戦隊ヒーローのリーダーの憂鬱
なろう作家『片桐ゆーな』さんのエッセイを読んで、LGBTがさらっと登場する(メインではない)ヒーロー戦隊の日常について考えてみました。
BL・百合成分はほぼありません。
もし良ければ読んでいただけると嬉しいです。
世界の平和を守るのに5人って少ないと思わないか?
そりゃ、厳密に言うと俺たちだけじゃなくて、このバトルスーツや戦闘ロボを開発してくれた博士達のバックアップがあるのはわかってるよ?
でも、最前線で体張って戦うのって5人なんだぜ?おかしいだろ!
いや、このバトルスーツの適性があったのが日本で住む大学生の俺たち5人だけだったというのは何らかの悪意を感じるよ?
まぁ全員日本人だったのは許容しよう。
問題は5人なんだよ!
あと一人…、せめてあと一人いなかったの?
神様…奇数じゃなくて偶数にしようよ…。
やぁ!俺の名前は赤井誠一!
悪の組織『こだわりのある殺戮者の集会』から世界を守るため、政府が秘密裏に組織した『特殊事件対策委員会』で、『世直博博士』の研究で作られたバトルスーツを身にまとい戦う『緊急特務処理班(Emergency special handling team)』、通称『ESHanT』の戦闘部隊のリーダーをやっている!
ただ、このバトルスーツの見た目が完全に戦隊モノのヒーロースーツなので、周りからは『エースハント5(ファイブ)』とか呼ばれてるけど…
俺のスーツはレッドだからエースハントレッドと呼ばれていて、他に4人の仲間がいるんだ!
ブルーは『青木晴明』という男で、なんか有名な陰陽師の子孫だそうだ。
グリーンは『竹中緑』という男で、歌舞伎界では天才女形と呼ばれているみたいだ。
イエローは『黄瀬悠介』という男で、歌舞伎町で1,2を争う有名ホストクラブ「ペニシリン」のNo.1ホストらしい。
ピンクは紅一点の『桃田春香』で、世界的に有名なピアニストだそうだ。
皆それぞれスゴイ特技を持っている!
俺?
…
…じょ…情熱!熱い情熱だけは誰にも負けないぜ!
まぁそんな細かいことはどうでも良いんだ!
俺は今一つの重大な問題に直面しているんだ!
度重なる敵のテロ・破壊工作から仲間たちと力を合わせて立ち向かってたんだが、こんな危険な任務を俺たち5人だけでこなしていたんだ。
最初はぶつかってばかりいた俺達だが、だんだんと仲間意識が芽生えて来る。
お互いを思いやる気持ちが生まれるのさ!
だから…
…だから、エースハント5の中で恋に落ちる人が出て来るのも仕方のない事だろう…
だが…、どうして俺を除く2組のカップルが出来るんだ!!
この前街を歩いていると、ブルーとグリーンが仲良く手をつないでショッピングをしていたのを目撃した!
イエローとピンクもお互いの家に泊まりに行っているのを見た。
しかも、先週2組が同時に俺に「実は…俺達付き合ってるんだ!」ってカミングアウトしてくるの!?
俺、「そうなのか!おめでとう!」としか言えないじゃねーか!
くそー!!
ちょっと待ってくれよ!!
なんでリア充に囲まれて命がけで敵と戦ってるんだよ!!
俺にも…
俺にも恋人を…
イチャイチャできる恋人が欲しいんだよ!!
何だよ!
なんで5人なんだよ!
奇数っておかしくないですか!?
偶数にしろよ!
俺も命を懸けて戦っている仲間と芽生える恋心とか感じてみてーよ!
ズリーじゃん!皆だけ充実しまくってんじゃん!!
それに昨日、俺の妹も「兄貴ー!私、彼女が出来たんだぁ!いいだろ♪」とか言いやがって!
俺の周りリア充ばっかりじゃん!
俺、生まれてこのかた恋人なんて居たことねぇよ!!
と、そこに突然スマートフォンから緊急招集の連絡が入った。
どうやら敵幹部が某国の原子力潜水艦を乗っ取り、東京湾に突撃をしようとしている様だ。
潜水艦を突っ込ませて原子炉を暴走・爆発させる魂胆らしい。
…
……え?かなりヤベーじゃん!
敵幹部はどこにいるんだよ?
