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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第四章【七大悪魔王】
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多重と謎?


例の如く夜勤からの投稿(笑)




「彼らは馬鹿なの?」

 走りながらバアルは呟いた、その手に腕輪の神器【舞球炎】を発動させて。


 しかし、バアルがそう思うのも無理はなかった。何故なら現在、相対してこちらに向かってくる機人族5名は弓の神器を構えながら駆けて来ているからだ。

 確かに至近距離で矢を放たれれば回避することは難しい。だが逆に回避出来れば簡単に倒せる。

 そして5名はBランクで、自分はSランクであった。回避することは造作もない。



「魔族に対して気は乗らないけど…………格の違いを思い知らせてやる」


 バアルは一瞬だけ躊躇った。種族は違うが同じ魔族を攻撃することに抵抗があった。

 だがスレイヤ神国が攻めてくる状況で、のんびりした事は出来ない。早々にアトラスを仲間にする必要があった。

 その為にも、ここで手こずる訳にはいかなかった。


 バアルは駆けながら腕輪が発動されている方の手をかざした。その後ろには巨大な5つの炎の球体が作られ、今まさに機人族の戦士達を襲おうとしていた。



「舞球炎!」

 バアルが叫ぶと同時に5つの炎球は5人を襲った。5人はこれを辛くも躱したが、舞球炎が地面に着弾した際の爆風の余波で家屋へと吹き飛ばされた。



「がはっ!!」

「ぐっ……」

「な、なんて威力だ……」



 5人は必死に起き上がった。バアルはスキル【飛翔】を使い、空中より悠然と5人を見下ろした。



「まだやるかい?次は当てるよ」

 バアルが腕を組むと、またしてもバアルの後ろには巨大な炎球が5つ発動された。



「…………化物だな」

 1人が呟いた。

「奴のランクは?」

 別の1人が【魔眼<人>】を所持してる機人族に尋ねた。

「…………Sランクだ」

 1人がボソッと呟いた。

「……なんで言わなかった?」

 更に少し気の強そうな1人が尋ねた。

「すまない。俺自身、信じられなくてな……」

「で、どうする?」

「……あれしかないだろ?」

「だな」



 5人はお互いの顔を見合わせてから小さく頷いた。そして5人ともが弓の神器をバアルに向けて構えた。弓の弦を掴むと周辺の空気が集まりだし、矢の形状へと変化していった。


【風魔】<弓/風/形状変化/B> ×5



 5人はゆっくりと弦を引いた。バアルはそれを見ても微動だにせず、意にも介していなかった。



「…………はぁ……まだやるのか……」

 バアルは深く溜め息をついた。


 バアルによる先程の攻撃はかなり手加減したものだった。そして爆風に吹き飛ばされる5人を見て、瞬時にお互いの力量差を把握した。

 急いで倒したい気持ちもあるが、やはり魔族を傷付けることに躊躇いがあった。



 5人は一斉に風の矢を放った。鍛練に鍛練を重ねたのであろう。5人の呼吸はピタリと合い5つの矢は正確にバアルへと放たれた。

 バアルは右手を翳して炎球の1つでそれを受け止めようとした。


 もしこの弓の神器に【貫通】の能力があれば或いは炎球を貫いたかもしれない。

 しかし屋根の上からの射撃の時から既に、その様な能力はないと確信していた。

 更に属性が風と炎ならば確実にこちらの相性が良い。

 ランクもこちらが上。


 負ける要素が1つもなかった。



 5つの風の矢とバアルの間に、バアルの視界を遮る程の巨大な炎球がバアルを守るように、矢の前に立ち塞がった。



 瞬間、バアルの右肩は1本の風の矢に貫かれた。


「かはっ…………っつ……一体何が……?」

 バアルは訳が分からず左手で右肩を抑えた。



「強者の(おご)り……」

「弱者を甘く見ないことだ……」

「Sランクとて……」

「この秘技の前には形無しだな……」

「これこそ!我らが必殺のー!」


「多重発動か?」



「………………」×5



 その場には沈黙が流れ、一陣の風が吹いた。



「し、知っていたか……」

「さ、流石だな……」

「え、Sランクだからな……」

「ま、まぁ最近では知らない方がおかしいか……」

「だ、だな……」



 5つの風の矢は、炎球にぶつかる瞬間に1つとなり、その威力は数倍に跳ね上がり、Aランクである【舞球炎】の炎ごとバアルの右肩を貫いたのであった。



「…………はぁ、竜斗に何て言い訳しようか……油断するなって言われたのに…………僕もまだまだだな……」

 バアルは溜め息の後、小さく笑った。



「ふん、諦めるのだな蟲人族よ!」

「我らの多重発動による風の矢は、Sランクに匹敵する威力を放つ!(自称)」

「この勝負、我らの勝ちだ!」

「大人しく投降すれば情けはかけてやる!」

「そうだ!」


「…………」

 バアルは舞球炎を解除した。



「……ふん、諦めたようだな」

