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幕間 再会からの共同・前編

 ユーマ殿達と別れてから数日後、私とイリスはバロン殿達がいる、エリアル王国の中にある街、ハイアンスの街へとやって来た。


「この街にバロンさん達がいるのですね、ご主人?」


「ああ。だからまずはギルドへ行こう。バロン殿達は冒険者だ。ギルドに行けば、高い確率で会えるだろう」


「そうね。それに、ここに来る途中に何体か魔物も倒してきたし、その換金も済ませたいしね」


 イリスの言葉にスニィもカミラも頷き、満場一致で私達はこの街のギルドを目指した。


 ギルドにつき、まず最初に受付で討伐した魔物の報告をした。

 スニィとカミラは表にある従魔スペースで待っている。


「この街に来る途中に魔物をいくつか討伐し、その報告に参った」


「畏まりました。それでは討伐した魔物の証明部位を出してください」


 イリスの収納魔法から討伐した魔物の証明部位を出し、私はそのまま素材の買取のカウンターへ向かい、素材の買取も済ませた。


 素材の分も含めたお金を受け取り、私は受付嬢にバロン殿達の事を尋ねた。


「処で、この街に今マッハストームという冒険者パーティーが来ていると聞いたのだが、今何処にいるのか知らないか?」


「私達はその人達とアライアンスを結んだ仲間なの。それで数日前に彼らがこの街に来ているという事を知って、会いに来たの」


「そうですか。マッハストームの方々でしたら、少し前にある依頼を終えてこの街に戻ってきていますので、今は街の何処かにいるかもしれません」


 どうやらバロン殿達はこの街で依頼を受けて、先日まで遠征に行っていた様だ。

 そして今は休養して過ごしているらしい。


「もし、探しに行くのでしたら、後でギルドに来た時に私が伝言を伝えましょうか?」


 確かに、この受付嬢に私達が来ているという言付けを頼んでおけば、後でバロン殿達とすれ違いになった時の保険になるだろう。


「分かった。では、もし彼らが来たら『ゼノンとイリスが来ていて、探している』と伝えてくれないか」


「畏まりました」


 私達はバロン殿達を探す為にギルドの外に出て、街を散策する事にした。


「でも、そう都合よく見つかるかしら」


「彼らの従魔は、ガストイーグル、シャドウパンサー、リビングメイルの3体だ。中でもリビングメイルは目立つだろうから、それを目安にして探せば、すぐに見つかるだろう」


「成程ね。流石はゼノン。よく考えているわ」


「褒めても何も出ないぞ。さあ、行くぞ、イリス」


「はいはい」


 イリスを連れてギルドの外で待っているスニィ達を迎えに行くべく扉に近づいた時、扉が開き、誰かが入って来た。


「おっと。すまない」


「いやいや。俺の方こそわりぃ……て、ゼノン!? ゼノンじゃねえか!」


 その入って来た人物は、探していたバロン殿だった。


「どうしたんですか? バロン」


「ん? よく見たら、ゼノンとイリスじゃないか!」


 続いてトロス殿とダグリス殿が現れた。


「バロン殿、トロス殿、ダグリス殿、久方振りだな」


「久し振りね、会えて嬉しいわ」


 イリスがトロス殿とダグリス殿との再会を喜んでいる間に、バロン殿が私の元へ寄って来た。


「よっ! 久し振りだなゼノン。お前達の活躍は俺達も聞いているぜ。あれからAランクになって、竜闘士の異名までついたそうだな」


「ああ。あれから様々な依頼で、魔物や盗賊などと戦って来たからな。お陰で以前よりも更に強くなる事が出来た」


「そういえば、少し前にアライアンスの情報をチェックしてたんだが、暫くユーマ達と一緒にいた様だな」


 バロン殿の言っているのは、ユーマ殿がアルビラ王国に里帰りして、あの馬鹿王子の起こした事件で共に行動していた頃の様だ。


「ウム。その事か……」


 私達は久し振りの再会を喜びつつ、これまでの事を話すべく、一旦ギルドの飲食スペースに移動し、料理と飲み物を頼んだ。


「処で、ゼノン達がここに来たのは、やっぱり俺達に会う為か?」


「ウム。アルビラ王国でユーマ殿達と再会して、暫く共にある事件を追い、それを解決した後、バロン殿達が今この街にいる事を知って会いに行こうと、こうして来たのだ」


「その事件って、行商人とかが言っている、行方不明事件の事ですか?」


 トロス殿もどうやらあの事件の事は名前は聞いている様だな。

 事件の真相はヘラルとべオルフを断罪後に国王が公表し、更には各国の王にも公表したから、事件の事は行商人や吟遊詩人などを伝って他国の国民にも伝わるのは時間の問題だろう。

