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第113話 神器について

前回のあらすじ

武器の整備をしてもらうべくロマージュ共和国の首都を訪れたユーマ達。

早速サラの商会の工房を訪ね、そこでガリアンと知り合う。

早速自分達の装備を見せるが、その時ガリアンがクレイルのメルクリウスを見て驚愕する。

何と、メルクリウスが神器だというのだ。

 神甲メルクリウス、女神イリアステル様が創ったと言われる最強の手甲と脚甲だ。

 それを身につけ物を打ち付けると、その物体にあった魔力を吸収し、装備者の魔力に変換して回復させる能力を持つ。

 また、魔力を通すとその硬度はオリハルコンに匹敵すると言われている。

 だが素の強度の時点で同じ神器でなければ壊せないとも言われている。


「……とまあ、これがその神甲メルクリウスの効果の内容だ」


 ガリアンさんの説明を聞くと、大方の特徴が一致している。

 確かに言われてみると、武闘大会でクレイルと戦った時、クレイルの魔力はメルクリウスで攻撃する度に回復していった。

 あれは、僕の魔力や武器に流した魔力を吸収して回復していたんだ。

 でも僕自体は、僕自身の魔力量が膨大だったから、加えてその回復量が微量な為、魔法の使用で消費した魔力に紛れていたから、魔力を吸収されていた事に気付かなかったんだ。


「確かに、普通のマジックアイテムにしては性能が高すぎると思う時があったけど、まさか神器だったとはね……」


 コレットもまさかずっと一緒に暮らしていたクレイルの武器が神器だったという事実に、驚愕している。


「確かに、神器だと言われると、思い当たる節はあったね」


「何時?」


「武闘大会の時さ」


 あの時、僕がクレイルと最後の一撃を交わした時、僕はミネルヴァを使ってクレイルを斬ったけど、実はあの時、メルクリウスの攻撃がほんの一瞬だけどミネルヴァと激突したんだ。

