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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第三章【襲撃】
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招集と不安



 アルカディア城、3階【王の間】。



 王不在の【王の間】には、現在大勢の多種多様な魔族が集まっていた。

 その殆どが国の兵士達であり、黒い軍服に身を包み、整列して玉座の方を向いていた。


 彼らは総勢100名程度で、アルカディア国のほぼ全兵力であった。

 彼らを取り仕切るのは、天原竜斗が見出だした7大悪魔王の内の3人である。


 獅子族のガオウ、八咫族のサラ、竜人族のルキである。

 それと国の大臣である蛙人族のローゲと、鑑定士である兎人族のララであった。

 5人は兵士達と玉座の間に立ち、彼らは玉座を背にし兵士達の方を向くようにしていた。


 ガオウ達のその顔は、いつもの竜斗がいる時のふざけた感じではなく、また訓練の時とも違う神妙な面持ちであった。


 すると口を開いたのはサラであった。



「皆さん、集まって頂き申し訳ありません……1つ報告したい事があります」



 兵士の中の誰かがゴクリと唾を飲み込んだ。

 決して他愛もない報告ではなく、国の一大事だと気づいたからだ。

 皆黙ったままであった。



「まだハッキリとは分からないのですが、現在この国に危険が迫っています……」



 この言葉を聞き、兵士の1人が口を開いた。



「す、スレイヤ神国ですか?」



 兵士達の殆どが思っていた事だった。

 ゼノやガオウの集めた情報により、スレイヤ神国がアルカ大森林に遠征に来ることは知っていた。

 だから姫様は神器を使用し異世界の住人である【天原竜斗】を召喚したのだと。


 だがサラは首を横に振った。



「それは分かりません。【占術眼】でも何となくなので、まだ何とも言えません……ですが危険が迫っている事は確かです」



 サラは正直に答えたが、兵士達に言わなかったことが1つだけあった。

 それは【占術眼】によりこの国が赤く染まっている事を。


 余計な混乱を招きたくないのもあったが、サラ自身にとってまだ不確かな事だったからだ。

 【占術眼】により赤く染まってはいたが、まだうっすらとしたものであり、本当に危険が迫っているかは分からなかったからだ。


 兵士達がザワザワと喋りだすと、ガオウが一喝した。



「静まれ!」



 この言葉に兵士達は黙るようにしてガオウ達の方へ向き直った。

 ガオウは静かになったのを確認すると、ゆっくりと口を開いた。



「我々がとる行動は1つ、民達を安全にこの城に避難させることだ。もし何も起きなければ只の笑い話で済む。だが何かあっては遅い! 故に我々は迅速に行動を開始する!」



 徐々に力が入るガオウの言葉により、兵士達の顔付きは変わっていった。

 先程までの、不安を(あらわ)にした顔ではなく、全員が責任感を持った戦士の顔であった。



「第1隊 隊長シューティングスター・ダダ!」


「はっ!」


 ルキが1歩前に出て叫ぶと、シューティングスターもそれに呼応して大きく返事をした。

 シューティングスターは黒い軍服を着、その上に白い鎧を身に纏っていた。


「お前は第1隊を城の要所に配置させ防衛に専念しろ! 敵はどこから攻めてくるか分からん!」


「はっ!」



「第2隊 隊長ガーベラ・ドレイン!」


「は、はいっ!」


 次にルキに名を呼ばれたのは、ガーベラと呼ばれる竜人族の女性だった。

 彼女はルキと同じ竜人族であり、ドラグナー国からアルカディア国に来る際に兵士に志願し、メキメキと力を発揮し出した豪胆な女性であった。


 因みにだが彼女は竜斗から【テトラ】の愛称で呼ばれている。

 何故テトラ?と疑問には感じているが、想い人がそう呼ぶのなら別にいいかと思っていた。


「お前たち第2隊は、避難してくる民の城への誘導と警護だ!」


「はいっ!」



「第3隊 隊長イヨ・セイレン!」


「はい」


 イヨと呼ばれる八咫族の女性は、ルキに呼ばれると静かに答えた。

 元々サラの一団にいた女性で、彼女もガーベラと同じくアルカディア国に来てから兵士に志願した者だった。

 彼女もサラと同じく黒髪で、着物が似合いそうな物静かな女性であったが、今では黒い軍服に身を包む女傑へと変貌を遂げた。


「第3隊は救護・補給・連絡がメインだ。敵がいつ来るかも分からぬ現状、長期戦になる可能性もある。恐らく怪我人も出るであろう……自分達がこの軍の生命線だと知れ!」


「……承りました」



「最後に、第4隊 隊長アザゼル・フリード!」


「はっ!」


 最後に呼ばれたのは堕天族のアザゼルだった。

 リリスと共にホウライ王国から逃げ出した彼は、アルカディア国に来てからグングンと力をつけてきた。


「第4隊は街の中の見回りと、外からの攻撃に警戒せよ。城壁の守りもお前達が担当しろ!」


「了解です!」



 4人は現在ランクBの新進気鋭の戦士であった。

 ルキの鬼のような訓練と竜斗との特訓により彼らはBランクへと到り、竜斗の推薦もあり軍の隊長へと任命された。


 理由はそれだけではなく、竜斗の神眼により4人がこの国での数少ない潜在ランクAの戦士でもあったからだ。

 もう1人……リリスも潜在ランクがAはあるが、本人から軍は拒否されたのであった。



「ララ殿とローゲは避難してきた民達と共にいてあげてくれ」

「2階にある【神器の間】の守りはどうしますか?」


「ランクの高い神器を優先して地下の【修練の間】に運び、後は避難してきた民と神器を【修練の間】にて守りましょう」


「了解です」

「分かりました……ゲロ」


 ララとローゲは頷いた。



「ガオウ様達はどうされるので?」

 不意にシューティングスターがガオウ達に尋ねた。


「それぞれ、街の中・城内・上空に別れて警護にあたる」

「了解です」



 ガオウが兵士達を見回すと、スキル【咆哮】を使ったかのような大きな声を出した。



「作戦は1つ! 姫様や竜斗達が帰ってくる間、敵と思われるものから、民を守るだけだ! いいな?」


「「はっ!!」」



「よし、みな配置につけ!!」


「「はっ!!」」


 ガオウが手を振りかざすと、兵士達は返事をし一斉に行動を開始した。




 暫くすると【王の間】にはガオウ、サラ、ルキの3人だけになった。


「……レイナ……竜斗さん……早く帰ってきて下さい」


 サラは祈るようにして呟いた。

 自分達はSランクであるにも関わらず、人間に対する恐怖心がサラの体を震わせた。



「大丈夫だサラ殿」


 ガオウはサラの肩に手を置いた。



「ガオウさん……」

「距離的にも今頃は既に、バアル・ゼブルを仲間にしてこちらに向かっている筈だ。心配することはない」



「ガオウさん……そうですね、私達がしっかりしなくては……竜斗さんに選んで頂いたのですから、皆を守らなくては……」


「そうだな。竜斗にレイナにゼノ、3人が帰る間、持ち堪えればいいだけだ。それにバアル殿も仲間になっていれば、きっと大丈夫だ」


 ルキもサラの空いてる方の肩に手を置いた。



「ルキさん……はい……」


 サラは自分の肩に手を置くガオウとルキの手の上に更に自分の手をそっと添えた。



 不安を掻き消すように……



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