『逆探知の結果、敵幹部は八王子の駅前のネカフェから遠隔操作している』だって?
それ、幹部も巻き添えくらうんじゃ…?
ま…まぁいいや。
とっととネカフェに行ってその幹部をぶっ飛ばしてやる!
いくぜ!皆!!
-*-*-*-*-*-
え?現地に着いたの俺だけ?
他の皆は?
何々?
…
……
ブルーとグリーンは別府に温泉旅行に行っていて、急いでUターンして今こちらに向かっている。
ピンクはピアノ公演のためにドイツに向けてフライト中で、イエローはピンクについて行ってるから連絡が取れないだと…
…あぁーあ、やる気無くなっちゃったなぁ。
もう東京が滅んでも良い気がしてきた…
まぁテキトーに敵幹部に会ってみるかー(投げやり)
てかよく見るとネカフェの入り口に黒の全身タイツで怪しげな仮面かぶってる戦闘員たちがたむろし過ぎだろ…
お店の迷惑を考えろよ。
あぁ!ほらぁ!高校生のカップルが入ろうとしてドン引きして引き返したじゃないか!
くそう!なんて悪質な手口だ!
このむなしさとイラ立ちをこいつらにぶつけてやる!!
「変っ身!」
(説明しよう!腕に取り付けた明らかに異彩を放つゴテゴテしたメカのスイッチをいれ、変身と叫ぶことで声紋認識を行う!
そして、衛星軌道上に設置された人工衛星にカモフラージュした専用の転送装置から量子変換されたエースハント5の戦闘スーツの光が使用者に降り注ぎ、物質の再構成をして変身するのだ!原理とか科学的根拠など知らん!そういうものなのだ!納得しろ!)
「お前たち!お店の迷惑省みず変なタイツでお店の前にたむろしやがって!お前たちの悪逆非道はこのエースハント・レッドが許さん!個人的な八つ当たりもかねて、お前たちをムショ送りにしてやるぜ!」
「はん!こちとらこれでお金がもらえるんだから仕方ないだろ!俺達だって出来ればこんなタイツなんて着たくねぇよ!お前だって真っ赤なテカテカしたタイツ着てんじゃねーか!人の事言えんのかよw」
反論する黒タイツに向かって俺も言い返す。
「仕方ねぇだろ!これ着てると1200℃の高温にも耐えられるとか何とか言われてるし、防弾・防刃のムダに高性能なタイツなんだからよ!俺だってハズいわ!」
「そんな高性能ズリィじゃねぇか!おい、お前ら!囲んでフクロにしてやろうぜ!」
「「「オウよ!」」」
黒タイツ共が俺を囲んできた。
「ふっざけんな!俺の正義と嫉妬と憎しみと怒りの拳でボコボコにしてやるぜ!」
俺の鬱憤…もとい、正義の心を込めたこの拳で、あいつらの暴挙を止めてやるぜ!
俺は激しい戦いを制して(とりあえず暴れてスッキリして)黒タイツ共を警察に引き渡し、店長からお礼のソフトドリンクサービス券と割引券を貰ったあと、ハッキングしていると思われるネカフェのブースに乗り込んだ!
「おい、お前がこのテロの犯人か!?手下共は既に刑務所で事情聴取を受けている!大人しくしやがれ!」
俺はネカフェの問題となっている端末を操作するハタチくらいの女に話かけた。
「もうほっといてよ!みんな死ねばいいのよ!」
なんかすごく自暴自棄になってないか?
「おいおい、どうしたんだよ?話くらい聞くぞ?」
「うっさいわね!ほっとけって言ったでしょ?」
「まぁ落ち着けって。言ったらスッキリするかもしれないだろ?」
「アンタに何がわかるのよ!私の部下たちが急に恋人同士になっちゃってさ!私のチームは恋人いないの私一人じゃない!」
「わかる!俺にはわかるぞ!」
俺はこの女の気持ちが痛いほど良く分かったのだ!
「え?」
「俺もチームの中で一人なんだよ!昨日急にチームの4人からそれぞれ付き合ってるって言われたばかりなんだよ!」
「え…?それは…その…大変ね?」
若干態度を軟化させた敵の女幹部。
「そうなんだよ!挙句の果てに、あいつら今日恋人同士で旅行に行ってんだぜ?マジ泣ける!」
「お互い…つらかったのね…」
どうやら女幹部の共感を得たようだ。
「くそー!俺、ホントに嫌になってきた!」
「そうよね!ホント、ムカつくわ!お互い幸せになってあいつらを見返してやりましょ!」
「あんた…そうだな!アイツらを見返してやろうぜ!」
なんだか楽しくなってきた気がする!
