17 絶対に碌でもないヤツ確定! どうやったら破棄出来るか一緒に考えてっ
キャラ紹介+ちょっとしたショートストーリーを同時投稿しています。
三章はこの回からですが、最新話のみご覧の方は1つ前も宜しくお願いします。
平和。平和って素晴らしい。
アザトールが私のメイドを始めてから一ヶ月と少し経った。
入学式当初はシノンに殺されかけたり、お姉ちゃんに裸にされたりなんて事があったけど、それから今日までは特に変わったことはなく平和が続いていた。
相変わらず周りからは、ちょっと悪意とか悪口言われてるけど、妹のジャンヌや、友達のシノンがいる事で、だいぶ緩和されている。
「トワ姉さん、口元に付いてる」
「ん。ありがとうジャンヌ」
口元についていたおかずを、ジャンヌがハンカチで取ってくれた。
今私達がいるのは、学院の空き部屋。
初めは屋上にいたけど、なんか悪い噂が立った。
なんか妹と親友を屋上に呼び出して苛めているとかなんとか。
言霊神の権能って凄いネ。私の行動一つ一つが悪い方の噂が立つ。
「2人とも仲が良いですね」
「姉妹だから、ね」
「私としては、もう少ししっかりして欲しいですけど」
「優秀な妹で私は嬉しいよ」
流石、アザトールの娘さんだけはある。
……この言い方だと、私ってお母さんの娘だからダメってことになる。
自己嫌悪だなあ。私がダメなのは、私の所為なのに。
そう言えば親と言えば。
「そう言えばシノン。お父さんの調子はどう?」
「ええ、皆さんのお陰で順調に回復しています。ありがとうございます」
「なら、良かった――」
お兄ちゃんのマッチポンプの所為で、迷惑をかけたからなあ。
アザトールに頼んで治療して貰っていたから、大丈夫のようなら良かった良かった。
「お父様をあのような元凶には、きっちりとお礼をしようと思ってます」
「暑い、部屋の気温が高くなってるっ! 落ち着いて!」
「……ああ。ごめんなさい。つい興奮してしまって」
さすが火の大精霊に愛されるだけはあるなぁ。
この国は豊かできちんと四季がある。冬は寒くなるから、冬は是非一緒に居たい。
私のそんな考えを察しているのかジャンヌは小さく溜息を吐く。
アザトール同様で読心術を持ってそう。と、いうか絶対持ってる。
下手な事は考えないようにしないと。
例えば、妹相手にもしゃもしゃしたいとか。妹相手に一緒にお風呂に入ったりしたいとか
おっと。妹の視線が痛くなってきたのでこの辺りでお終いにしよう。
「ところでトワ様。婚約者の方は、大丈夫でしたか?」
「婚約者? なにそれ。私にそんな人居るの?」
「えっと、ジャンヌ様?」
「……トワ姉さん。貴女は仮にも王族の第二王女。婚約者ぐらい居ます」
「そっかー。いるのかー」
どうやって破棄に持っていこうかなぁ。
私の婚約者とか、どうせ人格破綻者か、性格異常者か、特殊性癖の変態だろうし。
そもそもなんでシノンは、婚約者が大丈夫かなんて聞いて来たんだろうね。
婚約者の人は何処の誰それなんだろ。
「トワ姉さん。貴女の婚約者は、ギランメッカ帝国の第一王子です」
「噂ではギランメッカ帝国の首都である帝都ヴァルガールに、邪神竜ヴェンジリウガンが強襲してかなりの被害が出たと聞いてます」
ああ、あの美味しかった竜が襲ったところの……。
今思い出しただけでも、あの味は戦慄だった。体中に電撃が奔る感覚は忘れられない。
「ジャンヌとシノンは、その第一王子がどんな人か知ってる?」
「――優秀な人だと噂程度には」
「次期、帝王として申し分の無い人だと聞き及んでいます」
あ、ろくでもない人の可能性が高いや。
私のお兄ちゃんは、最優王子とか呼ばれていて、アレだよ。アレ。
お姉ちゃんは論外。言うに及ばず。
優秀な人ほど、性格が悪い、と言うのが私の体験談。間違いない。
「ねえジャンヌ。その婚約者決めたの誰?」
「…………お兄様です」
「よし。絶対に碌でもないヤツ確定! どうやったら破棄出来るか一緒に考えてっ」
「もしかしたら、きちんとして婚約者を選定したかもしれません」
「ジャンヌ。きちんと私の顔を見て、その台詞を言えるっ」
「――……」
顔を逸らされた!
