第114話 宮殿へ招待されて
※総合PVが20万を越えました。
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前回のあらすじ
クレイルのメルクリウスが神器だという事を知ったユーマ達は、ガリアンとクレイルの両親の関係を知る。
改めて武器の整備を依頼したが、ラティは杖が無くなった為、錬金術師のネルスから新しい元素の杖を購入する。
デミウル工房を出た後、僕達は宿に向かいながら明日以降の予定を話し合った。
「明日は、ガリアンのおっちゃんの言ってたベルスティア商会に行くのか?」
「そのつもりだよ。まずはそこでそれぞれに合ったマジックアイテムを買って、僕達の装備を整えよう」
僕達がベルスティア商会に行く目的は、そこで僕達に合ったマジックアイテムを購入して、装備を整える事だ。
マジックアイテムは物によっては高価な物があるが、その辺は問題ない。
僕達はこれまでの冒険者活動で稼いだお金がかなりあるし、寧ろ金額がどんどん増えて行ってる。
他にもスタンピードで討伐した魔物の換金で、もう一生働かなくてもいいんじゃないかという位の金額が溜まっているから、少しでも使って減らしたいという贅沢な悩みもあったりする。
因みに、商会というのはギルドとかなり重要な関わりを持っている物だったりする。
冒険者ギルドでは素材の買取も受け付けていて、その買い取った物を商会に売って利益にしていたりする。
つまり、ギルドは冒険者から買い取った素材を商会に売る事で利益を出し、商会はその買い取った素材で作った物を売る事で利益を出している、要はギブアンドテイクの様な関係で成り立っている。
「その買うマジックアイテムの方針はどんなの?」
「今言った通り、主に僕達にそれぞれあった物と、パーティー内で共通で使える物の2種類だね」
僕達に合った物だと、例えばクレイルなら攻撃力増加のマジックアイテムや素早さ増加のマジックアイテム。
ラティなら魔力消費を抑えるマジックアイテムとかだ。
「だから明日はその商会に行って、それぞれに合ったマジックアイテムは自分達で考えて選ぼう」
それに皆は頷き、宿に辿り着いたが、その宿の周りに騎士の格好をしたドワーフの人達が宿の周囲に揃っていた。
「何だ? 何で騎士が宿にいるんだ?」
クレイルがストレートに疑問に思った事を口にしたが、それは僕らも同意だから、僕、ラティ、コレット、アリア、クルス、レクス、アインは揃ってウンウンと頷いた。
その時、騎士の1人が僕達の存在に気付いた。
「失礼します! 銀月の翼の方々で宜しいでしょうか?」
「はい。確かに僕達は銀月の翼ですが」
僕が答えると、騎士の人は改めて直立し、こう言った。
「我らは、ロマージュ共和国の騎士団の者です! グレンツェン大統領の命を受け、あなた達を宮殿までお迎えする為、ここに参りました! どうか、我らと共に、宮殿まで来て頂けないでしょうか?」
この国の大統領が僕達を招いているのか?
でも、いったいどうして……。
「ユーマくん、もしかして、エリアル王国の時みたいな事じゃない?」
ラティの言葉に、僕はある事を思い出した。
かつてエリアル王国で起こったスタンピードで、僕達はアリア達の秘密を公にした代償にあの戦いでの死者を出さずにする事が出来た。
その後王城で褒美を求められた時、僕達はロンドベル国王に後ろ盾になって欲しいと頼み、国王はそれを快く受け入れた。
だがロンドベル国王は数年前に行われた世界会議で、アベルクス国王から僕達の事を聞かされ、何かあったら力になって欲しいと伝えていたから、僕達の頼みを了承してくれたんだ。
そして今、ロマージュ共和国のグレンツェン大統領が僕達の事を呼んでいるという事は、あの時と同じ可能性があるか。
「でも、僕達は今日この街に来たばかりなんだよ。それが何で大統領が僕達の事を知ってるの?」
世界会議で僕達の事が聞かされていても、元々アルビラ王国、エリアル王国、ロマージュ共和国は同じ大陸にある国だから、僕達の事が一早く知られていてもそれは不思議じゃない。
でも、僕達が首都に来たのは今日だ。
どうして大統領は僕達が今この街に来ているという事をもう知ってるんだろう?
