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04 自分の最大の敵は自分

しばらくは2日に1回の投稿スペースになるかと思います。


 なんで騎士団長が、私の家でご飯を食べてるんだろう。

 いや、アザトールから説明はされたよ。

 なんでも王都を案内してくれたお礼だとか。

 言ってくれたら、王都の案内ぐらいは出来たのに。


『お嬢様。ルドラ様はただ漠然とアレがあそこにある等と適当に案内されて、まだ王都を全然把握できてません。また男性であるルドラ様のため女性が好みそうな場所などは案内などされていません。今度、時間が空いたときに一緒に街を散策しましょう。ええ。そうしましょう』


 早口で捲し立てられ、明日、アザトールと一緒に王都を巡ることになった。


『適当に案内したっていうなら、夕飯はいらないから、俺はかえ――あ、ごちそうになります』


 騎士団長の様子が変だった気がする。

 なんでだろ?

 何かに怯えてる気がしたけど……。

 でも、騎士団長のルドラ・ブラッティストと言えば、王都冒険者ギルドに所属している最高戦力のSランク冒険者と同等の実力者――つまり王城の騎士最強と言っていい存在。

 後、なんで私は睨まれてるの?


「トワ第二王女」


「あ、はい」


「あのメイドをどうするつもりだ」


 どう言う意味だろう。

 アザトールをどうするつもりかと聞かれても、メイドにして貰うのって家事が主だと思うけど違うの?

 あ、王城内に私の悪い噂が流れてるのかも。

 無理もないか。王城から出て王都の端に引っ越しをしてから、執事やメイドが次々と辞めていったんだからね。

 私がアザトールに何かするか心配なんだ。


「心配はいりません。私からは何もする気はありません」


「その言葉、信じるからな」


 ええ、信じて下さい!

 ついでに王城に流れているであろう悪い噂を否定してくれたら助かりますっ。

 でも、そこまで高望みするのは駄目かな。駄目ですよね。はい、分かってます。


 そんな事をしていると、アザトール達が食事を運んできてくれた。

 「達」と言うのは、アザトールが3人ぐらい分身していた為だ。

 髪型やメイド服につける装飾品などで、一応見分けを付く。

 ルドラさんは驚いていたようだけど、やっぱり王城のメイドさんは分身しないんだ。良かった。王城のメイドさん達も分身が出来るのに私だけが知らないってことじゃなくて。


「ところでお嬢様。何か悩み事でもございますか?」


「え?」


「メイドたる者、主が不安なことがあれば、直感的に感じ取ることが出来るのです。特にそろそろ学院に入学されるようですし、それ関連で悩みでしょうか?」


 ……あ、護衛の件。

 明日以降に考えるつもりで、すっかり忘れてた。


「えっとね、学院に入学に当たって護衛を1人付けることになってるんだけど、それを誰に頼もうかと思ってて――。ギルドにはあまり行きたくないって思ってる」


「確かにギルドには、お嬢様に護衛を付けさせないために、裏から陰険にも手を回している可能性が高いです。でも、運が良かったです。ここに昼間から女性の家で逢瀬をする騎士団長がいらっしゃいます」