まぁ良いか。私が騒いだところで、婚約破棄出来る可能性は塵芥レベルだろうし。
ギランメッカ帝国の第一王子かあ。
せめてともな人でありますように。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺はギルバードに呼ばれて『天空神の間』に来ていた。
地面には書類がばらまかれ、酒瓶があちらこちらに転がっている。
どうやら飲みながら仕事をしているらしい。
俺が来た事に気がついたギルバートは、嬉しそうに手招きをして来る。
「よう! ……お、しばらく見ない内に、だいぶ鍛えてるみたいだな」
「鍛えるヤツがまともじゃないからな」
溜息を吐いて、ギルバートの隣に座った。
アザトールに連れて行かれた「最果ての地」で、数多くのモンスターと戦い、確実に強くなっている実感はある。――あるには、あるが、まだヤツを倒せるビジョンが見えない。
まだ強くならないとダメだな。
「――トワは元気か」
「ああ。病気も無く元気にやってるよ。妹の方とも仲良くやってる」
「そうか。――そうかぁ」
「嬉しそうだな」
「気に掛ける娘2人が仲が良いんだ。父親としては嬉しいことさ」
「――なあ、トワに会って話をすればどうだ。国王じゃ無くて父親として」
杯に酒を注ぎ一気飲みをしたギルバートは漏らした。
「――怖いんだよ」
「怖い?」
「ああ。父親としてアイツには何もしてやれてない。どころか、隠してたにも関わらずバカに見付かって、俺が親の為に背負わなくて良い面倒事を背負い込んだ。……カナタの娘から恨み言を聞くのが、怖いんだ」
「……」
「ハハ、情けない男だろ。こんなのが国王の国なんだ」
自虐的な笑みを浮かべた。
俺の周りには読心術を使い手が無駄に多いが、俺は他人の心は読めない。
あの無貌の第二王女が、父親の事をどう思っているか。俺には分からないな。
ギルバートは、新しく酒瓶を開けて、杯に注いで少し飲んだ。
「さて、お前を呼んだのには、愚痴りたいってのが理由じゃない。大事な用件があるんだ」
「大事な用件?」
「……まず数日後にトワとジャンヌは帝国へ行くことになった。邪神竜ヴェンジリウガンが強襲を受けたことに対する被害の視察。並びに帝国へ人財と資材・資金などの貸し出しの条約締結がメインとなる」
帝都の方では邪神竜ヴェンジリウガンが酷く暴れて、帝都陥落一歩手前まで侵攻されたと聞いた。
被害も甚大らしいからな。
王国としても同盟国相手に貸しは作れるのは大きいのだろう。
「で、たぶんだが、トワとジャンヌがこの国を離れてる間に、国内で政変が起こる」
「は?」
「あの2人がいる間は、この国には最強であるアザトールがいる。そんな時に事を起こすのはバカがすることだ。間違ってもあの最優はそんな愚はしない」
「……」
「なんとか尻尾を掴んで抑えようと、ウォッチドック家を動かしたが、……何も出来なかった。本当にあのバカは優秀だよ」
ウォッチドック家。番犬、監視役とも言われる、四大公爵家の1つだ。
「お前に頼みたいのは、トワとジャンヌのことだ。アイツらの事を宜しく頼む。この国で、こう言う事を頼める信頼できる相手はお前しかしない」
ギルバートは真剣な目で、俺を見ながら言った。
顔は、もう己の運命……いや……死期を悟った表情をしている。
そんな表情を見たら頷くしか無かった。
「……ギルバート。トワ達の事を考えるなら、なんでも良いから無様でも生きろ」
「そう、だな。出来る限り、生きるように頑張ってはみるつもりだ」
――もう少し覇気のある表情で言えよ。
しかし、俺に何が出来るかと言えば、ギルバートの望み通り、トワ第二王女とジャンヌ第三王女を護ることしかない、か。
そもそも暗部であるウォッチドック家でさえ尻尾を掴めない連中相手に、俺はどうする事も出来ない。
トワ第二王女が帝都へ向かうのなら守護騎士の俺も付いて行く必要がある。
王都にはマリオを残しておけば、ある程度の問題が起きても余裕で対処できるだろうけどな。
ギルバートのいう「政変」……。
どれぐらいの規模かは分からないが、一応マリオには注意するように声かけはしておくか。
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