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第103話 友として

前回のあらすじ

ユーマ達の活躍により、捕縛されたヘラルは国王から断罪を受ける。

ヘラルの自作自演で英雄になり次期王になろうとした計画を知った国王は、この国の未来を奪いかねないという事に憤慨し、ヘラルを王家から追放、終身刑の鉱山奴隷を言い渡す。

その計画に賛同した過激派の貴族も奴隷堕ちに、べオルフも公開処刑が決まり、事件は終息する。

 国王により元王子のヘラルが断罪されてから1週間が経ち、僕達はルドルフ王子とアンリエッタ王女が創設した福祉施設に来ている。

 救出した人達の様子を知る為だ。

 来ているのは僕達銀月の翼のみで、お父さん達は家で寛いでいる。


 そこは建物も設備も充実していて、心の傷のアフターケアなどをするのに理想の環境とも言えた。


「綺麗な施設ね」


 ラティの感想はその一言だが、そうとしか言い切れない程に素晴らしい施設というのが僕の感想だ。


「ありがとうございます。そう言って貰えると、私達もこの施設を作った甲斐があります」


 案内役として来てくれたルドルフ王子がお礼を言った。


 何故彼が案内してくれているのかというと、ここに来た時救出した人達の様子を見るべく先に訪れていたルドルフ王子とアンリエッタ王女が、僕達を施設の案内をすると言ったからだ。


 また、2人の傍には、2人の従魔の2匹のカーバンクルがいた。


 このカーバンクル達は、ルドルフ王子のがモル、アンリエッタ王女のがクルという名前だった。

 カーバンクルには特殊な治癒能力があり、それは精神面にも適用できる為、このようなアフターケアなどにはまさにうってつけの従魔と言える。


「それでルドルフ王子、誘拐された人達の現状はどうでしょうか?」


「今の所は全体の1割程が立ち直れる段階まで回復しています。ですがまだ残りの大半は事件のショックから立ち直れておらず、モル達でも治療するのにかなりの時間を要する事になりそうです」


 僕達もさっき様子を見たが、殆どの人達は目に光が宿っていなかった。

 しかも幼い子供がそんな目をしているの見て、その子達の親が悲しんでいる姿を見て、僕も胸が打ちひしがれそうになってしまった。

 あの人達のあの顔を見ていると、未だにヘラルに対しての怒りが湧いてきそうになる。


「くそ! ヘラルの奴、とんでもない事してくれやがって!」


 クレイルが隣の壁を殴って、怒りをぶつける。

 だがある程度の理性が働いたのか、壁が大きく陥没する様な事はなかった。


「全くです。でも、まだ民衆の怒りがあの人だけに向いていて、私達王族が恨まれていないというのが何よりの救いです」


 あの断罪の後、国王は国民全てに今回の事件の事を伝え、元王族のヘラルが犯罪組織に依頼して国民を誘拐させていたという事を公にした。


 だが国民は最初からヘラルを嫌っていても王族そのものを嫌っている訳ではなく、国民の怒りはヘラルと黒の獣だけに向かい、国王達王族は恨まれてはいなかった。

 国民によると、国王に責任があるとすればヘラルの野望に気付けなかったという一点だけで、それでも国王を恨むのはできないとの事だった。

 今まで自分達に不自由な暮らしはさせず、貴族と平等に扱ってきた王族を恨むのはできないという、これまでの歴代の王が積み上げてきた信頼が王家を守る結果となった。

 だが、全ての国民がそういう訳ではなく、一部の人は王族自体を許していない者もいる。

 だがそれはルドルフ王子達も承知していたので、その一部の非難に対しても正面から向き合っている。


 またそれは、各国の王達も同様だった。

 アベルクス国王はべオルフを処刑した後、ヘラルと過激派の貴族達を鉱山奴隷で他国へ移送する為に、通信のマジックアイテムを使ってデスペラード帝国のアイザック皇帝を始めとする各国の王達に一連の事件の事を話した。

