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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第四章【七大悪魔王】
96/318

一と八

二話同時


嵐属性を【風・風】→【風・雷】に変更しました。現在、修正中ですが、もし【風・風】表記があれば教えてください。直ぐに直します。



「竜斗ちゃんを倒せばいいのよ♪」

 ゼータがぬけぬけと言い放った。


「!?」


 当然、その場にいた全員が驚いていたが、レイナだけは冷静にゼータの言葉を聞いているように感じた。



「ふざけるなよ貴様!!」

 ガオウが金色の(たてがみ)を荒立たせ、ゼータに歩み寄った。


「ちょっ、ちょっと……」

 ガオウの威圧にゼータは圧倒されていた。


 気づくとゼノにサラ、ルキ、バアル、アトラスもゼータを取り囲んでいた。俺は冷静に少し離れた所でそんな様子を見つめていた。レイナは口に手を当て何か考え事をしている。



「お前それはどういうつもりだっ!」

 ゼノがゼータの胸ぐらを掴んだ。

「私達と竜斗さんを戦わせてどうするつもりなのでしょうか?」

 サラもいつになく怖かった。

「ゼータ、貴様……」

 ルキは歯軋りしている。

「まさか帝国のスパイなんじゃ……」

 バアルはスキル【飛翔】を使い、腕を組んだままゼータを見下ろしている。

「漁夫の利を狙うつもりか?」

 アトラスもその長身からゼータを見下ろす。


「ち、ちが……違うのよ……」

 ゼータが何か考え事を言いたげだが、皆がゼータに詰め寄っていく。



「おやめなさい!!」



 そんな皆を制止させたのはレイナだ。その声には怒気が含まれているようにも感じた。



「姫様……」

 ガオウは萎縮している。咄嗟にレイナを姫様呼びしてるくらいだし、かなりビビったようだ。


「しかしだなレイナ……」

 ルキが何か言おうとしたが、レイナはルキを睨みつけた。

「…………」



「詳しく聞かせてくださいゼータ」

 レイナの表情はいつになく真剣だ。キリッとした瞳でゼータを見つめている。可愛い。


(あれ?レイナは俺を倒したいのか?)

 凄く複雑な気分になった。



 皆がゼータから距離をとるとゼータは説明し出した。


「もう~みんな物騒なんだから……別に竜斗ちゃんを殺せって言ってる訳じゃないのよ」


「ならっ…」

 ゼノも言いかけるが止めたようだ。レイナに怒られるのが目に見えているからな。


「要は迷宮と一緒。ランクを上げたければ自分より強い相手と戦って、それに勝てばいいのよ。」

 ゼータはそのまま言葉を続けた。

「まぁ竜斗ちゃんはランクZEROだから勝つのは難しいと思うけど、それに見合った力が出せるようになれば多分ランクSSになれるわ」



 人は壁にぶつからなければ乗り越えることは出来ない。目標がなければ進む道が分からず、その場に留まり進歩することはない。ゼータはそう言いたいみたいだ。



「言い方は悪いんだけど……魔族が人間に勝てないのは数もそうなんだけど、なにより強くなりたい意志が感じられないの……」

 ゼータは、ばつが悪そうに更に続けた。


「そんなことはっ……!?」

 ルキは声を荒げるが口ごもった。


「分かってるわ。ルキウス達みたいに稀に強い魔族もいるけど、極僅か……それなのに魔族は散り散りに隠れるように脅えて暮らしている……ご免なさいね、これは人間が悪いんだけど……」


「いいから続けろよ」

 バアルが促した。先程とうって変わってバアルも冷静に話を聞いている。


「それじゃあ強くなれないし、上のランクの迷宮に挑めないわ。だから今まで魔族にはSランク者が現れなかったのよ」



 皆黙ったまま聞いている。



「私達人間はお互い切磋琢磨し……時には蹴落としてでも己が強くなることを考えている。だからAランクになれる人間もかなりいるわ。Aランクが集まればそれだけSランクの迷宮にも挑める。Sランクの人に鍛えて貰えれば、それだけ自分に足りないものや、目指す強さ、目標も見えてくるのよ」



 俺の考えは間違ってなかった。前にレイナ達に言ったことをゼータが証言してくれた。


「別に迷宮に挑まなくてもSランクにはなれるのか?」

 俺は気になったことをゼータに聞いてみた。


「ええ、そうよ。迷宮はあくまで目安ね。才能は勿論いるけど、がむしゃらに修練するより遥かに効率がいいわ。だってモンスターって倒す目標も見えてる訳だしね」


「なるほど」



 納得だ。恐らく世間一般で言う人の限界がAランクなんだ。それを超えるには生半可な努力じゃ駄目なわけだ。レイナやガオウ、ゼノがいくらAランクだったとはいえ、同ランクで修練しても限界はある。