「多分、最初に検問所でユーマがギルドカードを門番に見せたからじゃない? それでユーマの事、つまり銀月の翼が今日この街に来たという事が伝わって、こうなったと」
コレットの言う事にはかなり筋が通ってるな。
多分検問所を通過して街を出入りしている人達の情報は、そのままこの街の偉い人の所へ纏めて報告されるのかも知れない。
恐らくだけど、普通は大統領まではいかないと思うけど、僕達は色んな意味で有名なパーティーだ。
あの門番も僕がギルドカードもを見せた時に、僕達の正体を知って凄く驚いていたからな。
その結果、僕達の事は大統領まで報告が行き、こうして騎士が迎えに来たんだろう。
「確かにそうかもね。なら、ここはあの人達に従って、宮殿まで行った方がいいかもね」
「うん」
「そうだな」
「それがいいかもね」
アリア達も頷いて、同意してくれた。
僕は騎士達に向き合った。
「分かりました。僕達を宮殿まで連れて行ってください」
「御快諾、感謝します」
僕達は用意された馬車に乗り込み、大統領の宮殿まで連れて行かれた。
――――――――――――――――――――
馬車で1時間程で僕達は宮殿に着き、現在は宮殿内の来賓室で待たされている。
アリア達従魔組も一緒で、ソファで座っている僕達の後ろで控えている。
少しして扉が開き、1人のドワーフの老人と、秘書らしき人族の男性が入ってきた。
ドワーフの老人は、お年寄りにも関わらず筋骨隆々として、杖の代わりに柄の長い巨大な金槌を手に持っている。
「待たせてしまったな。儂はこのロマージュ共和国の大統領、グレンツェン・ロマージュじゃ。こっちは秘書のライルじゃ」
「初めまして、皆さん。大統領の秘書を務めています、ライル・スイードです」
僕達はソファから立ち上がり、挨拶した。
「初めまして大統領閣下。Aランクパーティー、銀月の翼のリーダー、ユーマ・エリュシーレです。こちらは従魔のアリアです」
『初めまして。アリアと申します』
「ラティ・アルグラースです。こちらは従魔のクルスです」
「グルルルゥ」
「クレイル・クロスフォードです。こちらはレクスです」
「ウオン」
「コレット・セルジリオンです。この子は従魔のアインです」
「アインです。よろしくお願いします」
「ウム、宜しくのう。まあ、かたっ苦しい挨拶はそこまでにして、まずは座りなさい」
大統領に促され、僕達は再びソファに座り込んだ。
そして大統領もまた、向かいのソファに座り込んだ。
「まずは突然呼び出したりしてすまなかった。門番からの報告が何故か儂の所にまで来て、それを見るとお前さん達銀月の翼が来たとあったからの。それならと思い、騎士に命じてここに連れて来て貰ったのじゃ」
「それで、私達をお呼びになられた理由を聞かせて貰ってもよろしいでしょうか?」
「元よりそのつもりじゃ。ライル、あれを」
「畏まりました」
ライルさんは手に持っていた小箱をテーブルに置き、蓋を開けた。
すると、中から4枚の証文の様な羊皮紙が出てきた。
「これは、儂の、ロマージュ共和国の大統領の後ろ盾を証明する証明書じゃ。つまり、アルビラ王国、エリアル王国の様な王家のメダルと同じ機能を持つ書類じゃ。これをお主達に授ける為に、ここに来て貰ったんじゃ」
王家のメダルと同じ機能を持つ証文。
それって……
「まさか……」
「そうじゃ。儂はお主達の後ろ盾になる事をここに誓う。以前世界会議で、アベルクスの坊主がお主ら、正確には竜神と特異種のグリフォンと適合した者達の事を話してのぅ、その子達の力になってやってくれと言われておった。それには聞いてやらんと、大統領の面目も立たんのでな、こうしてお主達がいつでも来た時の為にこの証文を用意しておった。ぜひ受け取っておくれ」
大統領の目的は僕とコレットの予想通りだった。
これで僕達は、アルビラ王国、エリアル王国、ロマージュ共和国の国家元首の後ろ盾を得た事になる。
「ありがとうございます。大統領閣下の厚意、謹んでお受けします」
僕達は誠意を込めて証文を受け取った。
「これでアベルクスの坊主への義理は果たせたのう。それから、今日はもう遅い。今日はこの宮殿に泊まり、明日の朝お主達の泊まっている宿へ送り届けよう」
なんと今日はこの宮殿に泊めてくれるそうだ。
その言葉に、ラティとクレイルは目をキラキラさせていた。
「勿論、今夜はとびっきりのご馳走を用意させよう。お主達の歓迎を含め、盛大な宴と行こう」
「「やったああああああ!!!」」
「グルルルルルルゥ~~~~~!!」
