表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/321

第93話 掃討作戦

前回のあらすじ

ユーマは誘拐された子供達の今後を尋ね、王都の福祉施設で療養される事を知る。

それがルドルフとアンリエッタの設立した施設だという事を知り、同時に2人の上げた功績を聞かされる。

同時にヘラルの評判が最悪だという事も知る。

王都に戻ったユーマ達はギルドマスターから黒の獣の掃討を依頼され、これを承諾する。

一方、王城ではヘラルが何かを企んでいた。

 黒の獣の掃討作戦を依頼された翌日、僕達はお母さんのディメンジョンリングの効果で、ゼルギアスの滝の付近の森へと転移した。


「ここから少し歩いた所に、ゼルギアスの滝という巨大な滝があるわ」


 お母さんの言葉で探知魔法で確認してみた。


 本来探知魔法は文字通り目標物の探知をする魔法だが、僕は空間魔法を習得する為の修行で自然界にある物体――木や土といった物にも魔力があるという事を利用し、それらの魔力を探知する事で周囲の地形を魔力による形で把握するという技を身に着けた。


 その結果、お母さんの言った通り少し離れた場所に滝壺の様な形状の巨大な魔力を感じ、その奥に洞窟の様な形の魔力を感じた。


「確かに、お母さんが指した方向に、巨大な滝の様な形の魔力反応がある。巨大な水の魔力を感じるから、間違いないよ」


「ユーマ殿が周囲の地形の魔力で辺りを把握できるというのは、予め聞いていたが、実際に見てみると凄い物だな。周囲の地形を把握するなど、探知魔法をここまで昇華させた者は見た事がない」


「そうね。私も魔族としてそれなりに色んな人を見てきたけど、探知魔法は余り有用と思う人はいなかったの。だけど、ユーマくんはその私達の常識を大きく覆したわね」


 ゼノンさんとイリスさんの言葉に、お父さん達も頷いていた。


「とにかく行きましょう。早く黒の獣を討伐して、攫われた人達を助けましょう」


 僕達は森を進み、森を出ると目の前には途轍もなく巨大な滝が目に入った。


「あれがゼルギアスの滝よ。あの滝は常に絶え間なく水が流れ落ちて、1時間に数万トンの水が落ちているとも言われているの」


 そんな滝、最早自然の化け物とでも言う様な存在だな。


「その流れる水の圧力は、どんな魔物も耐え切れず圧死されて、又の名を『流水のギロチン』とも言われているわ」


 『流水のギロチン』ね。

 確かにそんな危険な場所なら、人も余り寄らない。

 言い得て妙というのはこの事だな。


 それなら、黒の獣の様な犯罪組織が根城にするのも分かる。


「だが、俺達が捕らえた男達によると、あの滝の裏には洞窟があって、そこが黒の獣のアジトになっているとの事だが。ユーマくん、そんな場所が本当にあるのかい?」


 ダンテさんに聞かれ、僕は迷わず答えた。


「はい。あの滝の裏側に、洞窟の様な形の魔力反応がありました。あの男達が言っていた事は、まず間違いなかった様です」


 そもそもアインの自白の鱗粉で、嘘をつける筈がないからね。

 だからあの男達が言っていた事は、全て本当の事という事になる。


 それと同時に、皆の顔色が変わり、冒険者としての顔になった。

 それぞれ武器を展開し、僕は白百合と黒薔薇を、ラティはエンシェントロッドを、クレイルはメルクリウスを、コレットはアルテミスを、お父さんは大剣、お母さん、エリーさん、イリスさんは杖を、ダンテさんは槍を、ゼノンさんは竜化魔法で両腕を竜化させて臨戦態勢を取り、滝へと近づいた。


