表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のところのメイドが、レベル9999ステータスALL9,999,999,999,999だった件  作者: 華洛
第3章 王都炎上崩壊(上)/帝都物情騒然
21/26

19 アザトールは万能だけど全能じゃない。出来ない事はそれなりにある。


 見覚えの無い場所を私は歩いている。

 人の手が入っていない森の中を、なぜか歩いていた。

 なんでこんな所にいるんだっけ。

 全く思い出せない――。

 そもそも私は――私は?

 足が止まる。ふと、下を見ると木の根が足下に絡まり、進ませないようにしている。

 気配を感じる。上だ。

 木の上から急降下で剣を握りしめた女の子が降ってきた。

 私は微動だにしない。


 女の子の剣は私の頭上に張られた結界に阻まれた。

 だけど、信じられないことに女の子は剣を下げて、拳を振り上げると、結界を殴った。

 一撃で結界には亀裂が走り砕け散る。

 なんて強引な結界の恐し方だろう。

 いつの間にか剣を持っていた私は、再び振り下ろされた剣を、手に持った剣で防いだ。

 持っている剣から声がする。


【――是――前回より――数倍強くなっている――当方の勝率70%以下に低下――】


 勝率は7割かぁ。油断したら足下をすくわれるかも。油断なんてしないけどね?

 他人事のように感じるかも知れないけど、何故か戦っている実感が沸かないから仕方ない。

 私は足に絡みついている根を、燃やして強引に剥がした。


――武技・百尺竿頭――


 短く、小さく私は呟いた。

 百尺の竿の先端――転じて、到達為べき極点。つまりは武技における極点。

 並の者では到達できない武の冴。

 下手な業はいらない。これさえ在れば一蹴できる。

 襲撃した女の子は、私が繰り出す一撃一撃を苦しそうになんとか受ける。受けている。

 信じられなかった。

 私が繰り出す武技の技術は極点。それを受ける事が出来る、出来るようになった女の子の実力が。そして無限に広がるであろう可能性が。

 ――でも、まだ私が強い。まだまだ強いんだなあ。


 襲撃した来た女の子の腕を斬り落とした。

 多少は呻き声を上げた女の子は、悲鳴を上げること無かった。

 女の子は黒いフードの隙間から顔を覗かせる。

 何処か、で、見た、気がする。

 いや、知っている。だってこの子は何度も私を殺しに来てたんだから知っている。知らないはずが無い。

 だって私は、この女の子を殺すために、斃すために、天上の存在に造られた存在なんだから。

 心臓が痛い。まるでフードの中身を見るのを忌避したいかのようだ。

 なんでだろう。なんでか分からない。ワカラナイ。

 私は――私は――。


 デウス・エクス・マキナ。


 アザトール・オリジンを、殺ス、それだけの目的で、造られた、至高にして最高の存在


 いや、違う。違う。それは違う。私は。私は違う。


 私の名前は――私の名前は……っ。


 トワ・ロイヤル・バアルナイト。


 そう。そう。そうだ。

 視界が瓦解していく。ノイズが奔る。

 心臓の鼓動がイヤという程、耳に残る。

 気持ちが悪い。吐き気がする。


『おーい、大丈夫かー』


 大丈夫じゃ無い。吐きそう。っと言うか吐く。


『女の子が簡単に吐かない方がいいと思うよ。あ、ゲロインってのも一部界隈では人気みたいだし、いいんじゃないかもね。私は御免被るけど』


 なに、ゲロインって……。

 私は周りを見回す。そこはさっきまでの森と違って、真っ黒な空間だった。

 不思議なことに私だけはハッキリと認識できる。


『今は深く考えなくて良い。今回、呼んだのは忠告のためだからね』


 忠告……?


『心臓にこれ以上は負担をかけないこと。ただでさえ感情を大きく抑制して負担掛けないようにしているのに……。あまり掛けると「私」が表に出ることになる。そうなると面倒臭い。それに良い事なんて何一つとしてないから。良い? 心臓に負担はかけないように極力面倒事は避けるようにすること』


 心臓……?

 そう言えばルドラさんに裸を見られて時、凄く心臓の鼓動が早くなった気がした。

 今も思い出すだけでとても恥ずかしい。


『言ってる側から心臓に負担を掛けない! もう危なかっしいなぁ。兎に角、それに関しては耐性があるから良いけど、あの時ほどの衝撃で心臓が持つのは、――2回。それ以上はどうなっても「私」は責任はとれない。覚えておくこと』


 あ、はい。

 正直、あの時ほどの衝撃って中々無いと思うけど……。


『――いや、向こうの目的を考えれば十二分にあり得るからね。それと、アザトールは万能だけど全能じゃない。出来ない事はそれなりにある。たまり頼りすぎないようにすること』


 ぅ、アザトールがメイドとしてきてから頼りすぎてたかな。

 だって何でもしてくれるからつい頼っちゃう。

 駄目人間まっしぐらコース……。

 今度は頭がクラクラしてきて、意識が朦朧とし始めた。

 声は何か言っている気がするけど、もう耳には届かない。



……

…………

………………



 目を開けると、そこは見慣れた天井――つまり自室だった。

 なんか気分が悪い。

 変な夢を見た気がするけど、良く思い出せない。

 まあ良いか。夢を思い出せないなんて良くあることだしね。

 私が背伸びをしてベッドから出ると、扉が叩いた音がすると、アザトールが入ってきた。


「おはようございます、お嬢様」


「うん。おはようアザトール」


 アザトールは早く起床した時は、目覚めたタイミングで、部屋に来てくれる。

 本当に良く出来たメイドさんだよね。

 それでいて給金は普通のメイドと一緒なんだから、申し訳ない気持ちにもなる。


「やはり帝都へ向かわれる事が緊張されてましたか? 少し顔色が悪いようですが」


「あー、そう言えばそうだったね」


 帝都へ行く事になったんだ。

 神竜ヴェンジリウガンが強襲を受けたことに対する被害の視察とか、帝国へ人財と資材・資金などの貸し出しの条約締結。ついでに婚約者同士の顔の見せ合い。

 数日前に婚約者の存在を知ったばかりなのに、いきなり顔見せかあ。

 どうせ私の悪評は帝都でも噂になってるんだろうね。

 ……向こうから婚約解消言ってくれないかな。ないだろうね。

 下手に解消して、条約締結が流れたりしたら大変だ。


「良く覚えてないけど、なんて夢見が悪かっただけだから気にしないでアザトール」


「――分かりました。もし何かありましたから気軽に言って下さいね。私はお嬢様のメイドですから」


「うん。いつもありがとう」


 私は素直に感謝を述べた。

 今日から帝都に向けて行くことになる。でも、アザトールが居てくれたらきっとなんとかしてくれると思う

 夢で何か言われた気もしないでもないけど。

 覚えてないつて事は、たいしたことじゃ無いよね。うん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