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14 お母さんは、あの人の何処が良くて私を産もうと思ったんだろ。本気で分からない




 疲れた。疲れたよ……。

 私はベッドに倒れ込んだ。

 なんか今までの人生で一番濃かった。

 お兄ちゃんの画策で友達のシノンに殺されそうになったり、お姉ちゃんにファーストキスを奪われそうになったり。


 今日はもう何も起きなくて良いよ。

 そう思っていると、ベルの音が響いてきた。

 ――お客さん? もう日が沈んでいる夜に、この私の家に?

 誰だろう。もしかしてお姉ちゃん? あの時の続きをするために来たとか。

 今はアザトールは居ない。

 なんでもルドラさんに頼まれて稽古をする事になったみたい。


 もう1回、ベルが鳴り響いた。

 お姉ちゃんではないね。お姉ちゃんなら問答無用で入ってくるはずだし。普通に不法侵入だけど、あの人はやりかけない。

 灯がついているし居留守は無理かあ。

 私はベッドから身体を起こし、玄関まで行き、その手前の左側の壁にある鏡を見た。

 この鏡はアザトールが置いて物で、玄関の来客を映すことが出来る道具と聞いている。

 不審者とか見知らぬ人なら扉を開けずにお帰り願いたいなあ。万が一があっても私の戦闘力はザコだし。


 だけど、残念な事に来客の1人は私の知っている顔だった。

 ジャンヌ・ロイヤル・バアルナイト。

 私の、義妹(いもうと)

 それともう1人は褐色肌のメイド。

 守護騎士は居ないようだし、このメイドさんが守護騎士の役割も担ってるんだろうか。

 でも、褐色肌のメイドは何処かで見たことあるような?

 王城でいる時にすれ違ったとか? 褐色肌の人はこの国だと目立つから覚えていても良さそうなんだけど。まぁいいか。私は記憶力はあまり良くないし。


 それにしても王城に居たときでさえ、兄姉妹(きょうだい)に日に立て続けに会うことは数えるほどしかなかったのに。

 なんで今日に限って来るんだろう……。

 今日のイベントはお腹いっぱいですよ。

 それに来たのが、よりにもよってジャンヌだし。

 お兄ちゃんやお姉ちゃんと違って、この子は私に対して何もしないから、本当に分からない子なんだよね。

 悪意も好意もなく無関心。そんな印象。

 そんな子が、いきなり私の家に訪ねてくるとか恐いんだけど。それに私の所為で、体調不良なんて噂が出回ってるようだし。

 正直、あまり会いたくは無い。けど居留守は使えないしなぁ。

 覚悟を決めて扉を開けた。


「こんばんわ、トワ姉さん。今の時間だと、こんにちわ、かしら?」


「……日が落ちてるから「こんばんわ」で良いと思うけど、――何しに来たの」


「聞いてないの?」


「え。何も聞いてないけど、姉さんにでも伝言を頼んでた?」


「あの人にトワ姉さんへ伝言を頼んだら、どんなにねじ曲げられるか分からないので、頼むって事はありません」


 お姉ちゃん……妹たちからの評価最悪だよ。

 外面はいいんだけど、身内にも少しは外面の100分の1程度ではした方が良いと思う。


「お母様から、何も聞いてないの?」


「……お母様?」


 ちょっと落ち着け私。

 ジャンヌの……お母様?

