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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第一章【はじまり】
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龍種と神眼



 迷宮【塔】

 フロア数【1】

 モンスター【スライム種】

 迷宮ランク【E】


 3人にとって、とても簡単な迷宮だった。



 竜斗にとっては初めての異世界で、初めての戦闘であったが、特に問題はなかった。手には片刃剣の神器【銀叉】1つだけであったが元々剣道をしていた為、違和感はあったものの幾度かの戦闘を繰り返し剣にも慣れてきた。

 最後にボスモンスターを倒して、お城に戻りゆっくりと、異世界について話を聞きたいと思っていた。


 レイナはまるでコンビニにでも行くような感覚でこの迷宮にきていた。最初は若干竜斗の身を案じていたが、戦闘を見ている内にそれは杞憂であったと気づく。

 【ランクD・仮定】の竜斗が、同格のランク【E】の魔物を苦もなく瞬殺するのを見て楽観視していた。

 それもそのはず、現在魔力がないといってもレイナはランク【A】、ガオウもランク【A】、竜斗もランク【D】を優に越える。強者であるがゆえの油断がそこにあった。


 ガオウは迷宮に来てからもずっと警戒はしていた。

 自分の国の王であり、自らが仕える(レイナ)の魔力は現在、限りなくゼロに近かった。異世界人である竜斗を召喚した神器は、(レイナ)のランクを越えるもので無理矢理使用したのであった。

 その為レイナに万が一があってはならない!と常に警戒はしていた。しかし同時に援護もしなければと思っていた竜斗が異常に強かったのだ。ガオウは下手したら自分たちと同ランクなのではと感じていた。

 そんな3人が最低ランク【E】の迷宮にきていたのだ。歴戦の戦士であったガオウにも僅かながら油断があった。


 3人はボスモンスターの部屋の扉を開け中に入った。





 俺達3人は動けずにいた。

 ボスモンスターの咆哮が俺達の体の自由を奪っていたのだ。



(あ、あり得ないです……)


(バカな!!)


(おいおい……嘘だろ……)



 各々(おのおの)似たようなことしか考えていなかっただろう。当然だ。目の前にいるボスモンスターは決してキ〇グスライム等ではなかったからだ。


 体はガオウの数十倍はあり、全身には硬く光を反射する程の綺麗な鱗があった。頭からは角が生えており、牙は全てを喰らわんとし、爪はあらゆるものを引き裂く程鋭く尖っていた。



 過去幾度となく物語に登場してきた伝説上の最強生物……ドラゴンであったからだ。



「おいおいおいおい、マジかよ……」


「あ、あり得ないです……ランク【S】の迷宮ですら出てくることのない|ドラゴンがまさかランク【E】の迷宮に出てくるなんて……」


「ま、まさか……」

「!?」



 刹那、ドラゴンの尻尾が俺達を襲ってきた。

 それは俺達にとっては脅威であったが、後から思えばただの牽制……ドラゴンからしてみれば、ほんのジャブみたいな攻撃だったであろう。



「あぶない、レイナ!!」

「あぶない、姫様!!」


 俺とガオウは咄嗟に神器を発動しレイナの盾になった。



 俺は吹き飛ばされ、なんとも言えない感覚を味わい、そのまま壁に叩きつけられた。


「がはっ!」

 ランク【D】の銀叉が壊れなかったのは奇跡としかいいようがなかった。


「竜斗!?」

 ガオウの叫びが遠くに聞こえた。


 ガオウはドラゴンの攻撃に何とか耐え、レイナを守っていた。俺は少しだけ安堵した。


 ガオウが発動した斧の神器【レギオンバスター】、属性【地】、ランク【A】は最初に出会った時に所持していた神器だった。


 俺は吹き飛ばされたのにガオウは少し後退りした程度だった。



 やっぱ2人とも凄いんだ……などと考えながら、重たい体をゆっくりと起こした。

 ドラゴンは警戒しているのか少し距離をとって、こちらの様子を伺っていた。

 その隙に2人が駆け寄ってきた。



「竜斗様! 大丈夫ですか!?」


「正直全然大丈夫じゃないです……かはっ!」

 口の中を切っていた……鉄の味がする。



「えっと……あれはどう見てもスライムじゃないよね?」


「も、もちろんです! 間違いなくあれはドラゴンで、決してスライム等ではありません…………ただ……ランク【E】の迷宮にドラゴンが出現するなんて……そんな話聞いたことがありません……」

 レイナは力強く否定する。



「……ボスモンスターってあんなに強いの?」

 俺が質問するとレイナは首を横に振った。


「まさか……ランク【E】のボスモンスターなら何度も狩ったことがありますが、通常の魔物と比べてもあそこまでは……」


 するとドラゴンと対峙しながらガオウが口を開いた。

「姫様……もしかしたらですが、この迷宮は…………」


「ええ、私も同じことを考えていました」


「?」

 2人の会話の意味が分からない。



「これは人間たちの奴隷だった魔族の者から聞いた話なのですが、極々稀にランク【A】や【S】といった迷宮攻略者がランク【E】の迷宮に赴き、帰ってこなかったという話があるのです」


