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私のところのメイドが、レベル9999ステータスALL9,999,999,999,999だった件  作者: 華洛
第3章 王都炎上崩壊(上)/帝都物情騒然
22/26

20 この人には善も悪も光も闇も正も邪もない。謂わば混沌みたいな人


 帝都までは早馬で3日。のんびり馬車でいけば5日ほどかかる。

 私はのんびりと馬車の旅をするのかと思ってたら違った。

 アザトールが個人的に所有している飛行艇に乗ることになり、性能から1日もあれば帝都に到着するとのこと。

 私達はアザトールが王都郊外に置いた飛行艇に乗り、空の旅を続けることになった。


 窓からは眼下に雲や小さな街や村が僅かに見える程度。

 うん、初めてだけど空の旅も悪くない気がする。


「――トワ姉さん。いい加減に放して」


「えー、もうちょっとこうさせて」


 ジャンヌは私の膝の上に座って貰って、私が背後から抱きついている状態だ。

 夢見が悪かったので、つい妹であるジャンヌに抱きついてしまった。

 妹を抱くと落ち着く。

 まさかこんな日が来るとは思わなかったよ。すりすりしたいけど、やると嫌がられるだろうなぁ。


「全く。トワ姉さんはお姉様に似なくて良いところが似てますね」


「酷い!」


 ロザリンドお姉ちゃんに似てるとか私が言われたくないランキングトップ3に入る事を言われた!

 もしこれがお姉ちゃんなら、今頃はジャンヌの貞操はないよ。

 身体の隅々まで弄られてどうなっている事か――。

 それに比べて私は、抱きついてるだけ。

 うん。全く似てないネ。


「ナイヤー。お母様は何処に行ったの?」


「んー、あの人ならこの船の操縦とか色々としてるよー。これって割と操縦とか複雑だから自分でするみたい」


「そう」


「私が代わってもいいけど、『貴女はわざと墜落させるでしょう』って言って代わってくれなかったんだよねー」


「……大人しくしてなさい」


 うん。ナイヤーさんは大人しくした方が良いと思う。

 なんて言うか、この人には善も悪も光も闇も正も邪もない。謂わば混沌みたいな人だ。

 基本、なんでもかんでも面白い方へと行動する。

 主であるジャンヌには従っているけど、ある程度のことなら主を危険な行為に曝すのも厭わないと思う。まぁ、最悪はナイヤーさんが防ぐので起きないんだけど。

 例えば飛行艇を墜落させるぐらいなら、知らぬ顔でやりかねない。

 勿論、ジャンヌには傷1つ付けずに助ける前提で墜とす。

 近くに魔物の巣やら盗賊の溜まり場があって巻き込まれる流れになりかねない。

 一ヶ月ほど一緒に居るけど、うん、ナイヤーならやりかねない。

 アザトールの判断は正しいよ。


「私はさー、陸で場所に揺られながらのんびりと旅をしたかったぁ。その方が道中で、盗賊に襲われたり、魔物に襲撃されたりして、とても面白いと思うんだけどさ」


「平和が一番だよ」


「トワ様。甘い。甘いよぉ。平和なんてのは毒。人を腐らすのは平和なんだからさ。ある程度のおもしろい事がないと、人生つまらないよ」


「……面白みのある人生って、大変だと思うけどなぁ」


「大変だからこそ面白みがあるんだってば。物語が毎日同じ事の繰り返しをだだ書いていっても面白みがないのと一緒。おもしろいイベントが起きないと」


「……気のせいかなぁ。起きないって言葉が、起こさないとって聞こえたんだど」


「――気のせいだと良いねぇ」


 ナイヤーは愉快そうに嗤う。

 お姉ちゃんとは別のベクトルで、この人は苦手になりそう。

 そう思っていると、ナイヤーは私の側にやって来て耳打ちをする。


「トワ様。……お嬢様がアザトールと戯れている写真欲しくない?」


「シャシン?」


「説明するの面倒だなぁ。写真ってのはコレのこと」


 ナイヤーは懐から数枚の写真を出してきた。

 そこには何時も大人ぶっているジャンヌでは無く、年相応に甘えているジャンヌの姿が写っていた。

 ……可愛い。なにこれ。素晴らしくない?

 私が手を伸ばすと、ナイヤーは懐に写真を戻す。


「これとシークレットが5枚付属するけど――。トワ様、どうする?」


「――何が望み」


「アザトールに「お願い」して欲しいんだぁ。空の旅は飽きたから、気分転換に少し地上に降りたいってさ。大丈夫。私も説得には協力するから、ね?」


「……アザトールは船の操縦に忙しいから無理だよ」


「大丈夫。トワ様が呼べば来るよ。アレはそう言った存在だからね。ほら、試しに呼んで見なよ」


「――アザトール。ちょっと来て?」


「呼びましたか、お嬢様」


 ナイヤーに促されて、思わず呼んじゃったけど、本当に来ちゃった。

 なんかもの凄く申し訳ない気がする。


「あ、あのね?」


「トワ様は空の旅に飽きたから、ちょっと地上に降りたいってさ」


「……ナイヤーラトテップ。貴女には聞いてないですが?」


「代弁代弁。実際に、トワ様が降りたいって言ってんだから、一旦、地上に降りようよ。それともアザトールは、主の望みを無視するつもり、かな?」


「お嬢様が望まれるのでしたら、なんでも叶えましょう。それで、お嬢様。本当に地上に降りたいんですか?」


「え。えっと。う……うん。ほら、帝国って私は初めてだから、どんなのか帝都に行く前に、帝国の雰囲気を掴みたいなぁ、って。でも、ダメなら、うん、諦める」


 咄嗟に言い訳レベルの言葉が出た。

 なのにナイヤーはグッと指先をする。

 ――ごめん。アザトール。

 私の安全のために飛行艇を用意してくれた事は分かってるけど、どうしてもジャンヌの写真が欲しい。あんな可愛らしいジャンヌ。私は見られるかワカラナイからね。


「分かりました。お嬢様が望まれるのでしたら、一旦、船は地上へ降ろしましょう」


「ごめんね。アザトール」


「いえ、お嬢様が望むのでしたら、叶えるのがメイドの最低現の責務。気にしないで下さい」


 笑顔で答えてくれるアザトール。

 本当にごめんなさい。

 ナイヤーは、懐にあった写真を私のスカートのポケットへと手品のように移動させた。

 今すぐに見たいけど……ここで見ると、ジャンヌの好感度が下がりそう。

 ううん、下がりそうと言うよりも、下がったけどね。

 母親を我が侭で振り回せば、それは好感度が落ちるよね。


「では、もう少ししたら王国と帝国の国境を越えますので、そこからしばらくした位置に――」


「あ。降りる場所は決めてるよ」


「――なぜ貴女が決めてるんですか」


「んー。私の直感が降りる場所は、そこが良いって囁くんだぁ」


「分かりました。その位置以外に降りるとしましょう」


「えーー! 酷いっ。せっかく面白そうな所があったのになぁ」


「貴女の面白そうな場所ほど不吉な場所はありません。お嬢様とジャンヌの安全のためにも、そんな場所には降りません」


「ちぇー」


 ナイヤーは拗ねたようにそっぽを向いた。

 私も危険なところよりは安全な所が良い。ナイヤーには悪いけどね。

 そう思っていた為、私は、ううん、誰1人として気がつかなかった。


 ナイヤーラトテップが愉快そうにずっと嗤っている事に。


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