 それこそ、死地の中に身をおいて己の限界を超えなければSランク、SSランクにはなれない。実際、Sランクのモンスターを倒した皆はあっさりとSランクになった。

 ……あっさりではなかった。神器【森羅万象】で属性を【付加】させてようやくだけど、それでも倒した事実に変わりないし、【仲間】も強さの1つだ。



「人は一人じゃ強くはなれない……」

 俺は小さく呟いた。



「潜在ランクが【SS】ある皆には才能がある。なら竜斗ちゃん相手に自分の限界をぶつけて、倒すことが出来れば、間違いなくSSランクになれるわ」



 全員が唾を飲み込む。

 そんな中、レイナだけが小さく拳を握りしめていた。何か思うところがあったのかもしれない。それでも婚約者に倒すと思われるのは少なからずショックだ。

 そんな俺をレイナは更に追い詰める。




「分かりました」

 レイナがゆっくりと頷いた。


「レイナ?」


「これより私達がする事は決まりました」

 レイナの綺麗な声が【王の間】に響いた。


 皆がレイナを見つめている。レイナも皆を見渡すと全員が頷いた。



「スレイヤ神国との戦まで、ただひたすらに修練です!目標は……打倒竜斗様です!!」


「「「はいっ!!」」」



 全員が迷いのない済んだ瞳をしている。目標が見えてるからか、やる気に満ちている。覚悟も出来てるようで表情も真剣だ。


 これでスレイヤ神国戦までに皆がSSランクになれたら御の字だ。勿論、こっちも手加減するつもりはないけど。7人が俺を見つめている。


 しかしだ……



(…………これってボスモンスター扱いだよな?)



 すっげ~複雑……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 その日の内に準備が整った。



 レイナの指示の下、皆には悪いけど【修練の間】から出てもらった。ラスとカルにまだ建物が建っていない広い場所に簡易テント等を造ってもらい、申し訳ないけど皆には外で寝泊まりしてもらうことにした。