「……えっ、それって……偶然とかじゃなくて?」


 レイナは頷き話を続けた。

「魔族にも知れ渡るほど有名な、英雄トウマと呼ばれた【S】ランクの人間が、かつて【E】ランクの迷宮に入り帰ってこなかったそうです」


 俺は背筋が凍るのを感じた。

「ま、まさかと思うけど、俺たちが今いるこの迷宮は……」


 レイナは震えながら答えた。

「……はい……お、恐らくですが、ランク【E】の迷宮ではなく、英雄トウマが命を落とした迷宮と同じ、ランク【ZERO】の迷宮です」


「ら、ランク【ZERO】?」


「……はい。英雄トウマだけではなく、過去に他にもランク【E】の迷宮で行方不明になった猛者がいるそうです。人間達はその迷宮を【SS】の上、ランク【ZERO】に指定したそうです」



 逃げ出したかったが、迷宮は基本的に攻略しなければ出ることは出来ない。ガオウがこの迷宮に一番最初に入ったので、後2人はこの迷宮に入ってくることが出来る……が、今すぐ援護がくるとは思えない。

 仮に来たとしても焼け石に水である。



 すると突如辺りの空気がドラゴンの口に集約されていく。



「2人ともくるぞ!!」


 ガオウが叫ぶと同時にドラゴンが【風のブレス】をブッ放してきた。

 瞬時にレイナが俺たちの前に出て薙刀(なぎなた)の神器【巴】を発動させ、【風のブレス】を一刀両断する。


 「すげ~」と称賛していたら、ガオウがレイナに駆け寄っていた。



 レイナは膝から崩れ落ちた。間一髪ガオウがレイナを抱き抱える。

「姫様!!」


「だ、大丈夫です。まだ魔力は残っているのでこれくらいなら……」

 かなり無茶したようだ。


 本当にレイナにはまともに神器を発動させるだけの魔力が残ってないようだ。せいぜい出来てギリギリ後1回といった感じだった。

 俺たちがレイナの心配をしていたらレイナが苦しそうな顔で俺を見てきた。


「も、申し訳ありません竜斗様……わ、私が竜斗様をこちらの世界に召喚したばかりに……そ、それに急いで迷宮に乗り込んだせいで、この様なことに……」


「し、しかし、姫様……召喚はともかく迷宮に関しては姫様のせいではありません。ランク【ZERO】など、ランク【E】の迷宮1万回挑んでも出てくるかどうか……姫様の責任ではございません!」



「で、ですが……私がもっと慎重に-」

「ああ、全くだな。きちんと準備してからくれば、こんなことにはならなかったかもな」


 俺はレイナの言葉を遮り、冷たい一言を放つ。するとレイナは小さく笑い、ガオウは睨んできた。


「竜斗、貴さ-!!」


 俺はガオウが怒鳴るよりも速く、2人を振り切りドラゴンの前に対峙した。

 2人は気づかなかったみたいだが、俺はドラゴンが次の【風のブレス】をブッ放すための力を溜めていたのに気づいていた。

 また右眼(・・)が熱くなるのを感じた。


 俺は神器【銀叉】で【風のブレス】を受け止めるが、またしても吹き飛ばされた。

 【銀叉】は粉々に砕け散った……



「竜斗さ-!?」


 レイナが呼ぶより先に今度はスッと立ち上がる。

「大丈夫!!」


 全然大丈夫ではなかった。

 【銀叉】は砕け散り、全身からは血が出ていた……だがまだ動ける。



 俺はドラゴンを見つめながら2人に近づき、手を差し出す。

「なんか神器貸してくれ!」


「……竜斗様?」


 俺はドラゴンを見たまま少し黙ってから口を開いた。

「全く……レイナが急いで迷宮に行こうって言うからだぞ……まぁ仕方ないから英雄トウマってのが出来なかったランク【ZERO】の迷宮攻略者になっちまうか」

 俺は視線をレイナに向けニカッと笑った。


「竜斗様……」

「こやつめ……」

 レイナとガオウはやれやれといった感じで笑いながら呆れていた。



 するとガオウが指輪を1つ渡してきた。

 俺は発動と唱え神器を手にした。


「迦楼羅っ!?」

 俺はビックリしたが、ガオウはそれほど驚いてはいなかった。


「やはりランク【B】の神器を易々と発動させるか……」

 ガオウはレイナに向き直る。

「申し訳ありません姫様……万が一を思いこっそり持ち出してきてしまいました」


「それは構いませんが……竜斗様は一体どのランクなのでしょうか?」


「それは……帰ってからのお楽しみだな。とりあえずあの蜥蜴(トカゲ)野郎は俺がぶっ倒す。ガオウはレイナを守っててくれ」


「!?」

「バカなっ!? ここは2人で姫様を守りながら、なんとか奴の弱点を……!」



 ガオウは俺の提案を否定してきたが、俺は更にガオウの提案を否定した。


「いや、あいつに弱点はないよ……多分……分かるんだ……ただ倒すしかないって。正直言って、俺は守りながらの戦いはしたことないから、レイナを守りきれる自信がない。ガオウがレイナを守ってくれてる方が、安心して思いきり戦える」



 俺が2人に振り向くと2人は驚いた。


「竜斗様?」

「竜斗よ、眼が……」


 俺の右眼は黒色の瞳から金色の瞳へと変わっていた。


「金色の瞳……ま、まさか、あらゆるものを見通すと言われた神の瞳【神眼】!?」



 よく分からないが、俺の右眼はなにやら凄いモノになったようだ。

 スライム戦から右眼が熱くなるのは感じていたが、漫画的に言うと覚醒したみたいだ。


 これのおかげか、ドラゴンを見てなんとなく、アイツには弱点がないことに気づいた。

 いやもしかしたら弱点はあるのかもしれないが、今の自分達ではどうしようもないと漠然と感じていた。



 なら出来ることは1つ……ただ倒すのみ!!




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