「アオオオオオ~~~ン!!」
大統領の言葉はまさに予想通りで、その結果うちの大食い組が喜んで跳ね上がった。
「ラティ、クレイル、ちょっと落ち着いて。大統領の御前なんだよ」
「そうよ、はしたない」
僕とアインで宥めるが、実は僕もご馳走が楽しみだったりする。
うまくいけば、新しい料理を食べてその味を覚えて、新しい料理を編み出せるかもしれないからね。
それからは僕達を歓迎する、大統領主催の宴が開かれた。
それに伴い、大統領の言っていたご馳走がズラッと並び、大食い組を奮い立たせた。
その料理の数々は、まさに極上の物ばかりだった。
ロマージュ共和国は商業の国とも呼ばれている為、武器や防具、素材だけでなく食材もいい物がある為、大統領はこうして最高の食材を使った料理を揃える事が出来たのかも知れない。
クレイルとラティは一心不乱に料理を食べまくり、僕とコレットは慎ましく、それでいて2人に取られないようにしっかりと確保して食べている。
アリア達もよく食べる方だったが、予め従魔組の事も知らされていたのか、大型の魔物の素材を使った料理もあった為、皆が満足してくれそうだ。
何より、料理が無くなると、給仕の人達がまた新しい料理を次々と持ってきてくれたから、ラティ、クレイル、アリア、クルス、レクスは大喜びで食べている。
また、この宴は僕達と大統領の他にも、宮殿にいる重鎮のドワーフ達が僕達に歓迎の言葉を送り、これまでの旅での出来事を聞かせてくれと言ったりしてきた。
この国は民主制により成り立っており、貴族が存在しない為、民を中心に国を支えている。
だからこれまでの様な傲慢な貴族は存在しない為、僕達は非常に居心地がよかった。
途中、1人のドワーフが酒樽を持ってきて、僕達と飲み比べをしようと言い出した。
「そういえば、ドワーフって鍛冶能力だけでなく、酒豪の種族としても有名だったわね……」
コレットの呟きに、以前お母さんの授業で聞いた事を思い出した。
ドワーフは酒を水として扱う程酒を愛しており、それでいてとんでもなく酔いに強いという事から、「蟒蛇のドワーフ」という名がついている。
それにより、酒の飲み比べには無類の強さを誇っているのも、ドワーフの特徴なのだ。
飲み比べには僕とクレイルが参加し、ドワーフ側からは大統領を筆頭に重鎮の方々、というよりは宴に参加していたドワーフ全員が参加していた。
僕達は一斉に樽のジョッキに注がれたお酒を飲み干し、全員飲み終えたら次のジョッキに手を伸ばし、それが空になったらまた新しいジョッキに手を伸ばし、その無限ループを行った。
飲み比べは途中経過を含めると、開始してから数十分でまずクレイルがダウンした。
元々クレイルのお酒の強さは地球の酒飲みを基準にするとほぼ標準だったから、ハイペースで飲むドワーフに喰らい付けただけいい方だった。
それからは僕が大統領率いるドワーフを相手にする事になったが、その結果は誰もが予想していない結果になった。
なんと僕は何時までもドワーフと同じ量を飲み続け、ついには宴に用意したお酒が底を尽きても、僕はドワーフ達と同様、全く酔う事なく飲み終える事が出来たのだ。
「お前さん……一体、どういう身体をしているんだ……?」
大統領の言葉に、他のドワーフは勿論、ラティやコレット、クレイルにアリア達まで激しく首を縦に振り、その心を一致させていた。
「簡単ですよ。僕はお酒にそこそこ強いだけです」
そう、僕は前世の頃から、アルコールに異常に強く、飲み会などでかなりの量を飲んでも、後日にはその時に飲んだお酒の種類や量、加えて食べた料理も完全に覚えているという事を同僚達に見せつけた事がある。
そのアルコールに対する耐性が、どうやら転生してもちゃんと受け継がれていた様だった。
故に僕にはこのドワーフ達と互角に飲める自信があったけど、まさかお酒全部を飲み尽くしても全く酔わないのは僕も予想していなかった。
「それは全然そこそこじゃないわよ。あなたのお酒の強さはドワーフ並みに異常だわ……」
コレットの言葉にまたもや全員激しく頷いていた。
それからは僕達は大統領が用意してくれた部屋に案内され、そこで一晩を過ごした。
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次回予告
ガリアンの紹介でベルスティア商会にやって来たユーマ達は、新しいマジックアイテムを購入する。
その後ギルドで素材の換金を行い、ダンジョン攻略の計画を練る。
次回、ベルスティア商会