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五話 訓練について(後編)

またしても、二連続投稿ッ



「はあ、はあはあはあ、うぇっ」


疲労感から込み上げてくる吐き気に堪えながら、俺は辺りを見回した。

ほとんどのものが筋トレを終えてはいるが、もともと文化部で体力があまりない人などは、まだ一部終わってなかったりする。

俺の少し先には、女の子だというのに、吐瀉物塗れになって地面に突っ伏している者もいる。

彼女は女として大事な何かを失ってしまったことだろう。

俺は、そんな遠い目をしつつ、休憩所にある水を汲んで飲んでいた。


「ジン……随分余裕があるんだな……」


話しかけてきたのは、我が心の盟友である、本多だった。


「ん〜、まあ、そこそこかな?」

「そ、うか…

じゃあ、ちょっと悪いんだが、水、俺にもくれないか?」

「ああ、そんくらい大丈夫だよ、任せといて」

「う、ああ、たの、む……」


見ていてこちらの気分が悪くなりそうなぐらい顔を真っ青にしている本多。

本多は中々体格が良いこともあって運動部扱いされることが多いが、彼は実は文化部である。

それも中高ともになので、もうバリバリの文化部と言って良いぐらいに……。

だが、なんの因果か、彼の天職は侍だった。

哀れ、としか言いようがない。

本人自体そんなに自分が体力がないことは自覚しているのにも関わらず、よりにもよって体力が必要な前衛職なのだから……。

ちなみに俺がなんでこんなにけろっとしているか、と言うと皆の三倍近い身体能力値と、スキル『自己再生』のお陰と言えるだろう。

『自己再生』はどうやら傷だけでなく、体力にも反応するようなので体力が減った途端に勢いよく回復する。

そのため、腹筋百回の疲れもちょっと一呼吸入れれば即回復、といった感じで、超イージーモードでした。

こうして、俺たちは騎士団長にこってりと絞られることで午前の部を終えたのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



さて、昼食休憩も終わり、いよいよ待ちに待った午後の訓練が始まる。

午後は午前でも行っていた通り、俺たちのグループはスキル習得や魔法講座に時間を充てられる。

と言っても、ここにいるほとんどの人が魔法職ではないので、魔法なんて焼け石に水でしかないんだろうが……。

ちなみに、魔法職とそれ以外の職での魔法の差は、優に数倍に及ぶらしい。

威力で言ったら、魔法職あっちが拳銃で通常職こっちが水鉄砲ぐらいの差があるんだとさ。

そのため、通常職が九割を占めている俺たちのグループは、魔法よりもスキルの習得に力を入れると言うわけだ。

ーー俺も魔法、使いたかった。

そんな切実な願いを押し込めて、俺らはスキル習得に向けて騎士団長の有難いお言葉に耳を傾ける。


「うむ!皆、注目ー!は、しているようだな。うむ、良いことだ。

よし!それでは皆が使いたかったであろうスキルのレクチャーをしてくれる人を連れてきた!入ってくださーい!騎士団長!」

「「「え!?」」」

「……ご、ご紹介にあずかりました。シア・レスター、です。

い、一応、ここの騎士団の長をさせて、もらって、います……」

「「「……」」」


なんか可憐な少女が出てきた。

年は俺らより少し幼い、十四、五歳で、背丈は百六十とちょっとで、それなりにある方だろう。

鮮やかなエメラルドグリーンの色をした髪の毛を肩に届くかぐらいのところでバッサリと切って揃えている。

綺麗な目鼻立ちをしており、彼女の揺れている瞳からは、気弱なイメージを感じさせてしまう。

なんというか、こう……。


(((護ってあげたい系、女子!!!)))


そんな感じの女の子だった。

ちなみにバストは絶壁でした。

だが、それよりも俺たちはさらに衝撃を受けているところがあった。


(((じゃあ、その騎士団長っぽい、おっさんは誰だよ!?)))


「え?あの、ラルドさんは騎士団長ではないんですか?」


なんとここで勇ましくも愚かしい質問を、今代の勇者である光羽がしてくれた。

って言うか、あのおっさんの名前って、ラルドって言うのか……知らんかった。


「ん?ああ、俺か?俺は騎士見習いだからな!」

「「「まさかの騎士ですらねぇのかよッッッッ!?」」」

「ふっはっはっは、どうだ?驚いたか?」

「「「……」」」


いや、なんていうか、その……。


(((じゃあ、そもそもなんで騎士ですらないあんたが仕切ってんだよ!?)))


という話である。

だが、豪快に笑っている騎士見習いのおっさんと、俺たちの視線に晒されてもじもじと顔を赤らめている騎士団長を見ても、明確な解答がきそうにはなかった。


「じゃあ、話も終わったとこだし、スキルの訓練に入るぞー!」


(((そして、本物の騎士団長が来ても、結局仕切りのはあんたかい!?)))


今日はよく、クラスメイト達とツッコミが被るな、と思う日だった。


「うむ!では、早速スキルの説明に入るが、その前に貴殿らには、そもそもスキルとはなんなのか?ということについて知ってもらわなければならない!よって、今からザックリとしたものではあるが、簡易的なスキル講座を行おうと思う!」


出だしから色々ツッコミたいことはあったが、その割には内容はまともだった。

スキルについて、俺が聞いた限りの情報を集めるとこんな感じだ。


・スキルには三つの種類があり、それぞれジョブスキル、パブリックスキル、ユニークスキルがある。

・ジョブスキルは、その人の職業にあったスキルのことで、習得、熟練するスピードが通常より早くなる。また、職業のレベルが上がった時に唐突に覚えるものもある。

・パブリックスキルは、皆全員が習得することが可能のスキルなこと。

・ユニークスキルは、その人個人、もしくはその種族のみが持っているスキルである。先天的なものと後天的なものがあり、取得条件は未だにわかっていない。なお、人には種族固有のスキルは存在しない。

・スキルのレベルアップは長い間による修練、もしくはジョブレベルがアップする時など、まちまちである。何もしなくても上がる時も稀にあるらしい。取得についても同様である。


以上のようになっていて、尚この説明は全部騎士見習いのおっさんがしていた。

ーー騎士団長、来た意味あんのかな?


「と、まあ、こんな感じだ!ただ、貴殿らの場合は祝福の女神によってスキルの成長速度にも補正がかかっていると思う!なので、しっかりと励めばたくさんのスキル取得が望めると思っておるぞ!」


その言葉で男子軍勢の中二病精神アツキタマシイに火がついたのか、男子達は盛り上がっていた。

逆に女子軍勢はそんな男子オレ達に絶対零度の眼差しを向けていたが……。

兎にも角にも、楽しいスキルレベリングの開幕じゃあッッッッ!



次回、主人公のゲス回

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