 国王は各国からの糾弾を覚悟していたが、意外にも王達は国王を咎めたりはしなかった。

 王達曰く、「奴隷堕ちにされたヘラルは既に王家を追放されたのでもう王族ではなく、王族の犯罪者がいなければ王家を糾弾する事は出来ない」との事だったそうだ。

 結構無理矢理なこじつけだと思うが、これもアルビラ王家が長い時を経て積み重ねてきた各国からの信頼がこの結果を生んだのだ。


 この事を知った時僕は、何事も普段から日頃の行いが物事を左右するんだなと痛感した。


「それにこれからはお兄様が次期王としてこの国を担っていくのですから、もっと頑張らないといけません」


 アンリエッタ王女が「フンス」と息を上げて張り切った。


 実は、国王が事件を公にした後、同時にルドルフ王子を正式に王太子にすると発表した。

 王太子になるのは、ルドルフ王子とアンリエッタ王女の13歳の誕生日に行う、立太子の儀式を行ってからの事だ。


 だが彼は正式に王太子になる事が決まった為、これからはより一層頑張らなければならない。


 一部の国民からの信頼はなくなっている為、2人はある程度のマイナスからの出発となるが、この2人ならすぐにとはいかなくてもそう遠くない内に信頼を取り戻せるだろう。

 1度失った信頼は簡単には戻らないが、この2人は国民の現状に対してこれ程真摯に向き合っているので、国民全てが支持ていると言われている程のこの2人なら、きっと信頼を取り戻せるだろう。


「殿下、頑張ってください。僕達も陰ながら応援しています」


「ありがとうございます。それで、皆様に1つお願いがあるのですが」


 お願い?

 何だろう。


「できれば、これからは私とアンリエッタとは、対等な友人として付き合って欲しいのです。それで、私達の事は呼び捨てで呼んでくれませんか?」


 何ですと!?

 王族を呼び捨てで呼んで欲しいって、友達ならまだいいとしてそれはいくらなんでも。


「いやいや、王族を呼び捨てで呼ぶなんて、僕にはできません!」


 僕はそう言ったが、ルドルフ王子達は引き下がらなかった。


「そこをどうかお願いします。私達は今まで、王族という身分から対等な友人と呼べる方がいませんでした」


「でも、先日あなた達と初めて会った時、私達は感じたんです。この人達となら、きっと良い関係が結べると。だから、あなた達とは王族と冒険者という関係ではなく、父上と暁の大地の方々の様な、身分に関係ない対等な友人として付き合いたいのです」


「お願いできませんでしょうか?」


 そう言われると、断る事が出来なくなるな。

 それに、この2人とは最初に会った時から話が合いそうだと思っていたし。

 ふとラティ達を見やると、皆笑みを浮かべていた。

 皆僕と同じ考えって訳か。


「そういう事でしたら、僕達でよければ友達になりませんか?」


「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」


「よろしくお願いします!」


 僕達は2人と握手を交わした。


「それでは、これからは私の事はルドルフとお呼びください」


「私もアンリエッタで大丈夫です」


「分かりま……じゃなくて、分かったよ、ルドルフ、アンリエッタ」


『よろしくお願いします』


「よろしくね、ルドルフくん、アンリエッタちゃん」


「グルルゥ」


「よろしくな、ルドルフ、アンリエッタ」


「ウォン」


「よろしく、ルドルフくん、アンリエッタちゃん」


「よろしくね」


 こうして僕達は、アルビラ王国次期王太子のルドルフと、第1王女のアンリエッタと友達になった。

 成行きの形になったけど、この2人とは良い友達になれそうだ。

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魔物情報


カーバンクル

幻獣種のAランクの魔物。リスの様な外見に宝石の様な物が額に埋め込まれている希少種の魔物で、戦闘力よりもその希少性や生態などからAランクに分類されている。魔物の中でも特に珍しい治癒能力を持っており、成長具合によっては精神を治療する事も出来るという事例が残っている。Aランクの魔物だが危険性は殆どなく、討伐記録もない為、討伐証明部位は不明。


次回予告

事件が終息し、ユーマ達はようやく帰省してからゆっくりと過ごす。

やがて次の目的地に行く事を決め、同時にゼノンとイリスに前世の事を話す。

そしてユーマ達は新たな目的地へと旅立つ。


次回、新たな目的地へ


次回で第6章は終わりです。

次回は明日更新します。

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