレクスの咆哮でショック死し、寧ろ僕達の食糧の肉が増える結果となった。


「とはいえ、あんまり魔物が寄って来ても、落ち着いて食事が出来ないからね。どうにかならないかな」


『それでしたら、私に考えがあります』


 アリアがそう言った時、僕達の周囲に魔力が集まった。


『かつてユーマから前世の事を聞いた時に私がユーマの部屋に張った、風魔法の結界です。これなら中の音だけでなく料理の匂いも外に漏れる事もないので、幾分かは楽になれます』


 その結界は、かつて僕とアリアが初めて出会った日の夜に、アリアが僕の正体に気付き僕が話す際にアリアがお父さん達に聞こえない様に張った物だ。

 まさかあの結界にそんな使い方もあったとは、アリア様様だな。


「ありがとう、アリア。じゃあ、食べようか」


『デザートもありますか?』


「勿論だよ」


『それでこそ私のユーマです』


 アリアの言葉に、ラティが笑いながら言った。


「アリア、ユーマくんはあたしの旦那様だからね」


『分かってますよ。ラティがユーマの人間のパートナーなら、私はユーマの従魔のパートナーですから』


 ラティとアリアはそう言いながら、それぞれが僕のパートナーを名乗っていた。


 確かに考えたら、ラティは僕の婚約者で人生のパートナー、アリアは従魔のパートナー、僕には2種類の生涯のパートナーがいるんだよな。

 尤も、それはクレイルにも言える事だけどね。


「まあ、兎に角、そろそろできるから、皆座って」


 僕達は食事をする為に、器に盛ったシチューを渡して食べ始めた。

 勿論、食事前のお祈りも忘れずにだ。


「やっぱ美味いな、ユーマの作る飯は。ああ、ユーマ、おかわりだ」


「あたしも」


『私にもお願いします』


「グルルゥ」


「ウォン」


 クレイル、ラティ、アリア、クルス、レクスはあっという間に平らげ、更におかわりも要求してきた。


「大丈夫だよ。多めに作ったから」


 僕は順番に器を受け取ってシチューを注ぎ、皆に手渡した。


 僕、コレット、アインはごく普通のペースで食べ、少しするとクレイル達大食い組によって寸胴鍋の中のシチューは綺麗さっぱりなくなっていた。


「やっぱりクレイル達がいると残り物とかが出ないから、僕も作り甲斐があるよ」


「でもなんでも残さずってのは考え物ね。ユーマが偶に作るカレーは、1日置いたらもっとおいしくなるけど、このパーティーではそれが出来ないからね」


 確かに、中には1日置いたら美味しくなる料理もあるが、クレイル達は残さず綺麗に食べる事を心掛けているのか、そういう料理を作っても残る事なく食べ尽くされている。


 まあ、好き嫌いせずに全部食べるのはいい事だから、あまり強く言えないというのも考え物かな。


『ではユーマ、お次はいよいよデザートですね?』


 アリアもかなりの量を食べた筈なのに、もうデザートの催促をしてきた。


「分かったよ。今日のデザートはプリンだよ」


 僕は容器に入ってるプリンをお皿に写し、皆に配った。


『ユーマ、私のプリンは何処ですか?』


「慌てないで、アリア。君のプリンはちゃんとあるから」


 そういいながら、僕は収納魔法から巨大な容器を出した。


「ユーマくん、それは?」


「アリアの今日のデザートさ。クレイル、そこの大皿に移すから、ちょっと手伝って」


「お、おう」


 僕はクレイルと2人掛かりで容器を持ち上げ、それを上下反対にして大皿の上に乗せた。


「クレイル、お皿を上下に揺らすよ」


「分かった」


 僕達はお皿を少し持ち上げて、上から下へと揺らし、それを数回繰り返すと容器の内側から何か落ちる音がした。


「落ちた。クレイル、アリアの所に持って行って、この容器を外すよ」


「よし」


 僕とクレイルは皿をアリアの所に運び、その容器を持ち上げて取り外すと、その中からとても大きな巨大プリンが姿を現した。


『ユーマ……! これは……!』


「アリア、前に言ってたじゃん。『1度でいいから巨大なプリンを食べてみたい』って。それで数日前に土魔法で加工してこの容器を作ったんだ。後はこの容器にプリンの材料を入れてじっくり火を通せば出来上がりだ。初めてやってみたけど、すもたっていない辺り、思いのほか上手くいったよ」


 その時、アリアはその頭を僕の胸へと摺り寄せて来た。


『ありがとうございます、ユーマ』


 僕はアリアの巨大な頭を撫でてあげた。


「アリアにはいつもお世話になっているから、この位お安い御用だ」


 それから僕達はデザートを食べて、ダンジョン攻略再開に向けての英気を養った。

 アリアも巨大プリン喜んで食べ、今までにない位の満足な顔をしていた。

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次回予告

ダンジョンの11階層にやって来たユーマ達は、少しランクが上がった魔物と交戦を繰り返して内部を進む。

その途中、冒険者が魔物に襲われている事をユーマが感じ取り、ラティはそれを助けに行こうとするが、コレットに阻まれる。


次回、ダンジョンの中で……

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[気になる点] 巨大プリンて実は自重で… [一言] なんて変則的な両手に華
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