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第107話 憧れの冒険者

※初のレビューを頂きました。見て頂けると嬉しいです。


前回のあらすじ

ルゴスの街に到着したユーマ達は、ギルドでデザートシャークの討伐報告をするが、それはギルドが出した依頼対象の魔物だった事が判明する。

その依頼を受けていた冒険者の1人がキレだし、報酬を賭けて決闘を挑もうとしたが、そこにアルクという冒険者が止めに入り、ユーマ達を助ける。

騒動が終わった後、アルクはユーマ達に憧れている事を話し、頭を下げる。

 僕達に頭を下げているアルクさんは、さっきまでの威厳ある風格が消え去り、まるで有名人に憧れているファンの様な感じだった。


「へ? こいつ、さっき俺達を決闘騒ぎから助けてくれたけど、それで何で話を聞かせてくれになるんだ?」


「決闘!? 一体何があったの?」


 ラティはその時は場にいなかった為、デニスの決闘騒ぎに驚いていた。


 僕とクレイルは2人に、ギルドがデニス達に出したデザートシャークの討伐依頼の事、その依頼が僕達がオアシスで倒したものだった事、それが原因で彼らは依頼を取り下げにされた事、その事にキレたデニスが討伐報酬を懸けて僕達に決闘を挑もうとしたところをアルクさんが助けてくれた事を話した。


 それを聞いた2人は、ラティは申し訳なさそうに、コレットは呆れていた。


「確かに、依頼対象だった魔物を私達が討伐したのは悪かったわ。でも、だからと言って、それで逆ギレして依頼報酬を賭けて決闘を挑むなんて、冒険者として失格ね」


 コレットはデニスに対して辛辣だった。

 彼女は僕達よりも遥かに冒険者歴が長いから、そういった物事に関しては冷静かつ辛辣だった。


「でも、結果的にはあたし達が依頼を潰しちゃったんだし、多少の罪悪感はあるわね」


 ラティはその依頼の取り下げに多少の罪悪感を抱いていた。


 だが、デニスのやった事は結構悪質だったから、この後の事はギルドに処遇を任せる事にしよう。


 僕は話を戻して、未だに頭を下げているアルクさんに声をかけた。


「えっと、僕達に憧れているって、どういう事ですか?」


「はい、それは……」


「それはこいつがあなた達を、特にユーマさんを目標にしているからです」


 そこにアルクさんの仲間の男が現れた。


「あなた達は?」


「自己紹介が遅れました。俺は金色の雲のBランク冒険者のレインです。こっちは仲間のキャリスです」


「初めまして。同じくBランクのキャリスです。あの有名な銀月の翼に出会えて光栄です」


「そしてこっちの頭を下げているのがリーダーのBランクのアルクです」


「僕達の事は知ってるようですが改めて。Aランクパーティー、銀月の翼、リーダーのAランク冒険者のユーマです」


「Aランクのラティです」


「Aランクのクレイルだ」


「Aランクのコレットよ」


 僕達は互いに冒険者カードを見せ合い、互いのランクを証明した。


「それで、アルクさんが僕達に憧れているというのはどうしてですか?」


「正確には、『雷帝』のユーマさん。あなたに憧れているのです」


 レインさんの返答は、僕の予想を超えるものだった。

 まさか僕に憧れているとは、思ってもいなかったからだ。


「僕に憧れているですって? でも、僕はこれまでそんなに他人に憧れられるような事をした覚えは……」


「……本気で思っているんですか? ユーマさん、あなたがこれまでの冒険者活動での出来事を思い出してみてはどうですか?」


 僕のこれまでの出来事って……。


 ラティと2人で旅立って間もなくしてCランクのジャイアントマンティスに遭遇して討伐。

 最初の依頼でAランクのデビルスコーピオンに遭遇してこれまた討伐。

 その後盗賊に襲われたがラティと2人で返り討ちにして壊滅。

 ヴォルスガ王国での武闘大会でラティと2人で最年少で参加して優勝。

 その際後に加入したクレイルも入れると、優勝者と準優勝者が1つのパーティーを組んだ。

 エリアル王国で起こったスタンピードをアリア達の存在を公にしたのを代償に死者を0人にして沈黙。

 その際に僕とアリアは単独で古竜を討伐。

 アルビラ王国で起こった誘拐事件をお父さん達暁の大地とゼノンさん達赤国の魔竜と共同で捜査、そして黒幕の黒の獣を短時間で突き止め壊滅、そして誘拐された人達を救出。


 ……うん、していたね、憧れられるような事。

 それも結構な数を……。


「はい。よく考えてみたら、僕達結構な事をしていました」


 ラティ達も僕らの所業を思い出して、僕と同じような表情をしていた。


「それでアルクなんですが、こいつ……いや、俺達3人は冒険者になったのは1年前に俺達が成人した時なんです。俺達は3人とも従魔がCランクの魔物で、Dランクまでは比較的スムーズに昇格できました。そんな半年前にエリアル王国で起こったスタンピードで、4人の英雄が現れたという噂が出て、こいつはその中でも『雷帝』のユーマさんに憧れる様になりました。俺達と同じ時期に冒険者になり、僅か数ヶ月でAランクになったユーマさんに、アルクは強い憧れを抱いたんです。そして当時Cランクだったこいつは、いつかあなたの様に強くなると息巻いているんです。それから俺達がBランクになったのは、2ヶ月程前で、CランクからBランクに上がるのに速い方ですがそれなりに時間がかかりました」