 でも、すぐに流れるようにクレイルへと入ったから、あの時は普通に流れただけだと思ってた。


「でもよく考えたら、神器のミネルヴァと当たった時点で、普通ならメルクリウスは壊れた筈なんだ。だけどメルクリウスはそのまま無事で勝負がついた」


「それはつまり……」


「うん。あれがメルクリウスが神器だという決定的な証拠になったんだ。神器と互角に渡り合える武器は同じ神器だからね」


 でも僕もあの時は分からなかったさ。

 まさか目の前で戦った相手が同じ神器使いだったなんてね。


「それでお前さん。このメルクリウスは何処で手に入れたんだ?」


 ガリアンさんは改めてクレイルに尋ねた。


「何処って言われても……これは元々俺の父親の形見で、俺が死んだ両親の所持品から持ち出した物の1つなんです」


「両親だと……」


 ガリアンさんはそれを聞いて、また何かを思い出していた。


「ちょっと変な事を聞くがよ、お前の両親って、もしかして虎人族(とらじんぞく)の男と兎人族(うさぎじんぞく)の女じゃないか?」


「はい! 確かにそうです!」


「やっぱりそうか。クロスフォードの名字を聞いて何か引っかかっていたが、これで思い出したぞ。お前、エルードとアリシャの息子だったのか」


 エルードとアリシャって、クレイルの両親の名前か。


 そしてガリアンさんがクレイルの両親の名前を知っているという事は、僕の中である程度の予想がついた。


「そうですけど、なんでガリアンさんは、俺の父さんと母さんを知ってるんですか?」


「それはな、以前2人がここにきて俺に装備の整備依頼をしてきたからだ」


 ガリアンさんの返事は、大体予想通りだった。

 鍛冶師が冒険者と接点を持つきっかけといえば、大体装備の製作依頼や整備依頼が基本だ。


「それで話を戻すが、メルクリウスが2人の形見って事は、あの2人は死んだのか?」


「ええ。俺が4歳の時、魔物との戦闘で亡くなったんです。俺は母さんが施した結界の中にいて生き延びて、その後このコレットに保護されたんです」


「そうか……あの2人は俺が知る獣人の冒険者でも別格の実力を持ってたが、やはり冒険者は死と隣り合わせの職業だからな。だが1人1人の死を悲しんでいたらキリがない」


 冒険者は自由の代名詞と言える職業だが、同時に常に危険が伴う死と隣り合わせの職業だ。


 ガリアンさんは恐らく、色んな親しくなった冒険者の死を知ったりしてきたんだ。

 だからこそ、悲しむ暇があったら少しでも仕事に打ち込んできて気持ちを紛らわせてたのかも知れない。


「兎に角、お前達の武器の整備依頼は受けてやる。ユーマの坊主の魔剣と魔槍、杖、ラティの嬢ちゃんの杖は、俺が引き受けて完璧に仕上げてやる」


「あれ? 僕のミネルヴァに、コレットのユグドラシルとアルテミス、クレイルのメルクリウスは?」


 ガリアンさんの言葉だと、整備するのは僕の白百合、黒薔薇、ジルドラスと、僕とラティのエンシェントロッドの5個だけだ。

 となると、僕らの神器はどうなるのか?


「それだが、実は神器は整備しようにも、できない――いや、必要ないんだ」


「必要ない? どういう事ですか?」


「昔エルードが使ってた頃のメルクリウスを見た時、アリシャの武器と見比べたら、蓄積されたダメージがなかったんだ。その後調べたら、過去に神器を持った奴が書いた本を見つけて、それにはこう書かれていた」


 その本によると、神器は女神イリアステル様が創った特殊な武具で、それには驚異的な自己再生能力が備わっている。

 例え神器全体に罅が入ったり壊れたりしても、時間が経てば自然と元に戻り、ダメージも回復されているという事が分かったと書かれていた様だ。


「尤も、その本を書いた奴が持ってた神器は1つだけの様だったから、他の神器が同じという保証はなかったが、俺はエルードの持ってたメルクリウスを見たから、その本に書かれていた事は本当だったという確証を持てたんだ。それに、そのミネルヴァ、ユグドラシル、アルテミスも同じように疲労ダメージは見られなかった。故に整備の必要はないんだ」


 成程、そういう事か。

 確かに、その本に書かれている事に加え、過去に実際に神器をメンテすれば、それは詳しくなるよね。


「分かりました。では、僕とラティの武器の整備をお願いします。それから、ガリアンさん、これらの素材を使って、僕達の武器を強化できませんか?」


 僕は収納魔法から、今までの討伐した魔物の素材を取り出した。

 その素材は、今まで討伐した魔物の素材をギルドで買い取って貰い、その中から自分達が使う為に残したものだ。

 中にはデビルスコーピオンや三つ首竜の素材もある。

 三つ首竜の素材の中には、血とかも入っている。

 また、少し前に手にいれたべオルフの従魔の特異種のケルベロスの素材もある。


 犯罪者の従魔の素材は、討伐した者にその所有権が優先される。

 あの時ケルベロスを倒したのはアリア達でイリスさんのカミラもいたが、ダメージを与えたり止めを刺したのがアリア、レクス、クルスで、その主であり、あの事件の解決の立役者という事で僕達にその所有権が回ってきたのだ。


 僕はそれぞれの素材を説明すると、ガリアンさんは興味深そうに見ていた。


「ほう。これはどれも凄い素材ばかりだな。しかも古竜やデビルスコーピオンまでありやがるとは。確かにこれだけあれば、とんでもなく凄い武器に強化できるな」


「お願いできますか?」


「ああ、引き受けたぜ。整備と強化、全部を終えるのに1週間は掛かるが、その間は嬢ちゃんはどうするんだ? 少なくとも整備している間に冒険者活動をするとなると、嬢ちゃんは得物なしで活動する羽目になるぞ」


