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06 私の行動は正義そのものと言っても過言ではないでしょう!



「団長。届け物ですよ……って、珍しいですね。この時間に起きてるなんて」


「俺でもたまには早く起きる」


「たまにじゃなくて、毎回お願いしますよ。これ、先程メイドが持ってきました」


 ……アザトールか。

 ユニーク武器は、制作に時間がかかるが、トワ第二王女が王立エクリスト学院までには仕上げると言っていたので、それが完成したんだろう。

 マリオから木製の長方形の箱を受け取り、蓋を外して中身を見た。

 そこには多少装飾がされているが、見た目、普通の両手剣に見える。

 てはいえ、バケモノが作った一品だ。見た目に騙される訳にはいかない。証拠に、嫌がらせか、俺の「アナライズ」が弾かれて詳細を視る事ができない。


「へぇ、剣ですか。新調されたんですか?」


「まあ、な。あれも結構長いこと使ってガタがきてたしな」


 剣の柄を掴み、剣を持ち上げる。

 俺からすれば軽く過ぎず重すぎず、ちょうど手に馴染む重さでだった。


【――『マダオ』――ルドラ・ブラッティスト――我が担い手として認証――登録完了】


【――以後――担い手の許可無く――我を使用する事は不可能】


【――我が名は――護宝剣・ルーヴァグライアス――】


 インテリジェンスソードか。

 実物を拝むのは初めてだ。

 護宝剣・ルーヴァグライアスか――。

 色々と思うことがあるが、「マダオ」ってなんだ?


【――解答――「マダオ」――「ま」るで「駄」目な「お」とこ――略称】


「誰がまるで駄目な男だあああああ」


【――担い手――ルドラ・ブラッティスト――該当人物として登録済み】


「そうだよな。あいつは、こういう事をする女だよな!!」


 もの凄くこの剣をへし折りたくなった。


【――不可能――我には不壊属性が付与済み――】


「相変わらず無駄に手際が良いな、アイツは!」


 バケモノのにやけた顔が思い浮かぶ。

 なんで朝から、こんなにストレスを溜める羽目になるんだ……。

 ん。なんだ。なんでマリオは俺を哀れみな目で見てる?


「団長。すみません。俺、いいや、俺達、団長に負担をかけてたみたいですね」


「いや、そんな事はないが?」


 アザトールに関わるようになって、副団長のお前に負担がいってる事に悩んでいるぐらいだ。


「剣と会話するぐらい疲労が」


「違う。これはインテリジェンスソードでだな」


「気を遣わないで下さい。俺には声なんて聞こえませんでしたから」


【――解答――担い手以外には通話回線の解放――担い手の許可ない限り不可能――現状――他者が我の声を聞くことは不可能】


「俺たち、団長に負担を掛けないように頑張りますからっ」


「マリオ。落ち着け。そして俺の話を聞け」


「失礼しました」


 敬礼をして部屋を出て行った。

 なんでっ、こうなるんだよ!!

 ただ剣を受け取っただけで、疲労から幻聴で剣と会話する危ないヤツ扱いされるんだっ。

 もう、これを理由に騎士団長の座を辞めてやろう。

 もしかしたらバケモノとから解放されるかもしれない。


【――不可能――創造主は気に入った相手をとことん遊ばれる方――】


「気に入られたのかよ!」


【――肯定――我が送られたことがその証左――】


 あ、ペットの可愛がりすぎてあっという間に殺す飼い主を連想した。

 俺の人生、どこで間違ったんだろうなぁ。

 とりあえずマリオに声が届くようにして、誤解を解くことが先決か。





◆◆◆◆◆◆





 はい。アザトールを雇ってから一週間があっという間に経ちました。

 今日から王立エクリスト学院高等部へ入学です。

 行きたくない。行きたくないなぁ。

 場違いだよ。ほんの一ヶ月前まで平民だった私が、いきなり貴族専用学校?