 あの兄弟は仕事が早い。異常な程だ。これも才能なんだろう。馬鹿だが凄く頼りになる。



 初めは外で修練する予定もあったが、折角建築中の建物を万が一にでも壊すわけにはいかない。国の外での修練も本末転倒だ。それなら迷宮にいく。

 レインバルト達がいつ戻ってくるか分からないし、国は空けたくない。


 当然皆は何事かと思うわけだが、敢えて詳しい説明はしない。ただ秘密の特訓だと伝えるだけだ。



 そういえば、まだマナさんとゆっくり話が出来ていない。あの襲撃の後、レイナの即位式があり、すぐに機械国に向かったので、あまり話が出来ていない。

 機械国からの物資に布地なんかもあったので、俺は特訓の前にマナさんに会いに行く事にした。



「これは?」

 マナさんは首を傾げている。


「はい、アトラスからもらった、かなり丈夫な布です。出来たらこれで服を作ってくれたら嬉しいです」

 俺はトイレペーパーみたいに丸まった黒い布をマナさんに手渡した。


「それは構いませんよ」

 マナさんは優しく微笑み、快く引き受けてくれた。


「でも無理はしないで下さいね……」

 俺はマナさんの右腕を見つめた。


「大丈夫ですよ、ルルちゃんに治して貰ったからもう平気です」


「はい。それじゃあ、お願いします」

 俺は軽く頭を下げた。


「ふふっ、特訓頑張って下さいね」



 俺はマナさんと別れて、城の地下【修練の間】に向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




アルカディア城、2F【会議の間】



 そこには竜斗命名の【七大悪魔王】、レイナ達7人とルルがいた。



「先ずは分析からだ」

 ガオウが進行を務める。


「そうだな、初見のボスモンスターじゃないんだ。お互い手の内は分かってるし、しっかり作戦を立てないとな。」

 ゼノが同意する。


「先ず1番は奴の剣技だ」


「それなら簡単だ。基本は【中段の構え】、それに【下段の構え】【上段の構え】【八双の構え】【脇構え】【居合い】の計6つの構えからなる攻撃だな。」

 ルキが思い出すように説明する。


「……よく考えられている。バリエーション豊富で隙がないな」

 アトラスは顎に手を当てて呟く。


「聞けば小さい頃から剣を持ってたみたいだし、剣の扱いにも長けてる。動き自体も悪くない、身体強化のスキルがないのが唯一の救いだね」

 バアルが補足する。


「ふむ、次にスキルだが……これはかなり厄介だぞ」


「そうだな、先天スキルが【剣才】から【剣聖】になってて、剣技は相当ヤバイな。後天スキルも【神眼】【王気】【魔曲】【五光】【合魔】【神速】どれもレアスキルだ」

 ゼノがスキルについて説明する。


「こちらの攻撃が当たるでしょうか?【神速】と【神眼】のコンボは正直驚異です……」

 サラが尋ねる。


「難しいな……俺は結局まともに竜斗にダメージを与えることが出来なかった」

 アトラスは先日の戦いを思い出していた。


「僕もかなりの接近でなんとか一撃だね。しかも……あいつの攻撃を喰らった直後の隙をついてだし……」

 バアルも以前の戦いを思い出していた。


「そもそも【魔曲】がズルいですね……」

 ルルが小さく呟いた。


「【魔曲】もそうだが、【合魔】もヤバイな……以前あいつの実験で試したが【氷属性】は制御出来なかった。それをあいつは平気でしてくるからな……」

 ルキは鬼種の迷宮に行った時の事を話した。


「そうですね、【五光】により【五属性】を色々と組み合わせてくるかと思います」

 サラが懸念を口にした。


「だが風・雷の【嵐】、水・風の【氷】しか我は知らぬな。他の属性を視た奴はいるか?」

 ガオウの質問に全員が首を横に振った。



「きっと必要ないのでしょう……」

 レイナが呟いた。


「陛下?」


「竜斗様は強すぎます。恐らく今まで相対した人に竜斗様を本気にさせるだけの人がいないのでしょう……」


「しかし、【羅刹】には苦戦しておりました。本人も強かったと……」


「しかし、結果【地属性】だけで倒せています。恐らく純粋な剣技だけで勝負したかったのかと…………先天スキルが【剣才】から【剣聖】に変わってるのが良い証拠です」


「た、確かに……」


「竜斗様は剣や刀が好きだと仰ってました。剣技に対する向上心が計り知れません……下手をしたら最上位のスキル【剣神】に変わる可能性もあるかもしれません……」


「……ゼータの言った、強くなる意志か……」

 ルキが納得するように呟いた。



「ガオウ将軍続けてください」


「はっ……次に神器だな。これも相当だ……」


「だね」

 バアルが頷いた。


「言わずもがな【絶刀・天魔】だ。正直これはヤバイな……かなりヤバイ……」

 ゼノの額から汗がつたった。


「【次元属性】か……初めて見たぞ、【次元属性】を攻撃にした神器など……」

 ガオウもどう対処すればいいか悩んでいる。


「それに能力【巨大化】もあります。剣技・属性・能力、余すことなく力の全てが結集された神器です。正にランクZEROに相応しいかと……」

 サラも改めて口にして、その力に驚いている。


「次元属性に関して言えば俺が盾になろう、スキル【機体】で数回なら耐えられる筈だ……」


「いや、そもそも空間を斬るのだ……どこを斬るかは竜斗にしか分からん……防御無視の反則に近い攻撃だ、覚悟するしかない」

「…………」

 ルキの言葉に全員が黙った。



「でもそれだけじゃない。竜斗には【森羅万象】【魔名宝空】【神鳴】もある。攻撃・防御・敏捷・補助に地上戦・ある程度の空中戦も出来る」

 ゼノが口を開いた。


「うむ。結果、竜斗には【光と闇】の二属性以外の計六属性が使えることになる。合魔を加えればそれ以上か……」


「なら攻撃の起点は私とゼノにしましょう。ガオウ将軍、サラ、ルキ、バアル、アトラスの5人はかなり不利です。竜斗様がどの程度対応出来るのかは判りませんが、恐らく弱点となる属性で攻撃してくるでしょう……」


「ですね……」

 全員が頷いた。


「本来なら盾役など各役割が必要なのですが、竜斗様相手にそれは意味がありません。誰もが紙みたいなものです。ですから攻撃の役割だけ決めましょう。」

 レイナの言葉に全員が頷いた。


「攻撃の起点となる私とゼノが近距離、「オッケーだ。」ガオウ将軍とサラとルキが近~中距離、「了解。」アトラスが中~遠距離、「了解した。」バアルが遠距離、「分かった。」ルルが治癒です、「はい。」」




「後は……戦いながら自然と決めていきましょう。私達が強くなれば竜斗様も本気を出してくる筈。そうなれば戦い方も自然と変わってきます。この攻撃はどう防げばいいか、この攻撃は効かないのか、検証も大事ですし……なにより全員揃っての初戦闘です。コンビネーション、パーティーとしても未知の領域です…………ですから、後はなるようになれです!」


「………………」

 全員が黙った。そして一斉に笑いだした。



「ふむ、姫様も段々竜斗に毒されてきましたな」

「くくっ、まぁ結局はそうなるわな」

「ふふっ、少しだけ楽しみです。竜斗さんと戦うのは初めてなので」

「そうだな、竜斗の強さは知っているが、刃を交えるのは初だな……私も少し楽しみだ」

「やれやれ、皆呑気だな……あいつの攻撃は本当に変態的だって言うのに……僕なんか手足斬り落とされたんだよ」

「だな。俺は先日叩きのめされたばかりだ…………だがあの時は1人だった、全員なら必ず……」

「だ、大丈夫です!み、皆さんは私が治します!」



「神国戦の前の最大の試煉です…………行きましょう!」



 レイナ達も部屋を後にし、地下【修練の間】へと向かった。




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