 その言葉に、ラティはこう答えた。


「一応、修業時代に使ってた杖がありますから、それを使えば何とかるかと……」


「どれ? ちょっと見せてみろ」


 ラティは収納魔法から、魔物との実践訓練の頃に使ってた魔法杖を取り出し、ガリアンさんに渡した。


「ああ……これは駄目だな。そもそもこの杖とこっちのエンシェントロッドを比べる事自体が間違ってるが、この杖じゃ今の嬢ちゃんの魔力制御には耐えられえねえぞ。もしやったら、この杖は粉々になるのが目に見えている」


 ガリアンさんはその杖を見て、そう断言した。


「どうしてですか?」


「それはな、俺の固有魔法の能力だ。俺の固有魔法は鑑識魔法といって、サラの測定魔法と同じく魔力を視認できるんだが、こっちの場合は物に定着した魔力やその痕跡なんかを視認できるんだ」


 それはまた、いかにも鍛冶師には打ってつけの魔法だな。


「それで、この2本のエンシェントロッドだが、どちらもよく使われた結果、坊主と嬢ちゃんの魔力が強く定着していた。その量もな」


「それって……」


「ああ、2人は今でも魔力の制御技術が上がっていて、その制御はこの高性能な杖や魔剣だったからこそ耐えられたんだ。だが、こっちの杖はあくまで訓練用。耐久性も魔力の循環性もこれらのマジックアイテムには全く及ばねえ。使ったら最後、嬢ちゃんの膨大な魔力に堪えられなくなって暴発し、周りを巻き込んで何もかも吹き飛ばしちまう」


 マジで!?

 ラティの魔力制御はそこまで凄くなっていたの!?


 僕もラティ程ではないがかなり膨大な魔力量があるけど、ラティはそれを遥かに上を行っているなんて、これは彼女の固有魔法の貯蔵魔法がその理由かもしれないな。


「それじゃあ、どうすればいいの? ラティはもうそれ以外に杖は持っていないのよ」


 コレットの問いに、ガリアンさんは少し考えこんだ。


「ちょっと待ってろ。お~い! ネルス! ちょっと来てくれ!」


 そうして工房の奥から、眼鏡をかけたエルフの男性が出てきた。


「どうしましたか? 親方」


 ガリアンさんはそのエルフの肩を叩き、僕達に紹介した。


「紹介するぜ。こいつはネルス。俺の専属の錬金術師で、坊主と嬢ちゃんの魔竜のローブの生地を創った男だ」


 この人がさっきガリアンさんが言ってたネルスさんか。


「初めまして。ネルス・キラータです。このデミウル工房の専属錬金術師をしています」


 僕達も自己紹介をし、ネルスさんと握手した。


「ネルス、ちょっとこの杖を見てくれ」


 ガリアンさんは彼にラティのエンシェントロッドを見せた。


「これは……中々に素晴らしい杖ですね」


「これはこの嬢ちゃんの杖なんだが、俺達に整備を頼んだので預かる事になったんだ。それでその間の代わりになる杖が必要なんだが、何か良いモンはねえか?」


「そうですね……これ程の杖の代わりになる物ですと……待てよ。確か、あれがあった筈……少々待ってください」


 ネルスさんは一旦奥へと戻り、戻って来た時には1本の杖を持っていた。


「ラティさん、この杖はどうでしょうか?」


 彼が差し出したのは、見るからに上物の魔法杖だった。

 エンシェントロッドと同じくらいの長さで、先端部には赤、青、緑、茶色、黄色、水色、黒、白のスーパーボール程の大きさの8つの宝玉の様な物が付いている。


「これは元素の杖と言いまして、私が錬金魔法で作った最高の杖です。性能はあの杖と同じとまでは言いませんが、それでも今のあなたの魔力に耐えられる自信はあります」


 この元素の杖は、8属性の魔力に強い適性を持った杖らしい。

 またこの8つの宝玉は各属性の魔石を加工した物で、それぞれが各属性の魔力を蓄える力を持ち、所有者の魔力と合わせる事で溜めた属性の魔力を解放して驚異的な破壊力の魔法が使えるようになるとの事だ。