「ええ!やっぱり自爆テロなんてやめるわ!そして絶対恋人作ってやる!」
おぉ!俺の熱い気持ちが女幹部のテロ活動をやめさせたんだな!
「あんた…意外と良いヤツだな…俺も少し熱くなってたようだ。
なぁ、あんたさえ良ければLINEの交換しないか?」
この女幹部とは意気投合出来たし、よく見たら可愛いしな!
「え…?」
「いや、あんた可愛くて俺ちょっといいなぁって思ったんだよね…」
「え…?」
「急にこんな事言うのは恥ずかしいんだけどさ、今度二人で遊びに行かないか?」
「あの…その…」
ちょっと戸惑ってる。あたふたしているところも可愛いなぁ
「やっぱり戸惑うよな。まずはLINEで話をして、少しずつお互いを知っていかないか?」
「あの……ごめんなさい!」
「え…?」
え…?
「わたし、30代の大人な男性が好きなの。だから、ごめんなさい!」
「え…?」
え…?
…
……
気が付いたら俺は本部のカフェテリアに戻っていた。
どうやってこの秘密基地に戻ってきたのか覚えていない。
そうかぁ…そうだよなぁ…
そんなに甘い話なんてないよなぁ…
「お兄ちゃん!元気出して!」
傷心の俺を慰めてくれるのは、博士の娘で高校2年生の女の子『優子ちゃん』だった。
「お兄ちゃん!お兄ちゃんが元気が出るように、マフィン焼いてみたの!これを食べて元気出して!」
「うぅ…優子ちゃんはええ子やなぁ…」
優子ちゃんは俺がヘコんでいる時はいつも励ましてくれるんだ。
めちゃくちゃ優しい子だなぁ。
「そ、そんなんじゃないよ!元気のない誠一お兄ちゃんは調子が狂うんだよ!(…いつもの元気なお兄ちゃんが好きなんだから…)」
うん?最後の方は良く聞き取れなかったけど、元気な俺が良いって言ってくれてるんだな!
「そうだよな!俺は熱い情熱がトレードマークだもんな!」
「そうだよ!元気なお兄ちゃんが良いよ!」
優子ちゃんも笑顔になって答えてくれた!
「ありがとう!優子ちゃん!俺、ガンバって彼女探すよ!」
「そうだよ!彼女探せばいいんだよ!お兄ちゃんを好きな女の子は意外と近くに居るかもしれないし!」
優子ちゃん慰めてくれるのか。
ホンマにええ子やん!絶対学校でモテてるんじゃね?
「そうだな!大学で可愛い子が居たから友達になってもらえるように、俺ガンバるよ!ありがとう!マフィン美味しいよ!」
「え…?」
おっと、急に元気になり過ぎて驚かせちゃったみたいだな!
「そうと決まれば!早速大学に行くか!待ってろよ!まだ見ぬ未来の俺の彼女!」
励ましてくれた優子ちゃんのためにも、俺は彼女を作ってやるぜ!
「…お兄ちゃんの…お兄ちゃんの…バカ―!」
「ゲフゥ…」
そう言ってみぞおちに良いパンチを決めて走り去っていく優子ちゃんを見ながら、意識を手放す俺だった…
ナイス…パン…チ…
END
!!次回予告!!(※ウソ)
俺の通う帝都大学の学長室に不審な爆発物が届いただって!?
同じ大学内で付き合っているヤツラをみんな別れさせなければ既に設置してある遠隔操作型の爆弾を爆発させるというテロ予告が届いた!
ふざけやがって!
気持ちは分かるが、俺は今大学内で彼女を作るために必死になってガンバって(ナンパして)いるんだ!
こんなふざけたテロには絶対に屈しないぜ!
ブルー!グリーン!イエロー!ピンク!俺に力を貸してくれ!
次回「爆発する男の娘の恋心」!
俺達の活躍を絶対観てくれよ!
次回予告に書いた内容は単なる思い付きです。
もし気が向いたら書いてみようかなぁと思ってます。
つたない文章ですが、ご拝読いただきありがとうございます。