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悲恋まとめ

恋。

作者: 青い墨汁

恋は悲劇だ。

僕は恋を憎んでいる。


恋は人に希望を与える。

誰かがそう宣う。


恋は戦争だ。

恋する乙女は言う。


恋は純情だ。

未だ恋を知らぬ男女は言う。


恋は盲目だ。

彼女は言う。


あの日、僕を置いていった彼女。

僕は彼女に追いつけないでいる。


恋は心を豊かにする。

そんなものはエゴだ。


恋は人を幸せにする。

止めろ。


恋は時に、切ない。

止めてくれ。


恋は、恋は、恋は。

僕はまだ、彼女への気持ちを伝えられないままでいる。


...ねぇ。


もし君に、僕の声がまだ、

届いているのなら。

届いているのならば。


もう一度だけ言わせて欲しい。


君を

愛していた。


恋は。

僕にとっての恋は


彼女そのもので


彼女の表情で


彼女の笑顔で。


形作られていた。


まだ、拭い切れない想い。想い。想ひ。


君に届かなくても。


僕は


君に捧げよう。


この世の全て。君に捧げよう。


君との思い出が終わった、この病院。

.....その屋上。


.....やっと君の下に行けるよ。


僕は身を投げる。


彼女は帰ってこない。

ならば、いっそ...

.

.

,

僕は目が覚める。


そこに 

彼女は、いなかった。


僕は、病院のベッドにいた。


僕は泣き叫ぶ。ただただ、泣き叫ぶ。

看護婦が駆けつけても。

医者が駆けつけても。

家族が駆けつけた後も。


ただただ、泣き続ける。


.

.

.

.

,


僕は、病院にいた。


ねぇ。

君は、あの日言ったよね?

僕が飛び降りた時、微かに聞こえた声。

君の、声。


相変わらず説教してたね。

「あんた、馬鹿じゃないの?」って。


僕はね。

その声が聴けただけで

嬉しかったんだ。


おかしいよね。

説教されてるのに

嬉しいだなんて。


でも、嬉しかったんだ。

ただ、ひたすらに。

君が、僕を見守ってくれていたことが。


だから、僕、君の望み通りにしたよ。


とても苦しかった。

長い、長い苦しみだった。


でも、一つだけ。

君の願いを叶えられなかったよ。


君を、忘れて欲しいって願い。


忘れる日は無かった。

晴れの日も、雨の日も。

風の日も、雪の日も。

雷の日も、雹の日も。


日が経つごとに、

鮮明な記憶が何時しか懐かしい思い出になって。

そして、忘れていく。


怖かった。

君を忘れてしまうことが。

君が、僕の中で本当に無くなってしまうことが。


遊園地、楽しかったね。


水族館、ガラスにぶつかって転んだ僕を笑っていたね。


動物園、キリンに人参、全部持ってかれちゃった。


学校の屋上、勝手に上って怒られたり。


ほら。まだこんなに覚えてる。



でも、もうすぐ全部無くなっちゃう。


僕ね、今年で80歳になるんだ。


凄いでしょ。


同級生の澤北くん、この前亡くなったんだって。


君の親友の渡梨さん、今日で三回忌になるんだ。


僕らのいた高校も、何処かの会社のアパートになってた。


凄いよね。年月って。


僕ももうすぐ、お迎えが来る。

やっと、君に会えるね。


そう思った時、不意に君の声が聞こえた気がした。

ああ、君は、あなたは。

そこにいるんだな。


もう少し待っててくれ。

まだ、君との約束、もう一つ。


君とまた会う日は。

笑って、会おうね、って。


今の僕、

君に会うだけで、

泣いてしまいそうだ。


君に会う、その日まで。

僕は生き続けよう。


君に会う、その日まで。

僕は捧げよう。


君に会う、その日まで。
















「ねぇ、早く行こうよ!!」


「そんなに走るなよ、転ぶぞ?」


女の子はくるっと振り向き、


「へーきへーき!私、貴くんみたいにドジじゃないし」


「す、水族館の事はもういいだろ!?それにあれは...」


「ガラスに気付かなかったから...でしょ?」


「そ、そうだよ!」


仲の良い男女は、歩き出す。空の向こうの、彼女の住む世界へと。

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