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第95話 クレイルの怒り

前回のあらすじ

黒の獣を討伐するべくゼルギアスの滝へとやって来たユーマ達は、入り口で出くわした黒の獣の構成員をゼノンとイリスに任せ、先に奥へと進む。

残ったゼノンとイリスはユーマとラティの友としての誇りを掲げて戦い、従魔と共にそれぞれの力をフルに活かしての戦闘で敵を殲滅する。

 入口の敵をゼノンさん達に任せて、僕達は黒の獣のアジトであるゼルギアスの滝の洞窟の中を走っていた。


 少し前に入口の方から物凄い衝撃が伝わり、お父さん達はゼノンさん達の身に何かあったのかと思ったが、僕達はゼノンさんかスニィの仕業だと伝えた。

 あのゼノンさん達があんな奴らに後れを取るとは思えないし、直接ゼノンさんと戦った事のある僕には、あの衝撃が大方ゼノンさんの奥義によるものだと確信があった。


 だからゼノンさん達の事は大丈夫だとお父さん達を説得し、僕達はそのまま洞窟の中を進んでいた。


「ユーマ、攫われた人達の反応はどうだ?」


「いや、まだ反応はあるけどこれといった動きがない。だからまだ人質に取られる心配は無いと思うよ。それに、その1ヶ所にいる数が凄い。攫われた人は確か100人に上る筈だったから、多分この大きな部屋に監禁されてるんだと思う」


「急いだ方がいいかもしれないわね。たとえ人質に取られていなくても、もう私達が来た事はさっきの男が報告に言っていると思うわ。だから、何らかの対策が採られていると思うのが妥当よ」


 エリーさんの言葉に僕達は頷き、洞窟の更に奥へと足を進めた。


 少しすると、目の前の通路が3つに分かれていた。


「分かれ道か。案外、1つは攫われた人達がいる部屋に、もう1つは幹部がいる部屋に、最後の1つはボスのべオルフって奴がいる部屋に通じていたりしてな」


 クレイルが軽く笑いながら言うと、僕の探知魔法に驚きの反応があった。


「いや、クレイルの指摘通りかもしれないよ」


「へっ?」


「まず右の道からは100にも上る反応がある。これは十中八九攫われた人達の反応だよ。そして真ん中と左からも数十人の反応が。多分このどれかの反応の中にボスがいる筈だよ」


「なら3つに分かれよう。1つは攫われた人達の保護。残り2つはそれぞれで黒の獣のメンバーの討伐、又は捕縛。但し、リーダーのべオルフは必ず捕縛だ」


 お父さんの提案で考えた上で、攫われた人達の保護にクレイルとコレット、レクスとアインが、残りの2つは反応が真ん中の方にお父さん達暁の大地が、左の方に僕とラティ、アリアとクルスが向かう事になった。


