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八話 騎士団長の実力について

戦闘シーンが今回は多めです。

あまり得意ではないので、変なところがあったら、指摘していただけると助かります。



先ほど行われていた『祝勝会』と表して勇者光羽を讃える会は、無事幕を閉じた。

祝勝会は裏腹に、ほとんど敗者おれたちへの罵詈雑言祭りだったような気がする。

何人かはそんな雰囲気に耐えかねて、終わる前に去っていった者もいる。

ーーまったくもって、残忍な限りだ……。

俺はその会が終わると、騎士団長様からの直々の呼び出しに応じるべく、呼ばれていた例の部屋へと到着した。


コンコン


「……」


扉をノックするも、返事はない。

まだ、来てないんだろうか?

俺は静かに扉を開け、部屋の中の様子を見渡す。

……うん、どうやらまだ誰も来ていないようだ。

部屋の様子からそう感じた俺は、とりあえず中に入っておくことにした。

部屋の中は客間のような感じになっており、綺麗なソファや絵画が至るところに置いてあった。

俺はそれらをじっくり眺めようとしてーーーーー瞬時にその場から離れた。


「誰だっ!?」

「……」


相手は黒いローブを着ていて、顔がわからないようになっていた。

……なんだ、この怪しい人物は?

とりあえず、この王宮の関係者かどうか聞いておくべきだろうか。


「なあ、お前誰なんだ?」

「……」


相手は答えず、代わりに素早く斬りかかってきた。

俺はその突きを回避すると、いつも腰に帯剣している、剣を抜く。

……こいつはどうやら、ここの関係者じゃなさそうだな。

そう感じた俺はすぐさま相手に飛びかかった。

最初は小手調にまあまあ速い突きをお見舞いした。

相手は難なくそれを躱し、お返しに、とばかりに横薙ぎを入れる。

俺はその横薙ぎを剣の左の腹で受け、手首を返す様にして剣を向けて勢いを殺してから上段に持っていき、そのまま斜めに剣を走らせた。

相手はそれをバックして回避すると同時に、何かを投げてきた。

ーーやばい!

瞬時にそう感じた俺は、迷わずスキル『走馬灯』を使用した。

このスキルは、頭の演算能力を速めることによって、もののスピードを遅く感じさせることができるスキルである。

なので、俺の現ステータスでは反応できない高速で飛来する何かも、反応することができるようになる、というわけだ。

俺が、針のようなものを剣で叩き落とす。


「……ッ!?」


俺のその行動に、あり得ないと言わんばかりに動揺する黒ローブ。

俺はその隙を突こうとして前に駆け出したがーーーーー


「ガハッ!?」


急に、何かに蹴飛ばされた感覚がきた。

……なんだ?何が起きたんだ?

俺は痛めた腹を抑えながら、今の状況を把握することに努めた。

ーーーーーどうやら、黒ローブが俺を蹴った、ということがわかった。

それも、俺が『走馬灯』を切った瞬間に……。

そうなると、やばいな。

黒ローブのステータスが完全に俺のステータスを上回っていることが、証明されたというわけだ。

……となると、俺に残されている手は、あれしかない。

俺が悠長に考える時間を与えてくれた黒ローブに感謝して、俺はもう一度駈け出す。

ーーーーー、『60%、起動』

頭の中で無機質な声音を感じ取り、流れる風景が加速する。


「……!?」


黒ローブは、無言で驚きを示す、という高等芸能をやってのけながら、俺の突きを回避する。

回避された勢いのまんま俺は剣を横に薙ぐと、黒ローブもそれに対して剣で防御する。


「待ってたぜ、その構えをなぁああッッッッ!!!」


ーーーーースキル『イカサマ』発動!

『イカサマ』

このスキルは一日に一度だけ、ステータスの概念を誤魔化して事象を顕現できる、という『詐欺師』専門のジョブスキルである。

どういうことかと言うと、この世界のステータスを無視できる、ということだ。

例えば、今俺が横に薙いだ剣の一撃を彼(or彼女)は自分の剣で防いだ、という図式が出来上がっている。

この状況では、普通よっぽど剣の性能に違いがない限り、どちらかの剣が折れる、ということはない。

だが、この『イカサマ』というスキルは、その性能ステータスを無視して相手の剣を折ることができる、ということだ。

そんなわけで、粉々に砕け散った自分の剣に、驚いているうちに、サッサとトドメをさそうとしたが、不意に俺のスキルである『魔力視』が反応する。

ーーーーーマズイッ!

俺が声を上げて反応する暇なくーーーーー


「『風球ウィンドボール』」


黒ローブから放たれた空気の塊が俺の体を吹き飛ばした。


「ガァッ」


もろに腹に入ってしまい、立ち上がることができない。


「……」


だが、この絶好の機会に、相手は微動だにしなかった。

不思議に思い、顔を上げてみると、そこにはーーーーー


「何……やってるんですか、騎士団長?」

「……」


黒ローブのフードをとった騎士団長の姿だった。

騎士団長は驚いた様子で俺を見つめていた。


「……な、なんで?」

「……?」


な、なんで?って、それは俺のセリフなんだが……。


「な、なんで、あのトーナメントで、て、手加減なんか、してたの?」

「……」


ああ、なんだ、そういうことか。

……さて、どうしようか、本当のことを言うべきなのか。

それとも、適当に誤魔化すか……。

だが、こいつにその誤魔化しが効くのか。

たった今、俺の実力が見抜かれたばかりだ。

これ以上は、悪足搔きにもならない。

相手の心証を悪くするだけだろう。


「実はーーーーー」


俺は正直に話した。

この国で勇者よりも強かったら、心証を悪くするだろう、と。


「ーーーーーと、俺は考えたわけです。なので、俺はあの場で手を抜きました」

「……そう、わかった」


どうやら、彼女は俺の言いたいことがわかったようだ。

その後、うんともすんとも言わなくなった騎士団長をみて、彼女の要件が勝手に終わったのだろうと解釈した俺は、立ち上がり静かにその場を去った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



私は、その場から離れずに彼の言葉を頭の中で反芻していた。

私は元々、彼を疑っていた。

ーーーーー力を偽っているのではないか、と。

そして、私の思った通り彼は力を偽っていた。

だが、それを責めることはできない。

だって、彼にそうさせていたのは、王国わたしたちのせいだから……。

なんて酷いことをさせてしまったのだろう。

最初、私は、あの人(確かジンって、呼ばれてたはず……)が、手を抜いているとわかって、叱るつもりでいた。

だけど、悪いのはどちらかと言うと、私達王国だったのだ。

ーーーーどうしよう、何か彼に贖罪をしないと……。


「……そうだ!」


これなら、彼も喜ぶだろう、多分……。

それに、もし、何かあったとしても、私が護ってあげられる……。


「……うん、これでいこう!」


私は、気合を入れて、王宮の方へ駆け出して行ったーーーーー



戦闘シーンのご指摘ありがとうございます。

言われてみると、「突き」やら「薙ぎ」やらが自分の作品には多い様に感じます。

できるだけ、戦闘シーンのアクションのレパートリーが増やせるように、剣道の動画などを観て、参考にしていこうと思います。

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