第98話 特異種vs特異種
※ユニークが1万を超えました。改稿してから1ヶ月ほどでここまでできたのも、皆様の応援があったからこそです。これからも頑張ります。
前回のあらすじ
黒の獣の掃討作戦を決行される中、ユーマとラティは遂にボスのべオルフと対峙する。
しかし、一連の誘拐事件が次期国王になる為の点数稼ぎをする為に、第1王子のヘラルが黒の獣に依頼した物だったという事が判明する。
ユーマ達は驚くが第一目的であるべオルフ捕縛を遂行する為に、襲ってきた配下の黒の獣を瞬殺する。
アリアとクルスもべオルフの従魔のケルベロスと対峙するが、その中でクルスがケルベロスに吹っ飛ばされるという事態が発生する。
ユーマ達は驚愕し、べオルフは自分のケルベロスが特異種だという事実を明かした。
特異種、それは通常種では不可能な能力を持った魔物の事を指す。
クルスの場合は、自身の体を縮小化してミニサイズにできたり、魔力を調節して身体強化が出来たりする。
特異種はその希少性から、希少種に分類される魔物よりも遥かに珍しい存在だ。
更に、特異種は通常種よりも遥かに強い力を持ってる為、そのランクは通常よりも1つ上になる。
クルスだとグリフォンは本来はSランクだが、それが1つ上がってEXランクになる。
そしてケルベロスの場合は……
「つまり、お前のケルベロスは特異種により、アリア達と同じEXランクになるという訳か!?」
「そういう訳だ。つまりお前達の従魔と同格だから、グエルは賢者のグリフォンを吹っ飛ばせたのさ」
正直に言って、これは予想外だった。
ギルドマスターの話で、こいつが強力な従魔を連れていると言われていたから、あのケルベロスがその従魔だというのはすぐに分かった。
でもそれが特異種だなんて、想定外もいい所だ。
「まさか、こんな所で2体目の特異種と出会う事になるとはね」
「ええ。でも、まだ4対2よ。このまま力押しで行けば、倒せる筈」
そうだといいんだけど。
『ユーマ』
アリアが僕の所に寄って来た。
「アリア、もう1度奴らを分断してくれるかい? 少なくともケルベロスを引き離す事が出来れば、まだ勝機が広がるかもしれない」
『承知しました』
「グルルルルゥゥゥ!!」
突然クルスが雄叫びを上げ、よく見るとクルスは今までに見た事がない程の闘争心を剥き出しにしていた。
その闘争心はケルベロスに対して発したものだった。
「そっか。クルスは、同じ特異種の相手に負けたままなのが悔しいのね?」
「グルゥ!」
「分かったわ。ユーマくん、ケルベロスは、クルスに任せてくれない?」
「分かった。アリア、君はクルスの援護を頼む」
僕がラティの案を呑んだ理由はそれだけじゃない。
アリアが本気を出したら確かに一瞬で終わらせるかもしれない。
でも今のアリアは標準サイズで力がセーブされているし、何よりここは洞窟の中だ。
本気を出して戦ったら、この洞窟が崩落する危険がある。
僕とお母さんなら、空間魔法とディメンジョンリングで周りを連れて脱出する事はできる。
でもそれだと、別行動中のクレイル達が取り残されてしまうからね。
だからラティの案を呑んだんだ。
『承知しました』
アリアもそれを理解して承諾してくれた。
「作戦会議は終わったか? そろそろ本気で行かせてもらうぜ! グエル!」
ケルベロスの3つの口から、黒い炎のブレスが放たれた。
『黒炎のブレス!? それがそのケルベロスの特異種としての能力ですか! ですが!』
アリアは僕達の前に出て、その巨大な翼を盾にして黒炎から守った。
『少々熱いですが、私の体には、如何なる魔法攻撃も物理攻撃も効きません!』
アリアは翼を大きく翻し、炎を消し飛ばした。
でも「少々熱い」という事は、あのアリアが僅かだがダメージを追う程の攻撃力という事か。
という事は僕達の場合はこの魔竜のローブがなければ、決して無事ではすまないな。
「甘いぜ! シャドウストライク!!」
続いてべオルフの詠唱と共に、僕達の影が動き出し、頭上に巨大な影の槍が現れた。
「これが俺が『黒牙』と呼ばれる由来だ! 自分らの影に串刺しになりな!」
2つの影の槍が同時に僕達にめがけて降下してきた。
「まだだ! フラッシュ!」
僕が発した閃光により、影の攻撃を掻き消した。
「ほう。この攻撃を防いだか。なら、これでどうだ!」
べオルフの持っていた槍が僕に目掛けて投擲された。
僕は後ろに跳んで躱した。
「今だグエル!」
その瞬間、ケルベロスが迫ってきた。
「それなら、ライトニングエンチャント!」
僕は雷の複合強化で躱そうとしたが、その時、僕の体が動かなかった。
「何だ!? 体が、地面に縫い付けられたみたいに、動かない!?」
「ユーマくん、危ない!!」
ケルベロスの3つの顎が僕を捕らえようとしたその時、クルスが突進して、ケルベロスを抑えつけた。
「ありがとうクルス!」
僕は急いでここから離れようとしたが、やはり体は動かなかった。
「駄目だ! どうして体が動かないんだ!?」
『ユーマ、動かないでください』
アリアがさっきべオルフの投げた槍に近づき、それを刺さっていた地面ごと抉って取り出した。
すると僕の体は再び動ける様になった。
「動ける様になった。アリア、これは一体」
『この槍があなたが動けなくなったカラクリなのです』
アリアは槍を尻尾で持ち、べオルフに見える様に掲げた。
『べオルフ、随分と珍しい魔槍をお持ちの様ですね』
「ほう、今のだけで俺の魔槍カゲヌイの効果に気付いたか。流石は伝説の竜神だな」
カゲヌイ?