「アンネとは、そんな関係じゃ」


「ああ、間違えました。ぐたぐだと男の癖に引き延ばしてまだ親友未満の関係でしたね」


「ぐっ。――って、なんで、お前、そんな事を知ってるんだ」


「私は必要となる事だけ、知っているだけです。不必要なことは何一つ知りません」


「俺とアンネの関係が、お前になんで必要となるんだっ」


「この世は何が起きるか分かりませんし、知り合いの情報は可能な限り知っておくのが私の流儀なのです」


「溝にでも捨てちまえ、そんな流儀!!」


 アザトールとルドラさんって――なんか仲が良いなぁ。

 私もアザトールと、あんな風に気軽に話せる関係になりたい。うん。なれるように頑張ろう。


「さて、お嬢様が誤解されるので、洒落はこの程度にしておいて、ルドラ様は勿論お嬢様の護衛の件。受けてくれますよね?」


「……俺より、お前がやれば確実だろ」


「色々とあるんです。それに私はお嬢様のためになら、使えるモノはなんでも使います」


「……」


「勿論、ルドラ様にもメリットを提示します。1つは私が持っているユニーク武器をあげましょう。もう1つは、「貸し1」を付けます」


「「貸し1」だと」


「ええ。私に可能なことでしたら、私とお嬢様にデメリットが無い限りなんでも言って良い権利です。魅力的でしょう?」


 しばらく難しい顔をして考えたルドラさんは、大きく溜息を吐いて言った。


「分かった。護衛、受けてやる。ただし、騎士団の任務がある時は、そっちを優先させて貰うぞ」


「ええ。その程度はこちらも譲歩致しましょう。その時は、私がお嬢様の護衛をします」


「あのー、さっきから疑問に思ってたんだけど、アザトールって護衛出来るの?」


「出来ますとも。主に不遜な事をする輩を撃退するために、多少の護身術は習得済みです」


 へぇ、アザトールって護身術も使えるんだ。

 でも私なんかの為に、何かあって傷ついては欲しくない。

 何かは起きないことに超したことはないけどね。でも、何が起こるか割らないので世の中。


「えっと、ルドラさん。護衛の件、お願いします」


「ああ、そこのメイドに嵌められた気がするが、騎士団団長として微力を尽くさせてもらうさ」





◆◆◆◆





 ヒィ。ヒィッ。ヒィィィ。

 俺は慌てて逃げる。

 ある筋からの依頼を受けて、第二王女の屋敷で騒ぎを起こすようにした。

 どういう訳かあの第二王女は、貴族や王族の連中からは嫌われている。だから、こういう依頼も珍しくないと言えば、珍しくない。

 ただ、庭先で小火を起こすだけで大金が手に入る、簡単な仕事だったハズなのにっ。


「なんでこんな事になるんだよぉぉぉぉぉ」


 叫ぶ。

 叫びながら必死で逃げる。道なんて知らない。あそこから、出来るだけ遠くへと逃げた。

 一緒にやる予定だった仲間はもう居ない。

 喰われたんだ。

 あの屋敷の庭に植えられていた植物。それに仲間2人は何の抵抗もできずに、無残にも、悲鳴すら上げること無く、ただただ植物に喰われた。


「ハァハァハァ。こ、ここまで来れば、大丈夫だよな。そもそも植物なんだ。追ってこれる訳がない」


「と、素人は思うじゃん?」


「ヒイッ」


 入り組んだ路地裏の一角まで逃げ込んだ俺にいきなり話しかけてくる相手が居た。

 驚いた俺は、尻餅をついてしまう。

 声のした方を見ると、そこには黒装束の少女2人いた。

 2人とも第二王女が雇っているメイドに似ているが、僅かに違う。


「人間同士自己紹介が必要だね。私の名は、アザトール・ルヴァン。オリジナルの分身体の1人さ。あ、オリジナルは分裂思考を並列起動していてね。分裂している思考の1つ1つが名前を持っていて、こうして表に出てくると、アザトールではなく、付けた名前で呼び合ってるんだ」


「オリジナルは、酷いんだ。分裂思考に名前を付けるの面倒だからって名付けに手を抜く。自分たちでつけないと、酷い名になる」


「そうなんだよねぇ。私も初めての時は「アザトール・んんんん」ってクソみたいな名前だったからね!」


「そっちはマシ。わたしなんて「アザトール・わその5」だった。本当に酷い。今は「アザトール・ルヴィア」だけど。オリジナルは名前の重要性をもって感じるべき。そして地獄へ落ちて死ぬべき」


「おっと、それに関しては同感同感。ただ地獄なんてオリジナルには意味ないから、トワお嬢サマに大嫌いって嫌われて絶望してくれた方が嬉しいかな」


 い、今の内に逃げ、逃げないと……。

 おかしい。躰が動かない。僅かに全身が痺れてきている。


「自分だけ運良く喰われなくて良かったって思ってた? そんな訳ないじゃん。ちゃんと種子が寄生してるのさ」


「あの植物の種子に寄生された生物は、植物人間――Cランクモンスターへと変異する」


 モンスターに、変異、する。

 いやだ。イヤだ。助けてくれ。

 もう第二王女には関わらない。真っ当に生きる。だから、頼む、助けてくれ。


「王都の中心部にC級モンスターが居るなんて大騒ぎだ」


「どっかの王サマは対応で疲れるかもしれないと言う……地味な嫌がらせ。ついでにゴミ掃除の一環。うん。オリジナルの底が知れる」


「本当にねっ。アレが私達のオリジナルだと思うと恥ずかしくてしかたないよ」


「同意。あ、変異がそろそろ終わりそう。私が悲鳴を上げて人を集めるから、宜しく、お姉ちゃん」


「はいはい。田舎から出てきて偶然王都内でC級モンスターに遭遇した美人姉妹がなんとか倒すって、くだらない芝居をしないといけないんだろうね。そう思わない、妹よ」


「文句はオリジナルに言って。でも、ある程度は自由が許されているから、わたしは満喫する」


「そうだね。オリジナルは分身体である私達をあまり信用も信頼もしてないからね。外にはあまり出してくれないし」


「今回にしたって、自由行動権限を拡大する代わりに、能力値を下げられてるし。自分の最大の敵は自分だって、良く謂ったもの」


「全く。全く。さて、とりあえず始めようか。ルヴィア。オリジナルが考えた三流シナリオの始まりを」


「ええ。……ところで、人間の内に殺されるのと、モンスターになってから殺すの。どっちが優しいと思う」


「――何がいいたいんだ、ルヴィア」


「ううん。どっちにしろ。お姉ちゃんは、優しいなって話」


「私は、オリジナルも嫌いだけど、お前も嫌いだ」


「残念。オリジナルは大嫌いだけど、お姉ちゃんは少しだけ嫌いってだけなのに」


 




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