 この屋敷に住んでいるのは、私とアザトール(プラス、今は居ないけど分身体)だけ


『はい、お嬢様。少々娘の入学式の答辞を直接見てたり話したりしてたら遅くなりました。』


『正真正銘、私の血を引いている可愛い娘です♪ 分身体みたいに嫌悪するかなーと思わなかった事もないですが、実際に会ってみると可愛いですねっ、自分の娘って!』


『私の娘のことは後々お話し致しましょう。お嬢様も……無関係ではありませんので』


 お姉ちゃんの登場ですっかり忘れてたけど、アザトールは娘が居るって言ってた。

 私にも無関係じゃないって言ってた。

 うん。無関係じゃ無いよね。なんてたって私の義妹だもん。

 お父さんの節操の無さに娘としては不信感しか無くなってきた。元から0だけどマイナスになりそうだよ

 ……お母さんは、あの人の何処が良くて私を産もうと思ったんだろ。本気で分からない。


「一応念のために聞くけど、お母様って、アザトールのこと?」


「はい!」


 元気の良い返事だなぁ。

 玄関先で何時までも居てもらうのも悪いし上がって貰おうかな。

 アザトールの娘って事なら無碍にもできないしね。


「アザトールは今居ないけど、上がって待つ?」


「お母様居ないんですか?」


「うん。ルドラさんを特訓するとかで出掛けてるけど、そろそろ帰ってくると思うよ」





◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆





「どこだ、ここはぁぁぁ」


 叫ぶ。大声で叫びながら逃げる。

 俺を追い迫ってくるのは、モンスターの大群。


「ここは最果ての地。魔王がいる場所です。ここのモンスターは、魔王の権能で、普通のところと違ってステータスも大幅にアップしているので修行の遣り甲斐がありますよ」


「なんて、場所に、連れてるんだ!」


「私は実戦で教える方なので、死ぬほど戦って、レベル上げをして下さい」


 アザトールは、空飛ぶ絨毯に座って俺の前を飛びながら言ってくる。

 確かに鍛えてくれとは言った。ああ、言ったさ。

 キリディアとの戦いは、なんとか生き残りってはいるが、完膚なき敗北だった。

 次に襲って来たら勝つ自信はない。都合良くバケモノが来るとも思えない。

 だから、30過ぎて今更だが強くなろうと思った。

 独自でやるよりも、習った方が効率が良いだろうと判断した結果がコレだ。


「そもそも! なんでモンスターに追われる羽目になるんだよ!!」


「それは私が魔王に怨みを買ってるからです。厳密に言うと、私では無く、師匠からの因縁みたいなものですけどね」


「――お前にも師匠が居たんだな」


「居ましたよ。私みたいなか弱い少女が、独学でこれほど強くなれる訳ないじゃないですか」


 ――なんか安心した。

 このバケモノにも、本当にか弱いって時代があったんだな。いつの時代か知らないが。

 しかし魔王。魔王か。

 最果ての地は人界とは結界により時空間の隔たりがある為、コチラ側の事情はまるで入ってこない。

 行き来するためには、結界を越えるほどの高度な時空間魔法を使用するしかないが、現在の人類では、最果ての地に来る事はほぼ不可能と言ってもいいはずだ。

 だから魔王なんて存在は、おとぎ話か空想上の存在でしか無かった。この瞬間まではっ。


「お前と、師匠は、魔王にどんな怨みを買ってるんだっ! モンスターの殺気がヤバいんだが!」


「ルドラ様。女の過去を素面の状態で聞き出そうとするなんてマナー違反です。この修行が終わったら女性の扱い方を教えましょうか?」


「それだけは、お前に、教わりたくないな!」


 絶対に間違った扱い方を教えて、それを実践した俺を笑う気満々だろ、コイツは。


「では、冗談は置いておくとして、あの漢に勝ちたいなら、これぐらい出来ないと勝てないですよ? アレはたぶん神によって鍛えられた人。ですが、安心して下さい。向こうが神に鍛えられたとしたら、ルドラ様に神殺しの私に鍛えられるんですからね」


 全く安心できないんだが!

 それにしてもさっきからルーヴァグライアスが静かだ。

 何時もなら色々と言ってくるハズなんだが


「ルーヴァが静かなのは私が居るからです。その剣に私は嫌われてますからね……」


「お前、何をしたんだよ」


「前にも言いましたが、その剣は改造するまでは神を護る剣として在りました。その護るべき神を悉く鏖にしたんですから、まあ、その剣に限っては嫌われても仕方ないかな、と」


 わりと仕方ない理由だな。

 このメイドのことだから、変な使い方をした結果、嫌われた可能性も十二分に想像していた。


「私がいるとルーヴァが喋らないでしょうし、そろそろ私は帰ります。朝方には迎えに来ますので、サバイバル、頑張って下さい」


「俺はっ、強くなりたいんだ! サバイバルをしたいわけじゃないんだっ」


「最果ての地でサバイバルしていたら強くなりますよ。だって、この地で弱いままだと即死です。それにここは最果ての地の浅い部分。深い部分に潜らなければ、ルーヴァの所有者ならなんとか生き残れる……ハズ?」


「なんでっ、疑問系、なんだ!!」


「――ルドラ様、私は信じてます。きっとルドラ様ならこの試練を切り抜けられるとっ」


「顔を合わせて、その台詞言ってみろ!」


「では、今頃、お嬢様と娘が顔合わせしている頃なので、帰ることにします」


 そう言った空間を歪ませアザトールは消えていった。

 本当に帰りやがった!

 ああ、くそっ。やってやる。やってやるさ!

 いい加減に逃げるのも飽きてきた。


【――モンスター大群――勝率45%――】


「ようやく喋ったな。勝率45もあれば十分だ。戦って慣れていく。力を貸してくれ。それで、アイツに――キリディアに勝つぐらいに強くなるぞ」


【――是――】




後2~3話で2章終わるって言ったのに、もう少しだけ続きます。


感想の返信にも書きましたが、2章が終わったら3章を始める前に、キャラの容姿や紹介を兼ねたまとめを投稿する予定です

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