21 私みたいなか弱く常識人では、神々のそんな思考の餌食になる事が多くあった。
私はナイヤーラトテップが指定した座標とは別の場所に、飛行艇を降ろすことにしました。
それが間違いだったっ!
まさか指定した座標が安全で、敢えて外した所が、ナイヤーラトテップ風に言う面白い場所だったなんて。
流石というのもアレですが、私の切り札
私を出し抜くとは、分裂思考の中でも特殊な個体だけはあります。
神々は悪蝲卑劣な思考をするのが多く居ました。
私みたいなか弱く常識人では、神々のそんな思考の餌食になる事が多くあった。
だから、それに対抗するために思考をリミックスしている内に生まれたのかナイヤーラトテップ。神々すら嘲笑する思考を持ち、私すらも出し抜く、切り札
娘のジャンヌを護るために、私と同じ性能の肉体を与えたのが間違いだったかも知れません。
正直、もしナイヤーラトテップが敵だったなら、私も負けるかも知れない。
再び飛行艇を上げる手もありますが。
……下手にして動力を壊されたらたまったものじゃありません。
いえ、壊す、と言うよりはナイヤーラトテップ曰く「壊れた」って事でしょうけどね。
私とナイヤーラトテップがガチで争えば、この辺り一帯が焦土と化します。ガチで。
色々と言いたいことはありますが、今回は私が折れますか。
何やらお嬢様がナイヤーラトテップと取引したようですし。どんな取引かは分かりませんが、お嬢様も嬉しそうでしたから良しとしましょう。
飛行艇から降りて周りを確認します。
――この雰囲気は。
「なんで「最果ての地」と同じような雰囲気なんだ」
ルドラ様も感じましたが、この瘴気混じりの空気。
更に言えば私が持っている殺神剣・エヴァンライオスが興奮しています。
これは、神性存在が十数キロ圏内にいますね。
デウス・エクス・マキナの模造品や、その劣化品ではなく、紛う事なき神性存在が。
アイリーン様が言ってましたっけ。
帝都を襲っていた竜は、邪竜と邪神のハイブリッドだって。
どうやら配合した邪神の方の権能。ありがちな魔物を増やす系の権能だったようですね。
その所為か「最果ての地」に近い感じになったのかも知れませんね。
この瘴気だと、魔物のレベルも普通よりかは数倍は手強くなってるでしょう。更に言えば魔物が人型を得て魔人化している可能性もありますか。
思っていた以上に、帝国は面倒事になっているようですね。
ナイヤーラトテップが面白がるハズです。
「……お前はこっちに残ってるんだな」
「ルドラ様? どういう意味ですか?」
「トワ第二王女とジャンヌ第三王女は、ナイヤーラトテップだったか? それに連れられて森の方に向かったぞ。「ちょっと冒険してくるねー」と言ってな」
千里眼を発動してみる。
お嬢様の姿を視る事が出来ない……っ。
どうやらナイヤーラトテップがジャミングして見えないようにしているみたいです。
まだ近くにいるでしょう。辺り一帯をサーチすれば簡単に見つけ、
爆音が鳴り響いた。
私の飛行艇先頭部分から煙があがっている。
「なんだ!」
「敵、ですかね」
正直、飛行艇は生半可な攻撃では傷1つ付かないよう様々な魔法を重複してかけてます。
この辺り程度の敵では、傷1つ付けるのは不可能でしょうが。
私の私物に攻撃されては、あまり良い気はしないですねー。
それに今の私はちょっと昂ぶってます。神の気配がする所為で。
前方の木々の隙間から人型の魔物が姿を現した。
上半身が裸。肌の色は紫色。背中から黒い禍々しい羽が生えてます。
手に持っている剣には血が付着。あれは何処かで人を斬ってますか。
「――テキィ――帝コク人ンンンン、コロスゥゥ――」
「俺達は帝国人じゃないんだが」
「残念ですが、言葉が通じる魔物ではなさそうですよ」
「■■■ゥ■■■■■ァ■■■――」
魔物は雄叫びを上げながら剣を振り上げコチラへと向かってくる。
面倒臭いですね、ザコ処理は。
空間断切か、空間圧壊か。
どちらにしましょうか。
「お前は王女達の方へ行け。ここは俺で大丈夫だ」
「――分かりました。もしピンチになったら飛行艇へ非難して下さいね。外装でもその辺りのザコの攻撃では、傷1つつく事はありませんから」
「分かった」
ルドラ様は頷き、私は神の気配がする方へと足を向けた。
ナイヤーラトテップかジャミングしてるお陰でお嬢様の居場所が掴めませんが、アレの行動原理からして神がいる所へ向かった可能性が高いです。
私と同等の力を持っているので、お嬢様とジャンヌは無事でしょうが……。
アレは多少の危険は面白がって放置するのが質が悪いと言うか。
全く自分の一面から離れているとは言え慣れません。
それにして、先程の魔物の感じからして誰かと交戦したと見て間違いないでしょう。
帝国の兵士が居る?
千里眼が使えないのが本当キツイです。
様子からして帝国側が圧倒的劣勢のようですね。
私が鍛えているルドラ様ほどなら大丈夫でしょうが、並では少々キツイ相手でしょう。
誰の思惑はどうあれお嬢様が嫁ぐ国ですから、多少手助けして借りを作っておくのも悪くはないです。
私は足を止めた。
魔物が20匹ほどゆっくりとだがコチラへ向かってきている。
ルドラ様が戦っているのがAランクだとすると、魔物はCからB+と言ったところですか。
殺神剣・エヴァンライオスは、神に対しては絶大な力を発揮しますが、ただの魔物ではただ強いだけの魔剣程度の威力しかできません。
用事が無ければ、戦いの感を磨くために、戦いをする所ですが、今はお嬢様の所へ行かなければなりません。
だから――
「絶式禁術・虚無縹眇」
私の師の魔法使いが、一度だけ見せてくれた術。
全てを消し去り、何もかもなくただただ荒野を広げるだけの範囲消滅術式です。
ソレに飲まれた魔物たちは、初めから存在が無かったかのように消え去りました。
……久しぶりに使いましたが、うん、ちょっと慣れませんね。
罪悪感とは違いますが……。こう虚しさしか残らないんですよね。コレ。
原子崩壊の方は、別にそういう事はないですけど。
――いえ。今はそんな事よりもお嬢様の所へ向かわないと。




