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第101話 報告と捕縛

前回のあらすじ

べオルフが作り出した自分達の影の軍団と戦うユーマ達だが、イリスが発動させた彼女の固有魔法の無効魔法によって形勢が逆転する。

クレイルの怒りと思いを乗せた拳によってべオルフは倒れ、ケルベロスもまたアリア、クルス、レクス、カミラの連携によって討伐される。

 イリスさんの無効魔法のお陰で、僕達はべオルフを倒す事が出来た。


「それにしても、イリスさんの無効魔法って凄いですね。相手の魔法を封じるなんて、最強の固有魔法じゃないですか」


 ラティはイリスさんが放った固有魔法を絶賛していた。


「ありがとう。でもあれは発動させるのに魔力を高める分時間がかかるし、何より私自身が相手を心の底から敵と認識しないといけない必要があるから、色々と不自由な点が多いのよ」


 イリスさんによると、無効魔法は色々と難点がある様だ。


「でもイリスさん、そんな凄い魔法があるなら、どうして武闘大会であたしと戦った時に使わなかったんですか? そうすれば勝てた筈ですよ?」


 ラティが尤もな質問をした。

 確かにあんな凄い魔法ならラティや僕の魔法を封じて、それでゼノンさんと一緒に一網打尽にして勝つ事が出来た筈だ。


「今言ったけど、無効魔法には対象を心から敵と認識しなければ効果が出ない魔法なの。それに発動も時間がかかるから普段はあまり使わない様にしているの。あまり使いすぎて調子に乗らない様に自粛している様な物ね」


 イリスさんは自分の強すぎる能力(ちから)に溺れない様に自粛して、無効魔法をあまり使わない様にしている様だ。


「でも、今回は相手が相当な外道だったからね。それなら遠慮する必要がないから、入り口の時にも今回にも使ったのよ」


 どうやらあの入口での戦いを任せた後も、無効魔法を使った様だ。


「そうだったんですか。でもイリスさん、あなたのお陰で奴を倒す事が出来ました。ありがとございます」


「ありがとう、イリスさん」


「うふふ。どういたしまして」


 僕達がイリスさんにお礼を言った時、クレイルが声をかけてきた。


「まあ、兎に角、これで終わったな」


「そうだねと言いたいけど、ちょっとやりすぎたんじゃない? べオルフは確実に捕らえないといけなかったんだよ」


 僕は壁の方で倒れているべオルフを指した。

 今のあいつは両腕が肘から先が無くなり、加えてクレイルの渾身のパンチをもろに顔面に食らって、半ば虫の息だった。

 腕は僕がやったとはいえ、流石に止めの一撃はやりすぎだ。


 べオルフはかろうじて息があったけど、その辺は流石Sランク冒険者並みの実力者と言った所かな。


「それでクレイル、あの時別れた後、何があったの? さっきべオルフに止めを刺した時、殺された従魔達がどうの言ってたけど」


「ああ、それは……」


 僕達はクレイルから、彼があの通路の先で見た事を話された。


 それにより、攫われた人達の従魔がべオルフ達によって殺された事を知り、僕達はべオルフに殺気を向けた。


「やっぱり殺すべきだったかな。それほどの事をしたなら、殺しても問題ないと思うけど」


「そうね。あたしもこいつだけは殺してやらないと気が済まないわ」


 そう僕とラティが気を失っているべオルフに殺意を抱いていると、ふと後頭部に「コチン」という音がして、振り向くとゼノンさん達がいた。

 どうやらゼノンさんが僕達の後頭部を軽く叩いた様だ。


「落ち着け、2人共。私達も殺してやりたいのは同じだが、これほどの事件を起こしたならば、しかと国の許へと連行するべきだ。なに、これ程の罪ならば死罪は確実だ。心配するでない」


