彼は何度でも神に祈る
初めまして、おんじょと申します。
僕の処女作? になるのかな。
途中で逃げ出さないように、頑張って書いていこうと思います。
感想、批判など送ってくれると嬉しいです。
作者が逃げずに書き続ける糧となるので。
それでは、よろしくお願いしまぁぁすっ!!!
唐突だが、俺は神社が好きだ。一ヶ月前まで住んでいた、実家のある鹿児島では、名の知られてる神社という神社にお参りをしまくり、
気がつけば神主と顔見知りになるくらいには神社好きである。
しかし、残念ながら俺の家は代々続く由緒正しき仏教徒なのである。本当に残念であるが。
貶しているわけでは無いが、南無阿弥陀仏などと唱えても正直、何が救われるものかと勘繰ってしまう。まぁ、誰が何を信仰するかなんて本人の自由であるし、そこに対して口は挟まない。
だが! 俺、松 隆之介は宣言したい!
「生まれ変わったら、神道信者に俺はなるっ! 」
「……いきなりなに言い出しとんじゃあぁぁぁぁ!! 」
隣で俺とワイングラスを磨いていた彼女が、怒鳴る。心なしか、彼女が手に持っているワイングラスが、握力によって歪んでいるように見える。まずい、これ以上怒らせるとグラスが割れてしまう。それだけは何としても避けなければならない。彼女が握りつぶそうとしているグラスは、一個数万はすると言われている物なのである。
「は、はいっ! すみません! 」
元はと言えば、俺が心の中で考えていたことを、口に出してしまったのが原因なので、ここは素直に謝ることにする。
「……ったく、お前はいつもいつも! ええ加減にせぇよ!! 」 と、その苛立ちを隠す事なくどこかに行ってしまう。
いやー、いきなり俺が大声を上げてしまったことで、またやっかいな先輩を怒らせてしまった。ありゃしばらくは、ご機嫌とりをやらないといけないなぁ。などと思いながら彼女の背中を見送る。
先ほどガンガンと俺を叱り飛ばしていたのは、麻植心美さんと言い、見かけは凄くいい。大事なことなのであえて二回言おう。
彼女は見かけだけは凄く良いのである。
パッチリとした栗色の目や、ぷっくりと男なら絶対に見とれてしまうような唇、雪のように真っ白な肌、帰り支度を済ませた時にだけ拝むことができる、腰元まであるサラサラの髪の毛。年齢は見た目だけで言うのならば、二十四歳といったところだろう。
ともかく、何も喋らなければ! どこぞのモデルだと言われても信じてしまいそうなぐらい綺麗な人だ。最初ここに配属されたばかりの頃は、その見かけに騙され、すこぶる喜んだものだ。
だが、何度も言うが、見かけが良いだけなのである。性格は最悪。その性格の悪さは、配属一週間で早くも露見する。
その日から、新入社員は本格的に業務に入ることになっており、一人前になるまで先輩と二人一組になり、細かい業務やオーナー様への言葉使い、備品の場所などを、先輩に教えてもらうことになっていた。
もちろん俺も新入社員なので、例に漏れず先輩から教えてもらうはずなのであるが……
迎えに来るはずであろう先輩が、誰も俺の方には来ない。
これは……あれか? 試されているのか?
確かに俺はこれから、この『日本料理 酢橘』のウェイターとして働くわけだが、他の新入社員のところには、直接先輩が迎えに来ているのに、なぜ俺だけ試されるのだ?
謎は深まるが、その場に留まっていても仕方がない。まだ近くに残っていた、いかにも人が良さそうな高葉料飲支配人に確認してみる。
「高葉支配人。新入社員の松と申します。僕の担当の方がまだいらっしゃらないのですが? 」
「え!? えっーと……ほんとだねぇ。困ったなぁ、ここに来てないのなら、今日の顔合わせの事忘れて、お店のほうに行っちゃったかもしれないねぇ…… 」などと言いながら、手元のファイルをめくる高葉支配人。なぜかは分からないが、次第に額に汗をかきはじめ、ファイルをめくる手も震えだす。さすがに支配人に対して申し訳なくなり
「担当の方のお名前を伺ってもよろしいですか? お名前さえ分かれば、僕一人でお店のほうには向かいますので。」
「あ、あぁ、そそうだねぇ。担当者の名前は麻植心美さんっていう女の人だから! 後はよろしくねぇっ! 」そう言い残すと、高葉支配人はそそくさとその場を後にした。
あー、もしかしたらトイレ我慢してたのかなぁ、それは申し訳なかったなぁと、心の中で少しでも高葉支配人の胃腸が整うように祈っておく。
こうして俺は、新たな仕事場『日本料理 酢橘』へ、一人で向かうことになったのだ。