「よし、じゃあ、また後で落ち合おう」


「2人共、決して無理はしないでね」


「分かってるよ。お父さん達も気を付けてね」


「あたし達も結構強くなってるつもりだから、大船に乗ったつもりで任せて」


「じゃあ、アリア、また後でね」


『お姉様も、お気をつけてください』


 僕達はそれぞれに分かれて、僕とラティは左の通路を歩いて進んだ。


「ユーマくん、反応はどう?」


「まだ目立った反応はない。でも入り口の事を考えると、奴らは僕達が来る事が分かってる筈。だから、何時でも戦える様に、各自警戒は怠らないで」


「『了解よ(です)』」


「グルゥ」


 やがて、奥の方から明かりが見えてきた。


「見て! 明かりが!」


『きっと奥へ通じる部屋です!』


「行ってみよう!」


 僕達は警戒しながら速足で歩きながら明かりの方へと行き、辿り着くとそこには信じられない光景があった。


――――――――――――――――――――


 クレイルside


 俺とコレットはユーマが言ってた100人に上る反応があった方へ行き、少しすると巨大な扉が見えてきた。


 その前には見張りの黒の獣らしき男2人が従魔のゴブリンとグリーンウルフと一緒にいた。


「なっ……何だお前達は!?」


 男も俺達に気付き、手に持ったククリというナイフを構えてきた。


「俺達か? そうだな……俺達は……」


「通りすがりの正義の!」


「味方よ!」


 コレットとアインはそう言いながら、コレットは手に持ったアルテミスを構えて矢を、アインが風の矢を放った。


 男達とその従魔はその矢に反応する事もなく、眉間に矢が刺さり絶命した。


「おいおい。俺が言うのもなんだが、もう少し情報を聞き出してから撃ってもよかったんじゃね?」


「そう? 元々ユーマがこっちの道に反応があるって言ってたんだし、それで十分じゃない?」


「まあ、それは言えてるな」


 俺達がそうしてる間に、レクスとアインが男達の死体を調べ、扉の鍵らしき物を発見した。


「アイン、それはこの扉の鍵?」


「ええ、そうみたい。これ以外に鍵らしき物は持っていないわ、こいつ」


 俺はアインから鍵を受け取り、扉の鍵穴に入れると、「ガチャン」という音と共に扉が開き始めた。

 俺は扉を全開にするとそこには、100人はいそうな人が巨大な部屋に監禁されていた。


 その中には見るからに成人したばかりの人から幼い子供までいた。

 王都のギルドで聞いた行方不明になった人達と、特徴が一致している。 

 加えて皆ボロボロの服とも言えない布切れを纏っていて、女性に至ってはその薄い生地の所為で身体のラインまで浮き出ていた。

 何より決定的なのは、全員首に奴隷の首輪が嵌められていた。


 エルネスタの街付近の街道でジェニーちゃん達を保護した時、あの子達は全員奴隷の首輪を着けられていたし、その後の実行犯の尋問で誘拐した奴らには全員奴隷の首輪を着けて抵抗できない様にしたとも確認が取れた。


「ビンゴだな」


「ええ。だけどクレイル、気付いてる? この人達から感じる違和感」


「ああ。この人達の従魔がいない」


 そう、俺達は5歳になると魔力が安定して魔法が行使できる様になり、それによって自分の魔力と適合した魔物を呼び出す従魔契約ができる様になる。

 だがこの人達の半数以上は成人しているから、必ず従魔がいる筈だ。

 中には5歳未満の子供もいる様だからそれはまだいいが、この人達の従魔は一体何処にいるんだ?


「つうか、従魔の事を聞き出すなら、やっぱ見張りをいきなり殺したのは間違いだったんじゃね?」


「そうね、それは失敗だったわ」


 俺達がそんな会話をしていたその時、人々が俺達の存在に気付いた。

 だが奴隷にされた影響で心に傷を負っているからか、皆死んだ様な眼をしていた。


「皆、怯えなくていい。俺達は黒の獣を討伐に来た冒険者だ。今からあなた達を保護するから、安心してくれ」


「後、皆さんの従魔も救助するので、居場所を知っていたら教えてください」


 その時、1人が掠れる様な声で何かを呟いていた。

 俺はその側に寄り、耳を寄せた。


「従魔は……私達の従魔は……いません……」


「いない? どういう事だ?」


「奴らに奴隷に……されてここへ連れて来られた時……奴らは……私達の従魔を……全て殺したんです。そして……その素材や魔石は……全て売り払われて……しまいました……」


 それは余りにも許せない事だった。

 従魔はその人につき世界でたった1体だけの存在で、死んでしまっても新しい従魔に会う事もできない。


 人の中には俺達みたいに冒険者の相棒としている人もいれば、その従魔の特性を活かした仕事をする人もいる。


「しかも……この中には……従魔に出会ったばかりの子供もいます……その子達の従魔も……全て見境なく……奴らは……殺したんです。それからは……私達はここに入れられて……女性は子供から大人まで……奴らの慰み者にされて……」


 その時、プツンと俺の中の何かが弾けた。

 今俺は、そんな事をした黒の獣を、連中の黒幕のべオルフって奴をぶん殴りてえ。

 俺はそいつらが許せないんだ。


 従魔は家族の一員でもあり、かけがえのない大切な相棒だ。

 そんな相棒達を殺した黒の獣を、この人達の心をここまで傷つけた黒の獣を、俺は絶対に許せねえ。


「コレット、ここは任せていいか? 俺はボスを殴りに行ってくる」


「勿論よ。私も話を聞いて、今すぐにでもべオルフって奴の目玉と鼻の穴に炎の矢と雷の矢をぶち込んでやりたい気分だわ。でも、ここの人達を守る為にも離れる訳にもいかないから、ここは私とアインに任せて、クレイルは私の分までべオルフをぶちのめしてきて!」


 どうやらコレットはそのエルフ特有の長い耳から、この人の会話を聞き取ったみたいだ。


「任せろ! 行くぞレクス!!」


「ウォン!!」


 俺はレクスを連れてユーマ達と別れた道を目指して走った。


 待ってろよ、黒の獣!

 お前達はこの俺が、俺達銀月の翼が決して許さねえからな!!

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次回予告

自分っちの進んだ通路の最奥へと来たゲイル達は黒の獣の幹部とその直属の部下と対面する。

話し合いは無用と切り捨て、ゲイル達は冒険者として任務を全うするべく、黒の獣に戦いを挑む。


次回、暁の大地の戦い


次回は明日更新します。

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