 そう説かれ、僕達は落ち着く事が出来た。


「さあ、そうとなれば、あいつが死んじゃう前に最低限の治療をするわよ。斬られた腕も繋げておかないと、この魔封じの枷も嵌められないしね」


 イリスさんに促され、僕達は切り落としたべオルフの両腕を拾い、奴の治療を始めた。


 本来、欠損した個所を治すなら上級以上の回復魔法が必要だが、欠損した個所がそろっていれば中級の回復魔法で繋げる事が出来る。

 僕が腕を固定し、魔力操作に長けたラティが回復する事でべオルフの両腕は無事に繋がった。

 すかさずイリスさんが魔封じの枷を嵌め、魔法を封じてから回復魔法をかけ、べオルフは最低限の回復が出来た。


 そしてべオルフの治療と拘束を終えた後、僕はクレイル達にふと気になっていた事を聞いた。


「そういえば、クレイルとゼノンさんはどうやってここまで来たの? ここにはあの3つの分かれ道があって、別れてから駆け付けた時間を考えて1発でここにべオルフがいる事を突き止めたみたいだけど」


 その問いに、2人はこう答えた。


「ああ。あの時レクスと一緒にあの分かれ道まで戻った後、残り2つの通路の内、1番気配が強い方を選んだんだ。その1番気配が強い方にべオルフがいると考えて、この通路を選んだら、見事に奴がいたんだ」


「私も同様だ。あの3つの道から最も強い気配を辿り、イリスと共に駆けつけると、ユーマ殿達がべオルフらしき男と交戦していたのを目撃して加勢したのだ」


 2人によると獣人と竜人族は気配察知能力に秀でているらしく、それでべオルフの存在を感じ取って僕とラティが選んだ道を来た様だ。


「でもクレイル達が来てくれたから、僕達も無事だったんだ。ありがとう」


 僕がお礼を言った時、僕達が通ってきた通路から複数の足音が聞こえた。

 敵かと思い僕達が構えた時、現れたのは、


「ユーマ、ラティちゃん、大丈夫か!」


 お父さん達暁の大地だった。


「パパ! ママ!」


「俺達が行った方の奥でも黒の獣がいて、それは簡単に片付いたんだ。それで、ユーマくん達が行った方にべオルフがいると踏んで、加勢するべく来たんだが」


「どうやら終わった後みたいね」


 僕はお父さん達にここでの出来事を話し、クレイル、ゼノンさん、イリスさんの加勢でべオルフを倒して捕縛した事を話した。


 その時、クレイルが何かに気付いた。


「なあ、ユーマ。さっきまでべオルフに意識が行っていて気付かなかったが、このボロ雑巾みたいな奴は何だ?」


 クレイルが指さしていたのは、べオルフによってボロボロにされていたヘラル王子だった。

 いや、もう王子はいらないかな。


「クレイル、そいつはヘラルだよ。この国の第1王子さ」


「何!? 王子だと!? なぜそのような者がここに!?」


 僕達は皆に、ヘラルがべオルフ達黒の獣に誘拐事件を起こさせていた、真の黒幕だという事を話した。


「つまり、このボロ雑巾みたいになって伸びている馬鹿王子が、この事件の発端だったという事か」


 クレイルは再び怒りに燃え、拳を握り締めている。

 装備されたメルクリウスからギリギリと金属音が響く。


「この王子の評判は私達も耳にしていたが、話を聞く限り本当の屑の様だな。でなければこの様な事を起こす理由がない」


「それでいて、いざ実行すると返り討ちにあって、従魔を殺され、こんな情けない姿になって、本当に馬鹿なのね」


 ゼノンさんとイリスさんもヘラルの悪評は知っていた様で、怒りを通り越して最早呆れていた。


「それならこの馬鹿王子も纏めて連行して、ギルドへ引き上げよう。ヘラルもべオルフも然るべき場所で裁かれるべきだ」


 お父さんの言葉に頷き、僕達はヘラルをレクスに咥えさせ、殺されたヘラルの従魔のフレイムタイガーの死体も回収した。


 その後、お父さん達が戦ってまだ生きていた黒の獣の生き残りも拘束し、コレットの所へ向かい、攫われた人達の保護も完了した。


 それからは、誘拐された人達、べオルフを始めとする黒の獣の生き残りを連れて洞窟を出て、王都へと帰還した。

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次回予告

王都へと帰還したユーマ達は王城の謁見の間で、ヘラルの断罪を見守る。

国王は一国の王として、そして1人の父親として、ヘラルを裁く。

だがその内容はとても重い物だった。


次回、断罪


次回は16日に更新します。

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