「これがあれば、少なくともこのエンシェントロッドの代わりは務まる筈です」


 ラティはその元素の杖を受け取った。


「杖の説明はしましたが、実際に試した方がいいですね。工房の裏に武器の試し撃ちができる広さの庭があります。そこで試し撃ちしてみましょう」


 僕達はネルスさんに連れられて、工房の裏庭に来た。

 ネルスさんは1つの木製の的を置き、ラティは元素の杖を構えた。


「ではラティさん。この的に何でもいいので、初級魔法を放ってください」


「分かりました!」


 ラティは自信満々で元素の杖に魔力を注ぎ、魔法の発射態勢に入った。

 その時、杖の先端にある8つの宝玉の内、緑色の玉が輝きだした。


「行くわよ! ウィンドエッジ!!」


 ラティの放った風の刃によって、的はバラバラに切り刻まれた。


「あれ? 思った程の威力じゃない。エンシェントロッドみたいに威力の底上げもされていないみたいだけど、どうなってるの?」


 ラティは自分の魔法がエンシェントロッドの時みたいにパワーアップされて放たれていない事に、疑問を抱いていた。


 確かに、ネルスさんは元素の杖をエンシェントロッドの代わりが務まると言っていたけど、実際に魔法を使うとそれ程の威力はなかった。


 ウィンドエッジは風の初球魔法だから威力自体は決して高くないけど、これはちょっと妙だ。


 そう思ってると、ラティの元素の杖の緑色の宝玉が最初よりも色が少し鮮やかになってる事に気付いた。


「ラティ、その杖の緑の宝玉の色が少し鮮やかになってない?」


「えっ? あら本当だわ。これは一体……」


 ラティは首を傾げたが、ネルスさんが新たな的を設置して次の指示を出した。


「ではラティさん、この的にもう1度同じ魔法を放ってみてください」


「分かりました」


 ラティはネルスさんの指示に従って魔力を注いだ。

 その瞬間、緑の宝玉がさっきよりも強く輝きだした。


「ウィンドエッジ!!」


 次に放たれた風の刃は、初撃の時よりも威力がやや上に放たれ、的を根元からバラバラにした。


「えっ? 最初のウィンドエッジよりも若干威力が上がっている。どうなってるの?」


「それがその元素の杖の能力(ちから)なのです」


 訳が分からなさそうにしているラティに、ネルスさんがその杖の説明をしてくれた。


「通常、魔法は杖とかが無くても使えるけど、魔力の循環率を上げるには杖などのマジックアイテムを使った方が効率がいいのは、ラティさんも知っていますよね?」


「ええ、それは勿論です」


 彼のその言葉に、ラティは頷いて答えた。


「それで、その元素の杖には各属性の宝玉に使った魔法の魔力を蓄える効果があるんですよ。その属性の魔法を使えば使う程、その属性に対応した宝玉に蓄積された魔力が循環率を高め、徐々に魔法の威力を上げていくのが、その元素の杖の能力なのです」


「つまり、魔法を使えば使う程この杖の宝玉に魔力が溜まって、それが次に放たれる魔法の威力を増幅させるんですね」


「そうです。魔法での戦いが主流のラティさんが使えば、杖に宿った魔力が次々と魔法を強くして、そして先程私が言っていた魔力の解放を使えば、初級魔法でも最上級クラスの破壊力が生まれる筈ですよ」


