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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第三章【襲撃】
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孤独と火球



 スレイヤ神国とホウライ王国の国境に位置する山岳地帯。

 高く険しい山々が聳え立ち起伏も激しい場所であった。


 スレイヤ神国の【七極聖・水王】と戦ってから1日後、俺達は遂に荒野を抜け、【バアル・ゼブル】が住んでるであろう山々の麓まで来た。



「……これ登るのか?」

 俺は山々を見上げて呟いた。


 【霊峰アルカ】程高いわけではない。

 寧ろアレを見た後だと低くさえ感じるであろう。

 だが、それでも相当厄介な場所であることには変わりなかった。


 容易に想像できた。

 ここは登る気力を削ぐ場所であると。

 起伏も激しく、巨大な石もゴロゴロと転がっており、草木の数もそれ程多いわけではなかった。



「…………」


 皆、黙ったままであった。

 そして俺は内心、リリスを拐った奴隷商人達を尊敬した。

 ここを登ったという根性を。




 現在、俺達のパーティーは、俺にレイナ、ゼノにルルにリリスの5人だ。

 ネムとナスカだが、正直戦力としては頼りないので置いてきた。

 正確には【水王レインバルト】が保護してくれている。

 

 レインバルトは俺に負けた後に、俺の軍門に下った。

 この世界で最強のSランク者が守るのだから問題はなし。

 バアル・ゼブルの一件が片付いたら、アルカディア国には2人の人間が移住することになる。


 これは大きな成果だ。

 レイナの契約【魔族の国を安定させるのを手伝って欲しい】のおまけ、【出来たら人間とも……】が成される事になる。



 俺を含めてたったの3人かも知れないが、それでもこれは魔族と人間にとっての大きな一歩になる。

 奴隷や労働力、モノではないお互いが対等な関係。




 そういえば、話は変わるけどレインバルトの情報だと、アーク帝国は今かなりヤバイらしい。


 なんでも【六花仙】がボロボロらしい。

 【百合】と【竜胆】の2人が新しく入れ替わったそうだ。

 だけど新しい【百合】と【竜胆】は才能はあるけど、Aランクなのだそうだ。

 Sランクからすると、相手ではないそうだ。


 因にだけど【薔薇】のゼータは失脚して国外追放になったみたいだ。

 スレイヤ神国内で【七極聖】の【光王】に迎え入れてはどうか、みたいな話も出てるらしい。


 話が逸れたけど、レインバルトによるとアーク帝国を叩くなら今しかないそうだ。

 自分達が戦っていたアーク帝国【六花仙・桔梗】とホウライ王国【四傑】の1人を倒せば、一気に流れはスレイヤ神国に傾く筈だったそうだ。


 レインバルトから聞いて、話を少し纏めてみた。






 アーク帝国のSランク者は【六花仙】。


【桜花】【薔薇】【桔梗】

【竜胆】【百合】【牡丹】


 現在は実質【桜花】【桔梗】【牡丹】の3人しかいないそうだ。



 スレイヤ神国のSランク者は【七極聖】。


【光王】【闇王】【風王】【雷王】

【炎王】【水王】【地王】


 現在は【光王】【水王】が抜けているので、5人だ。



ホウライ王国のSランク者は【四傑】の4人。


【英雄】【拳聖】【守護神】【死神】






 話を整理してみて気づいた。

 あれ?

 アルカディア国が最強じゃね?


 ランク【ZERO】が1人……って俺だけど。

 Sランクもレイナ、ガオウ、ゼノ、サラ、ルキと5人いる。

 レインバルトも合わせたら、Sランク者が6人はいる。

 単純に数でいったら、どの国も超えたことになる。


 レインバルトに話したら、口を空けて呆然としていた。

 「魔族が……」とか呟いていた。

 誇らしくなったが油断は禁物だ。



 行方が分からない奴もいるけど【元・光王】【桜花】【英雄】の3人はレベルが違うそうだ。

 潜在ランクがレイナ達と同じで【SS】はあるかもしれない。

 現状はSランクで間違いないみたいだけど、一抹の不安を覚えた。


 気を付けよう……


 やはり、今は隠れてコソコソと戦力を集めることにしよう。

 俺が1番不安に感じてるのは、3国の協同だからだ。

 アーク帝国の皇帝はしないかもしれないけど、何が切っ掛けになるか分かんないし。


 言葉に出すとフラグになるから黙っとくけど……




 取り敢えず現実逃避も済んだことで状況を説明すると、既に山を登っているのである。

 俺だけ……

 レイナとゼノはスキル【飛翔】を使って、リリスとルルを抱えて飛んでいった。

 

 そう!