 しかし、私達はスニィに乗って移動時間を大幅に短縮した為、まだこの街には()()()()()()()()()()()()()()として伝わっている様だ。


「まだこの街には、行方不明事件としか伝わっていない様ね」


「それって、その事件は何か裏があったのか?」


「あったどころではなく、とんでもない事件だった」


 私はバロン殿達にアルビラ王国で起こった誘拐事件の詳細を話した。


 その事件が一国の王子が犯罪組織に頼んで起こり、そしてその動機が自作自演で英雄になって次期王の座を得ようとしたという身勝手極まりない物だったという事を。


 その真実を聞いた彼らの表情は怒りに染まった。


「なんて奴だ! 仮にも王子の身でありながら、そんな事件を起こすなんて!」


「とてもではないが許せませんね。多くの人間の人生を犠牲にして王になろうとは……王子以前に人間として失格ですね」


「それでいて最後は返り討ちに遭って自身の行いもバレて、名声を得るどころか失脚して終身刑で鉱山奴隷となって生き地獄か。まさに愚者にはお似合いの末路かもな」


「ああ。それに、死罪にならずに鉱山奴隷だから厳密には命は助かるが、それが逆に一生地獄を見る事になった。本当に馬鹿な王子だな」


 バロン殿達もヘラルの所業を聞き、その愚かさに(いか)っていた。

 まあ、当然だな。

 この者達はユーマ殿と心を通わせ、互いに認め合った、正しき心を持つ者達。

 だからこそヘラルの所業を聞き、こうして怒っているのだ。


「だがその者も既に奴隷墜ちとなり、アルビラ王国もルドルフ王子とアンリエッタ王女が奔走している。故にあの国はもう大丈夫だ。我々は今後の事を王族に任せ、ユーマ殿達も新たな目的地を目指して旅立っている」


「成程な。それでお前さん達は俺達に会う為に、こうして態々来たって事か」


 バロン殿の言葉に、私達は頷いて肯定した。


「そして、アライアンスを結んでいる仲間として、暫く僕達と一緒に依頼を受けようと思っているのですね」


 トロス殿の言葉に、再度頷いて肯定した。


「そかそか。実は俺達、こないだ依頼をしたばかりだけど、こうしてゼノン達と再会できたんだ。一緒に何か依頼を受けてみようぜ」


 バロン殿から依頼の共同を持ちかけられた。

 彼らと再会し、暫く共に依頼を受ける、それが私達の目的であるので、受けない理由がないな。


「ああ。それは寧ろ私達の方から頼みたい事だ。共に行かせてくれないか、バロン殿?」


「当たり前だろ? 俺達は、アライアンスを結んだ仲間なんだからな」


「ではよろしく頼む」


 私はバロン殿と握手を交わし、共に依頼を受ける事を決めた。


 その後食事を終えた私達は、依頼を受けるべく依頼ボードの前に来た。


「どの依頼を受けるか? 正直、この面子ならかなり難易度の高い依頼を受けてもいいと思うぞ」


 バロン殿はこの5人が全員Aランクという点から、高ランクの依頼を受けるつもりの様だ。


「それに関しては、私は異論はない。元々私が冒険者の旅をしているのは強い敵との戦いを望んでいるからだ。より高いランクの依頼を受ければ、その機会も増えるからな」


「強者との戦いを望んでの冒険者か。お前さんは立派な武人だな」


 私はバロン殿と笑い合い、イリス達と共に依頼を選んだ。


「ねえゼノン、こんな依頼があったけど、どうかしら?」


 イリスが取り出したのは、難易度がAランクの依頼だった。

 それには、ある魔物の討伐依頼が書かれていた。


「魔物の討伐依頼、討伐対象はアイアンリザードか」


「場所はここから数日の渓谷だ。スニィなら簡単に辿り着けるな」


「確かに、ゼノンさんの従魔のスニィさんなら、僕達を乗せて運ぶ事が出来ますね」


「バロンのロップスとイリスのカミラは自身で飛んで移動できて、トロスのピックは俺達の影に潜ればいいな。後は俺のジオンだが」


「それはスニィが直接持ち上げて運べばいい。古竜のスニィならそれだけのパワーもあるからな」


 ジオン殿――リビングメイルは鎧の魔物だが、その鎧は魔物化した影響による魔力の所為かそれなりの重量だ。

 だがスニィの力ならただ持つだけで十分に運べるからな。


「いいんじゃねえか? アイアンリザードは硬い体による防御力が売りだが、この面子なら余裕で突破できるだろうぜ。それに、前の共同依頼ではバロンは剣が本来の得物じゃなかったけど、今回は違うからな」


「ああ。あの後ロマージュ共和国に行って、鍛冶屋で風斬剣を修復して同時に強化もしたからな。アイアンリザードの体ぐらい、余裕で切り裂いてやるぜ」


 そういえば、バロン殿はあの時、武闘大会でユーマ殿に破壊された魔剣を直す為にロマージュ共和国に行ったのだったな。


「では、これでよろしいか」


「ああ」


「いいですよ」


「ええ」


「おう」


 満場一致で、私達はアイアンリザードの討伐依頼を受ける事にし、受付で依頼の承諾の手続きをした。


 その後バロン殿達は宿屋で装備を整え、私達も雑貨屋などで消耗品などを補充し、城壁の門の近くで落ち合った。


「待たせたな」


「大丈夫だ。その剣が修理された魔剣か?」


 バロン殿の背中には、以前ユーマ殿達と受けた共同依頼の時とは違う剣が帯剣されていた。


「ああ、これが例の修理と俺達が倒した魔物の素材で強化した事でパワーアップされた風斬剣、『風斬剣・(らん)』だ。こいつの性能は、後々で見せてやるよ」


 バロン殿の剣を見てから、私達は門を出て、人型から竜形態になったスニィに乗り、アイアンリザードが生息する渓谷へ飛び立った。

 打合せ通り、カミラとロップス殿はスニィの近くを飛んでいて、ピック殿は主のトロス殿の影に潜り、ジオン殿はスニィが前脚で抱えている。


 この面子での久方振りの共同依頼、そして相手は高ランクの強敵の魔物、今か今かと思うと血が騒ぐな。

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