 こうして元素の杖の効果を知ると、ネルスさんはとんでもない杖を作ったなと思ってしまう。


 つまり、ラティが最終的に溜めた魔力を解放したら、初級魔法でも僕の荷電粒子砲クラスの威力になるという事だ。

 ましてや、その解放を最上級魔法でやったとしたらとんでもない破壊力を生むという事になる。


 それはラティ達も同様だった様で、皆絶句していた。


「改めて確認すると、この杖は凄いわね。上手く使いこなせれば、ラティの魔法はエンシェントロッドの時以上の威力が出るって事だし」


「ああ。加えて溜めた魔力を解放でもしたら、ラティの実力から考えただけでも恐ろしく感じちまうぜ。ラティの魔法は威力がすげえからな」


 コレットもクレイルも元素の杖で強化されたラティの魔法を想像して身震いしている。

 元々ラティは魔力操作に長けていたから、この杖を使いこなし、後に戻ってくるエンシェントロッドと使い分ければ、ラティの戦闘力は何十倍にも跳ね上がってしまうな。

 これは心強くなる。


 そしてラティは満足そうに頷いて決意した。


「確かに凄い杖ですね。分かりました。この杖、貰います」


 ラティは即決で杖の購入を決めた。


「分かったよラティ。ネルスさん、この杖はいくらですか?」


「そうですね。元々この杖は私が錬金魔法の実験で偶然できた物なんですが、それでも性能が性能ですからね。それなりの商会に出せば、安くても白金貨50枚はくだらないかと。ですが、ラティさんはあのエリーさんの娘さんですから、その金額でお売りしましょう」


 確かに説明を聞く限り、かなりの高性能な杖なのは分かる。

 なら、その金額は妥当な所だろう。


「分かりました。これでいいでしょうか?」


 僕は懐から白金貨を50枚を取り出し、彼に渡した。


「はい。白金貨50枚、確かに確認しました。ありがとうございます」


「ネルスさん、この杖、大切にしますから」


 ラティは新しい得物に大層ご機嫌だった。


「それからよ、ユーマ、クレイル、最後に忠告してやる。お前達はまだ自分達の神器に認められてないぞ」


「「えっ?」」


 神器に認められていない?

 どういう事?


「やっぱり知らなかったみたいだな。俺もさっき言った本で知った事なんだが、神器は通常のマジックアイテムと違って、それぞれに意思の様な物があるそうだ」


 神器は女神イリアステル様が創造したと言われる武具。

 その1つ1つの神器には己の意志の様な物があり、自分を使う者を認めて初めて完全な力を発揮できるらしい。

 そして認められていない段階では、その能力半分も発揮できないらしい。


「そうね。確かに言われると、最初は私もこの神器はうまく使えなかったわ。でも、諦めずに使い続けたら、何時しかユグドラシルとアルテミスを手足の様に使いこなせる様になってたわ」


「クレイルのメルクリウスを見た時に、その魔力の定着度はエルードの時の様な力を感じなかった。それはミネルヴァも同様だった。つまり、2人はまだ自分達の神器に認められていないって事だ。逆に、コレットの姉ちゃんは完璧だ。ユグドラシルもアルテミスも、姉ちゃんを所有者として完全に認めていると、俺の鑑識魔法での結果で出た。これならいつでも全力で戦えるぞ」


 コレットは大丈夫のようだ。

 まあ、彼女がこの2つの神器を手に入れたのは100年以上前だ。

 その年月と彼女の努力で、神器も彼女を認めていたのかも知れない。


「ユーマの場合はミネルヴァの使用は頻繁じゃなかったんだろ?」


「はい。ミネルヴァの性能が凄すぎて、その能力に溺れない様に極力使用を控えてました」


「多分ユーマの場合はもっと神器で積極的に戦う、クレイルはもっと神器の特性を把握して戦うのが必要かもな。それに、2人の魔力は結構ミネルヴァとメルクリウスに定着している。あとは、神器との意思の疎通を意識すれば、そう遠くない内に神器に認められるかもしれないぞ」