 俺だけ1人ガチで山登りをさせられているのだ!

 横暴だ、不公平だ、虐待だ!

 と、心の中で叫んだ。


 口に出したいけど女の子であるルルとリリスに、ここの山登りは正直キツイ。

 そんな紳士にあるまじき発言は出来ない。



 帰ったら思いきりスライムに飛び込んでやる!

 赤いジャケットを着た大泥棒の如く!

 緑のジャケットかもしれないけど……


 だけど目の前が真っ暗になってきた……

 疲労困憊、もう無理、限界だ……

 上を見上げるが、レイナ達の姿が見えない。

 どれだけ先に行ってるんだ。

 たまに目印らしきものが置いてある。

 「あっち」とか「右」とか……ふざけてる。





「はぁ…はぁ…はぁ…しんど……」


 俺は1人孤独に、山の途中にある巨大な崖を登りきった。

 途中何度も手を滑らせて死にかけたが、なんとか登りきった。

 仰向けになり大の字で寝転ぶと空を見上げた。

 空は夕焼け色に染まり出していた。


 まさに崖の上の竜斗……

 別にハムが好物ではないけど……



 するといつの間にか傍らに蝿の羽が生えた男の子が立っていた。

 男の子の後ろには森なのか林なのか分からないけど、そんなのが広がっていた。



「やぁ遅かったね」


 男の子は俺の眼前にて浮いて喋りかけてきた。

 茶色の髪をツンツンにたたせて、黒い長袖にハーフパンツと、若干俺に似たような出で立ちをしていた。

 違うとすれば服に炎のような赤い模様が刺繍されていた。



「これでも結構頑張ったつもりなんだけど……皆は?」

 俺は体を起こし、地面に腰かけたまま尋ねた。

 て、なに普通に返してんだ俺!



「? いや君が一番乗りだよ、寧ろこっちが聞きたいかな」

 男の子は首を傾げていた。

 取り敢えず怪しいので【神眼】を使って視ることにした。




【バアル・ゼブル10世】(25)


種族

【蟲人族】

クラス

【蝿の王】 潜在【気高き館の主】

ランク

【S】 潜在【SS】

先天スキル

【属性<爆炎>】【飛翔】【状態異常無効】【寄生】

後天スキル

【魔皇】【ーー】

特殊スキル

【千里眼】

神器

極烙炎(ごくらくえん)】<杖/炎/?/S>

舞球炎(まきゅうえん)】<腕輪/炎/?/A>

守護炎(しゅごえん)】<腕輪/炎/?/A>

圏状円(けんじょうえん)】<首輪/無/?/A>

【??】

【??】

【ーー】




 うん……見つけました。

 こいつで間違いない。

 子供と思ってたけど、どうやら年上だったみたいだ。

 そりゃそうだ……リリスは同い年くらいだし、お兄さんなら当然俺より上だな。


 さて、なんて話しかけようかな?

 見かけより年なんですね、とか?

 既にSランクなんですね、おめでとうございます……とか?


 いや、俺は知ってる!

 これは無駄な会話のせいで、余計な戦いになるパターンだ!

 ここは「リリスのお兄さんですか?」の一択だ!


 これしかない!

 流石、俺!



「あの……」


 話しかけようとしたら、目の前に小さな火の玉が現れた。


「ん?」


 俺は火の玉を見つめると、それは突如爆発した。


「うわっ!?」


 俺は咄嗟に両腕で顔を守り、右に飛び退いた。


「それが噂の【神眼】か……本当に金色の瞳なんだね」


 バアルは宙に浮いたまま、何事もなく話している。


「いきなり何……っ!」


 俺は立ち上がろうとするが、気付くと無数の火球が俺を取り囲んでいた。


「!?」

「バン!」


 バアルの声と共に火球は先程と同じ様に爆散した。


「悪いけど侵入者には死んでもらうね」


 バアルは俺がいた所を見向きもせず、無表情に喋っていた。




 ゆっくりと爆煙が風に流れていった。

 俺は神器【魔名宝空】を発動させてバアルの攻撃を防いだ。



「はぁ…はぁ…はぁ…この野郎……」


 両手を広げ、片膝を地面に着けたままバアルを睨む。

 【魔名宝空】は俺を包むように張られていたが、【風属性】と【炎属性】とでは相性が悪く、服はボロボロで、額からは血が流れた。



「へぇ……流石に今のじゃ死なないか」

 バアルはクスリと小さく笑った。



「上等だ……っ!」

 俺は説明するのをやめた。


 恐らくリリスの名を出したら直ぐにでも和解してくれるかも知れないが、俺はそんなに人間が出来てない。



 説明するのは、ぶちのめしてからだ!!



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