もしかして、あの槍は魔槍なのか。
『あなたが放った槍、あれはユーマの本体を狙って放たれた物ではありませんでした。本当の狙いは、ユーマの影に向かって放たれた物だったのですね』
アリアの言葉に、僕はさっきまでの事を思い出した。
確かに僕が動けなかった時、あの槍は地面にというよりは僕の影の上に刺さっていた。
「成程、この槍は相手の影に刺す事で、その影の主を動けなくさせるマジックアイテムなのか」
「ご明察だ。そのカゲヌイと俺のシャドウストライクで、俺はこれまで多くの仕事を成功させてきた。相手は動く事もできず、自分の影で体に風穴がいて証拠も残らないまま俺は殺しをできたのさ」
成程。
こいつはこの槍とさっきの影の槍の魔法の組み合わせで、多くの暗殺などを行って来たのか。
そしてその遺体には牙に刺された様な跡が残ったからとかで、こいつに『黒牙』という異名が付いた訳か。
「でも、その槍を手放してしまえば、後は影の魔法に注意するだけ。効果も分かったし、もう何も怖くないわ!」
ラティは既に勝ち誇った顔をしていた。
「果たしてそうかな?」
べオルフは尚も不敵な笑みを浮かべたまま、右手をこちらに、いや、アリアの尻尾にあるカゲヌイに向けた。
その時、べオルフの右手にないはずのカゲヌイが現れ、奴はそれを握った。
「何!?」
一瞬アリアの方を見ると、その尻尾には槍が消えていた。
「放った槍が、またあいつの手に!?」
『無属性魔法ですか!』
「そう。俺の固有魔法は吸引魔法。自分が対象に設定して、念じた物を瞬間的に引き寄せる魔法だ。この魔法がある限り、俺は何度でもこのカゲヌイを放つ事が出来る。これで形勢逆転だな。後はお前達を確実に1人ずつ始末するだけだ」
「そうはさせるか!」
僕は白百合とライトニングエンチャントの効果による神速で、べオルフの懐に飛び込んだ。
「槍で動けなくさせるなら、その懐に飛び込んで、槍を使えなくさせる! 槍使いは間合いを詰められたら、攻撃できないからな!」
槍は僕もジルドラスを使っているから、槍使いの弱点を熟知しているからこその戦い方をした。
そのまま白百合を振り上げ、べオルフへと振り下ろした。
「甘いぜ」
べオルフは槍の柄で、その攻撃を防いだ。
「このカゲヌイはマジックアイテムだけあってその強度も高い。だからお前の攻撃なら、こうして防ぐ事も出来る」
「でもこれで、お前の動きは封じた」
「何?」
僕はその一瞬でべオルフから離れ、後ろではラティが控えていた。
「行くわよ!!」
そこにラティの重力魔法が発動し、べオルフはその強まった重力に襲われた。
さっきの奴らと違って、べオルフは必ず捕縛する為、ラティも重力を調整して圧死しない様にしていた。
「ぐっ……!? これは……重力を強めたのか……」
「大人しく降参しなさい!」
ラティは重力魔法を発動したまま、べオルフに降伏を進言した。
「それは聞けない相談だな……それに、動けなくても……この魔法は使えるんだぜ!」
べオルフはまだ何かするつもりだ。
「この魔法」って……まさか!?
「不味い! ラティ、そこから離れて!!」
「もう遅いぜ! シャドウストライク!!」
ラティに叫んだ時、ラティの影が動き出し、その背中に目掛けて影の槍が飛び出した。
そしてその槍はラティの頭部を狙っていた。
不味い!
僕とラティはこの魔竜のローブでどんな攻撃も効かないけど、そのローブが覆っていない無防備の頭部を狙われたら、いくらラティでも即死だ!
今僕とラティは距離が空いているから、ライトニングエンチャントで助けようにもべオルフの魔法が届くのが先だ。
アリアとクルスの方を見たが、2人もケルベルスの相手をして手が離せない。
僕が駆けだそうにも、無情にも槍はラティの頭部に目掛けて振り下ろされた。
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アリアの凄すぎる所
その15、ダメージを与えるには同じEXランク相当の魔物が必要となる。
次回予告
『今回の次回予告は、若干ネタバレの危険性がある為、私とユーマでお送りします』
「多分大丈夫だとは思うけど、念には念を入れてね」
『このままではラティが串刺しにされてしまいますよ! でも、ヒロインが死んでは物語が成り立たないのでその心配は無いと思いますが」
「そうだね。勿論、僕だってラティが死ぬ展開は嫌だよ。そうなったらダンテさんとエリーさんに合わせる顔がないからね」
『その通りですよ、ユーマ。ですから、絶対にラティは守り抜きましょう』
「勿論さアリア。それに、僕達にはまだ仲間がいる事を忘れない様にしよう」
『はい』
「では、次回は『まだ仲間はいる』になります」
『次回も滅茶苦茶、動き回りますので是非ともお読みください』
「それでは、お楽しみに」
次回は明日更新します。