 成程ね。

 つまり、僕とクレイルはもっと神器に意識を向けて戦う必要がありそうだな。


「分かりました。では、これからは、僕はミネルヴァを中心に使って戦おうと思います」


「それがいい。神器に認められたければ、ひたすら経験を積んでいくしかなさそうだからな。頑張れよ」


 こうして僕は今後の戦闘の方針を決めつつあった。


 その後僕達は工房の中に戻って魔剣と杖を預け、工房を後にしようとしたが、僕はガリアンさんにふとある事を尋ねた。


「そうだ。ガリアンさん、この工房って、装飾品のマジックアイテムとかも扱ってますか?」


「ああ。ネルスが作った物ならいくつかあるが、それがどうした?」


「はい。折角ロマージュ共和国の首都に来たのですから、いくつかマジックアイテムを購入して、装備を整えようと思ってるんです」


「そういう事なら、ウチが作った武器や防具、マジックアイテムを取り扱ってる、ベルスティア商会に行けばかなりの数のマジックアイテムが売られているぞ。正直此処にあるのはまだ試作段階で、客に売り出せるモンは少ねえんだ。嬢ちゃんに売った元素の杖は数少ねえもんの1つだ」


 そういう事なら、僕達の次の目的は決まったな。

 皆を見やると、僕の考えている事が分かったのか、頷いて返事した。


「分かりました。では、その商会に行ってみます」


「おう。武器の方は任せな。万全な状態に仕上げとくからよ」


「「お願いします」」


 改めて白百合、黒薔薇、ジルドラス、2本のエンシェントロッドの整備を頼み、僕達は工房を後にした。

 工房の外に出たら、思った以上に長居していたのか、空に夕日の赤がさしかかろうとしていた。


――――――――――――――――――――


 ユーマ達が出て行った後、ガリアンとネルスは2本のエンシェントロッドを、いや、正確にはラティのエンシェントロッドを見つめていた。


「ネルス、分かるか? この杖に溜まった疲労ダメージが」


「ええ。正直これは凄すぎます。ただ使い込まれているだけではなく、杖自体に宿った魔力量がとんでもない事になってますよ」


 ガリアンは自身の固有魔法の鑑識魔法で、ネルスは錬金魔法で作った鑑識魔法と似た効果を持つマジックアイテムの眼鏡で、ラティのエンシェントロッドを見て、それに溜まった魔力量に驚愕していた。


「ネルス、もしこのまま使い続けていたら、この杖はあとどのくらい持っていた?」


「そうですね……大まかに見繕っても、3ヶ月程で半壊、更に1月後には再起不能になっていた可能性があります」


 ネルスはラティがここに持って来ないままエンシェントロッドを使い続けた場合の時間を計算した。


「この杖の耐久を完全には戻せるか?」


「それ自体は可能です。ですが、それだとユーマさんから受け取った素材の強化も入れて、1週間全てをこの杖1本に使ってしまいます」


「ユーマの魔剣と魔槍の整備は俺の分野だからまだいい。だが強化の場合はお前達錬金術師の領域だ。ユーマのエンシェントロッドの方だどうだ?」


「こちらはまだ想定内ですね。これなら僕の弟子達に任せれば大丈夫だと思います」


「よし! ユーマの杖はお前の弟子達に任させろ。お前はラティの嬢ちゃんの杖に専念するんだ! そしてユーマの魔剣と魔槍も整備が済み次第、お前の弟子達に強化させるんだ!」


「分かりました。では、強化は僕達に任せてください」


 ネルスは2本の杖を抱えて自身の研究室へと向かった。


「さて。俺は残ったこの武器に集中しないとな」


 ガリアンは残されたユーマの魔剣と魔槍を整備、強化する為、作業の準備に取り掛かった。

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次回予告

宿屋に戻ったユーマ達は突然騎士団に尋ねられ、宮殿へと招かれる。

そこでユーマ達は大統領と対面する。


次回、宮殿へ招待されて

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[一言] 荷電粒子砲…ジェノかフューラーか… マ○ドサンダーには気をつけなければ…(敵にいると主人公たちは戦いにくそうだなぁ)
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