「中々、潔いではないか?」

「退くことも戦士には重要な事だ」

「だな」

 4人は小さく笑った。


「い、いや……待て……」

 1人がバアルを見てワナワナと震えだした。



 いつの間にかバアルの左手には杖の神器が握り締められていた。巨大な魔力と共に……


【極烙炎】<杖/炎/形状変化/S>



「な、なんだこの魔力は?」

「バカな……あ、ありえん……」

「Sランクとはいえ……」

「こんな巨大な魔力は……」

「アトラス様に匹敵するぞ……」



 バアルは更に高く飛翔し完全に5人を見下ろした。そして杖を高々と掲げると、杖の先端から炎が渦を巻くように放出された。

 その炎は次第に巨大な龍みたいな形状へと姿を変えた。



「んな……」

「…………」

「おいおいおいおいおい……」

「嘘だろ……?」

「…………母上……」



 バアルは杖を振り降ろした。


「眼下の敵を焼き尽くせ!【龍虫炎舞(インセクトダンス)】!!」



 龍を型どった炎は5人へと放たれた…………いや、襲いかかった。



「だばーー!!」

「んがーー!!」

「がべーー!!」

「やぶーー!!」

「じぬーー!!」



 踊る炎により5人は、バラバラな方角へと吹き飛ばされた。5人が吹き飛ばされた家屋からは5つの煙が空へと舞い上がっていた。

 バアルは暫く5つの煙を眺めると、【千里眼】を発動し5人の様子を視た。


「…………うん、上手くいったかな?」


 5人は綺麗に気絶し、軽く火傷を負った程度で済んだのであった。

 バアルは5人の安否を確認するとゆっくり下へと降りていった。



「やれやれ、ひやひやしたぞ」

 ガオウがバアルへと声を掛けた。


「ごめんごめん、まさか多重発動するとは思わなくて…………竜斗に怒られるかな?」

「…………いや、奴の事だ。怒りはしないが、からかってくるかもな……」

「うわ、それはウザいな……」

「まぁ安心しろ、我はそのような事を言うつもりはない」

「…………あ、でもな~……この傷があるし……」

 バアルは左手で右肩を抑えた。

「…………ふむ、バレるな……」

「……まぁいいや……僕もまだまだって事だし……もっと強くなるよ」

「うむ……後は……ゼノか?」



 ガオウとバアルは、ゼノとヒュースの方へと目をやった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 バアルと五人衆が戦い出すと同時に、ゼノの双剣とヒュースの長剣が交わった。


 ヒュースは紫の髪色をしていた。握り締めている長剣の柄も紫であった。纏う着物も紫で羽織だけが白色であった。

 ヒュースの神器【凍紫】からは、紫の冷気が纏わりついていた。



 ゼノは淡々と、ヒュースにより繰り出される剣撃を受け止めていた。


「…………」


 ゼノは冷静な表情は崩さなかったが、内心は戸惑っていた。

 どう視ても、ヒュースからは【氷属性】なんてスキルは視えなかった。

 そもそも【氷】なんて属性は、この世に存在していない。


 後から聞いたことだが、ゼノには1つだけ知っている事があった。それは以前、竜斗が迷宮にて、【氷属性】をサラ達に付加させようとした事だった。


 その際に発動させていたスキルは【合魔】。


 だがゼノは更に戸惑った。【魔眼<天>】で視てもヒュースからは【合魔】なんてスキルはなかった。


 目の前の男はスキルがおかしかった。更に言うなら【水と風】の属性すらヒュースは所持していなかった。



「……お前、一体なんなんだ?」

 ゼノは剣を交えながら尋ねた。


「ふっ、まぁ分からないであろうな……」

 ヒュースは小さく笑った。


「…………上等だ……」

 ゼノの眉間に少しだけシワが寄った。



 実はゼノは完璧主義な所があった。完璧主義というよりかは、自分が知らないことが許せない(たち)であった。

 ここでゼノはヒュースを倒すことより、ヒュースのスキルを解読することに努めだした。



「氷刃!」

 ヒュースによる鋭い突きが繰り出される。


「ちっ……」

 ゼノは舌打ちをするも、これらを躱していく。



 ゼノは竜斗の言葉を思い出していた。

「……Aランクだから気をつけろ」

 ゼノは、その言葉に疑問を感じた。


(実はSランクなのか?……違う、竜斗には神眼がある……ただのAランクじゃないってことか?神器が氷属性なのか?……それもないな……長い時を見てもそれはない…………ならなんだ?)



 その間にも2人の攻防は繰り返される。



(間違いなく、竜斗には分かっていたんだ…………バアルにも「Bランクだけど油断するな」って注意していたな……わざわざ注意する程の事か?…………なら神眼には視えてたんだ…………Bランク相手に油断するなと言った理由が……Aランク相手に気をつけろと言った理由が…………)



 ゼノはひたすら思考を巡らせた。


(神眼だけが視える、他の魔眼にはない能力(ちから)……)




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