第10話 国王とアリア
前回のあらすじ
国王に会う為に王城へとやってきたユーマとラティ。
その際に2人はゲイル達が冒険者として挙げてきた功績を聞く。
「国王陛下、暁の大地の方達をお連れ参りました」
『入れ』
扉の向こうから男性の声が聞こえて、扉が開き僕達はその中へと入り、部屋の中心付近で止まるとお父さん達は片膝をついて、頭を下げた。
僕とラティも同じ様にした。
「よくぞ参られました。暁の大地の皆さん。どうか頭を上げてください」
ゆっくり頭を上げると、玉座に座っている国王陛下は30代前半ほどのブロンドの若い人だった。
しかも、冒険者のお父さん達に敬語で話し掛けている辺り、何だか妙な雰囲気を感じる。
「皆の者、ここはいいから下がれ。暫くは私と宰相だけで十分だ」
その言葉と共に、周りにいた大臣や兵士は玉座の間から退室していった。
そして残ったのは、僕達と国王陛下と宰相と呼ばれた初老の男性だけとなった。
「お久しぶりです、皆さん。全くお変わりない様で嬉しい限りです」
「陛下もお元気そうで何よりです」
「有難うございます。処で、そちらの子供達は?」
国王陛下の視線が僕らに向いた。
「初めまして国王陛下。ゲイル、サラの息子、ユーマ・エリュシーレと申します」
「初めまして。ダンテ、エリーの娘、ラティ・アルグラースです。よろしくお願いいたします」
僕達はお父さんから教わった挨拶を国王陛下にした。
「おお、君達が。初めまして。私はアルビラ王国国王、アベルクス・フォン・アルビラです。君達の事は、ゲイル殿らからの手紙で知っていました。こうして会えた事、嬉しく思います」
国王陛下は優しく手を差し伸べてきて、僕とラティは握手を交わした。
挨拶が済んで国王陛下の視線は、再びお父さん達に向いた。
「して、今日はいかなる御用で参られたのですか?」
「実は昨日、こちらの子供達が5歳になったので、従魔契約を行ったのです。しかし、その従魔の召喚で現れたのが、少々大変な魔物でして」
「ほう。して、その魔物はこちらにいらしているのですか?」
「はい。さあ、2匹をここへ」
僕とラティは、後ろにいた従魔達を国王陛下の前に連れて来た。
「これはこれは、随分と可愛らしい魔物ですが、これのどこが大変なのですか?」
うん、その質問は尤もだ。
何故なら、今のアリア達はまだミニサイズのままなんだから。
「あの国王陛下、少し後ろに下がってくれませんか?」
「ウム、分かりました」
国王陛下が安全な距離まで離れたのを確認した僕は、アリアに指示を出した。
「アリア、元の姿に戻って」
『承知しました』
「クルスもお願い」
「クルゥ」
そして次の瞬間、2匹の体が輝きだし、2匹の体はたちまち元の魔物の姿になった。
「なっ……何と!?」
やっぱり国王陛下も驚いているようだ。
宰相閣下に至っては尻もちすらついている。
「国王陛下、改めてご紹介します。僕の従魔の竜神、名をアリアといいます」
「同じく、わたしの従魔のグリフォン、名前はクルスです」
アリアとクルスはその紹介と共に、国王陛下に深く頭を下げての挨拶をした。
「なっ……何と……竜神とは……しかもそのグリフォン、姿を変えた事から特異種か。つまり、その子達はEXランクの魔物と適合していたのですな」
「ええ。我々の言った大変という意味が分かりましたでしょう」
「それは勿論。では皆さんがいらした目的は、私に後ろ盾になってもらいたいという事ですな」
「その通りです。もし、この2匹が」
「分かっています。このままでは戦争を望む過激派や馬鹿な貴族どもから、この魔物達の事が狙われるのは確実でしょうからな。分かりました。アベルクス・フォン・アルビラの名の下に、ここに誓います。ユーマ、ラティとその従魔、アリアとクルスの安全を守る盾となる事を約束いたします。ホマレフ、すぐに王都中に、彼らの事と私の宣言を伝えるのだ」
「承知しました」
ホマレフと呼ばれた宰相閣下は、国王陛下からの命令を実行するべく、玉座の間から出て行った。
気が付いたら、国王陛下はアリアと向き合っていた。
「お久し振りです、竜神様」
『やはり、何処かで感じた魔力だと思いましたら、あの時の少年でしたか』
「えっ!? 国王陛下はアリアと知り合いなんですか?」
「うむ、かなり昔の話なのだがな」
国王陛下の話では、彼がまだ子供の時で当時は殿下だった頃、彼は好奇心から自身の従魔と一緒に城から抜け出し、近くの森へ入ったが道に迷ってしまい帰る方向が分からなくなったそうだ。
そんな時、彼の前に現れたのがアリアと、彼女の母親の当時の竜神だったそうだ。
彼女達に帰り道を教えてもらい、王様は無事に城に帰れたそうだ。
「あの竜神様」
『アリアとお呼びください。それが、今の私の名前です』
「分かりました、アリア殿。それで、先代の竜神様はお元気でしょうか?」
『残念ですが、お母様はあれから暫くして寿命で崩御あそばされました。私はその跡を継ぎ竜神となり、主のユーマと出会いました』
そうか……アリアのお母さんは亡くなったのか。
「そうですか……ですが、再びアリア殿と会えて、私は嬉しい限りです。ユーマ殿、私がアリア殿と再会できた事、誠に感謝します」
「はっ……はい。恐れ入ります」
その時、玉座の間の扉が激しく開き、お腹がでっぷりとしたいかにも小物的な中年男性が入ってきた。
その人物を見た時の国王は、額に手を当てて深い溜息を吐いていた。
「陛下!」
「なんだ、ヴィダール大臣」
ヴィダール大臣と呼ばれた人物は、アリアとクルスを見て邪な笑みを浮かべた。
「陛下、たった今ホマレフ閣下よりEXランクの従魔とその契約者の子供の事を聞いたのですが、何故その従魔達を利用しないのですが! 竜神に特異種のグリフォン、これ程の力を軍務大臣である私に任せて頂ければ、アルビラ王国は全世界を統一できるかもしれないんですぞ! それを何故!」
どうやらこの大臣はお父さん達の言っていた過激派の人間みたいだ。
その余りに身勝手な言葉を聞いて、僕やラティ、お父さん達だけでなく国王陛下まで不愉快そうに眉を寄せていた。
「ヴィダール大臣、この子供達は私が世話になった冒険者達の大切な子達だ。そんな彼らの従魔を私の勝手で軍事利用するなど彼らの友として、そして、私の誇りが許さん」
「しかしっ……!」
「話は終わりだ。下がれ、大臣」
「っ……! 分かりました……」
大臣はなおも食い下がろうとしたが、国王陛下はそれを許さず大臣を下がらせた。
大臣がいなくなったのを確認して、国王は僕達に頭を下げて謝罪した。
「皆さん、大変見苦しい物をお見せしました。申し訳ありません」
「大丈夫です。陛下、私達の願いを聞き入れてくれて感謝いたします」
お父さん達は王様に感謝を述べた。
「何を言うんですか。私と皆さんの仲ではないですか。折角城に来たのです。良ければご一緒にお茶でもいかがでしょうか」
「そうですね。ご一緒させていただきます」
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次回予告
ユーマは国王に何故父親達と親しいのか尋ねる。
そして彼らから親交の始まりを教えられる。
次回、国王と暁の大地
次回は9時に更新します。