 成程ね。

 確かに、あのスタンピードでは、僕達は誰1人死なせないという決意と覚悟の下、アリア達の正体を明かすという代償を払ってスタンピードを死者0人で鎮圧させた。


 そしてその僕達の活躍は、アルビラ王国にいたお父さん達やゼノンさん達、それにギルドでもリーゼさんの耳にも届いていた。

 故にこのロマージュ共和国の街にも届いていてもおかしくはなかった。


「にしても、まさか僕に憧れているとはね……」


 確かに冒険者はある程度有名になると、憧れの対象として見られる事があり、場合によっては王家や貴族から抱えられるなんて事もある。

 さながら、前世の有名な芸能人みたいにもてはやされる事もある。


 でも、僕は別に誰かに憧れられたくてランクを上げた訳じゃないからね。

 ただ、色んな事件や騒動に巻き込まれたり、自分達の信念に従ったりした結果だからな。


「でも、ユーマくんの事が評価されてるって事だから、嬉しい事じゃない」


 ラティの言う通り、こうして僕に憧れているって事は、僕の事が評価、つまり認められているって事だから、喜ばしい事なのは確かだ。

 ラティも僕の事が評価されている事を知り、嬉しそうにしていた。


「それもそうだね」


 僕は目下のアルクさんに視線を移した。


「あの、アルクさん。お話は分かりました。僕の話でよければ、喜んでお話しします」


「ありがとうございます! ユーマさんの話が聞けるなんて、光栄です!!」


 アルクさんは1度頭を上げてお礼を言った後、これまでで最も綺麗にそして深く頭を下げた。

 前世でもバイトや仕事でミスったりして上司に頭を下げた事は何度かあったが、ここまで綺麗なのは初めて見たかも。


 後からレインさんに聞いたが、普段のアルクさんはこのギルドでも注目されている冒険者らしく、常に冒険者達の模範として振る舞う為にさっきのデニス達に注意した時の様な態度をとっているらしい。

 しかし、いざ僕達銀月の翼の話を聞くと、今の様にミーハー的な感じになるそうだ。


 まあそれはさておき、


「折角ですから、レインさんとキャリスさんもご一緒にどうですか?」


「はい。ありがとうございます」


――――――――――――――――――――


 その後僕達は金色の雲を交えて食事をしながら、僕とラティが旅に出てからの出来事を話した。

 彼らもその事が聞けて嬉しいのか、喜びながら聞いていた。


 そして食事が終わった所で、アルクさんがさっきと違って真面目な顔になった。


「ユーマさん、素敵なお話を聞かせてくれてありがとうございました。お陰で俺達も、今後の冒険者の生活の中で役に立てそうです。それでユーマさん、実はあなたに会った時に頼みたい事があったんです」


「頼みって何ですか?」


 アルクさんは一間おいて深呼吸し、落ち着いてから口を開いた。


「ユーマさん、俺と模擬戦をしてくれませんか?」


「模擬戦ですか?」


 模擬戦は、冒険者や騎士と手合わせをして、お互いの実力を確かめ合ったりする、簡単に言えば報酬無しの決闘みたいなものだ。

 また、冒険者同士でやる場合、尊敬する冒険者相手に申し込む事でその人と戦い、自分がどこまで通用するのかを確かめたりするのにも使われている。


「俺、ユーマさんの噂を聞いてから今日まで、冒険者として頑張ってきました。そして、今日偶然とはいえ、そのあなたに会う事が出来て、今このチャンスを逃したら、何時あなたとまた会えるかは分かりません。ですから無理を言っているのは承知ですが、ユーマさん。俺と模擬戦をしてくれませんか? お願いします」


 アルクさんはテーブルに両手をついて深く頭を下げた。


「俺からもお願いします、ユーマさん。アルクからすれば今しかチャンスはないと思いますので、どう聞き入れてくれませんか?」


「私からもお願いします」


 レインさんとキャリスさんも頭を下げてお願いしてくる。


「どうするんだ、ユーマ? 確かにこいつらから見たら、俺達がこの街にいる今しかチャンスはないってのは事実だけど」


 クレイルが僕の耳元で囁きながら聞いてきた。

 僕も同じようにして答える。


「確かにそうだけどね。でも僕は空間魔法でもう好きな時にこの街に来れるから、厳密にはアルクさんには結構チャンスがあるんだけどね」


 僕が身に着けたロストマジック、空間魔法で、もう何時でもこの街へは来る事が出来る。

 そうすれば、アルクさんが僕に模擬戦を申し込む機会が増えるけど、肝心の彼らは僕の魔法を知らないから、僕がこの街にいる今しか模擬戦を申し込む機会がないと思っている。


 まあ、とりあえずは僕のロストマジックの事は言わないでおこう。


 僕はアルクさん達に向き合って自分の答えを告げた。


「分かりました。アルクさん、その模擬戦、僕で宜しければ喜んでお受けします」


「ありがとうございます、ユーマさん!!」


 こうして、僕とアルクさんの模擬戦が決まった。

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感想は、確認し次第返信する方針で行きますので、良かった所、気になった所とかがありましたら、是非感想を送ってみてください。

お待ちしております。


次回予告

アルクと模擬戦する事になったユーマは、ギルドの鍛練場を訪れる。

そしてアルクとの模擬戦が始まり、アルクは果敢にユーマに挑む。

そしてユーマもまた、彼に恥じない事を心掛け、彼を迎え撃つ。


次回、模擬戦

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