「おっ。よく見ると、あそこから回り込んで行けば、滝の裏側に行ける様だ」


 お父さんの指した方を見ると、滝の左側に崖沿いに道があり、それが滝の裏側へと続いている。


「確かに、あの道なら滝の裏を出入りできる。ではユーマ殿の言った通り、あそこが洞窟へ通じており、黒の獣はあそこから出入りしていたという事か」


「その様ですね。それに、あの滝の裏から人と魔物の魔力反応が沢山あります。その更に奥には人だけの魔力反応がかなりの数があります」


「だとすれば、それが攫われた人達の反応で間違いなさそうね」


 僕達は更に警戒を強めて崖沿いの道を進み、滝の裏側まで来た。


「ビンゴね」


 ラティの呟きに、僕達は頷いた。


 今僕らの正面には、かなり大きめの洞窟が存在している。

 これなら大人数が出入りするのに十分な大きさだ。

 幅も広く、トロールやミノタウロスの様な大型の魔物も問題なく通れる程の大きさだ。


「よし。行くぞ」


 お父さんの掛け声で、僕達は手に持つ武器を握り直し、洞窟へと一歩踏み出そうとしたら、僕探知魔法に反応が現れた。


「気を付けて! 誰か来る! それもかなりの人数だ!」


 僕がそう言った瞬間、洞窟の奥から大多数の男が従魔の魔物を連れて現れ、僕達は囲まれた。


「へへ。お頭の言った通り、討伐に来た冒険者が現れたな。」


「念の為に入口を警戒に来たつもりだったが、これは好都合だな」


「ああ。だが初戦はたった10人と10体だけだ。数の差に勝てる訳がねえ」


 男達の会話から、1つの疑問が出た。


 こいつらは僕らがここに来るのを知っていて、予め待っていた様だ。

 だが、僕達が今日ここに討伐に来る事はおろか、僕達が討伐に来る事はギルドマスターが秘密裏に国王へ報告した筈なのに、こいつらには情報が漏れていた。

 という事は、やはりこいつら黒の獣には王国の貴族が繋がっていたという事になるか。


「どうやら、情報が漏れていた様だな」


 ゼノンさんも僕の推測と同じ事を考えていたのか、そう呟いていた。


「誰かお頭に報告に行け。『討伐に来た冒険者が現れた』とな」


 1人の指示に従った1人の男が洞窟の奥へと走り出した。


「いかん! こいつらに時間を掛けていると、攫われた者達が人質にされる危険がある! ユーマ殿、この場は私とイリスに任せ、お主達は先に行くのだ!」


 ゼノンさんは人型のスニィと一緒に前に出て、僕達に先に行くよう促した。


「ゼノンさん!」


「そうね。ここに残るのは最少の人数で十分だわ。なら、私とゼノンだけで十分よ。さあ、皆は早く先に行って」


 イリスさんも背後の男達の前に出て杖を構えた。

 傍ではカミラも翼を広げて威嚇の姿勢をとっている。


「ありがとう、ゼノンさん、イリスさん。ここは任せます! さあ、ユーマ、行くぞ」


「うん。ゼノンさん、イリスさん、また後で!」


「気を付けてください!」


 僕達は囲んでる男達をスルーして、洞窟の奥へと駆け出した。


「行かせるかよ!」


 正面に立っていた男の1人が手に持った斧を振り被ってきたが、


剛竜正拳(ごうりゅうせいけん)!!」


「ぐはぁっ!?」


 ゼノンさんの繰り出した竜化させた腕による正拳突きで吹っ飛ばされた。


「お前達の相手は、この私達! 赤黒の魔竜だ!!」


「私達を倒さない限り、ここから先へは行かせないわ!」


 ゼノンさんとイリスさんは黒の獣の前に立ち、僕達へ行けない様にしてくれた。


 そのまま僕達はこの場をゼノンさんとイリスさん、スニィとカミラに任せ、奥へと走った。

「面白かった」、「続きが気になる」、「更新頑張ってください」と思った方は、ブックマークや評価、感想していただけると励みになります。

評価はどれくらい面白かったか分かりますし、1人1人の10ポイントの評価は大きいので、まだ未評価の方は是非お願いします。

ポイント評価は最新話の広告の下に評価欄があり、そこから評価できます。

感想は、確認し次第返信する方針で行きますので、良かった所、気になった所とかがありましたら、是非感想を送ってみてください。

お待ちしております。


次回予告

ユーマ達を先に行かせて残ったゼノンとイリス。

自分達の黒の獣に対する怒りを燃やして戦いを始める。

2人は友であるユーマとラティの為にと力を振るう。


次回、赤黒の魔竜の戦い


次回は31日に更新します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 度々すみません。 前回、数万トンとされた 「万」を見落としていました。 「途轍もなく巨大な滝」とありますので、先の毎秒10リットルは少なすぎて、威力もなくアジトは隠せないと…。 ですのでお…
[気になる点] お返事いただきましてありがとうございます。 具体的な量を書いてなくすみせん。 提案ですが「1日に数トン」よりは「1時間に数十トン」のほうが良いかと思います。 1日に10トンのとき、…
[気になる点] 滝の水量を見直されてはどうでしょうか。 1日に10トンですと、1分間に約7リットル(7Kg)の計算になるので水道の蛇口を全開したときより少ない水量かと思います。 華厳の滝が普段は毎秒…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