 無理。ストレス過多。

 貴族社会って伏魔殿って聞いた事がある。聞いた事と言うよりも、お城にいる貴族の夜会とか、表面上は笑顔だけど腹の裡では何を思ってるか分からない。

 あの空気はイヤだなあ。苦しいんだよね。

 これから3年間通う学校でも、おんなじ空気に曝されるかと思うと、息が詰まりそうだ。


「お嬢様。望まれるようでしたら、本日は学校を休校にさせましょうか」


「なに物騒な事を呟いてるんだ、駄メイド」


「はぁぁ? 誰が駄メイドですか! ――コホンッ、剣に搭載した転移魔法を使い熟すとは、さすがルドラ様です。ですが、次からはきちんと玄関から来て下さいね。あと、私は駄メイドではなく、普通のメイドですのでお間違いなきようにして下さい」


「問題を起こすメイドなんて、駄メイドで十分だろ」


「問題なんて起こしませんよ? お嬢様が行きたくなさそうですので、ちょっと学校全体が沈没するぐらいの地盤沈下か校舎全焼するぐらいの火事が起きるかも知れないと、メイドらしく予知をしている次第です」


「大問題起こす気満々じゃねぇか!!」


「お嬢様が望まれるのでしたら、それぐらいは当然です」


「ドヤ顔がムカついてしょうがないんだが。それに予知じゃ無くて、犯行予告だろうが!」


「そういう受け取り方もありますね」


 2人とも相変わらず仲が良いなあ。羨ましい。

 貴族になってから、2人みたいに言い合える関係の友人はいない。

 貴族になる前は居たかと言われたら、うん、考えないようにしよう。

 目から不思議と汗が流れそうになるからね。


「まあまあ、ルドラさん。いつものアザトールの冗談ですから、間に受けないで下さいよ」


「冗談、ねえ。だと良いんだが」


「やれやれ騎士団長様は、メイドのちょっとして冗談も分からないのですね」


「日頃の行動を改めたら、冗談を冗談と受け取ってやる」


「まるで私の日頃の行動に問題があると言いたいように聞こえますが?」


「問題が無いと思ってるのか?」


「ありませんね! 私の行動理念は全てお嬢様の為。つまり私の行動は正義そのものと言っても過言ではないでしょう!」


「過言だ!!」


 うん。私も過言だと思う。

 だいいち私なんて大した価値ないんだし、大げさにする必要ないのに。

 第二王女なんて言われても、この国において、私自身それほど価値があるように思えない。

 基本、お父さんをトップにしてお兄さんやお姉さんが頑張れば、問題ないよね。

 私は将来小さな田舎のこじんまりとした領地を貰えるなら、そこでのんびり暮らしたいです。あ、貴族から平民に落ちるのもばっちこい。どちらかと言うとそっちが良いです。


「あの――」


「どうした、トワ第二王女」


「制服に着替えたいので、その、部屋から出て行って貰って欲しいな、って」


「あー、悪い。気が利かなかったな」


「お嬢様。ルドラ様に気を利かせるなんて高度な事を期待したら駄目です。アンネ様が誘ってもぐたぐだ先伸ばしにして、未だに恋人関係になれてないぐらいですからね!」


「余計なお世話だ! 俺には俺の。その、考えってモノがあるんだ」


「……可哀想なアンネ様。このままでは、おばあちゃんになってしまいます」


 アンネさんの事が話に上ると、ルドラさんは本当に申し訳なさそうな顔をする。

 騎士団長って忙しいと思うから、色々と大変なんだろうなあ。

 あー、私も恋愛してみたい。してみたいけど、仮にも王族だし、自由意志の婚約は出来ないと思う。

 せめて相手がまもとな人であってほしいと願うだけ。

 でもさ、今の状況だと難しくない?

 絶対に性格が最悪で、結婚したくないランキングトップ3に入るぐらいの人に宛がわれたりしそうな気がする。逆にまともな人が婚約者とか言われても疑うレベル。

 ……。よし。未来を考えても仕方ない。私は、現在(いま)を生きよう。

 決して問題を先送りにしてる訳じゃ無いよ。


「お嬢様。もし学院で何かありましたら、直ぐにご報告下さいね。直ちに対処しますので」


「――何もないと思うけど。うん。もし、困ったことがあれば、アザトールに相談するね」


 アザトールは信頼できるから、もし、学院で困ったことがあったら相談しよう。

 ……こんな風に他人を信頼できるのって久しぶりだけど、アザトールとは昔どこかで会った気がするような?

 こう、一緒に居て安らぐというか、懐かしいというか、不思議な感覚。

 まあ私の気のせいだと思うけど。



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